継続活動企画書(scope of work)

産業競争力懇談会(COCN)2015年度推進テーマ
継続活動企画書(scope of work)
【今年度のテーマのタイトル】
IoT時代のプライバシーとイノベーションの両立
【リーダー企業・大学・法人】
国立大学法人東京大学、もしくは日本電気株式会社
【継続提案内容】
1.提案の背景・理由
基本的な背景は昨年度と変わらないが、内閣官房「情報通信技術(IT)の利活⽤に関する制度整備
検討会」、IoT 推進コンソーシアムにおける「データ流通促進 WG」、その他各領域のデータ流通に関
する検討 WG において、COCN プロジェクトに掲げた、個人主導のデータ流通の仕組みの必要性が浸
透しつつある。同じくプロジェクトにて検討を進めてきた、IoT プライバシー問題の象徴であるカ
メラ画像の利活用ルールについても、その早期オーソライズを求める声が高まってきた。本プロジ
ェクトでは、代理機関や情報銀行、パーソナルデータストアなど個人主導のデータ流通の仕組みに
求められる技術的要素や制度的要素の検討、または顔認証といった先進的カメラ画像の利活用ルー
ルの具体案の作成など先駆けて取り組んできたが、各府省や関係団体との個々の意見交換を通じ、
具体的なフレームワークとしての検討や、新しい概念の社会実装における受容性や効果の評価など
についての継続掘り下げについても期待の声が大きい。
また、パーソナルデータのポータビリティや諸権利といった世界的なプライバシー重視の傾向を
見据えた新たな日本の戦い方の提言という成長戦略としての意義、さらには第5期科学技術基本計
画案における「超スマート社会」は生活者が安心して自身のパーソナルデータを提供できなければ
成立しない社会であることも踏まえ、本プロジェクトの取り組みはそれらに対し大きく貢献するも
のとして役割は重い。おもてなしや高齢化社会への対応、レジリエンス、QOL といった Society5.0
が描く世界には、義務的で受身のプライバシー対応ではなく、攻めのプライバシー対応が重要であ
り、超スマート社会サービスプラットフォームに求められる基盤要素としてももっと重要視すべき
要素ともいえよう。
これら期待の高まりを鑑みると、代理機関などの関連政策の整合を通したデータ流通促進、改正
個人情報保護法における IoT データの利活用ルールの早期具体化、「超スマート社会」を実現する
技術要素である AI、ロボットなどの研究開発のボトルネック解消など、「生活者が主役のデータ流
通」という新しい概念をより具体的な行動へ落とし込む為には更なる具体化が必要である。単に今
年度の継続検討課題について深堀するだけではなく、明確化した要件やルール案について、ユース
ケースベースでその受容性の検証を行うとともに、具体的なセグメントや社会課題テーマへの提言
を通した産業界への貢献も併せて目指したい。
2.産業競争力強化上の目標・効果
カメラ画像の商用活用ルール案の作成、個人が主役のデータ流通(ディープデータ流通)の要件明
確化や制度提言については、その目標や包括的なメリットは変わらない。来年度はヘルスケア、フ
ァイナンス、スマートハウス、モビリティといったプライバシーとイノベーションの課題を抱えて
いるセグメントごとに、個人が主役のデータ流通の効果を仮説検証する。また、カメラ画像を使っ
たプライバシーとイノベーション検討については、今年度掘り下げた商用目的に留まらず、オリン
ピック・パラリンピック、パブリックセーフティなどの領域、さらには研究目的利用、既存の防犯
カメラとのマルチユース、自動運転やドローン、移動カメラといった新たな利用形態もユースケー
スとして検討対象とし具体的効果の検証をする。
3.検討内容と想定される課題(政策、技術・システム開発、規制改革、人材育成など)
今年度の検討を通し、下記のような観点で継続的に検討すべきとの認識である。
(政策面・規制面)
・ データポータビリティ制度の実現や代理機関構想の具体化
・ コンセントレシートなど消費者への透明性を担保する仕組みの構築
・ 改正個人情報保護法の具体的運用や、情報通信技術の利活⽤に関する新たな法案や規制改革へ
の取り込み
・ 消費者への普及や周知政策の検討
(技術面)
・ 新たなデータ活用サービスや、新サービスとデータのマッチングなど新産業創出の土台となる
データ流通に関する技術開発(DRM、電子署名等の既存技術のエンハンス適用、パーソナル
データの不正利用検知のための監査証跡、自己情報のトレーサビリティといった新技術開発)
(人材面)
・情報セキュリティとは明確に求められる要件が異なるプライバシー人材の育成。法解釈だけで
はなく、関連技術やシステム要件に落とし込むスキル、PIA(プライバシー影響調査)などの
スキルを有した人材の必要性が高まっている。
4.想定される解決策と官民の分担
来年度は7項の推進体制にてプロジェクトを運営し、課題の深堀を行う予定である。
官には、個人情報保護委員会、想定さえる認定個人情報保護団体とアクションプランを共有し、
マルチステークホルダプロセスによる受容性評価などの実施、具体的政策へ本プロジェクトの
検討要素の取り込みを求めていく。また、上記政策面の課題に関し、まずは共同のタスクフォ
ースを立ち上げ、官民最適な役割分担を検討することとしたい。
5.推進テーマ活動の想定活動期間
1 年間を想定する。
6.出口目標と提言実現の推進主体案

カメラ画像に関する認定個人情報保護団体としての受け皿を想定した検討チームの立ち上げ。

当 PJ を母体として、ユースケース毎の業界団体や消費アドバイザーなども加えた推進を
目指す。

データポータビリティ、情報信託やパーソナルデータストア型情報流通、代理機関の具体化検
討など分散した動きを統合した産官学のタスクフォースの立ち上げ。

個人が主役のデータ流通を提唱する産官学の動きを糾合すると共に、第三者認証などの運
用主体を立ち上げる。また、ヘルスケア、ファイナンス、スマートハウス、モビリティと
いったプライバシーと利活用の課題を抱える領域毎の検討深堀を行う
7.推進体制案
来年度は下記体制にてプロジェクトを運営し、課題の深堀を行う。
・技術 WG 上記技術面の対応
・制度対応 WG 上記制度面の対応
・ユースケース検討 WG
セグメント別の深堀(イノベーションへのプライバシー課題、本 PJ のアプローチの有効性検証、
ビジネスモデルなどの検討)を行う。ベンダーのみならず、プラットフォーマー、サービサー、ID
プロバイダー、ベンチャー企業、法律、デザイン思考やサービス科学といった知見を入れた体制に
つき打診を始めている。
想定ケースは①ヘルスケア、②スマートハウス、③ファイナンス、③おもてなし、④モビリティ、
⑤人材などであるが、相互データ流通シナジーも視野に置く。事前許諾が難しい IoT データの利活
用検討については、継続カメラ画像を中心に検討するが、同じく前述の通りパブリックセーフティ
や防犯、防災といったケースの拡大、マルチユースや研究用とのオプション、ドローンなどの新た
な利用シーンの検討タスク立ち上げも視野に置く。