目 次 ・ 概 要 (課題研究発表会順に掲載) (化学分野①) 1班 P6~P15 ベントナイトの研究 天橋立などの砂州が波によって侵食され、その景観が損なわれていることを知り、これ を防ぐために粘土の一種であるベントナイトが利用できないかと考えた。そこで、「流され にくい砂」を作るために「砂」と「ベントナイト」の最適な混合比率を調べ、砂州の保全 に役立てようと思った。 そこでベントナイトの性質の確認、砂とベントナイトの比率に対する凝析の確認、砂と ベントナイトの流れにくさの測定の実験を行なった。 実験から、 「ベントナイトをゲルにするためには最初に水と混ぜる必要がある」「ゲル化 したものに NaCl 水溶液を加えても凝析しない」 「砂に対するベントナイトの割合が大きく なくても効果は発揮される」ということが分かった。このことから、実際にベントナイト を砂に混ぜて海に入れても利用でき、景観を損なうことなく侵食を軽減できると考えられ る。 (物理分野①) 2班 P16~P23 ヨーヨーの研究 ヨーヨーが上手く手元に戻ってこないといった苦い経験をしたこともあり、下降したヨ ーヨーがより小さい力で簡単に戻ってくることができ、始点から下降したヨーヨーが効率 よく最高点を迎える条件を調べることを目的とし、この研究を開始した。 ヨーヨーの下降、上昇、および一連の動作の様子を調べるために、部屋全体を遮光して 暗室を作り、ヨーヨーの側面に反射板をつけ、発光間隔 1/25[s]でストロボ写真を撮影して おもり(64g,76g,88g)の 3 つの条件と糸の長さ(40cm,60cm,80cm,100cm)の 4 つの条件で比較 し運動解析し、データ化を行った。そこから、力学的エネルギーの変化を算出し、エネル ギーの減少具合をそれぞれの条件で比較し、検証した。 (物理分野②) 3班 P24~P34 紙飛行機と発射台の研究 紙飛行機は、一枚の画用紙で作成できる身近な玩具として、昔から子供たちに親しまれ ている。また、作成方法は多様でその形状によって飛距離や飛行の軌道も異なる。私たち は、紙飛行機をより遠くまで飛ばすためにはどのような条件が必要かということについて 考えた。 今回は、形状を変えて研究するのはデータの比較が難しいと考えたため、一定の形状で 発射条件について研究した。安定的にデータのとれる発射台について研究することにした。 データを正確にとることができることを重点においた。天井に紙飛行機がぶつかってしま うなど様々な問題を抱えながらも、試行錯誤を重ねた。正確なデータが取れ、かつ、発射 速度が時速 50km 以上出すことのできる発射台の製作に成功した。 機体の形状を同じにして、クリップで重心を変えて飛ばすことでの飛距離の差を調べた。 飛行機は揚力によって上に持ち上げられることを知り、揚力中心を求めて重心と揚力中心 の関係について調べた。 (数学分野①) 4班 P35~P52 音楽と数学 4 人のメンバーは日頃から音楽に触れており、数学との関連性に興味をもっていた。特に、 「倍音の正体」 「和音」 「数列と音楽」の 3 つについて、今回、研究を行った。 倍音については、 基音と 2 倍音を鳴らすと第 3 倍音が鳴るメカニズムを𝑦 = sin 𝑥のグラフ と、𝑦 = sin 2𝑥 のグラフを合成することにより確かめた。このことは、周波数分析ソフト を用いて分析しても確認できた。和音については、周波数比の最小公倍数を計算すること により、調和している和音と調和しにくい和音を確認するとともに、フィボナッチ数列、 トリボナッチ数列、テトラナッチ数列について、数と音階の規則を作り、楽譜を作ったと ころ、同じフレーズが繰り返されることに興味をもった。フレーズの規則性はこれらの数 列の8の剰余の規則性であり、このことについて研究を行った。 (生物分野①) P53~P62 5班 スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)の特性 しばしばイネ苗を食害するため、有害動物に指定されているスクミリンゴガイ(俗称 ジャンボタニシ)について、その特性を調査することによりスクミリンゴガイによる農 業への被害を軽減する方法を見出すことができるのではないかと考え、研究に取組んだ。 まず、スクミリンゴガイとカワニナの殻の縦・横の長さ、殻の体積・重さ、殻の密度、 殻のすくみ比を計測し、両者を比較した。続いてスクミリンゴガイとカワニナがもつア ミラーゼとセルラーゼの量を比較した。加えてスクミリンゴガイとカワニナの殻の表面 に顔料を塗布し水に浸け、かき混ぜて塗料を落とし、その後塗料が溶け出た水の光の透 過度を測定することで、殻表面に付いた汚れの落ち具合を比較した。さらに顕微鏡で殻 の表面構造を観察した。 研究より、スクミリンゴガイの殻は密度が小さく、非常に脆いこととスクミリンゴガ イはアミラーゼ・セルラーゼのような消化酵素を多くもつことがわかった。またスクミ リンゴガイの殻は、汚れを落としやすい傾向があることがわかった。今後はイネ苗より も好む誘引餌となる植物の研究と殻の構造を応用した水中の汚濁がつきにくい素材の開 発を課題としたい。 (生物分野②) 6班 P63~P72 ナミウズムシの生態学的研究 ナミウズムシはきれいな水の指標生物であるが、野外で魚の死骸を食べるという報告も あり、矛盾が生じる。そこで、未解明な点が多い野外のナミウズムシの生態を調査した。 まず、川で生息環境について調査をすると、「低水温では体長が大きい」、 「照度の高い場 所に生息」という 2 つの傾向が見られた。 1 つ目の結果から、水温と体長の間に関係がある可能性があると考え、調査を継続すると、 季節による水温の変化とともに体長が変化していた。また、冬の個体から倍数化した細胞 を検出し、低水温が影響した可能性が考えられた。 2 つ目の結果から、豊富な水生昆虫を食べていることと藻類を食べていることを考え実験 を行った。すると、野外個体は水生昆虫を好むことが分かった。また、体内から光合成物 質や藻類が確認された上、藻類を好む性質があること、さらに、体内の藻類を消化するこ とが分かり、野外で藻類を食べている可能性が示唆された。 本研究論文は、動物食性だと考えられているナミウズムシが、植物性のエサも食べてい る可能性を初めて指摘する報告である。 (化学分野②) P73~P85 7班 コーヒー殻の脱臭効果の研究 コーヒー殻という本来ならば、廃棄物となるものの脱臭効果をアンモニアを用いて研 究した。調べてみると、コーヒー殻には多孔質の性質があり、今回はそこに着眼して、 効果を検証することにした。 まず、コーヒー殻を増量させれば、アンモニアの脱臭量も増えた。次に効果の持続す る期間を調べるために、それぞれ1週間と2週間放置して脱臭量を調べた。すると、1 週間よりも2週間のほうが脱臭量が増えていたので、1週間は確実に効果が持続するこ とがわかった。最後に一般的に脱臭剤として利用されている活性炭の脱臭量との比較実 験をした。すると、コーヒー殻のほう脱臭効果が高いということがわかった。 以上より、コーヒー殻の脱臭効果は高く、また持続性もあるということがわかった。 ぜひ、コーヒーを飲んでリラックスした後は、そっと袋にいれて、脱臭剤として活用し ていただきたい。 (生物分野③) 8班 P86~P94 オヤニラミの可視光域の特定 オヤニラミは、視覚情報を手掛かりにして闘争行動を起こす。オヤニラミの闘争行動を 引き起こす鍵刺激を解明するために、可視光域について調べた。 河川によって異なった行動を示す魚種があるため、実験に用いる個体の産地を確認した。 PCR法を用いた遺伝子解析により、飼育するオヤニラミが無作為放流の影響を受けてい ないことを確かめられた。 次に、光視運動反応装置と波長別のフィルターを用いて可視光域を調べた。さらに紫外 線・赤外線下での体色や模様も調べた。実験の結果、オヤニラミの可視光域はヒトとほと んど同じであり、闘争行動の鍵刺激として紫外線・赤外線の可能性は低いと考えられた。 このことから、オヤニラミの闘争行動は人の可視光域での誘発が可能であり、今後、モニ ターを使った実験により、その鍵刺激の発見が可能であることも分かった。 また、オヤニラミの生息環境を調査し、オヤニラミは水質変化の影響を受けやすい場所 に生息していることも示した。これらのデータはオヤニラミの繁殖や保護に役立てられる と考える。 (物理分野③) P95~P108 9班 喧嘩ごまの研究 小さい頃、コマを衝突させて戦うおもちゃでよく遊んでいた。2年生夏休みに行われた 科学技術研修の工場見学で、全国製造業コマ大戦の全国大会に出場している方から、コマ のさまざまな形や作り方などを聞いたことから喧嘩ゴマに興味をもった。特に、小さいコ マが大きいコマに勝つことがあることを不思議に思い、本研究に取り組むことにした。 喧嘩ゴマの衝突前後のエネルギー変化に着目してデータをとることにした。ます、コマ をモーターで回す装置を作成した。次に、コマの回転の様子を下から撮影するための装置 を考案した。2つのコマの大きさ、回転の向きを変えて実験を行い、衝突前後の様子をハ イスピードカメラで撮影した。動画編集ソフトで撮影した動画をコマ送りにして、回転数、 並進運動の速さ、衝突後の進む角度などを計測した。 1回の衝突実験のデータを利用して、コマが複数回衝突する場合において、衝突回数と 回転速度の推移の関係をシュミレーションしてみた。また、実際の喧嘩ゴマが勝敗がつく までを実測し、回転周期から導出した回転速度を計算し、衝突回数と回転速度の推移のグ ラフをかいた。シュミレーションしたグラフと実測値によるグラフを比較して、喧嘩ごま の勝敗がつくまでの運動のメカニズムについて考察を行った。
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