陳言コラム-17 中国雑談 スモッグの感覚や記憶 「北京は白内障にかかっ

陳言コラム-17
中国雑談
スモッグの感覚や記憶
「北京は白内障にかかっている」と郊外に住んでいるある老人はつぶやく。
この老人は、手術を受けるまでに、白内障によって周りはもやもやしてはっきり見えず、
うまく歩けなかった。先月、手術を受けてから、急に明るくなり、外出も杖は要らなくな
った。
しかし、手術後の数週間、今度は北京のスモッグに遭遇して、「白内障」が思い出され
た。普通の人が想像も付かない言葉でこの北京のスモッグをたとえた。
たしかに北京をはじめ華北地方はとてもこの前の東北を嗤う余裕はない。経済発展はこ
のような結果をもたらし、もはや物やスピードはいいと思うことは社会一般となっている
のではないか。
北京地元紙の「新京報」の報道によると、北京市環境保護監視センターの公式サイトの
データは、11 月 30 日 17 時、北京の南西区域の PM2.5(微小粒子状物質)の濃度は 1 立方
メートルあたり 976 マイクログラムに達した。
「財新ネット」の 12 月 1 日の報道によると、PM2.5 濃度が 1000 マイクログラムに達す
る時、1952 年のロンドンスモッグ事件の濃度に近づいている。1952 年 12 月 4 日~9 日、
濃い霧がロンドンを覆い続けて、英国の公式統計によると、スモッグによる死者は 5000
人を上回り、その後 2 カ月以内にさらに 8000 人が相次いで死亡した。
しかし、今のところ、北京の PM2.5 による健康被害はまだ明確に評価されていない。
一般市民は、今回のスモッグを記憶しようとしている。河北省唐山のレンガ工場で 11
月 30 日、深圳から来た「堅果兄弟」を名乗る一人の若者が北京のスモッグに含まれる 100
日分の粉塵を固めて作った塊を展示した。この塊は 2、3 日間の日干しの後に記号を付け
られ、窯で焼かれてレンガになった。今後、彼はこのレンガを北京の建築現場で建材にす
る予定だという。彼はこの行動により、人類の生存環境に対する粉塵の影響について暗に
訴えようと考えている。
堅果兄弟によると、彼の行動は「塵埃プロジェクト」だ。この発想は 2013 年にさかの
ぼる。当時、北京のスモッグの深刻化や PM2.5 の甚だしい基準値超えに関する報道が社会
の注目する話題になり、遠く深圳にいた彼も大きなショックを受けた。
そこで彼は今年 7 月 24 日から 11 月 29 日までの 100 日間、北京で大気中の粉塵を吸引
し続けた。彼は仕事率 1000 ワット、1 時間当たりの流量 234 立方メートル、フィルター
精度 0.2 ミクロンの業務用吸塵機を使った。この吸塵機は 1 回の充電で 4 日使え、およそ
62 人の 1 日の呼吸量に相当する。
「塵埃プロジェクト」の説明で堅果兄弟は次のように書いている。「私たちの都市は、
渋滞都市、化学工業に包囲された都市、巨大な建設現場になった。私たちが多くを求めれ
ば求めるほど、資源を探せば探すほど、私たちのつくり出す塵埃もますます多くなる。あ
る日、地球のあらゆる資源が尽きる時、私たちも本物の塵埃になるだろう」と。
白内障の手術は一回で終わるが、北京のスモッグはこれからもときどきやってくるので、
老人もたえずその苦痛を感じるだろう。1952 年のロンドンスモッグ事件が人類に記憶さ
れているが、堅果兄弟が 2015 年の北京スモッグをみえる形にしている。
陳言
在北京ジャーナリスト
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微信:chenyan5931