被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システム に与える影響に関する一検討 小松 展久,笹部 昌弘,川原 純,笠原 正治 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 [謝辞] 本研究の一部はJSPS科研費基盤研究(B) 15H04008の支援を受けて実施している 目次 • • • • • • • 研究背景 提案方式の概要 提案方式の評価方法 評価シナリオ 提案方式の基本的特性結果 被災パターンの違いによる考察 今後の予定 2015/05/28 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 2 背景 • 大規模災害発生後の被災地における迅速な避難誘導の要求 – 災害発生後の避難者の緊張状態 – 平常時とは異なる環境 p 道路の損壊,通信被害 • モバイル端末の普及率の高さ – 避難者が保有するモバイル端末を介した自動的な避難誘導の可能性 • 関連研究 – モバイル端末同士のすれちがい通信による通行不能箇所の共有[1] – 共有した通行不能箇所を利用した避難誘導[1] [1] A. Fujihara and H. Miwa, “Disaster Evacuation Guidance Using Opportunistic Communication: The Potential for Opportunity-Based Service,” Big Data and Internet of Things: A Roadmap for Smart Environments Studies in Computational Intelligence, eds. by N. Bessis and C. Do- bre, pp.425–446, Springer International Publishing, 2014 2015/05/28 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 3 モバイル端末の軌跡情報を用いた避難誘導 ITRC meet 36で発表済み • 前提 – モバイル端末上の避難誘導アプリケーションの使用を想定 – 避難者は事前に自身のモバイル端末にアプリケーションをインストール済み • 避難誘導アプリケーションの特徴 – – – – – オフライン地図と避難所の位置は予め保持 現在地から避難所への最短経路の提示 GPS等による定期的な避難者の位置情報の計測 通行不能箇所の自動推定 通行不能箇所の共有 2015/05/28 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 4 アプリケーションの経路提示と避難者の避難行動 • 災害発生直後,避難者はアプリを起動 – GPS等により現在地は計測可能 地図 通行不能箇所 避難所 アプリによる推薦避難経路 現在地から避難所までの最短経路を ダイクストラ法により算出 2015/05/28 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 5 通行不能箇所の自動推定 • 避難者に操作を要求することなく自動的に取得できる情報 – GPSによる実際の避難者の避難行動と推薦避難経路のずれに着目 地図 推薦避難経路の再提示 通行不能箇所 の推定 避難所 アプリによる推薦避難経路 推薦経路と避難行動でずれた道路を, 通行不能な辺としてアプリに保存 2015/05/28 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 6 通行不能箇所の共有 地図 端末間通信により 通行不能箇所を共有 避難所 通信インフラ経由での 通行不能箇所を共有 地図 避難所 2015/05/28 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 7 提案方式の基本特性評価 • 提案方式の性能は被災のシナリオに依存 – ITRC meet36では初期検討としてランダムな被災パターン上で評価 • 現実的な被災シナリオ構築の困難さ – 地層だけでなくその上の建造物の被害予測も必要 – 地層に関する情報 [2] 防災科学技術研究所, “地震ハザードステーション”, p 地震ハザードステーション[2]など http://www.j-shis.bosai.go.jp 2015年5月23日閲覧 • 特定の自然災害をモチーフとした被災パターンを考慮 – 地割れによる連続的な通行不能箇所の出現 – 実データを用いた評価も今後の課題として検討中 p 復興支援調査アーカイブ[3]の利用 [3]東京大学 空間情報科学研究セン ター, “復興支援調査アーカイブ”, http://fukkou.csis.u-tokyo.ac.jp 2015年5月23日閲覧 ü 東日本大震災における道路や建物の被害状況を整理したデータベース 面的・連続的な被害(地割れや火災)を想定し 独自の被災シナリオを用いて評価を実施 2015/05/28 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 8 被災シナリオ 災害による通行不能箇所を 赤線で反映 ランダム 地図上の全ての道路距離に対する 通行不能箇所の距離の割合は固定 連続的 2015/05/28 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 9 評価モデル 避難者 100人 通信半径10[m] (BlueTooth) 通信半径100[m](Wi-Fi Direct) 時速4[km/s]で移動 ヘルシンキの市街地[4.5km×3.4km] ノード数:1578個 エッジ数:1986本 中央付近の頂点 避難所 1箇所 シミュレーション開始と同時に災害発生と仮定 シミュレーション時間7200[秒] 通信インフラ N×N箇所 通信半径100[m] 被覆率(全ての道路の面積に対して通信インフラ の通信半径以内に存在する道路の面積比) 2015/05/28 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 10 基本的特性に関する評価 • 被災パターン(ランダム・連続的)による影響 – 提案方式の導入効果 p ITRC meet 36で発表済み(ランダムな被災パターンの場合) – 端末間通信の支援効果 • 複数の避難行動との比較 – 提案方式を使用しない避難行動 p Normal Evacuation 2015/05/28 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 11 比較対象の避難行動 • 提案方式なしの避難行動 Normal Evacuation – モバイル端末上のアプリケーションを使用せずに避難行動を実施 災害 発生 避難 完了 避難者 避難所への 自らが考える 最短経路に沿って避難 通行不能箇所に遭遇し迂回 地図と避難所の位置は既知と仮定 2015/05/28 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 12 避難誘導システムの導入効果(ランダム) 評価指標 避難時間:避難開始から避難所へ避難完了するまでの時間 避難完了率:全避難者(100人)に対し避難完了した人の割合 1 Evacuation ratio 0.8 0.6 試行回数 端末間通信半径 100[m] 0.4 基地局の数 25 被覆率 7[%] 0.2 0 2015/05/28 100 Proposed scheme Normal evacuation 0 1000 2000 3000 4000 Time [s] 5000 6000 7000 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 13 避難誘導システムの導入効果(連続的) 評価指標 避難時間:避難開始から避難所へ避難完了するまでの時間 避難完了率:全避難者(100人)に対し避難完了した人の割合 1 Evacuation ratio 0.8 0.6 試行回数 端末間通信半径 100[m] 0.4 基地局の数 25 被覆率 7[%] 0.2 0 2015/05/28 100 Proposed scheme Normal evacuation 0 1000 2000 3000 4000 Time [s] 5000 6000 7000 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 14 避難誘導システムの導入効果に関する数値結果 • 評価指標 – 平均避難時間,最大避難時間 3500" 3000" 5000" 4000" 2.8% [s] [s] 2500" 2000" 3000" 1500" 17.4% 2000" 1000" 1000" 500" 0" [s]" 1 2015/05/28 13.6% 6000" 5.3% [s]" 0" [s]" [s]" 2 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 15 端末間通信の支援効果(ランダム) 評価指標 避難時間:避難開始から避難所へ避難完了するまでの時間 避難完了率:全避難者(100人)に対し避難完了した人の割合 1 Evacuation ratio 0.8 0.6 0.4 試行回数 100 基地局の数 0 被覆率 0[%] 0.2 0 2015/05/28 Direct wireless communication (RD = 100 [m]) Direct wireless communication (RD = 10 [m]) Direct wireless communication (RD = 0 [m]) 0 1000 2000 3000 4000 Time [s] 5000 6000 7000 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 16 端末間通信の支援効果(連続的) 評価指標 避難時間:避難開始から避難所へ避難完了するまでの時間 避難完了率:全避難者(100人)に対し避難完了した人の割合 1 Evacuation ratio 0.8 0.6 0.4 試行回数 100 基地局の数 0 被覆率 0[%] 0.2 0 2015/05/28 Direct wireless communication (RD = 100 [m]) Direct wireless communication (RD = 10 [m]) Direct wireless communication (RD = 0 [m]) 0 1000 2000 3000 4000 Time [s] 5000 6000 7000 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 17 端末間通信の支援効果に関する数値結果 • 評価指標 – 平均避難時間,最大避難時間 3500" (Wi.Fi"Direct"100m)" (BlueTooth10m)" 3000" 2.6% 6000" 1.4% 12.8% 4000" 2.0% 0.4% [s] [s] 13.6% (BlueTooth10m)" 5000" 2500" 2000" (Wi0Fi"Direct"100m)" 3000" 1500" 17.4% 12.1% 2000" 1000" 1000" 500" 0" 0" [s]" 3. 2015/05/28 [s]" [s]" [s]" 3. 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 18 被災シナリオの違いに関する考察 • 避難誘導システムの導入効果に関して – ランダムな被災パターン p 避難者が迂回路を発見しやすいため通行不能箇所の情報の利用の効果が小さい – 連続的な被災パターン p 避難者が同じ通行不能箇所に遭遇する可能性が高いため,通行不能箇所の情報 の利用の効果が大きい • 端末間通信の支援効果に関して – ランダムな被災パターン p 迂回路が多いため,同様の避難経路を進む避難者と遭遇する機会が少ない – 連続的な被災パターン p 同様の避難経路を進む避難者間で遭遇する機会が多い 2015/05/28 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 19 まとめ • モバイル端末の軌跡情報を用いた避難誘導方式の提案 • 被災パターンが提案方式の基本的特性に与える影響に関する評価 – 提案方式の有効性は連続的な被災パターンの方がランダムな場合よりも高い – 端末間通信の支援効果も,連続的な被災パターンの場合の方が高い 2015/05/28 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 20 今後の予定 • より大規模な評価シナリオにおける提案方式に関する基本的特性 の評価 – 避難者数(数万人オーダー) – 地図情報 – 被災状況の反映(地割れや火災) 2015/05/28 被災パターンが 端末の軌跡情報を用いた避難誘導システムに与える影響に関する一検討 21
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