コスト低減 1 コスト低減の取組み 天童市 水稲作付面積 19ha 個人 【要約】 生産者は、購入有機質肥料の代替として、自家製造の米糠ペレットを全圃場に 施用し、有機質肥料購入に係る経費を半減している。 【背景・具体的データ】 1 米糠ペレット肥料の材料 2 米糠と土壌改良資材(天然鉱石)を15:1の割合で混合 材料費 米糠:19円/kg(20t 購入) 土壌改良資材:65円/kg(1.5t 購入) 3 米糠ペレット肥料の製造期間 12月から翌年2月(果樹の剪定前) 4 所要機械 ペレット製造機、混合機、ペレット乾燥機 各1台 所要時間 1日当たり10時間、2日で米糠ペレット肥料800kg製造。(材料混合・ペレ ット成形化で1日、乾燥で1日) コスト低減 5 6 施用量 kg/10a 円/10a 有機質肥料(購入費) 40 6,708 米糠ペレット肥料(製造費) 80 3,188 差額 ▲3,520 7 米糠ペレット肥料施用の効果 (1)19haで約67万円のコストを低減している。 (2)冬の農閑期を有効に活用して、肥料を製造している。 8 その他 (1)土壌が膨軟になり、耕起作業の効率が向上した。 (2)水稲の根張りが明らかに改善し、収量・品質が安定した。 【特記事項】 1 土壌還元による表層剥離を防ぐため、米糠ペレット肥料は前年秋に散布し、 秋耕することが望ましい。 2 ペレットの成形と乾燥が可能な専用機械が市販されている。 (T社製 ペレット成形機 1,458,000円 混合機 453,600円) 1 コスト低減 2 コスト低減の取組み 天童市 水稲作付面積50ha 個人 【要約】 生産者は、自宅の半径1.5kmに水田50haの集積を図り、飼料用米を取り入れた大 規模稲作経営を実践している。品種、移植と直播を組み合わせることにより、春 季、秋季の作期幅の拡大を図り、スケールメリットを活かした効率の良い大規模 稲作経営に取り組んでいる。 【背景・具体的データ】 1 飼料用米を含む、品種を限定した省力栽培を実践 「はえぬき」30ha、「つや姫」5ha、「べこあおば」15ha 2 2手法の直播栽培と移植栽培の組み合わせによる作期幅の拡大 移植栽培(40ha):はえぬき 25ha、つや姫 5ha、べこあおば 10ha 直播栽培(10ha):はえぬき 5ha、べこあおば 5ha 品種・ 栽培方法 品種 移植/ 直播 春作業の労力調整(移植+直播) 5 6 下 上 中 下 上 中 中 秋作業の労力調整 9 10 中 下 上 上 中 移植 直播(V直、 鉄コーティング) つや姫 移植 移植 べこあおば (飼料用米) 直播(V直) はえぬき 凡例) 直播(鉄コーティング) 直播(V溝) <導入機械> ・田植え機(8条植え):1台 ・直播機(V 溝、10 条播種):1台 ・直播機(鉄コーティング、8 条播種):1台 ・コンバイン(6条刈):1台 3 省力低コストの評価(※H24 農水省統計「経営規模:15ha 以上」参照) ・直播、田植えに係る労働時間(時間/10a)は 0.97 時間で、全国平均 ※ (2.03 時間/10a)の 48%に削減し、経営全体で 530 時間の労力軽減となっ ている。 ・10a 当たりの農機具費は 16,400 円で全国平均※(20,635 円/10a)の 79%で あり、本経営規模では 2,117 千円のコスト低減となっている。 【特記事項】 本年度の米価下落により、農地の全面管理委託による集積が更に進む見込み。 2 コスト低減 3 コスト低減の取組み 寒河江市 個人 【要約】 ・生産者は、稲作低コスト(直播)栽培を行うことにより、労働力軽減及び資材 費低減に努めるとともに、高品質安定収量を確保している。 ・直播栽培で軽減した労力は、おうとう栽培に活用し、収益を確保している。 【背景・具体的データ】 ・直播栽培により、労働時間は移植栽培に比較し、3割程度軽減している。 ・移植時は、育苗、移植作業時に妻に手伝ってもらっていたが、直播栽培により 一人で作業可能となった。 ・資材費は、直播栽培(カルパー粉粒剤16、鉄粉、焼石膏)の方が、移植栽培 (育苗箱、床土等)に比較しやや少ない。 ・直播栽培により、規模拡大により育苗ハウスを建設する必要がないメリットが ある。 ・直播栽培で、作業時間を軽減することができるため、労力をおうとうに振り分 けることで、収量、品質の向上に結び付けることができる。 ・直播栽培は条播で行い、生育の安定化と収量確保を図り、低コスト生産を実現 している。 ・直播栽培の収量は、移植栽培同様の600kg/10aを確保している。 ・産米は全量JAに出荷している。 【特記事項】 ○経営内容 園芸+水稲 ○水稲作付面積 3.0ha 3 コスト低減の取組み コスト低減 4 直播導入による経営コストの削減 尾花沢市 水稲作付面積 4.9 ha 個人 【要約】 ・生産者は、夫婦2人で水稲、スイカ、花きの複合経営を行っている。 ・コスト低減のためH23年より直播に取り組む。 ・試行的に播種機による点播やラジコンヘリによる散播も行ったが、現在はより 低コストとなる動力散布機による播種を主に実施。 ・H25年からはつや姫を移植栽培する他は、全て直播に切り替えた。これにより、 育苗枚数が大幅に削減し、ハウスやその他資材代の経費が低減。 ・収量は年次によりややばらつきはあるが、概ね移植栽培と同等の水準。 【背景・具体的データ】 <直播の導入経過> H23 17a、H24 150a、H25 310a、H26 <移植・直播播種までの比較> 直播導入前 導入後 育苗枚数 ※種子量は同等と見なす 約1,500枚(490a分) 直播用コーティング種子 育苗枚数 310a 約 約130kg (310a分、籾重量) 600枚(180a分) <育苗の減少によるコスト低減額> 育苗1枚当たり経費 約500円×減少分 900枚 = 45万円 <直播コーティングのコスト> 資材込委託 1kg 約900円×10a当たり4kg ×310a ≒ 11万円 <面積当たり軽減額> 全体のコスト軽減額 34万円 490a ≒ ÷ 7,000円/10a 【特記事項】 ・現状の収量水準は550~600kg/10aで、ほぼ移植並だが、中山間にほとんど属する ことから、低温の影響等、年次間の変動に配慮する必要あり。 ・全作付面積を直播に移行すれば、更に田植機等、移植に要する固定費の低減も 期待される。(つや姫は原則移植栽培) ・直播導入による省力、労力分散で、複合部門のすいか栽培面積を拡大し、花き 栽培も充実させることができた。 4 コスト低減 5 コスト低減の取組み 大蔵村 水稲作付面積 2.9 ha 個人 【要約】 生産者は水稲作付2.9haをすべて直播で栽培し、育苗に係る経費と労力を低減し ている。また、任意組合を組織化し、補助事業を利用しながら、打込式点播機と 種子コーティングマシンを共同購入、共同利用し、個人の投資負担を軽減してい る。 組合の代表である生産者が、組合員の種子コーティング作業と播種作業を請け 負い、作業の効率化を図っている。また、基盤整備圃場を利用していることか ら、組合員の直播圃場は集約されており、効率的な栽培管理がなされている。 なお、この組合は経営安定対策に加入する集落営農組織ではない。 【背景・具体的データ】 生産者は平成14年に5名の生産者と任意組合を組織化し、基盤整備事業のソ フト事業として50%の補助を受け、打込式点播機1台と種子コーティングマシン 1台を共同購入した。このことをきっかけに、現在まで水稲作付面積の全てを直播 栽培で行っている。栽培技術が高く慣行移植栽培並みの収穫量を安定的に得てい る。 また、組合の代表である生産者は平成26年現在で組合員4名と組合員以外2名 の種子コーティング作業と播種作業を請け負っている。組合員の委託料はコーテ ィング作業が100円/㎏、播種作業が2,000円/10a、組合員以外の委託料はコーテ ィング作業と播種作業を合わせて4,500円/10aと設定されている。種子は持ち込み とし、播種後の管理・作業は個別に行っている。基盤整備圃場を利用しているこ とから、生産者をはじめ、組合員の直播栽培圃場が集約されており、効率的な栽 培管理がなされている。 参考データ 高生産性直播栽培及び移植栽培の収益性 直播 移植 経営費計(円) 112,338 114,652 労働時間(時間) 13.0 20.8 (10a当たり) ※高生産性直播栽培マニュアル(平成13年)より。 水稲作付規模を3haと想定。 【特記事項】 特になし 5 コスト低減 コスト低減の取組み 米沢市 水稲面積 23ha(うち直播 8ha) 個人 中山間地域 6 【要約】 生産者の圃場は中山間地に位置し、小区画の圃場が多数分散しており、大規模 に生産を行って収量・品質の向上を図るためには、適期適作業、特に病害虫防除 等が課題となる。 そのため、斑点米カメムシ類の防除に対し、これまで平均4回の防除を2回に 削減し、農薬及び防除に係るコストを低減しながら、色彩選別機の導入により確 実な一等米比率の向上を目指している。 (事例では、水田作付面積の35%を直播栽培とし、育苗コストの低減と作業の 分散を図り、適期作業を実施している。) 【背景・具体的データ】 1 当地帯は、中山間地域で圃場が分散しており(100筆以上)、圃場毎に作物 の生育に差があるため、事例の生産者の防除作業は8月~9月上旬までかかっ ている。過去には有人ヘリ防除であったが、防除代金は100万円を越えるも のであった。現在、無人ヘリ防除は平場のみで、中山間地の防除は個別に動 散により行っている。 特に、斑点米カメムシ類の被害が多く、2回の追加防除で等級低下を防いで いる。 <経営概況> 水稲作付面積 23ha 移植栽培 15ha 直播栽培 2 8ha(比率35%) 斑点米カメムシ対象の防除回数を減らすため、補助事業を利用した色彩選別 機の導入を予定している。色彩選別機を導入し、これまで年間4回の防除を基 本防除2回に削減し、カメムシ被害による等級低下の回避を目指している。 <予想される経費低減効果> 農業薬剤費 345千円 → 172千円 △172千円 労 672千円 → 336千円 △336千円(2人) 働 (防除日数 3 費 30日→15日、労働費1400円/時間の場合) また、防除の労働時間が減少した分、適切なほ場管理や水管理の対応がしや すくなる。 【特記事項】 ○色彩選別機(コンプレッサー含む)300万円 6 コスト低減 7 コスト低減の取組み 高畠町 水稲作付面積 26ha(うち直播 8.0ha) 法人 【要約】 事例の生産者は水稲を主体とした法人であり、大区画圃場を整備し、地域内に 圃場を団地化し集約している。栽培は、移植栽培を主体に30%程度直播栽培を 取り入れ、省力・低コスト化を図っている。 なお、直播栽培においても10a当たり9俵以上と安定した収量を確保してい る。 【背景・具体的データ】 1 生産者は、平成19年に集落営農組織化、平成21年に法人化を行い、組合 員から農地を借受け、水稲を主体に経営を行っている。基盤整備による地域内 の圃場の団地化、大区画化により作業効率も向上している。 <経営概況> 水稲作付面積 26ha 移植栽培 18ha 直播栽培 8ha(比率30%) 大区画圃場(1ha規模):5ha、5筆(うち直播2ha、2筆) (大区画圃場割合19%) 2 米の直播は、平成15年から試行錯誤を行ってきた。直播の方式は鉄コーテ ィング方式、基肥一発施肥体系となっている。収量も安定してきており、労働 時間も減少している。平成26年の収量は移植を上回る結果となっている。 <水稲平均収穫量(10a当たり)> (H26) 移植栽培 3 630kg 直播栽培 642kg 直播栽培では一般に移植栽培に比較して生産費の1割低減、労働時間の2割 削減が見込まれるが、春作業(代かき・田植え期)の労働ピークの分散が図ら れ、今後も直播面積の拡大を目指している。 【特記事項】 7 コスト低減 8 コスト低減の取組み 飯豊町 水稲作付面積 34ha 法人 【要約】 生産者は、育苗のかん水作業をプール育苗にすることにより、作業時間が1/3 となり、省力化と賃金の低減を図った。また、プールに敷く資材はロール巻き ビニールを使用し、コスト低減を図っている。 高性能な大型乾燥機を導入し、2か所に分散していた乾燥機を1か所に集約す ることで人件費を約4割減らした。 【背景・具体的データ】 耕起などの春作業に忙しいため、水稲育苗管理の省力化を図り、2か所に分散し ている乾燥機の効率化を図る必要があった。 ●育苗のかん水作業の省力化(3,000箱) 慣行ハウス育苗 賃金 2時間×3回×7,000円/8時間×30日=157,500円 プール育苗 賃金 2時間×1回×7,000円/8時間×30日= 52,500円 ●乾燥機等の整備・集約 改善前 32石乾燥機×2台 籾選別機・籾すり機一式 作業員2名 50石乾燥機×2台 籾選別機・籾すり機一式 作業員2名 経費 1,143,600円 賃金 2人×7,000円/日×15日=210,000円(32石) 2人×7,000円/日×25日=350,000円(50石) 燃油 2台×40L/日×93円/L×15日=111,600円(旧型32石) 2台×80L/日×93円/L×25日=372,000円(旧型50石) 使用料 32石乾燥機×2台 100,000円 改善後 50石乾燥機×3台 籾選別機・籾すり機一式 作業員2名 ※高性能50石乾燥機と籾すり機 (2,800,000円中自己負担1,867,000 円)を1台導入し、乾燥・調製作業を1か所に集中した。 経費 801,136円 賃金 2人×7,000円/日×23日=322,000円 燃油 2台×80L/日×93円/L×23日= 342,240円(旧型50石) 1台×64L/日×93円/L×23日= 136,896円(新型50石) 改善前と改善後の経費の差額は、342,464円/年となる。 【特記事項】 ・32石乾燥機は使用料を支払い借用していた。既存の50石乾燥機2台は構成員の 所有で無償使用している。 ・燃油は籾水分21%程度を乾燥した場合を想定している。 8 コスト低減 コスト低減の取組み 鶴岡市 水稲作付面積 42ha 集落内作業受託 大豆 18ha 9 【要約】 鶴岡市H集落では、10年ほど前から、大豆のブロックローテーションを行ってい る。大豆2年-水稲2年を繰り返す取組みで、施肥量を減らし高位安定収量を得 ている。 大豆作では転換1作目は施肥なし。2年目は追肥のみ行う。生育旺盛で雑草の発 生も少ないため、大豆収量は毎年200kg/10a以上となっている。 水稲作も1年目は、基肥を1/2程度に抑えることができ、収量は30kg/10a程度 増収している。 この体系を維持するために、大豆作での排水対策(3m間隔の弾丸暗渠の施工) と、水稲作での漏水防止対策(畔塗り作業、2回代掻き)を徹底し、水稲、大豆 ともに安定した高収量を維持している。 【背景・具体的データ】 水稲―大豆のブロックローテーションを行うと、水稲では地力窒素の発現が大き くなり、大豆では水稲作付中に蓄積された有機物を利用できることから、いずれ も施肥量を減らして収量向上を図ることができる。 水稲・大豆経費比較(円/10a当たり) H集落 管内一般 水稲 肥料費 3,791 5,096~6,914 大豆 肥料費 449 2,248~6,530 水稲・大豆経費比較(円/1俵当たり) H集落 管内一般 水稲 肥料費 365 510~690 大豆 肥料費 130 1,346~3,910 水稲・大豆収量比較(kg/10a H25) H集落 管内一般 水稲 収量 625 600 大豆 収量 208 100 9 コスト低減 10 コスト低減の取組み 鶴岡市 水稲作付面積 22ha 法人 【要約】 生産者は、カルパーコーティング方式直播と、鉄コーティング方式直播に 取り組んでいる。播種から育苗、移植までの作業を減らすことができ、その 分、他部門へ労力を配分できる(労働力分散)。また、移植栽培より出穂期が 遅くなるため、収穫作業を分散できる。刈取り適期に作業が可能であること から、高い品質・食味を維持したまま収穫することができる(作期分散によ る刈遅れ防止)。今後は、さらなる生産コスト(カルパーや除草剤・農薬、肥料 など)の経費の低減が課題である。 【背景・具体的データ】 もともと、この組織は、水稲や枝豆の省力低コスト生産を目的とした機械 共同利用グループであった。米価が徐々に下がってきたことから、水稲以外 の複合経営部門を拡大していくため、水稲については、より省力・低コスト 化を進める必要に迫られた。特に、メロンや枝豆の春作業と労働力が競合す るため、平成5年に直播栽培を初めて導入した。以降、育苗と移植作業の省 略によって、他部門へ労働力を振り向けている。 農業経営の概要 項目 カルパー方式直播栽培 移植栽培 (はえぬき) (ひとめぼれ) 作付面積(ha) 14.0 1.0 単収(kg/10a) 570(移植比99%) 575 物財費と労働費計(円/10a) 66,120(移植比91%) 72,659 労働時間(hr/10a) 12.1(移植比73%) 16.6 ・直播栽培における施肥は、全量基肥一発肥料を使用して穂肥を省略してお り、労働時間の削減につながっている。 【特記事項】 ・平成13年に緊プロ機の高精度湛水条播機(8条)を導入。これにより、播種作業 時間の短縮と播種深度の安定化が図られた。 10 コスト低減 11 コスト低減、協力関係の構築(連携) 三川町 水稲作付面積 30ha 法人 【要約】 平成19年に、それまで集落内に作業別、作目別に存在していた5つの機械利用組 織を統合して、農事組合法人を設立した。法人としてまとまった面積の農地を借 り受けることで、水稲品種別や転作大豆の団地化が可能となり、個別営農時に比 べ、作業効率が大幅に向上した。また、集落外の農地や作業受託も積極的に引き 受け、10a当たりの稲作機械コストを大幅に低減している。さらに、乾燥調製及び 精米・包装をそれぞれ近隣の農業生産法人に外注することで、ネックとなる設備 投資を行わず、米の独自販売にも取り組んでいる。 【背景・具体的データ】 平成19年に導入された品目横断的経営安定対策では、原則として基幹3作業を同 一組織で行うことが要件とされ、既存の個々の機械利用組織では対象外となるこ とから、集落内での合意形成を図り、平成19年1月に集落内の認定農業者4人で農 事組合法人を設立した。 主要稲作機械の稼働面積は以下のとおりで、1台当たりの稼働面積は、「山形県 高性能機械導入計画」の利用下限面積を大幅に上回り、10a当たりの機械コスト (減価償却費+修繕費)は生産費統計(H24県平均)22,931円の半分以下の10,850 円に抑えられている。また、認定農業者向けの優遇税制「農業経営基盤強化準備 金制度」をうまく活用することで、税負担を軽減しながら計画的に農業機械を更 新している。 稼働面積 1台当たり 名称 規格・馬力 台数 トラクター 41PS 2 57ha 28ha 田植機 8条植え 2 34ha 17ha コンバイン 5条刈リ 2 52ha 26ha さらに、独自販売により、系統出荷に比べ玄米60㎏当たり約5,500円高く販売し ており、精米・包装の外注費用約2,500円を控除しても、60㎏当たり約3,000円の利 益増加につながっている。 【特記事項】 11 コスト低減の取組み コスト低減 酒田市 水稲作付面積401ha (うち直播48ha:乾田V溝47ha+湛水直播1ha) 集落営農 構成員178名 【要約】 当組織は、酒田市平坦部のJA支店単位をエリアとする大規模集落営農組織で あり、水稲と大豆の特定作業受託を行う集団である。H19~21年度まで、担い手経 営革新促進事業(担い手経営革新モデルの実践事業)に取り組み、水稲では不耕 起V溝直播栽培技術を導入し、省力化・生産コストの低減を図っている。 12 【背景・具体的データ】 1.新技術の導入 (1)乾田V溝直播栽培技術(耕起・整地された乾田に V 字型の溝を切って播種と 施肥を同時に行う水稲の直播方式) ○水稲春作業等の軽減:従来の移植栽培では 4~5 月に集中して実施していた育 苗作業一式を省略でき、本田作業の耕起・代かき作業を秋~春先の期間に分散 できる。また、今後担い手が減少し受託面積が増えても対応できるととも に、ハウス等での育苗スペースが要らなくなるため、他作物への活用が図ら れる。 ○水稲刈取り作業の延長による秋作業の平準化 V溝直播では出穂・成熟が 10 日程度遅れるため、移植栽培のほ場が終了した 後に刈取りが可能となり秋作業の平準化が図られる。 2.生産費等のデータ(平成21年度) 区 分 不耕起V溝直播栽培 作付面積(ha) 62.6 単収(kg) 575kg 粗収益(円/10a) 117,875円 全算入生産費(円/10a) 116,287円 労働時間(時間/10a) 7.1時間 慣行栽培 431.5 640kg 131,200円 131,487円 15.5時間 3.取組の成果 ○労働時間は約7時間/10a で、慣行栽培に比較し50%以上も削減され、年間 の労働時間が分散された。 ○労賃を差し引いた生産費は、約5%低減した。 ○農機具費は20%以上低減されたが、V溝播種機の賃借料を含めると慣行と同 程度であった。 ○1日当たり約3haの播種作業が可能であった。 【特記事項】 ○収量は慣行栽培に比較し1割程度減収し、10a当たりの所得は8,000 円減収したが、労働時間あたりの所得は1.6倍となった。 ○春先の天候によって播種作業時期が安定しなかったり、ずれる場合がある。 12 コスト低減 コスト低減の取組み 酒田市 水稲作付面積 16ha(うち直播 11ha) 法人・集落営農 13 【要約】 生産者は、構成員9名で集落営農組織を法人化し、水稲+大豆の営農をしてい る。 水稲(飼料用米含む)は、約7割を鉄コーティング直播に取り組んでいる。 集落営農の組織化により施設・機械、労働力の効率化を図りながら、集落・地 域農業の受け皿組織として活動を展開している。 【背景・具体的データ】 担い手の兼業化・高齢化や後継者不足による営農の労働力不足が背景となり、 地域営農維持と機械・施設の集約実現に向けて集落営農組織を立ち上げ、法人化 した。 補助事業を活用し、主要機械(トラクタ51PS1台、田植機8条移植・直播兼用1 台、コンバイン6条1台)を組織所有する事で、台数を集約し、機械利用計画に基 づいた効率利用を行っている。 機械能力に余裕があるため、今後の規模拡大や耐用年数以上の利用など、長期 的なコスト低減を見込んでいる。統計のH24年の農機具償却費(17,651円)と比較 し、10a当たり4割以上の削減が計画されている。) 水稲直播(鉄コーティング)は、以前から構成員が取り組んできており、相互 研鑽を重ね、移植栽培に近い収量確保(9.5俵)を維持することで、営農の柱に位置 付けている。 直播は、育苗作業(当組織2.2時間)を行わず、種子の鉄コーティング作業(当組織 1.2時間)に代わる事から、1時間の労働時間短縮となる。 また、育苗施設への投資や重労働から開放される事で、定年退職者や高齢者も 営農に携わりやすく、集落外から3haの直播作業受託を拡大している。 さらに、地域連携のもと、「日本型直接支払制度 農地維持支払」を受けるた め、組織所有機械を活用して、60haの農地法面の草刈りを開始している。 直播の面積拡大は、CEによる刈取・乾燥計画も立てやすく、安定的な作付け が可能になっている。 ※( )は、10a当たりの数値 【特記事項】 13
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