社 会 系 教 科 教 育 学 『社 会 会 系 教 科 教 育 学 研 究 』 第24 号 2012 (p.ll 1-112) 【シ ンポ ジ ウム 報告 】 初等社会科授業研究の基盤構築に向けて 一仮説推論的な学習方法の提案と授 業評価ス タンダー ドの開発− 浩 和 (兵庫教 育大学) 關 - 1 初等社会科授業研究の現状 ,ある理論に基 づき仮説を設 定 して , 授 業研究は ,仮説 を検証 し,応用可能な一つの真 実践 を行い 。 し 理を, 追究 す る 実 証 主 義 的 な 研 究 が 基 本 で あ る 教育実践研究者の 立場で考えると,実践者 か し 自身の自己成 長 の た め に 自 ら 行 動(action) を , そ の 行 動 の 結 果 を 観察 して, そ計 の 画 して実施 し 結果に 基 づ い て 内 省(reflection) す る ア ク シ ョン ・ ーチの研 究 の 必要性を再認識 す る 。 リサ,社会科授業では,小 ・中学校の校種で大 特に 。単元の知識構造 を きな授 業観, の違 い が 見 ら れ る 順序よく効率的に知識内容 を教授す 明確に して ,子 どもの思考や発 る中等段階での授業, に対 し て 教師の授 業対応 力に関わ る 想で大 きく左右 され 。授 力が重視 されるのが 初 等 段 階 で の 授 業 であ る , そ れ ぞ れ 別 々 の フ レ ー ム ワー 業観が 違 うの だか ら , 授 業研究 をす る視点や評価する クが必要なのに 。この点にずっ 視点が同 じように論 じられ てい る社会科授業研究 。 初等 と, 違子 和 感 を 持解 ちに 続 け て いる ど も理 基づ く ボ トムア ップ的な授 業理 は 。 論の確立が今 こそ必要である 2 初等社会科授 業研究の基盤構築に 向けて (1 ) 仮説推論的な学 習, 方教 法師 の側 提案 か らの トップダウン 初等社会科授業は ,子どもの興味 ・関心を基に の授, 業ボ 構 成で はッ なプ く的に ト ムア トピック を次々と展開 さ して せていくことで学習問題に迫ってい く 仮説 推具 論的 。 そ れ を 現 abduction な 学 習 方 法 論 を 提案する法であ( , ウ ェ ッ ビ ン グWebbing る) 1。 化 したのが ,クモが 巣をつくるよ うに , ウェッ ビング法 とは 。 次々 と思いつ くことをつなげ て い く 発 想 法 で あ る , 個 々 に 知 識 を 構 築 し 子 ど もウ の 主 体 的関 に①子どもの基本的認知 て い く ェッ ビ ン与 グを 法基 は , ,構成要素 (ノー ト)とそれ らの要素の 関 構造は ークのシステム と して構 連 (リンク)。 がネ ッ ト ② 子 どワ もの 基本的認知構造は,知 成され ている ,その構造 を知識の外 識の内部表現と してとらえ ,という 部表現形式と して解明す ること がで きと る 。 のノ ー ト リンクの 二つの特性 を有 し てど いる ,子 もが,新 しい知識を獲得 し 考え, 方に 基 づ き 再構築 した りする過程において,既存の考 た り 。子 どもにとって組み 換えて えを組み換 えていく ,状況的理解 を得 て いく。 過 程 を 図, 式教 化師 する こと でもの そ の際 は , 子ど つなが りを構築 いく 。 していく過程の促進的, 役① 割 を 担 う と な 学習 設こ 計 的に 機 能る ② 学習 ウェッ ビング法には 内容創 出的機能③ 学。 習こ 省察 的機 能 と いう 三 つて の子 機 れ ら の機 能 を 活 用 し 能 を位置 づけている ,できあか って くる どもの トピッ, ク を 連づ けて キ関 ー ワ ー ド の塊である。キー ワー ウェ, ッ ブ 図な は概念 大切 を凝縮 したもの である。子ども ド, はウェッビング を繰 り返す ことで,キーワー ド は 。 に概念を凝縮する 力が ついてくる , 複雑に絡み合 う状, 況社 が 日 々事 変実 化 し事 続け る 今質 日を 会 的 ・ 象 の本 限 られ た有 時効 間な の解 中決 で策 , を導き出すには,それ相応 理解 し 。ウェッビング法は ,社会的 の 方 法 が 必 要 で あ る ・事象の構造理解 と論理的な思考という二つ 事実 。新 しい の行為を同時進行的に可 能 な 方 法 で係 あの る構築」が , 匚 新 し い 関 もの を生み 出すことは。言語 力の育成が求め ら できるという, こい とく でら あ自 る由記述でも言語 化の 方法 れて い, る文 中章 でに表すのはなかなか 苦手な子 どもが のみ でそれ 。 は,シーケンシャル (連続)に論理 を 多い 。図 矛 盾 な く つ な げ て い く 必 要 が あ る か ら で あ る 式化の 方法に しても,視覚的に言語を補助するた 111− 事前 社会科授業観 | ・教材解釈 ・教材研究 ・系統性 授 業場 面domain 授 業 展 開 力 万レ 鷹 范 1 事後 朧 i ・・授業展開の分析 ・学習活動 言 ・発 『か指示 ・説即 ・評価 言 導入展開まとめ 言 助言 平 価 |・改善意欲 ・学習形態 ・学習方法腦ふ へ 資料提示・板書|・アク ション ・リサーチ 授業計画 力屡 申 圖嶋 卜 社会科授業 圖謳 詛 § 卜授 業省察 力 ・単元設計 ・授業設計 ・学習指導案 | 子ども観 デt子T:9 肖゜ 尚尚゛ 子ども理解力 図 1 初等社会科授 業力の構成要素 。ウェッビン 。そのような研究者とは一線 を圓した研 め に位, 置 づけ 言 語 ら 化と れ て 図 い 式化 るを 場合 統 合 が し 多い た 方法で,ラン している ,次の三点を述べておきたい。 究になるために グ法は 。 ダムアクセス( 非連続) で思考 を鍛 えていく有効 ①メタを問うものの見, 方 を 鍛 え る こ と 物 事 の 前 提 を 疑 うことか 手法である。 社会科 授 業 の基 本は 。 本 当 に こ れ で正 しいのか 。この考 えと な ー ドの開発 (2) 授 業評, 価不 ス タン 断 の ダ 再設計過程 である。初等社会科 ら始まる 。目の前の現 は 別 に ど う い う 考 え 方 が で き る の か 授 業は , 通 説 な ど に 対 峙 し て,自分の 。授 業力向 授 業力の構成, 要事 素 を 図 1 に場 示 し て事 いる 前 ・ 授 業 面 ・ 後のそれ ぞれ 状や既存の価値観 した判断を常に問 い続 ける こと (=批判的 リテ 上のため には , ①授 業計画力②授 業展開力③ 子ども理 下 ラシー)が必要である。 の 場面で 。 。 解 力④授 業省 察 力 と い う 四 つ の 力 が 必 要 で あ る ② 関 係 論 的 な も の の 見 方 を 鍛 え る こ と ,ウェッビング法 提案 しているのか 。そ ・教材が構想できただ けでは授 業は な ぜ 魅 力ある。 単元 ,すべ てのものが関係性で成 り立 っているか 現在 ,系統性の あるカ リキュラムに基 れ は できない ,子 どもの発言や行動に瞬時に対応で きる 。社会科授 業では ,子 どもは ,物事 を複 ら で あ る づい て ,子どものニーズや能 力,管歐 などを理解 しな 力 ,社会科に情熱 をもって授業が展開できる力 数の要素が相互に関連し合っている関係の東であ 。 るという見方や考 え方がで きなくて。 は ならない が ら など をバ ラ ス よ く 評価 がで 業 る授 を 創 る こ と ー ド の 開ン 発 を 模 索 し て い るき 。る そ授 の 際評 ,価 学ス 校タ 現ン 場 ③概念変化が起き ・ 事業 象 はそ の ま まで何も変わ ら 起 き て い る 現 象 ダ ,大学と ,子どもの見方 ・考え方が大 きく変わ る。 な い の に に寄与できる意 義ある研究にする た め に , 授 業 の お も し ろ ー ドの開発 を行 う この概念変化が起きることこそ 現場が協ー 働 でン 授 業 ダ組んでいる。 。概念変化によって,教師 も子どももお ニ グ評 的価 発ス 想タ でン 取 り ピア ・ラ さ で あ る していきた い。 (3) 授 業研究の基盤構 築に向けて ,社 もしろいと思える社会科授業に 初等社会科授 業研究の基盤構築のためには 【註】 会科授業を創 ることの楽 しさや子。 どほ もと 対ん 応 の 楽 し ど の 研 ェッ ビ ング報 法及 び力 詳形 細な 社関 会科 授業 践に つい て 拙 著 『情 読解 成に わ る 社実 会科 授 業 構 成 さを伝 え社 て い く こ と研 が究 必の 要 で あさ るを伝えて , 会 科 教育 難 し いる。 剛ウ, は 究 者 はことを難 論』風間書房,2009 年を参照 され たい。 難 し い しくして,簡単なことまで難 しく 112−
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