藻 類 学 第3回 生殖 本日の課題 ・藻類の生殖にはどんなものがあり、どのような違いが あるか。 ・生活環の代表的な3タイプ Algal reproductive types 藻類の増殖 藻類の増殖には無性生殖と有性生殖があり,ともに様々な様 式がある。 無性生殖 asexual reproduction は,配偶子の合体あるいは減 数分裂を伴わない。 無性生殖しか知られていない藻類もある。 前回の細胞の増殖とほとんど同じ 有性生殖 Sexual reproduction は, 集団の遺伝的多様性を増加させる働きがあり,環境変化に対 応することができる。 加えて多くの藻類は,有性生殖により増殖に不適な時期を乗 り越えられる強くて耐久性のある構造(接合子など)を作り 上げる。 無性生殖 Asexual reproduction は, 増殖に適当な環境では配偶子を形成したり,相補的相手を捜 すことなく増殖することができ,集団の急速な増加を可能に する。 無性生殖 Asexual reproduction 鞭毛をもつ細胞 (遊泳する細胞) 遊走子 Zoospores 鞭毛をもたない細胞 不動胞子 Aplanospores あるいは 自生胞子 Autospores という。 不動胞子:適当な条件下では,鞭毛を形成する能力を持つ藻 類が,鞭毛のない胞子を形成する場合に用いる。親の細胞壁 の中で2分裂,4分裂と分裂して形成される。 自生胞子:鞭毛を形成する能力をもたない藻類の胞子。 遊走子の形成 鞭毛を形成する能力を持つ藻類が,親の細胞壁の中で2分裂, 4分裂と分裂して形成され,親の細胞壁が破けて(裂けて) 遊走子が泳ぎだす。 細胞壁を持たないものでは、鞭毛が倍加して細胞が分裂して 形成される。 定数群体 coenobia の場合。 自生群体 autocolony の形成により無性生殖を行なう。 親群体の細胞ひとつひとつが分裂し,細胞内で群体数と同じ 細胞数となり,小型の娘群体(群体のミニチュア)を形成す る。 糸状体 filaments の場合 分断 fragmentation で無性生殖をおこなう。 糸状体が分断し,分断して短くなった糸状体それぞれが成長 (細胞分裂して糸状体が伸長)する。 その過程は高度にコントロールされている。 たる珪藻 Melosira 耐久性細胞 Akinetes アキネート 特殊化した細胞で,無性的に盛んに増殖していた細胞中に形成 される。通常,環境条件の劣化(冬になり水温が低下するな ど)に伴い形成される。 アキネート形成では,細胞の肥大,貯蔵物質の蓄積,細胞壁の 肥厚,細胞の新陳代謝の低下を伴う。 形成されたアキネートは増殖に不適な環境を乗り越える。 環境条件が好転し,増殖に適してきた場合,アキネートは発芽 する。発芽は,アキネートの細胞壁の一部が割れて,貯蔵物質 を使って栄養細胞を形成する。 有性生殖 Sexual reproduction 真核生物のみ 有性生殖には,配偶子形成,配偶子融合,接合子形成, 接合子発芽の過程すべてが含まれる。 ほとんどの分類群でみられるが,有性生殖が知られてい ない分類群もある。 有性生殖 Sexual reproduction 過程では配偶子の形成がみられる。 配偶子 gamates Isogamous reproduction 同形配偶子生殖(同形配偶子接合) 有性生殖過程(接合中)の配偶子に形態的な違いがない。 化学的な違いは認められる。なので+とーという分け方をする。 (行動的な違いが認められる場合もある。) 有性生殖 Sexual reproduction 過程では配偶子の形成がみられる。 配偶子 gamates Anisogamous reproduction 異形配偶子生殖(異形配偶子接合) 有性生殖過程(接合中)の配偶子に形態的な違いがある。 接合中の配偶子に大きさの違い(行動の違い)がある。 特に雄性配偶子(鞭毛をもつもたないにかかわらず),雌性配 偶子は大型で不動(卵)である場合, Oogamous reproduction 卵生殖(卵接合)という言い方をする。 群体性ボルボックス目の形態と有性生殖の進化.クラミドモ ナスのようにひとつの細胞だった生物が多細胞化して,ボル ボックスに進化した.この進化傾向は近年の分子データから も支持されている(Nozaki et al. 2000). 生活史(生活環)には大きく3タイプがある。 life history (life cycle) 基本的な違いは,減数分裂(meiosis)がいつみられるか。 減数分裂で生産される細胞のタイプはどのようなものか。 多細胞の時期があるかという違いになる。 Zygotic meiosis 接合子発芽時の減数分裂 Gametic meiosis 配偶子形成時の減数分裂 Sporic meiosis 胞子形成時の減数分裂 Zygotic meiosis 接合子発芽時の減数分裂 単相の配偶子の融合で接合子 復相の細胞は接合子だけである (復相)が形成される。接合 子は通常休眠し、接合子の発 + Gametes 芽時に減数分裂を行ない、通 常遊走子が形成され、これが - - N (haploid) 着底するなどし、連続した分 2N 裂を経て栄養細胞となる。 (diploid) + - Zygote クラミドモナスの場合は、遊 Vegetative phase 走細胞と栄養細胞は同じであ + る。 Gametic meiosis 配偶子形成時の減数分裂 復相の栄養細胞から単相の配偶子が形成される 単相の配偶子の融合で接 合子(復相)が形成され, Zygote 発芽体の連続した体細胞 分裂(mitoic division)に N (haploid) Egg Sperm より多細胞の復相栄養体 2N (diploid) が形成される。このタイ プは動物では一般的だが Vegetative phase 原生生物では少数で,藻 類では珪藻と褐藻の Fucalesの仲間で見られる。 Sporic meiosis 単相の胞子形成時の減数分裂 復相の胞子体(Sporophyte)から減数分裂により単相の胞 子(Spores)が形成される。胞子は多細胞の配偶体となる。 - - N Gametophyte (haploid) - Spores + Meiosis + Fertilization + Gametes 2N (diploid) 配偶体は配偶子 Zygote を形成する。配 偶子は融合し, 復相の胞子体を 形成する。 胞子体(復相) Sporophyte と配偶体(単 相)の世代交代 を行なう。 海産の緑藻アオサ Ulva は,生活史の中で同形の配偶体 と胞子体の2世代交代をおこなう。 同形の胞子体と配偶体なので、同形世代交代 (isomorphic alternation of generations)という。 + Gametophyte Gametes - N (haploid) - Meiosis - Fertilization + Spores + 2N (dipl oid) 多くの藻類は配偶体と胞子 Zygote 体で形態が異なる異形世代 交代 (heteromorphic alternation of generations)という。 Sporophyte 配偶体と胞子体それぞれで 生活できるため、それぞれ に異なる属名がつけられて いる藻類も多い。
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