[成果情報名]三重県の中山間地にある水稲で水田全体が不稔となった原因はクモヘリカメムシ による加害である [要約]県内の中山間地にある水稲で水田全体が不稔となった現象はクモヘリカメムシの加 害が原因である。不稔籾は胚乳の発育が停止し、鉤合部に口針鞘が認められる特徴がある。 高密度のクモヘリカメムシが登熟期初期に籾を加害すると不稔籾率が高くなる。 [キーワード]クモヘリカメムシ、水稲、不稔 [担当]三重県農業研究所 農産物安全安心研究課 [分類]普及 -------------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい] 2012、2013 年に三重県内の中山間地の水田で不稔籾の発生が多かった。特に不稔の 発生が多い場合は、収量が大幅に低下している。農薬を使用しない農法の水田では水 田全体が不稔となり、収穫が皆無となる事例も認められた。当該水田ではクモヘリカ メムシが多発しており、この不稔籾発生がクモヘリカメムシによるものかどうか明ら かにするために、 再現試験を行い、不稔の原因を明らかにする。 [成果の内容・特徴] 1.不稔発生が多かった水田から採集した籾は、鉤合部に口針鞘が認められ、胚乳の発育 が停止している籾が多かった(図 1)。 2.不稔となった水稲は、不稔籾率が高いほど口針鞘のある籾の割合が高い(図 2) 3.クモヘリカメムシの放虫試験で再現した不稔籾の特徴は、生産現場で発生した不稔籾 の特徴と一致する。また、登熟初期にクモヘリカメムシが多発して籾を加害されると ことで不稔となる(図 3)。 4.数年継続して全体が不稔となっている現地水田において、クモヘリカメムシの加害を 防虫ネットで物理的に回避すると不稔の発生が抑制された(図 4)。 5.以上のことから、県内の中山間地で水田全体が不稔となった現象は、多発したクモヘ リカメムシによる登熟期初期の加害が原因である。 [成果の活用面・留意点] 1.出穂期が周囲の水田よりも遅い水田では、クモヘリカメムシが集中しやすいため、不 稔発生リスクが高い。 2.クモヘリカメムシは登熟期初期だけでなく後期にも加害し、その場合は斑点米を発生 させる。 3.不稔を抑制するためには登熟期初期の加害を抑制する必要がある。 100 不稔籾率(%) 80 口針鞘 口針鞘 60 40 20 rs=0.660 相関係数 rs=0.660 0 0 20 40 60 80 100 口針鞘があった籾の割合(%) 図 2.2013 年に県内で不稔となった水稲におけ る不稔籾率と口針鞘のあった籾の割合 図 1.現地水田から採集された籾の 口 針鞘(上)と発育が停止した胚乳(下) 1)ス ピア マンの 順位 相関係 数の有 意性検 定に おいて 有意性 あ り(p <0.01) 2)県 内 6 地点か ら採集 され た 15 サ ンプル を供試 3)穂 を酸 性フク シン で染色 後、籾 ごとに 口針 鞘の有 無、胚 乳 の状態 (不稔 か正常 か)を調 査 35 35 25 30 20 不稔籾率(%) 不稔籾率(%) 30 15 10 5 p<0.01 25 20 15 10 5 0 4頭 12頭 4頭 12頭 4頭 12頭 0頭 出穂期 乳熟期 糊熟期 無放 虫 図 3.放虫試験における各放虫区の不稔籾 率 1)品 種:み えのゆ め 出 穂:8 月 21 日 1/2000a のワ グ ネルポ ットで 栽培 2)出 穂前 にポッ トごと に目合 0.4 ㎜ の防虫 ネット で被 覆 し、出穂 期放虫 区、乳熟期 放虫 区、糊熟 期放虫 区、 無 放虫区 を設定 した。 放虫数は 4 頭 、12 頭 とし、 放 虫 5 日後 に供試 虫を除 去した 3)収 穫後 に各 区 2 穂を サンプ リン グ。酸 性フク シンで 染色し、籾ごとに口針鞘の有無、胚乳の状態(不稔 か 正常か )を調 査 4)不 稔籾 率=( 不稔籾 数/全 籾数 )×100(% ) 0 無被覆 被覆 図 4.現地試験における被覆の有無別不 稔籾率 1)Fisher の 正 確 確率検 定にお いて 有意差 あり ( p< 0.01) 2)品 種: ヒノヒ カリ 出穂: 8 月 15 日 薬 剤防 除 なし 3)出 穂前 から収 穫まで 株ごと に目合 0.4 ㎜の 防虫 ネ ットで 被覆し た被覆 区と、無 被覆区 を設け た 4)収 穫後 に各 区 1 穂を サンプ リン グ。酸性フ クシ ンで染色し、籾ごとに口針鞘の有無、胚乳の状 態 (不稔 か正常 か)を 調査 不 稔籾率 =(不 稔籾数 /全籾数 )×100(% ) [その他] 研究課題名:食の安全・安心確保対策病害虫防除推進事業 予算区分:執行委任 研究期間:2014 研究担当者:農産物安全安心研究課 大仲 桂太、西野 実 発表論文等:第 97 回関西病虫害研究会奈良大会で口頭発表予定 (大仲 桂太)
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