専 】選択科目 - 大阪大学理学部化学科

大阪大学大学院理学研究科博士前期課程
高分子科学専攻
平成21年度入学試験問題
専門選択科目
③高分子科学
④生物化学
(15:20∼16:20)
(表紙を含めて9ページ)
注意事項
(1)すべての解答用紙の右上の欄外に受験番号のみを記入すること。
(2)2科目のうち1科目を選択して解答すること。
(3)問題ごとに別々の解答用紙を用いること。
1
③高分子科学 (40点)
1.スチレン(Ml)とメチルメタクリレート(M2)との共重合を、3種の開始
剤系:(イ)四塩化スズ(共開始剤:H20)、(ロ)刀−プチルリチウム、(ノ\)過
酸化ベンゾイルにより行った。以下の問(1)∼(4)に答えよ。
(1)(イ)∼(ハ)の各開始剤系により進行する重合の様式を示せ。
(2)それぞれの共重合の組成曲線を、図1の曲線a∼eの中から選び、その選
択理由を説明せよ。各モノマーの匂,e値は、スチレン(Q=1.00,e=−0.80)、
メチルメタクリレート(Q=0.74,e=0.40)である。
−さ
︵相貌上へ聖和扁Ql言eせせ咄刷北
図1
0
0.5
1.0
コモノマー中のMlの割合(モル分率)
(3)(ロ)の開始剤系で得られるポリマーの末端にヒドロキシ基を導入したい。
どのような反応を行ったらよいかを示せ。
(4)(ハ)を用いた重合系において、メチルメタクリレートの代わりに(i)ブタ
ジェン(Q=2・39,e=−1・05)あるいは(ii)酢酸ビニル(Q=0.026,e=
−0.22)を用いてスチレンと共重合を行った場合、共重合組成曲線はそれぞ
れどのようになるか。図1のような模式図を用いて示し、その理由を説明
せよ。
2
2.以下のポリマーを生成するための反応式(1)∼(7)の空欄A∼Gに出発物質、
Hには前駆体ポリマー、Ⅰには開始剤をそれぞれ構造式で示し、a,bには重
合の様式を語句で示せ。
†匝錘0両
(2)
⊂=
(3)
⊂≡コ
空目て汁 ̄
アニオン開環重合
(句
⊂三二]
(5)
⊂=
異性化を伴うカチオン重合
てプH緋
カチオン
開幕重合
‘6)⊂=]
⊂≡]
加水分解 枝分かれのない
ポリエチレンイミン
[十cH2−CH2−NHt]
グループ移動重合
(7)
メチル
メタクリレート
(⊂=]/触媒)
3
を適切に埋めよ。
3.以下の文の空欄[二三]から
図1は、二つの原子MとNでⅩ線が散乱される様子を示している。MとNはベクト
ルデだけ離れている。入射方向の単位ベクトルをも、散乱方向の単位ベクトルを言と
すると、PNの長さは[コ、MQの長さは[口と表すことができる。従って、Nで散
乱されるⅩ線の光路は、Mで散乱されるⅩ線の光野に比べて[=]だけ短い。
図2は、Z軸に沿って繰り返し周期力で同じ種類の原子からなる一次元格子である。
原子A。の座標は、(萌,端,Z。)である。Ⅹ線はy軸に沿って各原子に入射し、角∂と¢
で定まる方向へ散乱される。このとき入射方向の単位ベクトルもの方、y、Z成分は
(⊂口,[]口,ロコ)、散乱方向の単位ベクトル言の平分は’(sinOcos¢,SinOsinQ,
COSO)である。一つ隣の原子Alで散乱されるⅩ線の光路は、原子A。で散乱されるⅩ線
の光路よりも[=]だけ短い。従って、繰り返し周期銅がⅩ線の波長人との間に
[互] 戯=0,1,2,3,…
の条件を満たすとき、原子Aoと原子Alで散乱されるⅩ線は強めあう。
一方、月個隣の原子A。で散乱されるⅩ線の光路は、原子A。で散乱されるⅩ線の光路
よりも[二=]だけ短い。従って、[互]の条件が満たされると、原子A。と全ての原子
祈−隠
し〃
毎 An 軋 A巧 も AI A。恥 も
十・⋮⋮・‡dTIATI・AUT−AT
との間でⅩ線の光路差は[=]の整数倍となるので、争原子で散乱されるⅩ線は干渉
の結果強め合う。戯=0の条件ではβ=[亘コを満たす全ての方向にⅩ線が散乱さ
れ、これを[工]線とよぶ。また、戯=1の条件で生じる散乱Ⅹ線を
線とよぶ。
図1
図2
4
4.次の文章を読み、以下の問(1)∼(5)に答えよ。
重合度がクの高分子鎖靭本と溶媒分子」鴨個からなる高分子溶液を考える。この
溶液中で、各モノマー単位(黒丸)と溶媒分子(白丸)が同じ体積で図1に示すよう
に格子上に配置していると仮定して、高分子溶液の混合エントロピーA鳥血と混合エ
ンタルピーA昂nkを定式化すると、式(Dと式(ii)が得られる。
ASmix=−klNsln(1−¢p)+N,lnQ,]
A打mix三女Ws少。
(ii)
ここで、点はボルツマン定数、rは絶対温度、¢轟ま高分子の体積分率である。が高
分子・溶媒間の相互作用を表すパラメーターであり、毎やクには依存しないとする。
(1) 混合GibbsエネルギーAGnixを、A嵐ixとALtnixを用いて表せ。
(2) 高分子の体積分率¢pを、蝿、瑞、クを用いて表せ。
(3)溶液中に存在する全ての溶媒分子と全てのモノマー単位の合計をⅣとする。混
合エントロピーASkixと混合GibbsエネルギーAG血を、凡と鴨を用いずに凡
¢p、クの関数として表せ。
(4)溶液の温度、体積、および高分子の体積分率を一定に保ちながら、高分子の重
合度を高くしていくと、AG血はどのように変化するかを述べよ。 ただし、
0≦彿≦1より、1m(1−ゐ)とln射ま負であることに注意せよ。
(5)問(4)の結果に基づき、高分子の溶解性の重合度依存性について、25字程度で述
べよ。
○ 雷 ○
○ l ○
○
l ○ ○
○
○
○
○
○
○ ○ 。.
○ ○ ○
○
l ○ ○
.
● ○ 雷
○ ○ l ○
○ ○ ● ○
○ ○ l
○ ○ ■○ ○
−
■
一
− ▲
▼ ▼
▼
図1
5
④ 生物化学(40点)
1・卵白中から.リゾチームを単離・精製し、その構造を調べたいと考えた。リゾチー
ムを単離・精製するための主な実験手順は(i)−(Ⅴ)であった。この時、以下の問
(1)“(5)に答えよ。
(i)ガーゼでこした卵白に2倍量の脱イオン水を加えて撹拝した後、20,000×gで15
分間遠心分離し、上清を集める。
(ii)(i)で得られた溶液に塩酸を加えpHを6・0に合わせる。20,000×gで15分間遠
心分離し、上清を集める。
(iii)、イオン交換カラムを使ってリゾチーム以外のいくつかの成分を除去する。
(iv)ゲルろ過により純度の高いリゾチームを得る。
(y)試料に塩化ナトリウムを加え、リゾチームの結晶を得る。
卵白中の主なタンパク質を下の表に示す。
l
タ ンパ ク 痺
全 タ ン パ ク 質 に 対 す る 割 合 (%)
等電点
分子畳
オ ボ アル ブ ミン
54
4.
7
45 ,
00 0
コ ン ア ル ブ ミン
13
6.
0
77 ,
0 00
オ ポ ム コイ ド
11
4.
1
28 ,
000
リゾチ ー ム
3.
5
10 .
7
14 ,
300
オ ボ グ ロブ リン G 2
4 .
0
5.
5
49,
000
オ ボ グ ロブ リン G 3
4 .
0
5.
8
49,
000
オポムチ ′
1.
5
4 .
5“5.
0
0.
23 “ 8.
3 × 10 6
(1)ステップ(ii)において、リゾチームがどのような原理に基づいてその他の成
分と分離できるかについて書け。
(2)ステップ(iii)において、リゾチームを精製するには陰イオン交換樹脂か陽イ
オン交換樹脂のどちらを利用すれば良いか。その理由も合わせて書け。
(3)ステップ(iv)において、リゾチームがどのような原理に基づいてその他の成
分と分離できるかについて書け。
6
(4)得られたリゾチーム試料の純度を調べるために様々な手法が使われる。以下の
実験(a)“(d)を行うことでどのようなことがわかるか。それぞれの実験につい
て、その原理と得られる情報を書け。
(a)sDS−ポリアクリルアミド電気泳動(SDS一弘GE)
(b)Native−PAGE
(C)マトリックス支援レーザー脱離イオン化時間飛行型質量分析(MALDITOF−MS)
(d)溶菌活性
(5)得られたリゾチーム試料の構造を調べるための以下の物理化学的測定法(a)
“(C)について、それぞれの測定法の原理とその実験から得られる情報を書け。
(a)赤外分光
(b)動的光散乱
(C)超遠心分析
2・天然に存在するタンパク質はその大部分が20種類のアミノ酸から構成されてい
る。その中でグリシン以外のアミノ酸は光学活性で光学異性体が存在するが、地球上
に存在するタンパク質はほとんどすべてエアミノ酸から構成されている。以下の問
(1)“(4)に答えよ。
(1)ェーアミノ酸の立体構造を示せ。・側鎖はR−とする。
(2)側鎖に不斉原子を持っアミノ酸はなにか。その日本語名と3文字表記を書け。
(3)天然に存在するタンパク質エーAに対してそのエナンチオマー∂−Aを人工的に合
成した。L−AとD−Aについて、以下の実験(a)“(e)を行った時、その結果はど
のようになるか0変わらない場合には「同じ」とし、違う場合にはどのように違って
くるかをその理由とともに書け。
(a)ゲルろ過、(b)sDS一弘GE、(C’)質盈分析、(d)円二色性、(e)NMR
(4)か−Aの立体構造とエーAの立体構造を比較した時、どのような違いが見られるか。
Ramachandranプロット、二次構造、三次構造という語句を用いて、その違いを述べよ。
7
3・以下の文章中の空欄ロコから
を埋めよ。また、′[亘]から[二亘コには、
構造式を示せ。
生体膜の主要成分はロコである。ロコの一種であるフオスフアチジルコリンは、
グリセロール3−リン酸([互])に二つの脂肪酸がェステル結合し、さらに、コリン
がリン酸とエステル結合した構造を持っている。[二王]の脂肪酸部分は[二互]性だが、
リン酸エステル部分は[互]性である。[ココは、水中において⊂□性部分を自発的
に集合させることで、平面状の⊂ヨコを作る。一方で、脂肪酸単体は水中で球状の
亡妻二]を形成する。この違いは、⊂王]の疎水性部分の体積が大きく、球状構造をと
りにくいことが原因である。
酵母の細胞抽出液にグルコースを加えると、アルコールが作られる場合がある。こ
の現象は、細胞抽出液に区]と発酵を担う一群の酵素が含まれることが原因である。
ロコでは約十種類の酵素により、グルコースが[:互]に変換され、さらに[二亘コと
⊂亘コが作られる。さらに、[]は、嫌気的な環境における発酵によりアルコール
に変換される。
\
タンパク質を構成する20種類のアミノ酸残基の中で、化学的な反応性が特に高い
である。たとえば、
は水銀イオンに強く結合する。また、二つの
残基が[二二垂コ結合を作り分子内で架橋する場合もある。
から⊂亘コ結
合が作られる反応は[二重コ反応であり、二つの電子が放出される。
[至コ回路では、アセチルCoAのアセチル基が二分子のC02に酸化され、三分子
、一分子の[:室享コと一分子のGTPが作られる。[∃吏]回路の最初の反応ス
テップでは、アコニターゼによりクエン酸がイソクエン酸に変換される。この反応の
PH7における標準自由エネルギー変化(AGOT)は1.5kcalmo1−1である。従って、この
反応の25℃における平衡定数(g=【イソクエン酸】/【クエン酸1)は、1(屈と計算さ
れるoただし、気体定数Rは2・Ocalmo1−1K−1、1nX=2・3logl。Xとして計算を行った。
アドレナリンなどの多くのシグナル分子に対して、細胞は次のように応答する。ア
ドレナリンは、細胞
膜に存在するアドレナリンβ[二重コに結合する。アドレナリンβ
構造を有し、アドレナリンが結合することで細胞膜
の内側の構造を変化させ、
と呼ばれるタンパク質を活性化する。従って、アド
⊂垂コは七回膜質 通型の
レナリンβ[:亘コは、
共役型[コ亘コとも呼ばれる。活性化した
はアデ
ニル酸シクラーセを活性化させることで、細胞内における
の濃度を上昇させ
8
は第二メッセンジャーと呼ばれる。第二メッセンジャーとして、他に
[垂コやイノシトール三リン酸などが知られている。
核酸は、環状構造を持つリボース
が、⊂垂]位と
([亘])あるいはデオキシリボース(⊂亘])
位の水酸基でリン酸ジェステルにより架橋された基本構造を持
っている。さらに、
位の炭素にさまざまな塩基が結合している。
4.次の語句を100字程度で説明せよ
(1)セントラルドグマ
(2)岡崎フラグメント
(3)RNAのスプライシング
9