僕flI.)

(様式 2)女性研究者支援研究費
5日
平成 27年 4 月 1
琉球大学
学長大城肇殿
所属部局・職法文学部国際言語文化学科
ヨーロッパ文化専攻・講師
氏
名
野間砂理
僕f
l
I
.
)
\f'~J
平成 26年度研究プロジェクト支援事業(女性研究者支援研究費)
研究実績報告書
このことについて、以下のとおり報告いたします。
①研究課題
過去分調形複合形容詞の語形成過程における統語論的 ・意味論的制約の考察
(提出された申請書に記載した概要を転載してください。)
本研究の目的は、過去分調と 一語化する付加詞の意味を統語・意味論的に特定すること
である。 まず、現在不足しているデータを web・コーパス・辞書等から収集すると同時
に(③物品費)、それらのデータが音韻・形態・統語・意味 ・語用論における先行研究の記
②研究の概要
述に合致するかどうかを検討する(③その他:書籍代、旅費:資料収集と学会参加)。次に、
当該語類が文中に現れる状態受動文とその派生元である能動文を作り(③謝金等:データ
のインフォーマント調査)、それらの構文における項構造の差異が過去分詞形複合形容調
の生成にどのような影響を与えているかを考察する。本研究で得られた成果は、国内外
の学会における発表ならびに学会誌への論文投稿により公表する(③旅費:学会発表)。
@研究成果の概要
(当該研究支援経費で得られた研究成果等を記載してください。)
本研究では、 ドイツ語における過去分詞形複合形容詞の語形成過程を分析する上で基礎となる、①過去分詞
がコピュラ動詞と共起する 2つの構文(状態受動文とコピュラ構文)の差異と共通点ならびに先行研究にお
ける問題点と今後の分析の方向性を明確にした上で、②過去分詞形複合形容調の音韻・形態・統語・意味・
e
u
t
s
c
h
eZ
u
s
t
a
n
d
s
p
a
s
s
i
vund
語用論における包括的特徴を調査した。①は全国誌「エネルゲ、イアJに
” Dasd
d
i
eK
o
p
u
l
a
K
o
n
s
t
r
u
k
t
i
o
n
.
”を、②は日本独文学会中四国支部学会誌「ドイツ文学論集」に”E
i
g
e
n
s
c
h
a
f
t
e
n
d
e
rP
a
r
t
i
z
i
pI
IA
d
j
e
k
t
i
v
k
o
m
p
o
s
i
t
a.
”を投稿中であり、その研究成果を公表予定である。
1/5
④研究成果の公表、あるいはその準備状況
国際論文
1
.
Noma,S
a
r
i(
2
0
1
5
)
.
“Z
u
s
t
a
n
d
s
p
a
s
s
i
vu
n
dd
i
eB
e
d
e
u
t
u
n
gp
a
r
t
i
z
i
p
i
a
l
e
rA
d
j
e
k
t
i
v
k
o
m
p
o
s
i
t
a
.”I
n
:Lingu
おt
i
s
c
h
e
B
e
r
i
c
h
t
e
.(掲載決定済)
国内論文
2
.
Noma,S
a
r
i(
2
0
1
5
)
.
“E
i
g
e
n
s
c
a
h
f
t
e
nd
e
rP
a
r
t
i
z
i
pI
I
A
d
j
e
k
t
i
v
k
o
m
p
o
s
t
i
a
.
”I
n
:Energeia4
1
.(現在投
稿中、査読結果待ち)
3
.
Noma,S
a
r
i(
2
0
1
5
)
.
“Dasd
e
u
t
s
c
h
eZ
u
s
t
a
n
d
s
p
a
s
s
i
vundd
i
eK
o
p
u
l
a
K
o
n
s
t
r
u
k
t
i
o
n
.
”In:DOITSU
BUNGAKU
RONSHUN
r
.4
8
.(現在投稿中、査読結果待ち)
国際発表
圏内発表
(学会発表、論文発表などがあれば、そのリスト:論文(発表)タイトル、発表学会名(学会誌名)、発表年)
または(今後の学会発表、論文発表の予定、ならびにその準備状況)を記載してください。
⑤科学研究費等の申請に向けた準備状況
(当該研究計画に関連して申請した科学研究費等、あるいはその準備状況を記載してください。)
1
.H27年度科学研究費助成事業科研費・若手(B)に応募したが不採択だ、ったので、 H28年度もアドバイザー
制度を利用して応募する予定である。
2.H27年度琉球大学若手・女性・外国人研究者支援研究費への応募書類を現在作成中。
⑥今後の研究の展開、展望
(得られた研究成果を基に、今後どのように研究を展開、発展させていくかl
こついて記載してください。)
I
)過去分詞の形容詞性と動詞性の度合いを明らかにすること、(I
I
)過去分調の統語構造
今年度の研究目的は、 (
を解明すること、それを基に(I
I
I
)過去分調と一語化する付加詞の意味を意味論的に特定することである。過
2/5
去分調の素性と構造(
I
,1
1
)については、 1990年代初めから現在に至るまで統語・意味・語用論の分野で研究さ
れているが、未だに決定的な分析案が提示されていない。従って、「受動文における過去分詞」を出発点とす
る従来の統語・意味論的な見方を採用せず、過去分調の基となる動調が用いられる能動文から動作・状態受
動文を経て、受動文の項あるいは付加詞と結合し、過去分詞形複合形容詞[X+過去分調]Adjが形成されるまで
の語形成過程に着目し(I
I
I
)、形態論の視点から過去分調の素性と構造を分析する糸口を探る。本研究の成果
により、これまでドイツ語学において等閑視されてきた形態領域の重要性を示すこともまた目的である。
ドイツ語における複合形容調、中でも複合語の右側の要素が過去分詞で形成される過去分調形複合形容詞
は、これまでいくつかの言語レベルで多角的に扱われている。当該語類が文学テクストに与える効果の考察
伊a
u
l
:1
9
5
9
,VanDam:1
9
6
3
,K
i
i
h
n
h
o
l
d
:1
9
7
8)、音調分析(T
o
d
e
n
-h
a
g
e
n
:1
9
7
4
,P
l
i
m
p
e
l
M
a
d
e
re
ta
l
.
:1
9
9
2
)、形態素お
よび意味分類(Pilmpel-Madere
ta
l
.
:1
9
9
2
,F
l
e
i
s
c
h
e
r
/
B
a
r
z
:2
0
0
7
,H白 血g
/
S
c
h
l
i
l
c
k
e
r
:2010
)、統語的分析(W
i
l
s
s
:1
9
8
6
,
F
u
h
r
h
o
p
: 2007
,野間: 2
0
1
1
,2013)、また近年では形式意味論と語用論に基づくアプローチもある (
L
e
n
z
:1
9
9
4
,
R
a
p
p
:1
9
9
7
,Maienbom:2
0
0
7
/
2
0
0
9
)。これらの先行研究を過去分詞形複合形容詞の観点からまとめた研究成果
は、研究業績(2
.EigenscahftenderP
a
r
t
i
z
i
pI
IAdjektivkompostia.
)であり、過去分調が形容調化した際のコ
圃
ヒ。ュラ構文については、研究業績(3
.DasdeutscheZustandspassivundd
i
eKopula-Konstruktion.)で、先
行研究の問題点と今後の分析案を提示した。申請者は目下、過去分調形複合形容詞の特徴をまとめた論文を
現代ドイツ語学では最高レベルの国際誌に投稿中であり(研究業績(
1)、査読後、掲載が決まり現在は加筆修正
中)、本研究ではこれらの研究をさらに深め、過去分詞形複合形容詞の語形成過程における統語的・意味論的
制約の分析に従事するものである。
本研究の学術上の目的は、(町過去分調形複合形容詞の右側の要素である過去分調の形容調性と動詞性を
明らかにすること、(I
I
)過去分詞の統語構造を明らかにすること、それを基に0
町過去分調と一語化する付
加詞の意味を語葉概念構造により意味論的に特定することで、当該語類における語形成過程の統一的説明を
目指す。また、この研究成果は外国語教授法の分野にも十分貢献し得る。ドイツ語では、動詞で表現された
出来事を状態として特徴付ける状態受動文と過去分詞を形容詞として用いるコピュラ構文が同じ型[s
e
i
n
(
b
e
動調)+過去分調]で表され、意味も酷似しているため、過去分詞がどちらの用法で用いられているのかを判
断するのは、ドイツ語上級者と母語話者にとっても難しい。従って、(I
I
I
I
)の課題を学術的に追究し、ドイツ
語学習者がただ単に単語を語葉的なものとして暗記するのではなく、語と文構造の意味的な関連性を認識す
ることで、辞書を用いることなく語の意味を理解できるような学習法、またそれとは逆に、文から複合語を
任意に造り出す過程を見い出せるような学習法の提案を目指したい。以下、各論の説明である。
(町意味論と語用論における過去分詞の素性(形容詞性と動調性)に関する先行研究では、形容調のみが持つ特
徴(複合語・比較級・最上級・コピュラ構文の形成等)を過去分調にも適用し過去分調の形容詞性を判断する
手法が主である。例えば、、過去分詞 g
e
s
c
h
r
i
e
b
e
n
(書かれた)の場合、複合語(h
a
n
d
g
e
s
c
h
r
i
e
b
e
n
/
手書きの)は許容さ
n
d
g
e
s
c
h
r
i
e
b
e
n
/
手書きではなし、)に対する認容度には揺れがある。また、比
れるが、否定接頭辞 un−の付加(u凶 a
較級(g回 c
h
r
i
e
b
e
n
e
r
)と最上級(amg
e
s
c
h
r
i
e
b
s
t
e
n
)の形成は許容されないが、この語
は形容調であると見倣されている。この分析手法の問題点は、形容詞特有の性質の一部のみが過去分調に適
用できる場合の形容調性を説得的に証明できないこと、また一つ一つの過去分調に形容詞の性質を適用する
分析手法では、過去分調の統一的説明には至らないことにある。従って本研究では、先行研究のように過去
3/5
分調の素性を形容調と動詞のどちらか一方に定めず、過去分詞と基となる動詞との意味的な関連性を基に、
まずはこれらの語類が能動文(司から動作・状態受動文(
b
)を経て複合形容詞化(c
)するまでの造=嗣晶程を考察す
る。次に、(ゆ)の項のみが過去分詞と結合する動詞的な語類(
1)、(ゆ)の文中に現れる様々な意味を持つ付加
詞が過去分調と結合するにも関わらず、(c
)
が
(a
,
b
)と統語的・意味的な平行性を保っている形容詞的語類(2
、
)
(ゆ)と(c
)の意味が合致しない語葉的な語類(3)
の 3タイプに分類し、形態論の観点から過去分調の動詞性と形
容調性の度合いを理論的・実証的に分析する。
(司能動文
(
b
)動化状態受動文
(
c
)形容調化
1
.動 詞 的
Erb
e
z
i
e
h
td
a
sThemaa
u
fd
a
sF
a
c
h
.
DasThemaw
i
r
d
/
i
s
ta
u
fd
a
sF
a
c
hb
e
z
o
g
e
n
.
DasThemai
s
tf
a
c
h
b
e
z
o
g
e
n
.
2
.形容調的
E
rs
c
h
r
e
i
b
td
e
nB
e
r
i
c
h
tm
i
td
e
rH
a
n
d
.
DerB
e
r
i
c
h
tw
i
r
d
/
i
s
tm
i
td
e
rHandg
e
s
c
h
r
i
e
b
e
n
.
DerB
e
r
i
c
h
ti
s
th
a
n
d
g
e
s
c
h
r
i
e
b
e
n
3語葉的
??D
ぉ S
e
h
e
凶 e
hi
n
d
出 d
e
州 a
n
n
.
?
D
e
rMannw
i
耐 s
tbeimS
e
h
e
nb
e
h
i
n
d
飢
DerManni
s
ts
e
h
b
e
h
i
n
d
e
r
t
.
(町ドイツ語の過去分調は、(司語頭の ge−または(b)語末の −tの付与、あるいは(c
)語幹の母音交替の有無によ
l
a
u
f
e
n
/
g
e
l
a
u
f
e
n
(
a
)
,v
e
r
k
a
u
f
e
n
/
v
e
r
k
a
u
f
t
(
b
)
,v
e
r
l
i
e
r
e
n
/
v
e
r
l
o
r
e
n
(
c
)
,k
a
u
f
e
n
/
g
e
k
a
u
食(a
b
)
,
り 7 つの型が形成される (
r
e
n
n
e
n
/
g
e
r
a
n
n
t
(
a
b
c
)
,s
e
i
n
/
g
e
w
e
s
e
n
(
a
c
+過去形からの派生), v
e
r
l
a
u
f
e
n
/
v
e
r
l
a
u
f
e
n
(無変化))。先行研究では、不定形
[
別F]、定形[FINIT
]、分調[PARTIZIP]といった単純な素性によりいくつかのグループを提示するに留まってお
り、動詞の不定形からこの 7つの型が派生する過程についての統一的な分析案は提示されていない。そこで
本研究では、過去分調の統語構造においてどの要素(
g
e
,
− ーん語幹等)が主要部を担うのかを特定する。例えば、
動詞 kaufen(gekau
貨が過去分調)の場合、先行研究のように ge・とィに分調 [PARTIZIP]の素性を付与することで
ge−や −tを伴わない他の型の生成を除外するのではなく、原形形態素[GFM
]
や t分調形態素[TPM
]を加えること
で、動詞の不定形そのものの構造を細分化し、動調の不定形から上記 7つの型の過去分調が生成できるよう
な、統一的説明を目指す。
(
I
I
町申請者のこれまでの研究では、主に達成動調において動作述語 ACTを修飾する付加詞(様態や道具)が過
去分調と容易に一語化するのに対し、場所・原因・動作主などの意味は語用論的な支えがある場合に限り過
去分調と結合すると分析した(研究業績 3)。このように動調との意味的・統語的関連性を保持しつつ生成され
た過去分調形複合形容調は、コピュラ構文における形容詞の持つ永続的な性質とは異なり、動詞の出来事が
完了した結果、 ACTから BEにも結合する主題の一時的な質や価値を表すと考えられる。しかし、こうした
分析では、当該語類の形成に関わる付加調の意味を包括的に記述したレベルに留まっている。従って今後は、
一時的な質や評価といった感覚的な表現を用いるのではなく、形式意味論を援用し、統語構造と平行性を持
つ意味を明示的に分析することが課題である。
*上記について、概ね 4ページ程度にまとめてください。また、別途関連する資料類(論文別刷など)が
あれば添付してください。
4/5
⑦費目別収支決算表
/ / / /
合計
円
申請書に
記載した経費
旅費
物品費
5
6
0
,
0
0
0
円
3
0
,
0
0
0
謝金等
円
4
0
0
,
0
0
0
その他
円
3
0
,
0
0
0
円
1
0
0
,
0
0
0
の使用内訳
円
決定通知書に
記載された
3
9
2
,
0
0
0
円
円
1
8
0
,
0
0
0
3
2
,
0
0
0
円
3
0
,
0
0
0
円
1
5
0
,
0
0
0
支給額内訳
実支出額の
使用内訳
円
3
9
3
,
3
2
0
円
円
5
8
,
7
0
2
3
2
0
,
3
0
0
5/5
。
円
円
1
4
,
3
1
8