本物の知識とは? - 資格とっ太郎のメルマガ

本物の知識とは?
~並列合成抵抗を例に考えてみる~
著:資格とっ太郎
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はじめに
「本物の知識って、なるべく多くの公式を頭の中に入れておくことなんで
すよね?」
多分、僕の今までのメール講座やレポートを読んでくれている人であれば、
この問いに対して明確に“NO”をつきつけることはできると思いますが、
「じゃあ本物の知識って具体的になんなの?」
と、問われるとおそらくほとんどの人が悩むんじゃないかと思います。
「なんとなくこういうものなんだろうなぁ」みたいなイメージはあるにし
ても、具体的なものを問われるとなかなかすっと出てこない、という感じ
のまま留まっていて、実感として湧いてこないまま勉強を進めている人も
中にはいらっしゃると思います。
僕の中の“本物の知識”の定義としては、
「なぜ?という繰り返しの問いに対して誰もが理解できるレベルまで噛
み砕いて理解できていること。
」
というふうに勝手に定義していますが、このレポートではそういう抽象的
なままになっている“本物の知識”というものを、具体例を挙げてより現
実的なものとして理解してもらいたいと思います。
その中で、今回のレポートでは「並列の合成抵抗」を例に挙げて、
「これ
が本物の知識ですよー」っていうのを、なるべくわかりやすく解説してい
きたいと思いますので、最後までお付き合いいただければと思います。
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並列の合成抵抗を考える
僕が定義づけている“本物の知識”とは、
「なぜ?という繰り返しの問いに対して誰もが理解できるレベルまで噛
み砕いて理解できていること。
」
ということは先ほどもお伝えした通りですが、ではその定義を「並列合成
抵抗」を例に当てはめて考えてみたいと思います。
ほとんどのテキストでは、並列合成抵抗の求め方を数式として提示してい
ると思います。
そしてその求め方の数式の意味を理解できているのはごく一部で、おそら
くほとんどの人は「和分の積」という覚え方をしてるんじゃないかと思い
ます。
つまり「R0=R1・R2/(R1+R2)」(R0 が合成抵抗)という例のアレです。
ではなぜそのような式で並列の合成抵抗が求められるのでしょうか?
もちろんこの問いに対して、
元の式が「1/R0=1/R1+1/R2」だから・・・
という説明を始めたところで、じゃあその式になるのはなぜ?
という問いが続くだけです。
このように問いを続けていった時に、およそほとんどの人が腑に落ちるよ
うな説明ができて(そういう理解ができていて)初めてそれを“本物の知
識”と呼ぶことができます。
きっと、並列の合成抵抗の基本公式が「1/R0=1/R1+1/R2」だから・・・
という説明を受けて、
「なるほど!!」と納得できる人は少ないでしょう。
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「そういうもんなのかぁ」という理解のままで先に進んでしまうと思いま
す。
並列合成抵抗の問題1つだけなら、別に「そういうもんかぁ」と先に進ん
でしまっても大きな問題にはならないですし、
「和分の積」くらいは容易
に暗記できるレベルなので大した影響にはならないです。
しかし、電気の勉強を進めていくと、このように「なんでそうなるんだろ
う?」というような問題はごまんとあります。
その度に「そんなもんかぁ」と暗記で誤魔化していては、脳の容量が追い
つかないばかりか、そんな勉強楽しいですか?というのが僕の根本的な想
いでもあります。
ですので、今回の具体例から本物の知識を得るという“感覚”を掴んでも
らいたいと思います。
で、並列の合成抵抗を考える場合、なのですが、「なぜそうなるのか?」
というのを(いろいろな考え方はあるけど)僕が一番しっくりくる考え方
をここで紹介します。
まず、
「抵抗」とはなんなのか?を考えます。
これは言わずもがな「電流の“流れにくさ”を示す指標」みたいなもので
すよね?それが抵抗です。
で、この抵抗が“直列に”いくつか繋がった場合を考えると、それが単純
に足し算になるというのは容易にイメージできますよね?
ちょっと身近な例で考えると、高速道路の渋滞で分岐点のない一本道の A
地点、B 地点、C 地点でそれぞれ、10 分、20 分、30 分の渋滞が発生して
いたとしたら、
A 地点から C 地点までを通り抜けるのに、10 分+20 分+30 分の渋滞に巻き
込まれて合計で「60 分」も余計に時間がかかってしまう、みたいな感じ
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です。
だから抵抗も同じように、R1 と R2 というものが直列に(1 本道に)繋が
っていると、合成抵抗 R0 は R0=R1+R2 になるのです。
では、抵抗が並列になった場合はどのように考えればいいでしょうか?
これは、「抵抗」という“流れにくさ”という指標を一旦“流れやすさ”
という指標に変換することで容易に理解できます。
抵抗が並列になる、ということは「流れ道が増える」わけですから、抵抗
一本の時よりも、並列になって流れ道が増える分、それだけ全体の抵抗の
値は低くなるはずです(流れやすくなるはずです)。
合成して流れやすくなるのに、流れにくさの指標のままで考えるからやや
こしいのです。
ですから「抵抗」というものを一旦“流れやすさ”の指標に変換してあげ
ます。
どのようにして変換するか?
それは、抵抗を逆数にすることで簡単に変換できます。
つまり、抵抗 R という流れにくさを、1/R という逆数にすることで“流れ
やすさ”を表す指標に変えることができるのです。
実際に数字を当てはめてみればわかると思いますが、抵抗値が大きくなれ
ばなるほど R が大きくなるのは当たり前ですが
(抵抗値=R ですからね)
、
1/R はどんどん小さくなります。
逆に抵抗値が小さくなれば、1/R の値はどんどん大きくなります。
これは、
1/R が電流の流れやすさを表す
(流れやすいほど値が大きくなる)
指標として使える、ということです。
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ちなみにこの 1/R というのはコンダクタンスと呼ばれていて、G という記
号で表します。
ここでの説明もそれにならって、コンダクタンス G を使いたいと思います。
次の回路を見てください。
まあごく普通の抵抗が2つ並列に繋がっている回路ですね?
この回路には、R1 に流れる経路と R2 に流れる経路の2つの経路があるわ
けです。
ではそれぞれの経路の流れやすさをコンダクタンス G を使って表してみ
たいと思います。
R1 の経路のコンダクタンス=1/R1=G1
R2 の経路のコンダクタンス=1/R2=G2
はい、これで2つの経路の流れやすさが G1 と G2 というふうに表されまし
た。
“流れにくさ”を直列につないで足し合わせて合成できたように、
“流れ
やすさ”が並列になっていれば単純にそれぞれを足し合わせれば、
“合計
の流れやすさ”になる。
きっとこの説明で違和感は感じないと思います。
つまり、この回路の合計の“流れやすさ”G0 は、
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G0=G1+G2
になる、ということです。
G1 という流れやすさと、G2 という流れやすさを足せば、G0 という合計の
流れやすさ(合成コンダクタンスと言います)になります。
では次に、この回路の合計の流れやすさが求められたわけですから、一旦
“流れやすさ”に変換されたものを再び“流れにくさ”に戻したいと思い
ます。
G=1/R ですから、先ほどの式を R に戻すと、
1/R0=1/R1+1/R2
という、およそほとんどのテキストで示されている公式となって導くこと
ができました。
そしてこの式を R0= という形に直してあげれば、
おなじみの「和分の積」
として導けるわけです。
実は並列の合成抵抗がなぜそうなるのか?というのはオームの法則とキ
ルヒホッフの法則を使って、数式で証明することができるのですが(参考
書ではそれが主流ですが)ここではあえてその説明はせず、よりイメージ
しやすい考え方で説明しました。
ですが、この説明でおよそほとんどの人が(数学が苦手でも)当惑するこ
と無く理解できたのではないでしょうか?
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おわりに
どうでしょうか?
今回のレポートで “本物の知識”というのがどんなものなのかを感覚的
に理解できたのではないでしょうか。
繰り返しますが、
「なぜ?という繰り返しの問いに対して誰もが理解できるレベルまで噛
み砕いて理解できていること。
」
これが本物の知識です。
丁寧にわかりやすく説明することに重点を置いたので、ちょっと回りくど
く長い説明になってしまいましたが、その長い説明の中で何か気がついた
ことは無いでしょうか?
実は今回の説明は「ほとんどが文章」で、重要な数式は「2つ」しかあり
ませんでした。
これ結構大事なことなんですが、人間の頭って数式で何かを理解できるよ
うにはできてないんです。
数式なんてただの「記号」ですから、当たり前と言えば当たり前なんです
が、じゃあ何なら理解できるのか?というと、
「文章」です。
僕の ECM を購入された方ならわかると思いますが、ECM の本編ってほとん
どが「文章」です。
実は、数式というのもその裏側には「文章」があるんです。
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例えば、有名なオームの法則の「I=V/R」という数式。
これにも、
「電流 I の大きさは電圧 V に比例し、抵抗 R に反比例する」と
いう文章が隠されています。
あるいは、「抵抗に流れる電流 I と抵抗値 R をかければ、その抵抗にかか
る電圧 V になる」という文章にもなります。
そして、そういう「文章」だけが人の頭で理解できる情報であって、その
情報が数学的に扱いやすいように「数式」という記号で表されている。
このことを意識しながら勉強すると、学習効果がかなり上がります。
世間一般の電気の参考書は、数式で埋め尽くされたものばかりですが、こ
のことを意識しながら、
つまり、数式の裏の「文章」を意識しながら参考書と向き合うことで、普
通に数式を数式として読むだけよりも、数倍は理解が深まるんじゃないか
と思います。
そして何を隠そう、今回説明した「並列合成抵抗の例」も、僕が勝手に参
考書に書かれている数式から読み取った「文章」を、レポートとして書い
ているに過ぎません。
参考書にはいちいち「流れやすさを足し合わせる」みたいな文章は書かれ
ていません。
僕の知らないところでもしかしたらそれが書かれている参考書もあるか
もしれませんが、少なくとも僕が今まで見てきた中にはありませんでした。
そんな中でなぜ僕が今回説明したような理解に達することができたのか
と言うと、「単に数式から文章を読みとった」からです。
1/R0=1/R1+1/R2
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という数式から、それぞれの項の“意味”を読みとって“文章化”したに
過ぎません。
電気の世界では、文章に先だって数式が存在することはありません。
どんな数式も、その元となる考え方(文章)があるからこそ、数式として
表されているのです。
数式があれば、その背景には必ず「文章」という人間の頭で理解できる形
の“考え方”が存在します。
それを普段の勉強の中でどれだけ読みとることができるか?
それが、
「本物の知識」と「偽物の知識(暗記だけの知識)」を分かつ決定
的な原因だと僕は考えています。
実は『ECM』も、ほとんどの参考書で「数式」として説明されている電気
回路の理論を「文章」に変換して(文章に戻したという方が正しいですが)
、
僕のアレンジを加えて書き起こしただけのものです。
もしかすると今回のレポートを読んで、
「合成抵抗 1 つにそんなに時間をかけていたら、勉強が全然進まないんじ
ゃ・・・」
と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
ですがそれは違います。
「本質が理解できないまま勉強を進めて、それは身になるのか?」という
当たり前のことだけではなく、実は本質を理解しながら勉強を進めたほう
が、長い目で見ると圧倒的に効率が良いんです。
例えば今回の並列合成抵抗の例。
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僕の頭の中をわざわざ文章として他の人にも理解できるように書き起こ
したので、長々としたものになってしまいましたが、一言で書いてしまえ
ば、
「並列の合成抵抗は、流れやすさに変えて足すだけ」
の一文です。
そしてそれは「1/R0=1/R1+1/R2」という公式から“読みとっただけ”です。
この“読みとる”という作業は、慣れないうちは時間がかかるかもしれま
せんが、慣れてしまえばむしろ、その他大勢を出し抜くほどのスピードで
理解できて、しかもテキストを読み進めるスピードも落ちません。
例えば、何も意識せずにただテキストを読んでいる人が、テキストに書か
れている 100 の情報の内、20 しか理解できずに、一通り読み終えたとし
ましょう。
そして一通り読み終えるのに2週間かかったとします。
しかし、
“読みとる”という作業を意識しながら勉強をすれば、100 の情
報の内、60 を理解して、2週間で読み終える。
ということが可能になります。
テキストを一通り読み終える時間は同じで、理解できた情報が3倍になっ
ているわけですから、学習効果は単純に3倍になります。
これが“読みとる”という行為がもたらす結果です。
ぜひ普段から、テキストや教科書などの参考書を読む時には、この事(背
景の文章の存在)を意識しながら勉強を進めてもらいたいと思います。
それができるときっと、数学が苦手でも僕みたいに電気を理解できるし、
電気の勉強が楽しくなると思います。
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さらに言うと、世の中から求められる「一目置かれる存在」になることに
も繋がります。
いつの時代にも「本質が理解できる人」というのは、それだけで尊重する
に値しますし、技術者の世界ではそういう人が求められています。
技術者の僕が言うのだから間違いありません。
現在では昔よりも遥かに電気技術者の数が求められています。そして、今
後もその数は増え続けることが予測されています。
それも「ただ資格を持った人」ではなく、本質的な知識を持った電気技術
者です。
ただでさえ団塊の世代の引退で「電気主任技術者」は数が減っているので
すが、電気技術者とは別に電気設備の保守点検をする「電気主任技術者」
だけを指すわけではありません。
広く、電気の知識が必要な技術者という意味です。
ちょっとだけ身の回りを見渡してもらえれば、この「電気技術者の数」が
求められていることの意味がわかると思いますが、
一昔前までは一般市民には無縁だった「電気自動車」が今では普通に販売
されています。
そして電気自動車でなくても、近年開発されている自動車には 100 個以上
の大小さまざまなモーターが組み込まれています。
もちろん、これらを開発するには「電気の知識を持った技術者」の存在な
くして作ることはできません。
このように世の中のさまざまなものが電気に“置き換わっている”という
のを考えるだけでも、いかに電気の知識を持った人が必要とされているか
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が実感として理解できると思います。
というわけで、思いのほか本文よりも「おわりに」のまとめ部分が長くな
ってしまいそうなのでこの辺にしておきます。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
―資格とっ太郎―
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