高速鉄道システムの アーキテクチャ分析 から何が見えてくるのか

2015年10月29日 商工会館公開セミナー
高速鉄道システムの
アーキテクチャ分析
から何が見えてくるのか
東北大学大学院経済学研究科
柴田友厚 [email protected]
モジュラー型とインテグラル型
デザイン・ルールを策定
Modular Architecture
モジュラー(組み合わせ)型
CPU
演算処理
記憶
ハードディスク
入力
キーボード、マウス
表示
モニタ
(例)パソコン
デザイン・ルール策定できない
Integral Architecture
インテグラル)(すり合わせ)型
走行安定性
サスペンション
乗り心地
ボディ
燃費
エンジン
(例)乗用車
この分析枠組みが、高速鉄道システムでもあてはまる。
2
高速鉄道インフラパッケージの分析枠組み
開発プロセス軸
ファイナンス
開発・製造
保守
機能軸
運行管理レイヤー
車両レイヤー
線路レイヤー
3
日本の新幹線システム
JR
鉄道事業者
システムインテグレーター
設計図面
基本機能
車両
運行管理 レイヤー
車両 レイヤー
設計会議
制御装置
動力装置
JR
信号システム
車載電装品
線路 レイヤー
4
欧州の高速鉄道 システム
列車運行会社
(英国の場合、TOC(Train Operating Companies)
MODTRAINプロジェクト
MODBOGIE
台車走り装置
MODCONTROL
制御
MODPOWER
動力装置
MODLINK
インタフェース
アルストム
シーメンス
ボンバルディア
インフラ管理会社
英国の場合、Network Rail社
運行管理レイヤー
車両レイヤーの
モジュール化
MODUSER
普及・拡張
線路 レイヤー
台湾高速鉄道(新幹線)
台北
台中
Capacity
TRA
GAP
台湾鉄
道
BUS
AI
R
CAR
高雄
100
300
600
Speed(kph)
出所:「台湾南北高速鉄路建設計量(2015)を一部修正
道路(8-10時間)
高速道路(5-6時間)
鉄道(5-6時間)
飛行機(70分間)
高速鉄道(90分間)
台湾高速鉄道の建設プロセス1
実行可能性の検討
1987.4 行政院は、交通部と台湾省政府に「台湾西部での高速鉄道の実行可能性」につ
いて研究するように指示した。
1990.3
実行可能性研究の結論:実行可能だけでなく、優先事項とするべきである。
1990.4 行政院は高速鉄道の建設を推進することに同意した。
綜合企画と立案
1990.7 交通部「高速鉄道工程等備所」が設立され、全体の設計などのことを任命され
た。(1997.1 交通部高速鉄道工程局と名称を変えた)
1991.10
行政院は原則的に2号線を採用することに同意し、地質調査、環境影響の事
前予想、企画立案、設計などの工程も続けられた。
1992.6
高鐵全体設計報告を行政院に提出し、検定された。
台湾高速鉄道の建設プロセス2
民間参入
金を利用して高鐵事項を推進するように要求した。つまりBOT方式を決定。
1994.12
「交通インフラ建設に参入する民間に与える奨励制度」を実施、民間の交通インフラ
建設への参入方法などを提示した。
フェーズ
1993.7 立法院は、1994年と1995年において944億(台湾)元の高鐵特別予算を取り消し、民間資
1
1998.7 交通部と台湾高鐵会社(独仏システム)との間は、「建設及び運営についての協定」と
「駅開発についての協定」を契約した。
2000.3 台湾高鐵会社が建設を開始した
2000.6 台湾高鐵会社と日本台湾新幹線企業連盟は、「機電コアシステムについての提携メモ」
に署名した。(日本のコアシステムを採用することに決定)
運営
2005.10 最高315km/hの速度を達成した
2006.12 交通部の検査を受け、運営を公式的に許可した。
2007.1.5 運営開始
フェーズ
建設
1999.12
この後、JR東海も加入し日本連合による敗者復
活戦始まる
日本連合がコアシステム優先交渉権
2
台湾高速鉄道システムの日欧分業体制
台湾高鐵コアシステム
川崎重工
車両360台
東芝 車載電気品 三菱重工
(モーター、トランス 信号設備
など) 変電設備
通信設備
7割は日本方式、
3割は欧州方式
ドイツ
レールの分岐
システム
フランス
無線システム
自動券売機
日立製作所
車両88両 電気品20%
出所:日立の資料を修正
9
台湾高速鉄道のパッケージング
ファイナンス
開発・製造
保守
台湾政府と台湾高速鉄
道会社によるBOT実施
台湾企業6社が出資
運行管理レイヤー(日欧混在)
車両レイヤー(日欧混在)
線路レイヤー(日欧混在)
10
英国高速鉄道のパッケージング
ファイナンス
開発・製造
保守
運行管理レイヤー
車両システム
IEP
CTRL(日立)
線路(レール)レイヤー
11
先行研究:産業と技術の成熟化につれて、
モジュール型の合理性が高まる
モジュール型
インテグラル型
デザイン・ルール
産業ライフサイクルの進展
部品A
部品B
部品C
複雑な相互依存関係を形成
している流動的階層構造
デザイン・ルールが確立し
て安定的階層構造
時間
高速鉄道のカスタマイズド・パッケージ戦略
相手国の事情・需要に柔軟に対応できるように、モジュール化の原理を取り
入れたインフラ輸出戦略
日本の高速鉄道システム
線路、車両、運行
管理のパッケージ
途上国市場
線路未整備
運行経験なし
パッケージの仕方を
事情に応じて柔軟に
変更する
JRを中心にして作
り上げられた日本
の事情に最適化し
た鉄道システム
車両のみのパッケージ
欧米先進国市場
線路敷設済み
運行経験あり
13
最後に:東元電機 黄茂雄会長
モーターのような中核システムには手を触れさせてもら
えないので、産業への波及という意味ではほとんどない。
日本は新幹線システムを、台湾以外の海外に輸出する
というが、台湾で起きたことを踏まえてやり方を見直さ
ないと難しいのではないか。