特集 車体・素材 素材の発展に伴い求められる 修理技術レベルも高まる 車体に関して軽量化と高剛性化は終 ンダからは新型NSXが発表された。新 わりのない研究テーマであり、今回の 型は初代のように総アルミ合金製モノ モーターショーでもカーメーカー各社 コックボデーではないものの、アルミ から新たな取り組み内容が発表された。 合金を多用するとともに高張力鋼板も 中でもトヨタは、基本構造設計の新 集中的に使用した、レーシングカーな た な 思 想TNGA(Toyota New Global どが使うスペースフレーム構造をホン Architecture) を 発 表。4代 目 プ リ ウ ダ車として初めて採用。フロント及び スが導入第1弾となり、同車には従来 リヤのバルクヘッド周りといったボデ 型から低重心・低フード化させた新型 ーの構造上重要な部分には、高強度な プラットフォームを採用している。ア 鍛造素材と柔軟性のある素材の結合を ルミ合金パネルの採用部位は従来型と 可能にしたアルミアブレーション鋳造 同じボンネット及びバックドアだが、 技術によって結合させた、アルミ合金 ホットスタンプ材の採用拡大などで、 と高強度鋼板のボデーパネルを配置 980MPa以上の超高張力鋼板の採用率 し、CFRP製フロアと高精度に結合す を従来型の3%から19%に拡大した。 ることで、軽量かつ剛性の高いフレー さらに、スポット溶接に比べて溶接 ム構造を実現している。 4代目プリウスのアルミ合金パネル、ホットスタン プ材、980MPa級超高張力鋼板使用部位(上)と日 の字環状構造(下) な軽量化を実現している。 打点の間隔を狭くできるレーザースク また、日産が発表したコンセプトカ 他にもジャガーが発表した3車種(F- リューウェルディング(LSW)や構造 ー「IDSコンセプト」は自動運転とい Pace、XF S、XE S)すべてに、ボデー 用接着剤の採用個所を拡大することで うことが注目を浴びているが、軽量化 の75%以上にアルミニウムを使用し 接合剛性を高めており、ボデーのねじ を重視してボデー素材は総CFRP製と た軽量モノコックボデー構造が採用さ り剛性は従来型から約60%向上して なっている。 れているなど、海外のカーメーカーで いる。 BMWのM4 GTSは新設計のボンネッ も軽量化への取り組みが多々見受けら LSW使用部位の補修については、こ ト、ルーフ、調整式のフロントスプリ れた。 れまで同様スポット溶接(袋部分は ッター、リヤディフューザーなどボデ MIGプラグ溶接)での作業となるが、 ー各部にCFRPを採用することで大幅 (中井崇文) 打点数の増加に伴い、作業の手間は増 えるだろう。 ボデー構造としては、ホットスタン 新型NSXにおけるアルミ鋳造部品、アルミ合金パネルなどの使用部位。総アルミ合金製ではなくなったものの、 ボデーの大半にアルミ合金が使用されている プ材の配置や日の字環状構造の採用に よって下回りを固めるとともに、側面 衝突などに対する耐衝撃性を高めてい る。 多くのスポーツカーが発表されたの も今回のショーの目玉の一つだが、ホ 26 ボデーショップレポート 2015 年 12 月号 BSR1512_024-037.indd 26 2015/11/04 17:17 特集 プリウス 自動車メーカー トヨタ 未来のFCVから小型軽量スポーツまで チャレンジ精神と総合力の高さをアピール プリウス 12月発売予定の新型4代目を先行披露。 低重心・低配置・小型軽量・高剛性を主 眼としたトヨタ・ニューグローバルアーキテ クチャー(TNGA。ボデーの詳 細は26ペ ージ)採用第1号車となる同車は、パワー トレインの細部に至るまで小型軽量・高効 率化。駆動用バッテリーをニッケル水素・ リチウムイオン(グレードによって異なる) とも新開発し、搭載位置を先代の荷室床 下から後席下へと変更するとともに、補機 バッテリーも荷室床下からエンジンルーム へ搭載可能としたことで、荷室容積を446 ℓから502ℓへ拡大している。そして、一 部グレードでJC08モード燃費40.0km/ℓ を達成する見込み。 さらに、インバーターとトランスアクス ル、モーターを荷室 床下に配置し後輪も 駆動する電気式4WDを新開発し、歴代プ リウスで初めて設 定する。この4WD車の S-FR 荷室容量は457ℓ。 安全装備としては、ミリ波レーダーと単 眼カメラを用いた予防安全技術「トヨタセ ーフ テ ィ セ ン スP」 、ITS専 用 周 波 数 (760MHz)を活用した路車間通信システ ムと車車間通信システムを用いた「ITSコ ネクト」を、10月1日にマイナーチェンジさ れたクラウンに続いて設定する。 S-FR 全 長3,990×全 幅1,695×全 高1,320 mm、ホイールベース2,480mmと小柄な がら、エンジンをフロントミッドに搭載しつ つ2+2シーター化。さらに四輪独 立サス ペンションと6速MTを採用した、本 格FR 小型軽量スポーツクーペのコンセプトモデ ル。 FCVプラス FCスタックをフロントタイヤ間、水素タ ンクを後席後方、インホイールモーターを 4輪に採用することで、全長3,800×全幅 FCVプラス キカイ レクサス 最高級車カテゴリーへの FCV投入準備開始を宣言 LF-FC 次期LSを示唆する最高級フルサイズセ ダン。 駆動方式をFRとし、FCスタックとパワ ーコントロールユニットをフロント、水素タ ンクをフロア中央と後席下、駆動用バッテ リーを荷室内に配置。さらに、前輪にイン ホイールモーターを採用して、各輪の駆動 力と挙動のきめ細かな制御を可能とする。 車両側の運転知能と車車間・路車間通 信、ドライバーとの協調制御を備えた自動 運転技術も搭載。ルーフはシースルーソー ラーで、インホイールモーターにより増加 したバネ下重量を軽減するためホイールの 一部にCFRPを使用している。 GS F 年内にマイナーチェンジを予定している 32 1,750× 全 高1,540mmの ボ デ ー に 3,000mmものホイールベースを確保し広 大な室内空間を確保した、FCV将来像を 示したコンセプトカー。車外の水素からも 直接発電できるシステムを搭載し、電力供 給源としても使用できる。 キカイ 運転席を中央に配置する3座レイアウト を採用し、足元には小窓を設置。さらにサ スペンションやエンジン、排気管など、一 般的な車両では隠されている部品をあえて 見せ、機械の動きと造形美をダイレクトに 感じられるパッケージを構築した、小型ミ ッドシップスポーツ。 C-HRコンセプト TNGAを採用した、トヨタ初の小型クロ スオーバー SUV。今回展示されたのは5ド アのハイブリッド車。2016年年初に市販 プロトタイプを公開予定。 GSに追加される、超高性能モデル。RC F と同様に5ℓ V8直噴+ポート噴射エンジ ンと8速AT、専用設計のサスペンションを 搭載する。 GS全体ではフロントバンパーフェイス、 ロッカーモール、前後ランプのデザインを 一新し、全車にLEDヘッドランプを採用し つつ、アダプティブハイビームをオプション 設定する。ボデー及びステアリングの剛性 強化とサスペンションのセッティング変更 も実施される。 RX 2代目にフル モデル チェンジされ10月 22日に発売された、ミドルラージクラスの クロスオーバー SUV。 フロントプラットフォームの設計を変更し たほか、ボデーの接合にレーザースクリュ GS F C-HRコンセプト RX ーウェルディングや構造用接着剤を用い、 スポット溶接の打点も増加。ボンネット及 びバックドア、リヤバンパービームにアルミ を採用し軽量化を図っている。 安全装備としては、ミリ波レーダーと単 眼カメラを用いた予防安全技術「レクサス セーフティシステムプラス」 、ITS専用周波 数(760MHz)を活用した路車間通 信シ ステムと車車間通信システムを用いた「ITS コネクト」を設定している。 LF-FC ボデーショップレポート 2015 年 12 月号 BSR1512_024-037.indd 32 2015/11/04 17:18
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