第 章 ルベーグ積分の基本性質 本章において ルベーグ積分の基本性質について考察する の部分集合 はルベーグ可測集合であると仮定し 上の 次 元ルベーグ測度空間 が与えられているとする 次元ルベーグ積分の基本性質 本節の諸定理における諸関係式は ルベーグ可積分な単関数に対 して正しいことは容易に証明できる 一般のルベーグ可積分な関数に対しては ルベーグ積分の定義に よって ルベーグ積分可能な単関数に対しての対応する諸関係式か ら極限移行によって証明できる それ故 ここでは証明の詳細については省略する 定理 は 関数 が においてルベーグ可積分であって は可測部分集合とすると の への制限 においてルベーグ可積分で 等式 が成り立つ すなわち 関数 は においてルベーグ可積分である 定理 不等式 関数 が においてルベーグ可積分であれば が成り立つ 定理 関数 るとすると 次の も と は においてルベーグ可積分であ が成り立つ: においてルベーグ可積分であって 等式 が成り立つ 任意の実定数 に対して 分であって 等式 も においてルベーグ可積 が成り立つ が の直和分割で あるとする このとき 等式 が成り立つ が成り立つ ならば 不等式 はルベーグ可測で ならば 不等式 が成り立つ 系 関数 と とすると 任意の実定数 てルベーグ可積分で 等式 は においてルベーグ可積分である に対して も におい が成り立つ 定理 ると 次の 関数 は においてルベーグ可積分であるとす が成り立つ: ならば 証明 ルベーグ積分の定義より明らか いま とおく このとき を考えると が成り立つ 定理 の によって 任意の に対して を得る 仮定によって である このとき は任意に大きくとれるから ればならない ゆえに であることが証明された 同様にして でなけ であることが証明される 系 関数 と は においてルベーグ可積分で 上ほとんどいたるところで等しいならば が においてルベー グ可積分であるとき も においてルベーグ可積分であって 等式 が成り立つ 証明 とすると ゆ は と においてルベーグ可積分であるから は えに においてルベーグ可積分である したがって 定理 の と定理 の によって結論を 得る この系 によって ほとんどいたるところ等しい二つのルベー グ可積分な関数は そのルベーグ積分を考えるときには区別する必 要がないことがわかる 定理 関数 が においてルベーグ可積分ならば はルベーグ測度有限な集合の高々可算個の和として表 される 証明 仮定によって が成り立つ いま とおくと ルベーグ積分の定義よって が成り立つ ゆえに が成り立つ 定理 積分法の第一平均値の定理 関数 が 上有界 可測であって は においてルベーグ可積分であるとする こ のとき とおくと 次の が成り立つ: は となる実定数 においてルベーグ可積分である であって が存在する 証明 仮定によって が成り立つ 第三辺は においてルベーグ可積分であるから と も においてルベーグ可積分である さらに であるから が成り立つ ゆえに 実数 を次の のいずれかを満たすように選ぶ: のとき とする 一つを のとき とする このとき 定理 系 となる任意の実数の の結論を得る 関数 は有界閉区間 は においてルベーグ可積分で このとき において連続で であるとする となる点 が存在する 証明 は有界閉区間 において連続であるから において 最大値 と最小値 をとる このとき ならば 点 として の任意の一つの点を選 ぶことができる また ならば は において となる 任意の実数 を値にとることができる このとき 定理 の を となるように選ぶと 連 続関数に対する中間値の定理によって となる点 が存在する 定理 は のルベーグ可測集合であるとし 関数 は においてルベーグ可積分であるとする このとき 任意の に対し ある有界可測集合の外で恒等的に になる 上の連続関数 が存在して 不等式 が成り立つ 証明 定理の条件を満たす関数 が存在すれば ルベーグ積 分の定義によって は においてルベーグ可積分である した は においてルベーグ可積分である がって このとき 第一の不等式は定理 によって明らかである ここでは第二の不等式を証明する 定理 によって 条件 を満たす場合に証明すれば十分である そこで いま と仮定する とおくと は 上の非負単関数の単調増大列で であるから ルベーグ積分の定義によって ところが において したがって 十分大きなある この を固定して このとき は であるから に対し とおく と表される このとき である このとき 定理 対し によって 各 に となる閉集合 と開集合 が存在する このとき 上の連続関数 で 上において であって を満たすものが存在する このとき が成り立つから ゆえに と定義すると である このとき は ゆえに 式 れる と 定理 意の 上連続であって 関数 が に対して 関数 ならば によって 定理の第二の不等式が得ら においてルベーグ可積分ならば 任 は の関数としてルベーグ可積 分であり 関数 等式 も の関数としてルベーグ可積分であって が成り立つ 証明 ルベーグ測度が合同変換に対して不変であることと ルベー グ積分の定義より明らかである 定理 関数 が においてルベーグ可積分ならば 等式 が成り立つ 証明 定理 と定理 によって 任意の に対し 上のある連続関数 が存在して 次の を満たす: はある有界可測集合の外で恒等的に に等しい 任意の に対し が成り立つ このとき を十分大きくとって が成り立つようにできる とすると 与えられた なる限り に関係して ここで は有界閉区間 て 一様連続であるから において連続 したがっ ゆえに ところが 式 と ゆえに ここで 極限 したがって によって をとると は任意に小さくできるから 定理の結論が得られる 次元ルベーグ積分と極限移行 本項においては 考察する 定理 可測集合 次元ルベーグ積分と極限移行の関係について のルベーグ可測集合 と 互いに素なルベーグ に対して 直和分割 が成り立つとする このとき 関数 分ならば 等式 が成り立つ さらに 関数 が各 が においてルベーグ可積 においてルベーグ可積分であって 条件 を満たすときにも 上の等式は成り立つ 証明 るとする いま が は と表されているとする 上の非負単関数で ルベーグ可積分であ このとき ルベーグ積分の定義によって が においてルベーグ可積分で する このとき ルベーグ可積分な非負単関数の単調増大列 上 に各点収束するものが存在する したがって において であると で として が成り立つ ここで 最後の等式は の部分の結果によっている この最後の辺において とすると ルベーグ積分の定義 よって であるから 定理の結論が得られる が 上ルベーグ可積分な一般の関数であるとする このとき とおくと と は 上ルベーグ可積分であって 関係式 が満たされる の結果によって と に対して定理の結論が成り 立っているから に対して定理の結論が成り立つことが従う の証明は が 上の非負可測関数である場合にも 正しい 定理の最後の命題の条件のもとに は 上の可測関数 であることがわかる したがって に対して の結果を適用して 関係式 が成り立つ ゆえに は 上ルベーグ可積分であることがわか るから 定理の前半の結論が得られる 系 は のルベーグ可測集合で グ可測集合の単調増大列で 条件 はルベー を満たしているとする このとき 関数 が においてルベーグ 可積分であれば 任意の に対し ある自然数 が存在して ならば が成り立つ 特に が成り立つ 証明 仮定によって が成り立つ 定理 によって が成り立つ ゆえに 任意の ならば に対し ある自然数 が存在して が成り立つ したがって であるから 系の結論が得られる 注意 関数 のルベーグ積分 が条件収束しているとき 上の系 のようなルベーグ可測集合の 列 の特別な選び方をしたとき 系 の極限移行が成り立つ 系 は のルベーグ加速集合であるとし 関数 においてルベーグ可積分であるとする いま は とおく このとき 任意の に対し ある自然数 が存在して ならば が成立つ 特に が成り立つ 証明 定理 の が成り立つ このとき が成り立つ ゆえに 系 存在して このとき であるから が成り立つ によって とおくと はルベーグ可測集合の単調増大列で によって 任意の ならば に対し ある自然数 が ゆえに であるから 系の結論を得る 次の定理 これは定理 は不定積分の絶対連続性を示している と系 の応用である 定理 は のルベーグ可測集合であるとし 関数 は においてルベーグ可積分であるとする このとき 任意の に対し ある が存在して ルベーグ可測集合 に対して ならば が成立つ 証明 いま とすると 系 とると によって 任意の に対し 十分大きな が成り立つ いま となる を一つ選ぶ このとき 可測集合 を満たすとき の直和分割 が 条件 を を考えると 次の不等式 が成り立つ したがって であるから が成り立つ また において であるから 不等式 が成り立つ ゆえに 以上の推論によって結論を得る 定理 ルベーグの有界収束定理 は の有界可測集 合であるとする において一様有界なルベーグ可測関数の列 がほとんどいたるところで に収束するならば が成立つ 証明 関数列 はエゴロフの定理の条件を満たしているか ら 任意の に対して が存在して 次の が成 り立つ: で は において に一様収束する したがって 与えられた ならば が成り立つ 仮定によって 実定数 に対し ある自然数 が存在して が存在して が成り立っているから ほとんどいたるところで が成り立つ ゆえに 不等式 が成り立つ このとき れより定理の結論が従う 定理 列 値 で は任意であるから こ ルベーグ収束定理 は のルベーグ可測関数の が においてほとんどいたるところ有限な極限 をもつとする さらに においてルベーグ可積分な関数 が存在して が成立つならば が成立つ 証明 仮定によって 上 が成り立っているから ほとんどいたるところで が成り立つ したがって ベーグ可積分である いま とおくと と はすべて 上ル は有界可測集合の単調増大列で が成り立つ また とおくと 上ほとんどいたるところ が成り立つ このとき 系 と系 を十分大きくとると が成り立つ によって 任意の に対し と ゆえに 仮定によって が成り立つ このとき は有界可測集合で この上で は定理 の条件を満たす ゆえに 定理 によって 与えられた に対し ある自然 数 が存在して ならば が成り立つ このとき であるから が成り立つ ゆえに 結論が従う ルベーグの収束定理より項別積分の定理が得られる 定理 は のルベーグ可測集合で 上のルベーグ可測関数の列とする いま は とおく このとき 右辺の級数が 上ほとんどいたるところで収束 上ルベーグ可積分な関数 が存在して 任煮 し さらに の に対して が成立つならば 項別積分ができる すなわち が成立つ 証明 部分和の間数列 にルベーグの収束定理を適用すればよい 系 き 条件 は定理 と同じとする このと 上ルベーグ可積分な関数 が存在して が成立つ あるいは 条件 が成立つ のいずれかが満たされるならば 項別積分ができる 証明 の場合は明らか の場合 次のベッポ レビの定理により 関数 が 上ルベーグ可積分になることより従う 定理 ベッポ レビの定理 は のルベーグ可測集合 は 上ルベーグ可積分な関数の単調増 であるとし 大列であるとする さらに 単調増加数列 は上に有界であるとする このとき とおくと 関数 は 上ほとんどいたるところ有限値をもち 上ルベーグ可積分であって が成立つ 証明 をあらためて とおくことによ であると仮定して一般性を失 り はじめから わない このとき が 上ルベーグ可積分であることを証明すれば よい なぜならば このとき 定理の結論は定理 より従うからで ある まず が有界可測集合であると仮定して が 上ル ベーグ可積分になることを証明する 仮定によって は 上可測である まず とおくとき であることを証明 する いま とおくと は可測 集合の単調増大列で が成り立つ であるから が成り立つ また が成り立つ ゆえに が成り立つ 仮定によって は上に有界であるから ある実定数 があって が成り立つ ゆえに が成り立つ したがって 各自然数 に対し が成り立つ ゆえに であることがわかる 次に は各 上ルベーグ可積分であることを証明する 上では は定理 の条件を満たすから 定理 によって は 上ルベーグ可積分で が成り立つ ここで が成り立っている このとき が あることから が成り立つ したがって 定理 グ可積分で 上でルベーグ可積分で によって が成り立つ 明らかに であるから 次に は 上ルベーグ可積分である は任意の可測集合であるとし とおくと は有界可測集合の単調増大列で は 上ルベー が成り立っている の証明によって は が成り立つ の証明と同様にして がわかる 上ルベーグ可積分であって は 上ルベーグ可積分であること 上の定理の証明の中で用いる事実を系としておく 系 は は のルベーグ可測集合であるとし のルベーグ可測集合の単調増大列であって が成立つとする さらに 上のルベーグ可測関数 でルベーグ可積分であって が成立つならば は が各 上 上ルベーグ可積分であって が成立つ 系 は は のルベーグ可測集合であるとし 上ルベーグ可積分な関数の単調増大列であるとする このとき はほとんどいたるところ有限値をもち 上ルベーグ可積分であって が成り立つ 次に ベッポ レビの定理の系として ファトゥーの補題を証明 する まず ファトゥーの補題は次の形で用いられることが多いことを 注意しておく 可測集合 上のルベーグ可積分関数 に対し であるとする もし が成り立つならば も 上ルベーグ可積分であって が成り立つ ここでは もう少し一般化した形でファトゥーの補題を証明する 定理 あるとし 条件 ファトゥーの補題 は のルベーグ可測集合で は 上ルベーグ可積分な非負関数の列で が成立つとする このとき は 上ルベーグ可積分であって が成立つ 証明 いま とおくと は可測で が成り立つ 一方 で は 可積分で 上ルベーグ可積分であるから も 上ルベーグ が成り立つ ここで 両辺の下極限をとる このとき この右辺は単調増大列で あるから が成り立つ ゆえに ベッポ レビの定理によって 分で 定理の結論が得られる 次の定理 は 上ルベーグ可積 は積分記号下の微分法についての結果である 定理 は のルベーグ可測集合で は の区間であ は集合 るとする 関数 において定義され 次の条件 を満たしているとする: を任意に選んで固定すると グ可積分である は 上ルベー 上ほとんどいたるところの に対し は に関し て微分可能であるとする このとき に関する偏導関数を と表す 上ルベーグ可積分な関数 が存在して が成立つとする このとき とおくと は において微分可能で が成立つ 証明 を任意に一つ選んで固定しておく 数列 で となるような任意 は の数列であるとする このとき 仮定によって が成り立つ 上ほとんどいたるところで このとき は 可測関数列のほとんどいたるところの極限 上可測である として また 微分法の平均値の定理によって 上ほとんどいたるところ が成り立つ ここで したがって 仮定 が成り立つ ゆえに 定理 によって が成り立つ は が成り立つ は に依存している によって なる任意の数列であるから は の任意の点であるから 定理の結論が従う
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