主体的にかかわる力の育成

平成 27 年度 北海道小学校長会地区活性化支援事業【実践事例レポート】
1 報 告 地 区 :十勝地区
2 事例報告学校名 :鹿追町立瓜幕小学校
3 報
告
者 :校長 小 澤 浩 幸
4 キ ー ワ ー ド :幼小中高連携型一貫教育,かかわる力
主体的にかかわる力の育成
1
はじめに
本校は,然別湖を含む広大な自然環境を活かした特色ある教育活動に努め,昭和
63 年度から実施している留学生の受け入れは,少子化と相まって本校にとって欠か
せない要素となっています。豊かな自然に触れ,体験し,地域の人たちとの交流を通
しての人間的成長を図っています。また,地元の子どもたちには共に学び,共に体験
する中でふるさと瓜幕のよさを再認識し,他地域・他校の情報を得ることを通して視
野を広げ,やさしさと思いやりをもつ子どもに成長するよう促しています。
さらに,町として進めている幼小中高一貫教育に対しても,本校では「新地球学」
により環境問題に目を向けたり,「地球コミュニケーション」により英語等に親しむ
機会を増やしたりする研究を重点課題に位置付け,子どもたちに「主体的にかかわる
力」を育てる授業づくりの工夫を重ねています。
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研究組織
幼小中高 13 年間を見通し,
「主体的にかかわる力」を育てる授業を創るために次の
ような全町をあげての研究体制を整えています。
鹿追町幼小中高一貫教育推進会議
・小中高等学校長
・町教委・こども園長
・各学校PTA会長
運営指導委員会
・学識経験者・道教委・町PTA連合会長
事 務 局
・小中高等学校教頭・町教委
幼小中高一貫教育実行委員会
教
科
地球コミュニケーション
開
・幼小中高等学校教務主任,研修担当
発
新
連
地
球
学
地
域
連
携
携
同校種・異校種連携
とかち鹿追ジオパーク・ネイチャーセンター・大学・関係機関ほか
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身に付けさせたい資質と能力
幼児期から高校までを視野に入れたカリキュラムを開発し,英語を中核に多様なコ
ミュニケーション能力の向上を目指しています。また,より汎用性の高い環境教育プ
ログラムの構築を目指し,一層の環境リテラシー向上に努めています。グローバル社
会に対応する資質・能力を
主体的にかかわる力
周囲と「主体的にかかわる
○仲間(学級・異学年・異学校) ○教職員 ○家庭 ○地域 ○環境
力」と押さえ,その育成の
かんがえる力
う ご く 力
・理解する力 「 考 動 力 」
ためにはしっかりとした基
かんがえる力
う・表現する力
ご く 力
・見通す力
・働きかける力
・理解する力
礎力を根底に,様々な体験
・表現する力
体験
体験
・見つめる力
・活かす力
・見通す力
・働きかける力
や対話などを通して考え,
対話
対話
・見つめる力
・活かす力
動くことのできる力である
「考動力」を身に付けさせ
基 礎 力
たいと考えています。
4 主な研究内容
(1) 新地球学「然別湖の自然と暮らしのつながり」
5・6年生はこれまでの学習や体験から,湖の自然
や観光の実態をもとに,今後の町づくりについての提
案と討論を行いました。参観者からは,観光客を呼び
込む視点から多様な考えが出され,自分の思いを伝え
合っているところがよいとの感想をいただきました。
新地球学での学習内容はかべ新聞としてもまとめら
れ,管内コンクールに毎年入賞しています。中学校に
おける活動にもつながっています。自他の考えを比較
して深めるとともに表現する力を高めています。
(2)地球コミュニケーション
①「プレゼント」
英語によるショートスキット(寸劇)づくりを行い
ました。5・6年生と中学1・2年生との連携授業です。中学生はタブレット撮影
をもとに,表現の仕方について適切なアドバイスをしてくれました。みんなが理解
できるように分かりやすく表現する力を高める取組です。
②「アイヌの人々の言葉と文化」
帯広百年記念館の学芸調査員を招き,クイズや「鹿
笛」づくりにより異なる文化や生活様式への理解を深
めました。自分たちの使っている言葉や文化について
見つめ直すよいきっかけとなりました。
(3)その他の連携授業
①「わくわくおもちゃランドであそぼう!」(生活科)
「カーレース」「魚釣り」「パラシュート」など,生
活科で作ったおもちゃを使い,小学校1・2年生と保
育所年長児との交流の機会をもちました。学んだこと
を活かす力を発揮し,上手に遊ぶコツを教えたり,実
況中継でレースを盛り上げたりして楽しく遊んでもら
えるように工夫する姿が見られました。
②「どんな計算になるのかな」(5年生算数)
「分数のわり算」(6年生算数)
瓜幕中学校に進む2つの小学校の5・6年生が集まっての学習です。テーマ「協
力していっぱい学ぼう!」のとおり,いつもと違う担任やメンバーに緊張しながら
も意見交流などの働き掛けを重ね,理解を深めていきました。
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おわりに
ESD(持続可能な開発のための教育)の考え方に基づいた環境教育「新地球学」
について,他教科と関連付けながら系統立てた指導を行うとともに,英語を中核とし
た教科「地球コミュニケーション」において,カリキュラムの区切りを1-4-4-
4にした指導を行うことにより,子どもたちに「主体的にかかわる力」を身に付けさ
せようとする研究は始まったばかりですが,確かな手応えを感じています。
さらに,他教科にも異校種・同校種連携授業の機会を広げることで主体的にかかわ
る意識が高まり,学校間のスムーズな接続へと結び付いていくものと期待しています。
また,アイヌ文化そのものが自然環境を大切にしているため,道徳や新地球学の要素
を取り入れた学習へと発展する可能性が大きいと考えています。