超長期にわたるニアフィールド変遷の評価の 信頼性に係る検討(その1

超長期にわたるニアフィールド変遷の評価の
信頼性に係る検討(その1)
仕様書
2015年9月
原子力発電環境整備機構
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1. 委託件名
超長期にわたるニアフィールド変遷の評価の信頼性に係る検討(その1)
2. 委託業務の内容
2.1 背景・目的
長半減期核種を含む第一種特定放射性廃棄物(高レベル放射性廃棄物,以下,HLWという)
や第二種特定放射性廃棄物(以下,TRU廃棄物という)を対象とした地層処分の安全評価にお
いては,地質調査や調査結果の外挿性など超長期の不確実性や処分場を構成する人工バリア材
料の10万年を超える長期的な変遷に対する不確実性を踏まえることが必要となる。また,10万
年を超える時間スケールを前提とした処分場の状態設定においては,長期の不確実性を踏まえ
るための科学的な論拠の収集が必須であるとともに,多様に存在する不確実性の取り扱いに対
する専門家の総合的な判断も不可欠となる。しかし,専門家による総合的な判断においては,
複数の専門家の意見の相違や判断結果が定性的である場合も多いため,意見の相違や定性的に
提示される判断内容を定量化し,専門家の判断等の主観が入る内容を客観的に安全評価に用い
るための手法が望まれる。
複数の異なる意見の集約や不確実性を定量化し,安全性を提示していくための手法としては,
これまで論証・反証ダイアグラムの作成やEvidence Support Logic などの手法について例示
的に検討してきた。しかし,今後,安全評価結果やそれに用いた条件を公開していくと考えら
れるため,追跡性や透明性を確保する観点から,専門家の判断等の主観が入る内容を客観的に
取り扱う方法を実用化することが必要である。
地層処分における調査や設計及び安全評価における技術的な根拠は,既存技術及び実用化が
見越せる技術を中心に整備されている。一方で,実際に評価する時点では,その時点の最新情
報が求められることや将来的に処分技術をより高度にするためには,超長期のニアフィールド
変遷に関する検討を継続して実施することが必要であると指摘されている。
そのために,現時点における評価技術や人工バリア材料の変遷に関する知見を踏まえ,将来
的に処分の安全性を高める技術や,現状,不確実性に対して過度な保守性を持って対処してい
る事象について,予察的な試験や基礎的な検討を踏まえ,超長期のニアフィールド変遷に関す
る検討を実施することが望ましいと考える。
2.2 委託業務の項目
① 不確実性の定量化手法に関する調査
② 論証・反証ダイアグラムの詳細化
③ 地層処分の安全性を高めるための予察的検討
④ ワーキンググループ検討会開催による課題の整理
3. 委託業務の概要
3.1 不確実性の定量化手法に関する調査
機構が作成している包括的技術報告書においては,シナリオの構築手法に注力しており,透
明性や追跡性を確保できる可能性がある方法論を構築中である。この方法論においては,「安
全機能」を出発点とし,これに関与する「状態変数」(密度や鉱物組成等の物性条件)を定義し,
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この状態変数を変化させ得るプロセスをFEPの中から網羅的に抽出した上で,FEPシートに記述
される不確実性の内容について,論証・反証ダイアグラムなどを用い,シナリオの「分岐」
(基
本シナリオとして取り扱う,または変動シナリオとして取り扱う等の分岐)に関する判断を行
うこととしている。この判断において,対象とする不確実性を定量的に評価できる場合もある
が,多くの場合においては,「専門家」の判断に委ね,その意見を機構で判断材料として取り
扱う場合もあると考えられる。後者の場合,その判断の追跡性や妥当性が求められるが,判断
が定性的である場合や複数の意見が混在する場合においては,その妥当性を示していくことは
容易ではない。そのため,客観的にその妥当性を判断できるように,不確実性の取り扱いを定
量化する手法について調査を行う。
また,緩衝材の長期安定性に関する論証・反証ダイアグラムについて検討を行い,論証・反
証ダイアグラムに含まれる定性的な判断部分を定量化するための手順や,その手順を実施する
ために必要となる数学的手法や前提として準備すべき文書の構成等についてまとめる。
1)不確実性の定量化手法に関する調査
不確実性の定量化の方法として,主観確率を用いた手法について調査を実施する。既存事例
としては,
「リスク論的考え方に基づく放射性廃棄物処分の不確実性定量化手法」
(電力中央研
究所:2011*)や,
「TOPAZ Project Long-term Tectonic Hazard to Geological Repositories 」
(NUMO:2012**)で用いた方法等,数多くの手法が提案されている。これらを含め,諸外国で
の不確実性の取り扱いに関して調査を実施する。調査対象とする国については,機構との打ち
合わせを実施して決定する。また,以下に示す項目を中心に機構と打ち合わせのうえ,調査項
目を決定する。
・ 専門家の組織化
・ 意見の聴取方法
・ 意見聴取に用いた資料の構成
・ 主観確率の数学的取り扱い方法
・ 取りまとめた結果の性能評価への反映方法
等
2) 緩衝材の長期安定性に関する論証・反証ダイアグラムの検討
2013年度に委託研究「ニアフィールド長期挙動を考慮した設計・安全評価のための情報整備」
おいて実施された論証・反証ダイアグラムの作成においては,論証・反証ダイアグラムの構成
における上位命題の立て方やFEPとの関係を明確にすべき課題が残された。この検討内容を前
提として,緩衝材の長期安定性に関する論証・反証ダイアグラムを取りまとめる。また,論証・
反証ダイアグラムにおいて専門家の判断が必要となるポイントを選択し,1)の調査結果を踏
まえた,専門家への意見聴取の計画を立案する。
*リスク論的考え方に基づく放射性廃棄物処分の不確実性定量化手法
‐専門家意見聴取プロセスの改良による評価確度向上の検討杉山 大輔,千田 太詩,藤田 智成,塚本 政樹;電力中央研究所 研究報告:L10012
**TOPAZ Project Long-term Tectonic Hazard to Geological Repositories NUMO-TR-12-05
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3.2 地層処分の安全性を高めるための予察的検討
処分場閉鎖時の再冠水の状態の変遷に関する知見の充実を主な目的として,以下に示す予察
的な試験及び解析評価の実施を試みる。これらの試験内容は,2014年度に実施した「緩衝材の
長期的な性能の評価に関する検討」(委託先:原子力安全協会)で組織された,有識者からの
提案によって実施されている。これらの試験や解析的評価は,主に緩衝材の長期安定性や化学
的な緩衝性能の確認,及び緩衝材の再冠水時の挙動の評価モデルの詳細化を対象としている。
長期の緩衝材の状態の変遷を確認することが目標であり,これらの検討は今後も進める。
・ 再冠水過程の評価モデルの高度化に関する基礎的検討
¾
再冠水時のX線回折試験による相間状態の変遷の観測
¾
不飽和ベントナイトの内部構造と力学モデルの高度化
¾
緩衝材の再冠水時のミクロ-マクロスケールの評価
・ 材料の変質とその性能の把握
¾
過飽和ケイ酸塩の緩衝材中での析出速度の評価
・ セメント材料の高度化に関する検討
¾
炭酸塩の混合によるベントナイト系材料に接するセメント系材料の溶脱制御
・ 高pH水によるベントナイトの再冠水
¾
再冠水試験
¾
モデル化を念頭においた基礎的検討
・ ヨウ化物イオンの移行遅延性能に関する検討
¾
フェライト相からのモノサルフェート相の生成とヨウ化物イオンの固定化
・ 鉄系材料の混在化における緩衝材の変質挙動
¾
Si-Al-Fe(III)合成試験
¾
鉄・ベントナイト混合系での二次鉱物の生成に関する試験
受託先は,これら試験や解析評価の補佐と,結果を取りまとめ今後の研究計画を機構とともに立
案する。
3.3 ワーキンググループ検討会の開催
・
ワーキンググループ検討会は,3.1項及び3.2項の検討内容に関して開催する。開催の回数
は,3.1項,3.2項各1回とするが,必要に応じて増やすことができる。
・
3.1については機構と受託先で事前に検討を進め,その検討内容をまとめた結果はワーキン
ググループ検討会に提示し,メンバーからのコメントを集める。なお,これらのコメント
は,報告書に整理するとともに,3.1項を実践する場合の手順に反映させる。
・
3.2については,試験等の終了を目途に実施するものとし,試験結果の紹介及び今後の試験
計画を中心として議論を実施し,次年度以降の試験計画の策定を行う。
・ ワーキンググループ検討会は,委員長を含む12名程度の委員で構成する。委員は,原子力
工学,土木工学,セメント材料学,地球科学,金属材料学等の地層処分と関係の深い分野
の専門家から幅広く約10名を選出し,また日本原子力研究開発機構の技術者1~2名程度を
加えて構成する。
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・ ワーキンググループ検討会の開催実績(議題,開催日,出席者)及びこの検討会の実施結
果については,委託成果報告書に記すこと。
4. 報告書の作成
上記3.の内容に関して委託成果報告書を作成する。
5. 実施期間
契約締結日~2016年3月18日まで
6. 委託者側実施責任者
原子力発電環境整備機構 技術部長 出口 朗
〔担当箇所:技術部 性能評価技術グループ〕
7. 実施場所
受託者にて適切な実施施設を準備して使用する。
8. 提出書類等
提出書類等一覧表
提出書類等
実施計画書
委託成果報告書
委託成果報告書
の電子ファイル
提出期限
契約締結後速やかに
2016年3月18日
2016年3月18日
提出先
技術部
技術部
技術部
提出部数
1
1
1
備考
印刷物
印刷物
PDF形式及びマイクロソフ
トWord形式でCD又はDVD
に保存して提出
注)実施計画書は,仕様書に記載された委託業務の範囲を実行するうえで,具体的な計画,
実施工程,実施体制(再委託を含む)
,品質保証計画等を記載したものとする。
なお,実施計画書は,企画書に記載された内容を反映して作成するものとする。
委託成果報告書は,機構の「業務委託及び役務調達における技術報告書作成マニュアル」
に準拠して作成するものとする。
9. 特記事項
① 本仕様書に記載されている事項及び本仕様書に記載のない事項について疑義が生じた
場合には,当機構と協議のうえ,その決定に従うものとする。
② 機構が既に行った調査資料で,本業務に必要なものは随時提供する。
③ 納入日より1年以内に受注者の責任に帰すべき瑕疵及び不都合が発見された場合には,
無償にて速やかに必要な措置を講じること。
以上
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