仕様書 - 原子力発電環境整備機構

処分場近傍における統計的水理・物質移行評価の
信頼性検証
仕様書
2015年10月
原子力発電環境整備機構
1. 委託件名
処分場近傍における統計的水理・物質移行評価の信頼性検証
2. 委託業務の内容
2.1 背景・目的
原子力発電環境整備機構(以下,「機構」という)は,2015年度末に完了予定の包括的技術
報告書の作成に向け,わが国の一般的な地質環境とそれに対応する設計条件を踏まえた安全評
価を実施している。安全評価では,処分場近傍の母岩の性能を詳細に評価することを目的とし
て,物質移行のパスとなる母岩中の亀裂の特性とその亀裂の連結性を踏まえた,三次元の亀裂
ネットワークモデルを用いた解析を実施している。
三次元亀裂ネットワークモデルを構築する場合,亀裂の頻度や走向の分布,及び透水量係数
の分布といった母岩の特徴を表す統計的な情報を用いて,計算機上で亀裂の空間的な分布を表
すモデルを統計的に作成する(この作業を「リアライゼーション」という)。したがって,一
つのリアライゼーションにより作成された亀裂の空間モデルは特定の場(母岩の状況)を決定
論的に再現するものではなく,母岩の統計的情報から推定される一つの例であり,また,一通
りではなく無数に作成することができる。
そのため,統計的に作成された1つのリアライゼーションを用いた水理・物質移行解析結果
は,対応する場の可能性の1つに対する解析結果であり,統計的に作成し得る場の多様性を考
慮したうえで代表性のある解析結果を示すためには,同じ統計量を用いた多数のリアライゼー
ションの解析結果を集約することが必要となる。
そこで本委託では,現在機構が検討中の三種類の母岩に対する水理・物質移行解析結果の妥
当性を示すために,各母岩の統計量を用いた複数のリアライゼーションを作成し,水理解析及
び物質移行解析を実施する。
2.2 委託業務の項目
1)
深成岩モデルに対する統計的リアライゼーションと水理・物質移行解析の実施
2)
新第三紀堆積岩モデルに対する統計的リアライゼーションと物質移行解析の実施
3)
先新第三紀堆積岩モデルに対する統計的リアライゼーションと物質移行解析の実施
4)
報告書の作成
3. 委託業務の概要
3.1 深成岩モデルに対する統計的リアライゼーションと水理・物質移行解析の実施
深成岩モデルのブロックスケール(縦,横,及び厚さそれぞれ100m以上の空間領域)に対
して,以下の作業を実施する。
1)
水理解析の実施と評価結果の統計的な処理
モデル化におけるリアライゼーション回数の適切性を判断するための根拠となる情報
を得るために,機構が提示する深成岩の亀裂統計量に基づく,複数回数のリアライゼー
ションを対象とした三次元の水理解析を実施する。ここで作成するリアライゼーション
数は200ケース程度とする。この結果を,流量分布や地下水移行時間分布,及び地下水移
行時間と通過した亀裂情報との関係について整理する。なお,使用する水理解析コード
1
は,後述する物質移行解析で用いるコード(Partridge)と同等の機能(※後述)を有す
る解析コードとする。さらに,水理解析結果について,物質移行解析で用いるコードと
の比較検証を行うこととする。また,解析結果の取りまとめや比較検証に関する詳細内
容に関しては,機構との打ち合わせにより決定する。
2)
物質移行解析の実施と評価結果の統計的な処理
機構が提示する深成岩の亀裂統計量,及び高レベル放射性廃棄物とTRU廃棄物の処分
施設の設計条件に基づき,各10ケースを目途にリアライゼーションを作成し,三次元の
物質移行解析を実施する。なお,結果の取りまとめに関する詳細内容に関しては,機構
との打ち合わせにより決定する。
高レベル放射性廃棄物に対する処分施設の設計条件については竪置きでの設計条件と
し,TRU廃棄物については,緩衝材を敷設するケース(グループ2),緩衝材を敷設し
ないケース(グループ3)での設計条件とする。また,解析結果はGoldSimを用いて実
施する安全評価モデルに適用させるための処理を実施する。
なお,物質移行解析の実施においては,包括的技術報告書の安全評価で用いている解
析コード(Partridge),またはこれと同等の機能(※後述)を有する解析コードを用い
ることとする。
3.2 新第三紀堆積岩モデルに対する統計的リアライゼーションと物質移行解析の実施
新第三紀堆積岩のブロックスケール(縦,横,及び厚さそれぞれ100m以上の空間領域)に
対して,以下の作業を実施する。新第三紀堆積岩モデルは,亀裂内の流動が支配的となるケー
スと多孔質内の流動が支配的となる2つのケースが設定されていることから,各ケースについ
て,作業を実施することとする。
1)
物質移行解析の実施と評価結果の統計的な処理:亀裂部が流動に支配的となるケース
機構が提示する新第三紀堆積岩の亀裂統計量,及び高レベル放射性廃棄物とTRU廃棄
物の処分施設の設計条件に基づき,各10ケースを目途にリアライゼーションを作成し,
三次元の物質移行解析を実施する。
2)
物質移行解析の実施と評価結果の統計的な処理:多孔質部が流動に支配的となるケース
機構が提示する新第三紀堆積岩の亀裂統計量と岩盤の透水性,及び高レベル放射性廃
棄物とTRU廃棄物の処分施設の設計条件に基づき,各10ケースを目途に複数のリアライ
ゼーションを作成し,三次元の物質移行解析を実施する。
1),2)ともに,高レベル放射性廃棄物の設計条件については竪置きでの設計条件とし,
TRU廃棄物については,緩衝材を敷設するケース(グループ2),緩衝材を敷設しない
ケース(グループ3)での設計条件とする。なお,結果の取りまとめに関する詳細内容
に関しては,機構との打ち合わせにより決定する。また,解析結果はGoldSimを用いて
実施する安全評価モデルに適用させるための処理を実施する。
物質移行解析の実施においては,包括的技術報告書の安全評価で用いている解析コー
ド(Partridge),またはこれと同等の機能(※後述)を有する解析コードを用いること
とする。
2
3.3 先新第三紀堆積岩モデルに対する統計的リアライゼーションと物質移行解析の実施
先新第三紀堆積岩のブロックスケール(縦,横,及び厚さそれぞれ100m以上の空間領域)
に対して,以下の作業を実施する。
物質移行解析の実施と評価結果の統計的な処理:亀裂部が流動に支配的となるケース
機構が提示する新第三紀堆積岩の亀裂統計量と岩盤の透水性,及び高レベル放射性廃棄物
とTRU廃棄物の処分施設の設計条件に基づき,各10ケースを目途に複数のリアライゼーショ
ンを作成し,三次元の物質移行解析を実施する。なお,結果の取りまとめに関する詳細内容
に関しては,機構との打ち合わせにより決定する。また,解析結果はGoldSimを用いて実施
する安全評価モデルに適用させるための処理を実施する。
物質移行解析の実施においては,包括的技術報告書の安全評価で用いている解析コード
(Partridge),またはこれと同等の機能(※)を有する解析コードを用いることとする。
※物質移行解析コードに必要な機能
本業務で実施する三次元の物質移行解析においては,次のような機能を有する解析コー
ドを用いることとする。
z
亀裂頻度,亀裂透水量係数分布,走行分布の統計量を用い,縦,横,及び厚さそれ
ぞれ100m以上の空間領域でリアライゼーションの作成ができること
z
亀裂以外の母岩部の透水性が考慮できること
z
DFNまたは等価多孔質媒体近似で地下水流動解析の実施が可能なこと
z
地下水流動解析結果に基づき,DFN及びDFNと多孔質媒体のハイブリットモデル
による物質移行解析が可能なこと。物質移行解析においては,母岩マトリクスへの
拡散(マトリクス拡散)を考慮可能であること
z
人工バリア及びEDZの領域,坑道について,設計条件に合わせた,詳細なモデル化
が可能であること
なお,3.1~3.3の解析結果については,国内外の安全評価の専門家に妥当性の確認を行う
こととする。
4. 報告書の作成
3.1~3.3の成果を報告書としてまとめる。
5. 実施期間
契約締結日 ~ 2016年3月29日
6. 委託者側実施責任者
原子力発電環境整備機構 技術部長 出口 朗
〔担当箇所:技術部 性能評価技術グループ〕
3
7. 実施場所
受託者にて適切な実施施設を準備して使用する。
8. 提出書類等
提出書類等一覧表
提出書類等
実施計画書注1)
委託成果報告書注2)
各報告書の電子フ
ァイル
評 価 結 果 及 び
GoldSim モ デ ル と
入力条件,出力結果
提出期限
提出先
提出部数
契約締結後速やかに
技術部
1部
印刷物
2016年3月29日
技術部
1部
印刷物
1式
マイクロソフトWord形式及
び PDF 形 式 で CD ま た は
DVDに保存して提出
2016年3月29日
2016年3月29日
技術部
技術部
注3)
1式
備考
GoldSim フ ァ イ ル は ,
GoldSimで編集できる形式
であること。
入出力ファイルは,EXCEL
またはTEXT,GoldSim形式
であること。
注1) 実施計画書は,仕様書に記載された委託業務の範囲を実行するうえで,具体的な計
画,実施工程,実施体制(再委託を含む)
,品質保証計画等を記載したものとする。
なお,実施計画書は,企画書に記載された内容を反映して作成するものとする。
注2) 委託成果報告書は,機構の「業務委託及び役務調達における技術報告書作成マニュ
アル」に準拠して作成するものとする。
注3) 入力モデル及び入出力結果は,作業に進捗に応じて提出し,提出期限には,それら
をまとめて提出すること。なお,期限前の提出に関する内容と期限は,機構と協議の
上決定する。
9. 特記事項
1)
本仕様書に記載されている事項及び本仕様書に記載のない事項について疑義が生じた
場合には,機構と協議のうえ,その決定に従うものとする。
2)
機構が既に行った調査資料で,本業務に必要なものは随時提供する。
3)
納入日より1年以内に受注者の責任に帰すべき瑕疵及び不都合が発見された場合には,
無償にて速やかに必要な措置を講じること。
以上
4