2015 年 6 月 間瀬内科クリニック 油なんて嫌い? ! あぶら控えめに異議あり ― 必須脂肪酸、オメガ3 の上手な活用 ― 「脂質」と聞いて、皆さんは何を連想しますか? 脂質のイメージは決して良いものではなく、何となく敬遠してしまう方が多いようです。 「油は使わないようにしています」、 「オリーブ油を使っていますからヘルシーです」、「お 肉は湯通しをしてから使っています」 。健康志向の高まりを背景に、このような工夫を重ね ている方もいるようです。揚げものや炒めもの、外食好きが高じて、体重が増えた。年々、 消化不良を感じるようになってきた。おなかが緩くなった。背部に痛みを感じた。これら 自覚できる範囲の不調を経験したことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。 人間の身体に必要不可欠な栄養素のうち、特に重要である三大栄養素、炭水化物・たん ぱく質・脂質。脂質は、料理にコクを与え、腹持ちよくするだけでなく、砂糖や塩分との 組み合わせで独特の美味しさや食べた時の満足感を与えます。同時に、脂質は身体をつく るうえでも、非常に大切な役割を持ちあわせています。ホルモンバランスを整える、ビタ ミンの吸収を助ける、細胞膜をつくる、脳細胞の神経組織の材料として利用される…等、 三大栄養素とされる所以です。 脂質を極端に恐れないためには、何をどれだけ食べれば良いのか。考え方は簡単です。 脂質は、分かりやすい「あぶら」 (植物油、魚油、バター、ラード、牛脂など)だけではな く、肉や魚、乳製品、種実にも豊富に含まれています。まず、自分がどの程度の量の「あ ぶら」を摂れば良いのかを知りましょう。そして、 「あぶら」の質を学び、積極的に取り入 れたい食材を選ぶ力を身につけるのです。脂質のおもな構成成分である「脂肪酸」には、 体に良い「不飽和脂肪酸」と、摂りすぎると健康を損なう悪い「飽和脂肪酸」があります。 いかにも専門用語らしい難しい響きがしますが、恐れることなかれ。次頁で、脂肪酸の種 類をご紹介します。 健康づくりのためのキーワードは、「オメガ3」。さぁ、自分に合った脂質の摂り方を探 す旅に出かけましょう! 余分三兄弟も元を正せば、必要な栄養素。 悪者のイメージを払拭して、上手に活用してみませんか? 血中脂質が高い方、肥満の方、脂質制限を必要とする持病がある場合は、一日に摂りたい脂質の 量を医師が設定します。当院の栄養指導をご利用ください。 2015 年 6 月 間瀬内科クリニック 【脂肪酸の種類】 参考資料:食品成分表、N ブックス基礎栄養学、アクセス生体機能成分ほか 脂肪酸の種類 飽和脂肪酸 血液への影響 ラウリン酸、ミリスチン酸、 豚脂(ラード)、牛脂(ヘット)、 過剰摂取で悪玉コレステロール増加 パルミチン酸など バター、マーガリン、洋菓子 オメガ9 不飽和脂肪酸 多く含む食品例 オレイン酸 オリーブ油、キャノーラ油、 なたね油、アボカド、ナッツ類 悪玉コレステロール低下 リノール酸* 多くの植物油、 植物油を使用した加工品など 悪玉コレステロール低下 過剰摂取で善玉コレステロール低下 アラキドン酸 レバー、卵白、 さざえ、あわび、伊勢えび 過剰摂取で DHA、EPA の体内生成を抑制、血小板の凝集 DHA、DPA,EPA 魚油(特に青魚)、 マンボウ、アザラシ、くじら α-リノレン酸* エゴマ油、アマニ油、シソ油 オメガ6 オメガ3 中性脂肪低下、 血小板の凝集を抑制 *必須脂肪酸:ヒトの体内では合成できない種類の脂肪酸 飽和脂肪酸は、脂肪酸の炭化水素鎖に二重結合を もたない安定した構造をしています。常温で固形 (脂)となるものが多いです。一方、不飽和脂肪酸 は、炭化水素鎖に二重結合をもち、常温で液体(油) となるものが多いです。 不飽和脂肪酸の二重結合している部分は、化学的 に不安定な構造をしています。加熱や空気中の酸素、 光、微量金属などで自動酸化されやすい性質があり、 取り扱いや保存には注意が必要です。 健康に良いと言われている油の多くは不飽和脂肪酸です。二重結合を ひとつ(一価)あるいは、複数(多価)持ち、非常に劣化しやすいタイプの油です。 体内でも同じような変化をするので、特別な効果を期待して摂りすぎると、エネルギー過剰に なるばかりではなく、体内で生成される過酸化物によってがんや老化・動脈硬化が引き起こさ れ、健康を害するおそれがあります。 大切なのはバランスです。「飽和脂肪酸はコレステロールを増やし、不飽和脂肪酸はコレステロールを減らす」など という神話的な考え方はせず、油脂の種類でバランスをとりましょう。 【摂り方のコツ】 飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸=3:4:3 動物性の脂肪:植物性の脂肪:魚の脂肪=4:5:1 ➤飽和脂肪酸やオメガ 6 は、加工食品や総菜・外食で多用されているので、日常で不足する ことはありません。 ➤良質な油=低カロリーではありません。普段の食事に足すような油の使い方はせず、油の 種類を置きかえるつもりで、使用する食材を交換しましょう。 ➤多価不飽和脂肪酸と一緒に、抗酸化作用のあるビタミンEを摂りましょう。 ビタミン E を多く含む食材は、小麦胚芽、アーモンド、ヘーゼルナッツ、抹茶、緑黄色野菜などです。 サプリメントを利用する場合は、過剰摂取にならないように表示摂取量を守ってください。 【オメガ3の主な効果】 ・脂質異常症(高脂血症)や血栓症、動脈硬化を予防する ・冠状動脈疾患、心臓血管系疾患を予防する 【オメガ3に期待されている効果】※ヒトにおける有効性について、現時点で信頼できるデータが十分ではないもの ・アレルギー(花粉症・アトピー)の症状をやわらげる ・がんの発生や転移を抑える ・認知症を予防、改善する ・脳の老化を抑える、記憶力を高める 2015 年 6 月 間瀬内科クリニック 【オメガ3を豊富に含む油】 アマニ油は、アマという花の種からとれる油で産地によって 風味が違います。香りは、オリーブオイルほど強くありません。 エゴマ油は、エゴマ(シソ科)の種からとれる油です。 アマニ油よりもクセがなく、サラッとしています。 【レシピ紹介】 グリーンサラダ(108kcal) 材料 グリーンアスパラガス トマト 赤たまねぎ サニーレタス(葉野菜) パセリ エゴマ油 レモン果汁 白ワインビネガー(酢) ブラックペッパー 50g(2 本) 50g(1/4 ヶ) 20g 20g 1g 小さじ 2 小さじ 1 混ぜる(★) 小さじ 1/2 少量 1.アスパラは下半分のかたい皮をピーラーでむき、食べやすい長さに斜め切りする。ラップで 包み、レンジで加熱する(500W で 30 秒~1 分)。 2.赤たまねぎは薄めスライス、トマトは一口大のサイズに切り、葉野菜は食べやすい大きさに 手でちぎる。パセリはみじん切りにする。 3.ボウルでドレッシング(★)をよく混ぜ合わせ、野菜を入れてざっくりと和える。 とても夏らしい、さっぱりしたドレッシングです。ドレッシングの絡みがよい花野菜や、葉野菜との相性も バッチリです!アスパラは、高たんぱくな野菜で疲労回復に役立ちます。ビタミン B1 や抗酸化作用のあるビ タミン A・E やルチン、貧血を予防する葉酸を多く含みます。トマトの赤色、リコペンは脂溶性ビタミンです。 油と一緒に摂ると吸収率が上がります。ドレッシングは食べる直前に用意して、フレッシュな状態でどうぞ。 かつおのカルパッチョ(232kcal) 材料 たたき用のかつお ベビーリーフ(葉野菜) にんにく 玉ねぎ たたきについているタレ アマニ油 オリーブ油 70g 20g 5g(1ヵヶ) 50g(1/4 ヶ) 大さじ 1 小さじ 2 小さじ 1 混ぜる(★) 1.かつおは 5~7mm の薄切りし、端切れを包丁で粗くたたく。にんにくは薄切りにする。 2.ベビーリーフ、かつお薄切り、にんにくを盛りつける。 3.玉ねぎをすりおろし、ドレッシング(★)と混ぜる。 4.ドレッシングをスプーンの先ですくい、少量ずつかつおに乗せる。残ったドレッシングは、かつ おの端切れに和える。 カツオの旨味に負けないコクのあるドレッシングに仕上がりました。 アマニ油・エゴマ油は、サラダ油など他の油とブレンドすることで安定性が増します。お手持ちのノンオイ ルドレッシングや味噌・わさびなどに混ぜると手間いらずで、より美味しくいただけますよ! 患者さんから頂いた採れたての玉ねぎを使用しました。ごちそうさま~♪
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