ギリシャ情勢:ユーロ圏が条件付き支援で合意 - HSBC Global Asset

臨時レポート
ギリシャ情勢:ユーロ圏が条件付き支援で合意
ギリシャ議会での緊縮財政法案の成否に注目
HSBC投信株式会社
2015年7月14日
 ギリシャは、ユーロ圏諸国との間で財政支援継続につき条件付きで合意。
ギリシャは15日(水)までに、財政改革の関連法案を議会で可決することを求められている
 ギリシャのユーロ圏離脱のリスクはひとまず低下。但し、ギリシャ議会における法案の可決、ドイツな
どユーロ圏各国議会の承認が鍵。中・長期的にはギリシャのユーロ圏離脱のリスクは依然残る
 ギリシャの条件付き合意を受けて、米国の利上げ開始時期に市場の焦点が移ると思われる。
但し、ギリシャ議会での法案を巡る進捗状況次第では、当面、世界の金融市場は値動きの荒い展開
になる可能性がある
ギリシャ支援で原則合意
 ユーロ圏首脳は13日(月)、欧州安定メカニズム
(ESM)によるギリシャへの第3次金融支援(820~
860億ユーロ)に向け、条件付きで正式交渉に入
ることに合意しました。
 ギリシャ政府は、まず当面のつなぎ融資を受け、
週後半には第3次金融支援の正式交渉を始める
ため、15日(水)までに、改革案を法制化する必
要があります。改革案の中には、歳出削減、増税、
付加価値税・年金改革等が含まれます。
 またギリシャのチプラス首相は、「500億ユーロ相
当の国有資産の売却・民営化により捻出し、250
億ユーロを脆弱な銀行システムの資本増強に、
残りを債務返済に充てる」というドイツの要求を受
け入れました。また同首相は、金融支援プログラ
ムにおける国際通貨基金(IMF)の全面関与につ
いても受け入れることとしました。一方でドイツは、
「ギリシャが15日(水)までに法案を通過させるこ
とができなければ、ユーロ圏から5年間“一時離
脱”する」との条項を取り下げることを受け入れま
した。
 しかし、ギリシャは、バルファキス前財務相(5日
の国民投票実施後辞職)はじめ急進左派連合
(SYRIZA)の多くが固執していた債務減免の合意
は取り付けることはできませんでした。債務減免
はIMFやオランド仏大統領も提唱していました。
 ギリシャの市中銀行の店舗は引き続き休業中で
あり、営業を再開したとしても預金引き出しの制
限は続くものと思われます。欧州中央銀行(ECB)
は理事会で、ギリシャの銀行向けの緊急流動性
支援(ELA)の上限を890億ユーロに据え置くこと
を決定しました。
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当資料の「留意点」については、巻末をご覧ください。
当面のデフォルト懸念は後退、但し
将来のユーロ圏離脱のリスクは残る
 ESMの厳しい要件から、当然のことながら、ギリ
シャ政府は今回の交渉で譲歩を余儀なくされまし
た。また、ギリシャ経済全体を監視下に置くという
ユーロ圏の主張は、債権者のギリシャに対する
信頼が損なわれていることの表れです。
 しかしながら、ギリシャがこれまで一週間に亘り
譲歩してきた内容を見る限り、ユーロ圏から離脱
する短期的なリスクは後退し、市場の不透明感
はある程度解消されたと考えます。
 但し、いくつかの高いハードルが残っています。
チプラス首相は15日(水)までに、500億ユーロの
国有資産の売却・民営化も含めて、全ての改革
案を法制化する必要があります。
 チプラス首相はユーロ圏に大きく譲歩したことか
ら、急進左派連合政権が分裂し、挙国一致内閣
を新たに樹立するか、選挙実施に追い込まれる
可能性があります。
 ギリシャ議会が法案を通過させたとしても、ドイツ
や比較的強硬なスタンスをとるフィンランド、オラ
ンダ、スペイン、ポルトガル等、ユーロ圏諸国の
議会で承認を得ることも必要です。
 最善のシナリオとしては、ギリシャが全ての法案
を議会で承認し、短期のつなぎ融資を得て、市中
銀行の資本増強、期近の債務(特に7月20日のE
CBへの36億ユーロ)の返済が可能になることで
す。また、ECBが緊急流動性支援枠を維持し、場
合によっては増枠し、ギリシャの市中銀行が預金
引き出し制限を残しながらも、営業を再開すると
いうものです。さらに、第3次金融支援の最終合
意に向けて交渉が続くというものです。
臨時レポート
 しかしながら、中長期的にはギリシャのユーロ圏
離脱のリスクは残ると考えます。ギリシャ経済は、
預金の引き出し制限などの混乱状態が続き、ま
た、一段の緊縮財政が求められる中、極めて脆
弱な状態に陥ると思われます。債務の減免をドイ
ツが拒否したことから、ギリシャの債務負担は極
めて重い状態が続きます(これについては、支援
プログラムの初回レビュー後に見直され、IMFや
フランスが提唱した債務負担軽減が認められる
可能性もあります)。さらに、ギリシャをユーロ圏
に留める救済コストを巡り、ドイツを中心に強硬姿
勢をとるユーロ圏諸国とフランス等より柔軟な国
との間に意見対立が起きる可能性もあります。
 ギリシャがユーロ圏を離脱した場合には、短期的
に金融市場のボラティリティを高め、リスク資産が
下落すると思われます。しかしながら、中長期的
には他のユーロ圏諸国の経済、金融市場への影
響は限定的と考えます。この理由として以下の3
点が挙げられます。
① ギリシャ国債の大半は、国際機関ないし各国
政府が保有しており、民間部門の保有が限ら
れていること。
② 他のユーロ圏周辺国では、構造改革を実行し
景気が再び拡大しており、また市中銀行は既
に資本増強を行い、数年前に比べて経営基盤
を強化させ、ギリシャ国債の保有は少ないこと。
③ ECBは欧州国債市場のボラティリティの上昇
に対応するいくつかのプログラムを有している
こと。(これらプログラムの中には、量的金融
緩和政策(QE)や国債買い入れプログラム
(OMT)が含まれ、国債の利回りが大幅上昇し
た場合には、資産購入計画の前倒し実行や
社債買い入れ増額等が可能です。)
今後の見通し
 当社が考えるメイン・シナリオは、引き続きギリ
シャがユーロ圏に留まるというものです。但し、将
来に亘り、ギリシャのユーロ圏離脱の可能性が全
く排除されたわけではありません。
 尚、ギリシャ議会での法案を巡る進捗状況次第で
は、当面、世界の金融市場は値動きの荒い展開
になる可能性があります。
 一方、最終的に支援合意に至らず、ギリシャが
ユーロ圏から離脱するという悲観的シナリオにお
いても、短期的には市場のボラティリティが上昇し、
リスク資産が急落すると思われます。ユーロ圏周
辺国においては企業マインドの悪化が投資に悪
影響を及ぼし、また、政治リスクも高まる可能性
はあります。この場合でも、前述の通り長期的に
は他のユーロ圏諸国への経済上の直接的な影
響は限られると考えます。
 当社の投資戦略としては、長期的には、先進国
国債等の安全資産よりも欧州株式等のリスク資
産を引き続き選好しています。
 しかし、短期的には、ギリシャの債務交渉が続く
中、欧州市場のボラティリティがさらに上昇する可
能性があり、状況を注視していきます。
以上
市場はギリシャ情勢の進展を好感
 市場は、ユーロ圏首脳会議でのギリシャ支援原
則合意の報道を好感し、13日(月)の欧州株式市
場では、ユーロストックス50指数が前営業日比
1.75%上昇しました。また、米国などの株式市場
もギリシャ情勢の進展が上昇要因となりました。
 欧州債も堅調となり、ドイツ10年国債利回りは
0.04%、スペイン10年国債利回りは0.02%、イタリ
ア10年国債利回りも0.02%それぞれ低下しました。
 通貨ユーロは対米ドルで上昇したものの、ギリ
シャ債務協議の合意で状況が落ち着けば米国は
年内に利上げに踏み切れるとの見方から、その
後反落し、前営業日比-1.4%となりました。
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当資料の「留意点」については、巻末をご覧ください。
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