9割がイスラム教徒 人なつっこいインドネシア人

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現
地レポート ◆
インドネシアってどんな国?
9割がイスラム教徒
人なつっこいインドネシア人
斉藤ヨウコ
イ
はかけ離れたものであることに気がつきました。
ヨーロッパでは空港にお祈り場
さいとう ようこ
' ジャカルタ在住
ンドネシアと聞いて、皆さんはどんなイメージを思い浮かべますか。ジ
ャワ島のジャングル、バリ島のリゾート地、町ゆく女性はベールをか
ぶり…。はてさて現実は。首都ジャカルタで暮らす、現地ライターの斉藤ヨ
ウコさんに寄稿いただきました。
が勝手に思い描いていたイスラムというものが現実と
動き出した
E PA
(編集部 )
▼見渡す限りに街が広がる首都、ジャカルタ。ビルの合間を下町が埋め尽くす
学生時代は知ろう
もしなかったアジ
ア。ちょっとした
きっかけでインド
ネシアに住み始
め、今や日本が恋
しくなる暇がない
ほど。世界は広い。
作られたイメージ
ではなく、せめて
身の回りの「新鮮
な情報」を多くの
方にお伝えできれ
ばと思っている
戒律の厳しいとされるイスラム。お酒も飲んではい
けないとされるようですが、
「酔わなければいい」など
自己ルールを持って楽しむ人もいます。1 日に5 回と決
められたお祈りも、仕事で忙しかったりすると「夜に
まとめて」といったこともあるようです。そんなエピソ
ードを聞くごとに、驚き、そして実に人間的な宗教だ
と感じます。
テロについてはやはり過激派と呼ばれる人たちが存
▲遠くはオフィス街。富める者と貧しい者が隣り合わせに存在している
在するものの、他国のイスラム教徒に比べたら寛容的
ともいわれています。これは歴史的に古くは仏教、ヒ
入できた食料油が115 円に値上がりしたため、政府が
ンドゥー教も受け入れられてきたことも関係している
な不思議な魅力を感じます。
“非常にあたたか
貧困層向けに油を安く販売していたのです。ニュース
ようです。私のような外国人が理解され心地よく生活
い人たち”というのが印象で、みな明るく外国
で聞いてはいましたが、数十円違う油にこんなにも人
できているのは、きっとこのあたりのこととも無関係
人を受け入れてくれます。
だかりができるだなんて、信じられない光景でした。
ではないのでしょう。
お隣のシンガポールにも数年住みましたが、
人口の約 9 割がイスラム教徒であることも有名で、
私にとって文字通り「ベールに包まれた」宗教であ
大きな違いはやはり“人と人との近さ”
。シンガ
その数は世界一といわれています。この原稿を執筆し
ったイスラムに対するイメージ。でも日本人でこの貧
ポール人はつき合い方が淡白であるのに比べ、
ている9 月は、イスラム教徒にとって聖なる期間であ
弱さを笑うことができる人はいったいどれだけいるで
インドネシア人はとても人なつっこく接してく
る断食月。人々は日の昇っている間食事はおろか、水
しょうか。世界的に見てもイスラム人口は決してマイ
れるのです。シンガポールに住んだことがある
分も取りません。自分がイスラム教徒であることを自
ノリティではありません。学生時代、ヨーロッパに留
人は大抵同じようなことを言いますから、私だ
覚し、日々の生活に感謝し、弱き者のことを思うので
学していましたが、クラスメイトにはイスラム教徒が
けが感じていることではないでしょう。
す。この時期に故郷の家族に送金する人が多く、彼ら
いましたし、空港にはお祈り場が当然のように用意さ
の家族への思いをうかがい知ることができます。
れていました。中国を訪問した時には意外にもイスラ
ジャカルタの第一印象は? と聞くと「意外と都会 」
。
日本から訪れる人の多くがそう答えます。日本で紹介
日本で生活をしていると、イスラム教徒に触れ合う
されるインドネシアは野生動物いっぱいのジャングル
機会はなかなか少ないかもしれません。私もインドネ
か、未開の地に住む人々に遭遇するようなとんでもな
ム教徒用のレストランが街中に点在していることに驚
かされました。
シアで生活をするまで、恥ずかしながらイスラム教徒
日本で国際化という言葉がいろんな分野で叫ばれて
イコール「黒いベールを深くかぶり、目元だけをあけ
久しくなります。インドネシアから希望を胸に飛び立
インドネシアを数字で見てみましょう。インドネシア
た女性」
、また、近年のテロ行為がイスラム国で繰り広
ったケアワーカーを通して、私たちが学ぶことはきっ
は2 億 3,000 万人の人口を抱える大国である一方、人口
げられてきたことから「自分たちの意思を暴力的に広
と多いと私は信じています。
私が滞在しているジャカルタは日本から飛行機で7
の15 %以上を貧困層が占めるといいます。最低賃金は
める人たち」という一方的なイメージしか持っていま
時間ほど。大通りを高層ビルが埋め尽くし、その間を
月に約 97 万ルピア(約 9,500 円)
。屋台では50 円もあれ
せんでした。
小さな家々が大木の下草のように広がる東南アジアで
ばお昼が食べられます。
い田舎か、はたまた世界中から観光客を集めるリゾー
トの島バリか…。そんなイメージからはじき出される発
展途上国の首都は、現実とはずいぶん違うようです。
イスラム教徒用のファッションショーも
ところがここに来て、その貧弱なイメージはインドネ
も屈指の大都市です。残念ながらジャングルは首都周
貧富の差は街を見ても一目瞭然です。裕福層はエア
シアのイスラム教徒には当てはまらないことに気がつ
辺には見当たらないし、昔ながらの素朴な生活をする
コンの効いたショッピングモールを闊歩し(メイドにブ
きました。まず前者の「黒いベール」ですが、実はイン
人もテレビの中でしか目にすることはできません。
ランド品を抱えさせて!)
、一方でモールの窓から外を
ドネシアのイスラム教徒はスカーフをかぶらない人が
のぞけば、そこはびっちり屋台が並ぶ下町。地面に座
多いのです。また、かぶっていても真っ黒のものを使
って食事をとる人たちを目にすることができます。
用している人はわずかで、デザイン性の高いものをお
そんな大都会ジャカルタも、1 万 7,000 以上ともいわ
れる島々からなる国の一都市。インドネシアは土地そ
れぞれに異なる文化が息づく多様性に富んだ国で、少
今年は世界的な食料・燃料の値上がりのあおりを受
しゃれの一環として楽しむ人が少なくありません。
け、さらに貧困層と裕福層の溝が深まったといわれて
それを象徴するのがイスラム教徒用のファッション
私がジャカルタに住むようになって4 年が経ちます
います。先日も食料油を積んだタンクにものすごい勢
ショー。きらびやかなショーにふさわしい衣装が発表
が、地方都市を訪れるごとにまるで違う国に来たよう
いで群がる人々を見かけました。1 リットル90 円で購
され、人々の関心を集めていることに驚き、また自分
数民族の数も300 は下らないといわれています。
特
集
▼ジャカルタの街中を走るインド製の3輪車、バジャイ。小さな路地は車
が入れないがバジャイならどこまでも入っていける
海
の
向
こ
う
か
ら
や
っ
て
く
る
看
護
師
・
介
護
士
た
ち