巻頭言 「自分だけの何かを求めて」 長浜高等学校長 上田 敏博 これは

巻頭言
「自分だけの何かを求めて」
長浜高等学校長
上田 敏博
もともと人はヒトリです。
「 私 」と い う ヒ ト は 、こ の 世 に 一 人 し
かいません。それは「私だからできること」がある、ということ
でもあります。
し の
だ
と う こ う
こ れ は 、篠 田 桃 紅 と い う 女 性 の 言 葉 で す (P H P よ り ) 。彼 女 は 1913 年 生 ま れ 、
つ ま り 、今 年 102 歳 で す 。今 で も 水 墨 画 な ど の 創 作 活 動 や 、エ ッ セ イ ス ト
として活躍しています。最近「百歳の力」という本を出版し、TVなどで
も取り上げられ、広く知られるようになりました。
もうすこし、彼女の言葉を聞いてみましょう。
人間ほど、ひとりひとり違う生き物がいるでしょうか。十人十
ま
ね
色 ど こ ろ か 、百 人 百 色 。そ れ ぞ れ が 誰 に も 似 て い な い 、誰 に も 真 似
み が
こころざ
ら れ な い 何 か を 持 っ て い ま す 。そ の 何 か を 一 心 に 磨 こ う と 志 す か
ぎり、人は歩み続けることができる、と感じます。
ま
ね
私たちは「誰にも真似られない何かを持っている」と、自分に対しては
なかなか思えないものです。そのために、ことさら特別な何かを得ようと
あ せ
な い こ う て き
し て 焦 っ た り 、そ の 圧 迫 感 に 疲 れ て し ま っ て 、も う 何 も し た く な い と 内 向 的
になったりする場合もあります。
でも、逆に人間はどんなに真似をしようと思っても、他人と同じ人間に
し
ご く
なることはできませんよね。そう考えると篠田さんの話は、至極当然のこ
とだともいえるでしょう。
だから、私たちは自分にしかない、自分の持ち味を探し出して、それを
うらや
く や
磨くしかないのです。他人を羨んだり、自分に無いものを悔しがったりし
てもしかたありません。自分の持ち味を理解して、一生懸命それを磨き続
け る こ と が 、「 自 分 を 生 き る 」 こ と に な り ま す 。
そのためには、まず自分を知らなくてはなりません。
で も 、 こ れ が な か な か 難 し い 。「 こ れ が 自 分 だ ! 」 と 思 っ て い る 自 分 は 、
ま わ
実は「思われたい自分」であり、周りの人はそう思っていないことがよく
あります。
皆 さ ん は 、長 浜 高 校 に い る 間 に 、本 当 の 自 分 と は 何 か を よ く 見 つ め 、
「自
分を生きる」道を模索してください。他人を真似たり、羨んだりすること
は 、自 分 の 人 生 を 他 人 に 決 め さ せ る こ と と 同 じ で す 。た と え 親 で あ ろ う と 、
教師であろうと、あなたの人生を他人に決めさせてはいけません。人生の
主役はあなた自身なのだから、最後に決定するのは、あなた自身でなくて
はならないのです。
それを決める過程を、高校では「進路指導」と呼んでいます。