「ネパールお茶事情」理事長 マナンダール・マダーブ・ナラエン

Namaste vol.278
ネパールお茶事情
特定非営利活動法人ミランクラブジャパン
理事長 マナンダール マダーブ ナラエン
ネパールでお茶と言えばミルクティー
を指す。茶葉を煮出し香辛料、ミルクを
入れ砂糖をたっぷり加え、一緒に煮て作
る。皆さんは日本で、インド・ネパール
レストランで、マサラティーとかチャイ
の呼び名でミルクティーを飲む機会が何
度かあったと思う。日本で飲む場合は自
分で砂糖を入れ甘さを調節できるが、ネ
パールではもう砂糖が入っていて、とて
も甘い、あま〜いものとなる。最近は健
康志向でこの限りではなくなっているの
かもしれないが。朝一番、食後や寛ぎの
時、来客等で飲むことが多い。
ミルクティーは作っている間、ミルク
が吹きこぼれないよう、そばに居なけれ
ばならないし、火を小さくしたからとい
って離れてしまうのは、万が一の時は危
ないからできない。茶葉はミルクを吸っ
てしまうし、鍋を洗うのも手がかかる。
そんなことからか、誰かがこんな贅沢な
飲物は王様の飲物みたいと言っていた。
ネパールでミルクティーが飲めるのは
家族安泰の印で、不幸があると一年間は
ミルクティーを飲めない。代わりにブラ
ックティー(ストレートティー)を飲む。
コーヒーは一般の家庭では飲む習慣がな
い。
昔は紅茶に入れる香辛料は各家庭で手
作りしていたものだが、今はすでにブレ
ンドされたマサラがティーマサラとして
売られている。そして最近ではマサラが
紅茶に混ぜられてマサラティーとして売
られている。本当に便利になったものだ。
そしてこれも最近だがフルーツフレーバ
ーティーもある。
民間の工夫と活力は国の政策の先を行
っているように感じてしまう。
ネパールでは町を歩くと 4~5 分おきに
はお茶屋がある。喫茶店とは違い、もっ
と小規模なものだ。自宅の一階を店にし
ていたり、道路の空きスペースでの屋台
だったりする。小さな店で 10 名程座れ
るが、店の前で立ったまま飲んで立ち去
る人もいれば、用意されている小さな椅
子に腰掛け、他の客とのおしゃべりに花
が咲き、長時間過ごす人もいる。お茶屋
は地域の情報を得るにはもってこいの場
所である。忙しくなければ店主もおしゃ
べりに加わる。ネパール人は政治や社会
に関心が高く、おしゃべりが大好きな人
懐っこい国民性だ。お茶屋は人々の生活
に欠かせない小さな集会場である。
店によっては出前をしてくれるところ
もあり、紅茶一杯は約 20 ルピー(20 円)
程度で、近ければ出前してもらっても同
じ値段である。グラスホルダーがいくつ
も付いている丸いお盆に乗せられたミル
クティーは厚みのあるグラスに入ってい
る。やはり専門店だけあって、家庭のも
のや日本のネパールレストランのより格
段に美味しい。大きな鍋で継ぎ足し、継
ぎ足しで作っていて香辛料の香りがしっ
かりと付き、絶えず煮出している旨味が
でているのかもしれない。
お茶屋は役場の構内や入口近くにもあ
って、職員たちが利用したり役場に来た
人たちが利用したりする。ちょっとした
ネパール菓子、チョコレートやビスケッ
ト等を置いてあるところもある。ミルク
ティー中心に販売されているが、昼とも
なると軽食を出してくれるところもある。
利用者のニーズに応えてか書物、和紙(ネ
パール紙)、コピー機もあり、証明写真を
撮ってくれたりもする。
さてネパールで飲まれている紅茶はイ
ラム産が殆どで、国内での消費はもちろ
ん、今や輸出産業の一つとなっている。
イラム・ティーがブランド化されたのは
3、40 年前のことである。それはダージリ
ンやアッサム地方の茶質とほぼ同じで、
値段も比較的安価のため広く普及した。
イラム地方はお茶の栽培に適している
気候のため、夏は涼しく、避暑で訪れる
観光客も増えている。
… 続く
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