シンガポールの農業事情 ~生産性がキーワード~ シンガポール事務所 シンガポールは国土が狭く、土地収用法も完備されているため、国土の活用は国の 管理下にあります。最近は、高付加価値産業への土地の活用が進んでおり、単純な製 造工場などは、マレーシアやインドネシアなどの国外へ移行しています。 農畜産業用の土地利用は約 800ha(国土の約1%)で、そのほとんどが北部に集 中しています。 シンガポール政府は、卵、食用の魚、葉もの野菜については自給率目標を掲げてい ますが、米の生産は全く考えておらず、輸入業者に一定の米を保存米として提出させ ることで備蓄米として蓄える方針を取っています。限られた土地を利用するために、 選択と集中を行う政府の姿勢が窺えます。 表 シンガポールの自給率目標と現状 政府目標の自給率 2013 年の自給率 卵 30% 26% 食用の魚 15% 8% 葉もの野菜 10% 8% 生産されていたトマト 当事務所では、トマトの栽培試験の現場を視察する機会がありました。農場の一部 を利用して、土ではない苔のようなものに栄養分を添加し育成する水耕栽培を行って いました。トマトは、水が十分に与えられない環境に置かれるとストレスのため糖度 が増す性質があり、近隣国から輸入されるトマトと差別できるフルーツトマトの栽培 を目指しており、これまでに 7 種類の生産実験をしたそうです。トマトの栽培適温 は 30℃以下ですが、生産現場は 35℃程度あり、生産はできるが難しい環境だそう です。また、農薬が効かない害虫を手作業でとっており、害虫駆除も今後の課題だそ うです。 シンガポールでは少ない土地を有効活用するために、生産性の高い技術に関する投 資や企業の誘致に力を入れているそうです。日本でも限られた平地で農産物を生産す る必要性から、生産性を高めてきた結果が現在の日本品質に繋がっています。こうし た面から、シンガポールにとって日本の技術は魅力的に映るのかもしれません。 (太田所長補佐 浜松市派遣)
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