ベースメタル国際需給動向

ベースメタル国際需給動向
調査部金属資源調査課
1. ベースメタルの国際市況
(2014年10〜11月)
10月は、中国の国慶節休暇
(10/1~7)を経た後、月
半ばに欧州の9月鉱工業生産が2012年9月以来の低水準
を記録、中国の9月CPI上昇幅が2010年1月以来の低水
準(前年比1.6%上昇)
、米国の小売売上高が減少
(前月
比0.3%減、予想0.1%減/前月0.6%増)といった経済指
標の悪化により世界経済への懸念が高まり、ベースメ
タル価格は軒並み下落した。後半に入ると、中国の
Q3GDPが約6年ぶり低水準であったものの予想を上回
った(7.3%増)こと、中国の10月製造業PMI(HSBC発
表)が3か月の高水準に達したこと
(50.4、予想及び前
月50.2)等から僅かに値を戻した。銅は、これら経済
指 標 に 加 え て ペ ル ーAntamina鉱 山 と イ ン ド ネ シ ア
Grasberg鉱山でのストライキ懸念が支援材料となり、
下落前の水準で越月した。
参考として図1-1に2014年10~11月の為替相場を、
図1-2に欧米中の製造業PMI推移を示す。
図1-1. 為替相場(2014年10~11月)
(各種報道を基に作成)
2015.1 金属資源レポート
31
(510)
ベースメタル国際需給動向
● 銅:9月末に続き6月以来の安値圏である6,700 US$
台でスタートし、月半ばには更に6,630 US$/tへ下
落した。その後下落前の水準である6,800 US$ 台
へ値を上げたが、11月には再び6,600 US$ 台に下
落した。下旬まで6,600 US$ 台後半~6,700 US$台
前半を維持したが、月末には6,500 US$ 台まで値
を下げた。
● 鉛:10月初旬まで2,050~2,100 US$/tを推移して
いたところ、半ばに一時急落し2,000 US$/tを割り
込んだ。その後、月末まで2,000 US$/t前後を推移
した。11月初旬以降はもみ合いながらやや上昇し
2,000 US$ 台超を維持した。
● 亜 鉛:2,200 US$ 台 半 ば で ス タ ー ト し、 す ぐ に
2,300 US$ 台へ上昇したが、月半ばに2,200 US$ 台
へ急落した。月末にかけては回復し2,300 US$ 台
に値を戻したものの、11月に入り再び急落した。
その後は2,200~2,300 US$/t圏をもみ合い推移す
る中、月末にはやや下落基調となり、2,200 US$/t
際で越月した。
● ニ ッケル:初旬にかけて16,000 US$/t前半から後
半へ上昇したが、月半ばに急落し、一時14,650
US$/tまで値を崩した。月末から11月中旬にかけ
ては15,000 US$ 台半ばへ回復し、下旬には急落前
の水準に戻した。
月末はやや下落基調となったが、
16,000 US$ 台を維持した。
11月は、10月末の米国QE3終了に伴うドル高に加え、
中国の10月製造業及びサービス業PMI(国家統計局発
表)がともに前月比低下した
(製造業:50.8、予想51.2/
前月51.1、サービス業:53.8、前月54.0、9か月ぶり低
水準)こと、また欧州委員会がユーロ圏成長率見通し
を下方修正した(2014年0.8%、2015年1.1%/前回予測
2014年1.2%、2015年1.7%)ことから、初旬に再び下落
に転じた。その後は、米国の10月製造業PMIの3年半
ぶり高水準、Q3GDP改定値の上方修正
(3.9%、速報値
3.5%)の一方で、中国の10月経済指標の軒並み悪化
(貿
易統計輸入:前年同月比4.6%増(予想5.5%増、前月7%
増)、輸出:11.6%増
(予想10.6%増、前月15.3%増)、
鉱工業生産:前年同月比7.7%増
(予想8.0%増/前月
9.0%増)、小売売上高:前年同月比11.5%増(予想及び
前月11.6%増)
、固定資産投資成長率:15.9%増
(予想
16%増、13年ぶり低水準)
)
、欧州Q3GDP成長率速報
値の2四半期連続低下(前期比0.2%、前年比0.8%)
とい
った強弱材料が拮抗しつつもドル高がやや下方圧力と
なり軟調に推移した。月末には、原油価格の急落がベ
ースメタルにも波及し、特に銅は10月半ばの下落時よ
りも一層値を下げ、中国債券市場のデフォルト懸念が
生じた3月以来の安値圏である6,500 US$ 台で11月を
終えた。
ニッケルについては、11月中旬には一時コロンビア
Cerro Matoso鉱山でのストライキ懸念から続伸する場
面も見られた。
鉱業動向
2014年10~11月のベースメタル相場は、中国と欧州
の景気後退懸念による世界経済の先行き不透明感、米
国の量的緩和(QE3)終了等に伴うドル高、更に月末に
は原油安の影響を受け、総じて軟調に推移した。
鉱業動向
ベースメタル国際需給動向
図1-2. 欧米中の製造業購買担当者景況指数(PMI)推移(2012年11月~2014年11月)
(各種報道を基に作成)
注 :CFLP(中国物流購買連合会)PMI の調査対象は、国営企業等大企業が多いとされるのに対し、
HSBC(香港上海銀行)発表 PMI の調査対象は、中小企業が多いとされる。
2. 銅の価格と需給動向
銅 —
—
1. LME価格と在庫
図2-1に2014年10~11月のLME銅現物価格と同在庫
の推移を示す。
10月の銅価格は6,755.00US$/tで月初をスタートした
が、中国の国慶節入りによる薄商いの中、米国の9月
期PMIが下振れしたこと
(マークイット製造業PMI確
報値、米供給管理協会
(ISM)の製造業PMI)等を受け、
10 月 2 日 に は 6,700US$/t を 割 り 込 み、 翌 3 日 に は
6,665.00US$/ tにまで値を下げた。その後一時的にド
ル高が緩んだことから6日には再び6,700US$台を回復
したが、15日に発表された9月期の米中の経済指標(米
小売売上高、中国CPI)が予想と前月実績ともに下回
ったため、16日には6,630.00US$/tへと大きく値を下げ
た。下旬は、23日に発表された中国のHSBC製造業
PMI
(10月速報値)が50.4と3か月ぶりの高水準となっ
たことや、Antamina銅鉱山とGrasberg銅鉱山でのスト
開始予告等を受け、価格は27日に6,800US$台に回復。
その後は、30日に発表されたQE3終了決定により一時
的に値を下げたが、6,835.50US$/tで越月した。
11月は6,801.00US$/tでスタートしたが、4日にユー
ロ圏成長見通の下方修正が発表され、また5日には10
月のHSBCサービス部門PMIが3か月ぶりの低水準とな
ったこと等を受け、価格は6,646.00US$/tまで下がった。
その後は、ドル為替市場と米中の景気観測を受けた
6,700US$/tを挟むレンジでのもみ合いが中旬まで続い
た。下旬は、21日に中国人民銀行が約2年4か月ぶりの
利下げを実施したことが好感され、価格は6,800US$近
くまで上昇したが、Antamina鉱山のストライキ終結等
により騰勢は持続せず、さらに28日には石油価格急落
に伴うコモディティ価格下落の影響を受け、6,600US$
台を割り込む6,515.50US$/tにまで値を下げ、12月1日
の6,400US$台割れへと下げ足は続いた。
32
2015.1 金属資源レポート
(511)
<月間平均値(US$/t)>
2012 年
2013 年
2014 年
1月
8,043
8,049
7,295
2月
8,423
8,070
7,152
3月
8,457
7,663
6,668
4月
8,260
7,203
6,668
5月
7,920
7,229
6,884
6月
7,420
7,004
6,806
7月
7,589
6,893
7,100
8月
7,492
7,182
7,011
9月
8,068
7,161
6,874
10 月
8,070
7,189
6,739
11 月
7,694
7,066
6,701
12 月
7,963
7,203
―
1 ~ 12 月
7,950
7,322
―
図2-1. 銅:LME価格と在庫の推移(2014年10~11月)
(出典:LMEデータを基に作成)
●当該期間中最高値:6,859.50US$/t(10月28日)
●当該期間中最安値:6,515.50US$/t(11月28日)
図2-2. 世界の銅需給推移
(2011年9月~2014年9月)(出典:ICSGデータを基に作成)
図2-3. 中国の銅需給推移
(2011年9月~2014年9月)(出典:ICSGデータを基に作成)
2015.1 金属資源レポート
33
(512)
銅
— —
国際銅研究会
(ICSG)による2011年9月~2014年9月
までの世界の銅需給推移を図2-2に、うち中国につい
て図2-3に示す。
世界の鉱山生産量は、2012年下期から緩やかな増産
傾向にあり、2013年2月には一時132万tまで落ち込ん
だものの、同年7月には150万t台に回復し、その後も
生産量は増加。2013年12月に162.7万tまで拡大した後、
中国春節等の季節変動により落ち込みを見せたが、
ベースメタル国際需給動向
2. 需給
2014年7~8月は154万t前後で推移している。また、地
金生産量も2012年下期からの増産局面が続き、2012年
12月には181.3万tと180万t台に到達。その後、季節変
動により一旦170万t台に戻すが、2013年10月には再度
180万t台を回復(184.0万t)
。中国春節の影響で2014年2
月は一時的に落ち込んだが
(168.7万t)
、その後も生産
量は堅調に増加を続け、2014年9月には196.7万tにまで
拡大し、200万t台を窺う勢いとなっている。
地金消費量に関しては、2013年3月以降、生産量増
加を上回る拡大傾向が見られ、2014年4月には206.5万
tにまで拡大した。その後は調整局面に入り、8月は
188.5万tまで減少した。
中国の需給に関しては、鉱山生産量は2013年2月に
は一時12万tを下回ったものの、5月には14.4万tまで回
復。しかしその後、拡大の勢いは継続せず、再び減少
に転じ、2013年12月までは12.8万t前後で推移。2014年
1月には再び13万t台に回復し、2月は春節の影響で12.0
万tにまで一時的に下がったが、9月には13.6万tとなっ
た。銅地金生産量は2013年後半より拡大傾向にあり、
同年10月には60万t台にまで増加した。2014年2月は春
節の影響で52.9万tに一時下がったが、9月は71.3万tに
まで回復した。銅消費量に関しては、2014年5月以降
は90万t前後で推移している。
鉱業動向
LME銅在庫量は、2013年6月下旬より減少局面が続き、
2008年以来の低い水準にあったが、8月の14万tを底に
増加傾向に転じている。10月の特筆すべき動きとして
は、青島港での多重担保問題を契機とした規制強化に
伴い、在庫の仕向地が中国の保税倉庫からアジアでの
LME倉庫へ変更され、アジアでの在庫量増加が見ら
れる。10月1日時点のLMEアジア倉庫在庫は、13,100t
であったが、10月30日には20,450tに増加した。内訳を
見ると、釜山倉庫は10月1日時点で6,700tであったが10
月30日時点では11,250tへ増加、またジョホール倉庫
(マレーシア)は同3,900tから6,700tへ増加した。11月
は概ね16万t台で推移した。
●10月初LME在庫:152,275t
●11月末LME在庫:164,300t
鉱業動向
<供給・鉱山生産>
国際銅研究会(ICSG)が発表した2014年1~9月期の
鉱山生産量は、対前年比2.5%増の1,362.7万tとなった。
内訳を見ると精鉱が同2.6%増の1,073.3万t、SxEwは
同2.4%増の289.4万tであった。上位生産国11か国の鉱
山生産量を表2-1に示す。
ベースメタル国際需給動向
銅 —
—
当該期間中に生産量計
(精鉱とSxEw合計)が対前年
同期比で減少している国は豪州、インドネシア、ザン
ビアであるが、インドネシアについては精鉱輸出許可
証の発行遅延等により7月中旬まで精鉱輸出が中断さ
れたことが影響している。またザンビアについては、
Lumwana鉱山でのコンベヤー損傷
(2014年4月発生)に
よる暫定操業や、Konkola鉱山での施設改修
(同7月発
生 )に よ る 生 産 量 減 少 が 影 響 し て い る。 な お、
Lumwana 鉱 山 で の 暫 定 操 業 は 同 9 月 に 復 旧 し、
Konkola鉱山での施設改修は同8月に完了した。
生産が大きく増加した国としてはカナダ
(前年同期
比14.4%増)
、DRコンゴ
(同13.1%増)
、米国
(同10.5%
増)
、が挙げられる。カナダでは、Mount Milligan鉱
山やGibraltar鉱山の生産拡大が寄与している。また
DRコンゴではKipoi銅鉱山で5月よりSxEwプラントに
よる銅生産が開始されたことが拡大の牽引となってい
る。米国の増加は主にBingham Canyon鉱山での生産
回復分(昨年はQ2に地滑り事故が発生)や、Morenci鉱
山での増産によるものである。
2014年10~11月の銅の鉱山生産をめぐる主な動向は
以下のとおりである。
・2014年9月23日、加Lundin Mining Corp.は、MI州(ミ
シガン州)アッパーペニンシュラ地域に位置する
Eagleニッケル・銅鉱山における精鉱の生産開始を
発表した。10月前半にも最初の精鉱を出荷し、2015
年Q2までにフル生産に達する予定。2015~2017年
の3年間を通して、年間平均でニッケル23,000t、銅
20,000tを含む精鉱を生産する計画となっている。
・豪 Tiger Resoureces 社 は、2014 年 10 月 7 日 付 で、
Kipoi銅鉱山
(DRコンゴ)のSxEw生産が2014年5月の
生産開始から11週間でフル生産に達したと発表し
た。2014年8月の銅地金生産量は予定生産量の97%
に相当する2,015tで、9月の生産量は2,104 tで予定量
の101%に達した。2014年末までに銅地金1.4万tを
生産予定で、初年度のフル生産量は2.5万tの見通し。
・Minera Corona社
(本社:ペルー)
は、Yauricocha銅・
鉛・亜鉛・銀鉱山
(ペルー)の2014年Q3における生
産量を発表し、銅は前年同期比26.6%増の1.9百万lb
(約862t)
となった。
・2014年10月29日付けでAntofagasta社
(英国)
が発表し
た2014年Q3の生産状況報告によると、Antofagasta
Minerals社の同期銅生産量は169,200tであり、前期
Q2の生産量178,800tと比較して5.4%の減少となっ
た。2014年1~9月の銅生産量は、前年同期比3.9%減
の517,300tで あ っ た。Q3の 生 産 量 の 減 少 は、Los
34
2015.1 金属資源レポート
(513)
表2-1. 主要生産国別鉱山生産量(単位:千t)
2013 年
2014 年
1 〜 9 月期計 1 〜 9 月期計
精鉱
豪州
チリ
DR コンゴ
26.0
30.5
17.4%
736.6
715.0
− 2.9%
463.7
530.0
14.3%
SxEw
0.0
0.7
−
計
463.7
530.8
14.4%
精鉱
2,793.6
2,895.7
3.7%
SxEw
1,443.0
1,359.0
− 5.8%
計
4,236.6
4,254.7
0.4%
1,138.0
1,143.0
0.4%
SxEw
37.4
44.0
17.6%
計
1,175.4
1,187.0
1.0%
精鉱
146.8
113.0
− 23.1%
SxEw
463.4
577.5
24.6%
計
610.2
690.4
13.1%
339.6
263.7
− 22.3%
1.0
−
精鉱
インドネシア SxEw
計
メキシコ
339.6
264.7
− 22.0%
精鉱
236.0
259.5
10.0%
SxEw
120.1
125.0
4.1%
計
356.0
384.5
8.0%
934.9
966.1
3.3%
精鉱
ペルー
SxEw
68.6
63.7
− 7.1%
計
1,003.5
1,029.9
2.6%
精鉱
ロシア
米国
ザンビア
536.0
550.0
2.6%
SxEw
7.5
7.5
0.3%
計
543.5
557.5
2.6%
精鉱
589.8
668.7
13.4%
SxEw
349.7
369.9
5.8%
計
939.5
1,038.6
10.5%
精鉱
411.8
370.0
− 10.2%
SxEw
147.0
147.3
0.2%
計
558.8
517.3
− 7.4%
精鉱
世界計
− 3.7%
計
精鉱
中国
684.5
SxEw
精鉱
カナダ
710.5
増減比
10,464.9
10,732.7
2.6%
SxEw
2,827.5
2,894.2
2.4%
計
13,292.4
13,626.9
2.5%
(出典:ICSGデータを基に作成)
Pelambres銅鉱山においては死亡災害による操業一
時中止および鉱石条件の悪化
(硬堅化)
が、Centinela
銅鉱山硫化鉱事業
(旧Esperanza銅鉱山)においては
選鉱施設の小規模定期補修が、Centinela銅鉱山酸化
鉱事業
(旧El Tesoro銅鉱山)においては2013年Q4に
採掘を開始したMiradorピット産出鉱石品位の低下
および実収率の低下が影響したとしている。
表2-2. 主要生産国別地金生産量(単位:千t)
種別
SxEw
豪州
チリ
一次
13.5%
一次
表2-3. 主要消費国別地金消費量(単位:千t)
2013 年
1 〜 9 月期計
2014 年
1 〜 9 月期計
増減比
米国
593.3
653.0
10.1%
2,036.3
2,012.0
− 1.2%
37.4
44.0
17.6%
一次
3,203.9
3,770.2
17.7%
二次
1,535.9
1,873.1
22.0%
計
4,776.9
5,687.3
19.1%
SxEw
435.6
554.0
27.2%
26.3
30.0
14.3%
一次
461.9
583.9
26.4%
一次
298.5
292.2
− 2.1%
二次
222.6
215.5
− 3.2%
521.1
507.7
− 2.6%
423.9
565.8
33.5%
423.9
565.8
33.5%
918.8
974.1
6.0%
一次
計
186.2
193.0
3.6%
1,105.0
1,167.0
5.6%
一次
368.9
368.6
− 0.1%
二次
81.8
74.7
− 8.6%
− 1.6%
二次
450.7
443.4
一次
334.3
349.9
4.7%
二次
85.9
79.0
− 8.0%
計
420.2
428.9
2.1%
SxEw
7.5
7.5
0.3%
一次
486.2
496.1
2.0%
二次
160.1
157.5
− 1.6%
計
653.7
661.1
1.1%
SxEw
349.7
369.9
5.8%
一次
368.9
450.8
22.2%
二次
34.5
34.7
0.7%
中国
6,870.3
8,175.3
19.0%
計
753.1
855.4
13.6%
米国
1,382.2
1,367.2
− 1.1%
SxEw
174.7
170.8
− 2.2%
860.8
885.9
2.9%
一次
247.6
205.8
− 16.9%
ドイツ
日本
726.9
801.1
10.2%
韓国
527.1
552.0
4.7%
ロシア
488.9
474.8
− 2.9%
インド
341.4
349.1
2.3%
トルコ
321.6
348.0
8.2%
世界計
15,653.4
17,393.6
11.1%
ザンビア
世界計
計
423.0
376.6
− 11.0%
SxEw
2,827.6
2,894.2
2.4%
一次
9,909.7
10,807.8
9.1%
二次
2,782.5
3,113.4
11.9%
15,520.1
16,815.5
8.3%
計
(出典:ICSGデータを基に作成)
(出典:ICSGデータを基に作成)
2015.1 金属資源レポート
35
(514)
銅
— —
ロシア
13.2%
− 5.8%
計
ポーランド
365.3
395.8
計
韓国
322.8
1,359.0
一次
日本
17.4%
348.8
計
インド
30.5
ベースメタル国際需給動向
<需要・地金消費>
2014年1~9月期の世界の地金消費量は、1,739.4万t
と前年同期比11.1%増加した。主要消費国の銅地金消
費量を表2-3に示す。
世界消費の約45%を占める中国の消費量は前年同期
比19.0%増と増加となり、世界需要全体を牽引する形
となった。しかしながら中国による需要拡大にも減速
の気配が見え始めており、2014年1~7月期は対前年同
期比で21.4%の増加であったことを考慮すると、成長
ドイツ
26.0
1,443.0
計
2014年10~11月の銅の地金生産を巡る主な動向は以
下のとおりである。
・11月12日、米Freeport-McMoRan Inc.
(Freeport社)
がAZ州
(アリゾナ州)
で操業するMiami銅製錬所にお
いて火災事故が発生し、操業を停止した。Miami銅
製 錬 所 は、 米 国 全 体 の 生 産 量 の 約14 % を 占 め る
180,000t/yの生産能力を有している。12月7日に生産
が再開された。
増減比
SxEw
SxEw
DR コンゴ
2014 年
1 〜 9 月期計
計
計
中国
2013 年
1 〜 9 月期計
鉱業動向
<供給・地金生産>
2014年1~9月期の世界の地金生産量
(SxEw、一次
地金、二次地金の計)は、前年同期比8.3%増の1,681.6
万tとなった。主要生産国別の地金生産量を表2-2に示
す。
前年同期比で減少しているのは、
生産上位からチリ、
ドイツ、韓国、ザンビアであり、チリではEscondida
鉱山の鉱石品位低下等により同1.2%減、韓国では温
山製錬所で6月に発生した水蒸気爆発事故等の影響で
同1.6%減となった。ザンビアでは主力のKonkola鉱山
での施設改修による生産減が影響している。
生産が増加した国は、生産上位から中国、日本、米
国、DRコンゴ、インド、豪州等となっている。前年
同期比33.5%の大幅増加となったインドは、国内最大
手のスターライト銅製錬所の生産回復
(2013年Q2、亜
硫酸ガス漏洩により生産一時停止)
が寄与している。
鉱業動向
がやや減速していることがデータからも窺える。この
背景として銅の主要用途である電線分野において、中
国電網
(中国二大送電会社の一つ)
の関係企業に対する
汚職摘発が2014年8月になされた影響で、国内の電線
需要が冷え込んでいることも影響している模様であ
る。
<需給バランス>
2014年9月までの世界の銅の需給バランスとLME現
物価格及びLME在庫の推移を図2-4に示す。ICSGによ
るデータは見かけ消費量であり、中国での見かけ消費
量と実際の需要量との乖離が世界の正確な需給バラン
スのデータを捕捉する上での障害となっているため、
ICSGは2014年1月のプレスリリースより、中国での保
税倉庫での在庫分を勘案した需給バランスの数値を公
表している。2014年1~9月期の見かけによる需給バラ
ンスは、57.8万tの供給不足となった。中国保税倉庫で
の在庫分を考慮したバランスは、同期間中に中国では
在庫からの取り崩しが3万t発生したとの推測の下、
61.1万tの供給不足と発表されている。
ベースメタル国際需給動向
銅 —
—
(出典:LME、ICSGデータを基に作成)
図2-4. 銅需給バランス(2009年1月~2014年9月)
3. 今後の需給見通し
LMEの日系唯一のリングメンバーであるTriland
Metals社 が2014年10月 に 発 表 し たQuarterly Metals
Reportによれば、2014年の地金生産量 は2,230万t、地
金消費量 は2,250tと予測され、需給バランスは20万t
の供給不足が見込まれている。2015年は、需要の伸び
が鈍化する予測から、15.8万tの供給過剰に転じると
予測されている。
ま た、ICSGが2014年 秋 季 大 会
(10月 )で 発 表 し た
2015年までの銅需給予測を表2-4に示す。2014年のバ
ランスに関し、本年4月の春季大会での予測では40.5
万tの供給過剰が予測されていたが、秋季大会の発表
では消費量が上方修正された結果、30.7万tの供給不
足に転じた。
2015年については、新規鉱山や既存鉱山の生産拡張
が順調に進むとの想定により39.4万tの供給過剰を予
測している。
表2-4. 銅需給の実績と予測
2013 年実績
鉱山生産量
2014 年予測
(2014 年春季)
(単位:千t)
2014 年予測
(2014 年秋季)
2015 年予測
(2014 年秋季)
18,059
19,330
18,579
19,816
地金生産量(a)
20,991
22,362
22,136
23,086
地金消費量(b)
21,273
21,957
22,443
22,692
需給バランス(a-b)
▲ 282
+405
▲ 307
+394
(出典:ICSGデータを基に作成)
36
2015.1 金属資源レポート
(515)
3. 鉛の価格と需給動向
1. LME価格と在庫
<月間平均値(US$/t)>
2013 年
2014 年
2,094
2,340
2,149
2月
2,126
2,376
2,110
3月
2,061
2,183
2,056
4月
2,063
2,030
2,088
5月
1,999
2,028
2,097
6月
1,855
2,104
2,103
7月
1,876
2,048
2,189
8月
1,896
2,173
2,237
9月
2,169
2,088
2,146
10 月
2,153
2,111
2,038
11 月
2,179
2,090
2,024
12 月
2,276
2,133
―
1 ~ 12 月
2,061
2,141
―
ベースメタル国際需給動向
2012 年
1月
鉱業動向
鉛
— —
図3-1に2014年10~11月のLME鉛現物価格と同在庫
の推移を示す。
当該期間のLME鉛価格は、10月は中国需要の減退
懸念から軟調、一転11月は米国経済の回復が一服した
ことや、中国人民銀行が利上げを発表したことを背景
に上昇基調にあった。中国の国慶節による休場が続い
た10月前半においては、9月の2,050US$/t前後の安値
圏での横ばい推移からやや回復する動きを見せ、7日
に2,100US$/tに迫る2,095US$/tまで上昇した。しかし、
10月中旬以降は再び下落傾向に転じ、10月16日には、
中国をはじめ、欧州や米国で発表された経済指標が落
ち込んだことを背景にベースメタル価格は急落、鉛も
1,956US$/tと2013年6月以来の安値となった。10月末
にかけては2,000US$/t前後で揉み合い、11月初旬には
やや落ち込んで再び1,975US$/tまで下落したものの、
その後は徐々に回復し、11月後半は2,050US$/tを挟む
レンジで推移した。11月28日には、原油価格の下落や
ドル高ユーロ安が進行したことを受けて鉛価格も落ち
込み、2,027US$/tで越月した。
●当該期間最高値:2,095US$/t
(10月7日)
●当該期間最安値:1,956US$/t
(10月16日)
当該期間におけるLME鉛在庫は、11月に在庫減が
続き、10月初めから11月末までに7,750tの減少となっ
た。10月は22.5万tから22.4万tまで小幅に減ったもの
の、9月の在庫水準を維持した。11月に入り、一時
22.7万tまで増加したものの、11月5日から大幅な減少
が続き、11月13日までに1万200t
(世界消費量の0.4日
分)減の21.6万tとなった。11月半ば以降は小幅積み
増しが続き、月末までにおよそ1,500t増加した。
●10月初LME在庫:
225,525t
(キャンセルワラント比率2.1%)
●11月末LME在庫:
217,775t
(キャンセルワラント比率4.2%)
2. 需給
国際鉛亜鉛研究会
(ILZSG)による2011年10月~2014
年10月までの世界鉛需給推移を図3-2に、うち中国の
推移を図3-3に示す。
図3-1. 鉛:LME価格と在庫の推移(2014年10~11月)
(出典:LMEデータを基に作成)
世界鉱山生産は2013年11〜12月にやや大きく減産
し、その後2014年10月までに緩やかな回復基調にある
ものの、現状、前年に比べてやや生産量が落ちており、
2014年10月までの鉱山生産量は、前年同期に比べて
1.7%減の430.7万tに留まった。
中 国 の2014年 鉱 石 生 産 量 も 前 年 同 期 を 下 回 り、
237.9万t(前年同期比-9.1%)となった。中国の他、イン
ド及びボリビアでは鉱山生産量が減少しており、
米国、
ペルー、ロシアで増加傾向にある。一方、鉛地金生産
については、中国、インド、韓国で増産傾向、米国、
英国、日本で減産傾向にある。
2015.1 金属資源レポート
37
(516)
鉱業動向
ベースメタル国際需給動向
(出典:ILZSGデータを基に作成)
図3-2. 世界鉛需給推移(2011年10月~ 2014年10月)
鉛 —
—
(出典:ILZSGデータを基に作成)
図3-3. 中国鉛需給推移(2011年10月~ 2014年10月)
<供給・鉱山生産>
2014年10~11月の鉛の鉱山生産をめぐる主な動向は
以下のとおりである。
・安泰科が実施した国内の中小規模鉛・亜鉛鉱山企業
に対する調査研究の結果によると、現在中国国内企
業の稼働率は60~65%の低水準、月間生産量は100
~300千tである。中央政府が、鉱山の整理にテコ入
れしており、鉛・亜鉛鉱山の新規建設に係る基準を
38
2015.1 金属資源レポート
(517)
大幅に引き上げるなど規制を強めた結果、既存の中
小規模鉱山の採掘年数が増え、品位の低下や採掘難
度・コストの上昇を招いている。
・豪Variscan Mines社は2014年11月10日付で、フラン
ス北部ブルターニュ地方において同国3件目となる
探鉱権を取得したと発表した。同社はサンプリング
調査と空中物理探査を計画し、有望地点を絞り込む
としている。
<需給バランス>
2014年10月までの世界の鉛需給バランスとLME現物
価格及びLME在庫の推移を図3-4に示す。9月は、10.6
千tの供給過剰、10月は10.0千tの供給不足となった。
2014年累計では、22.1千tの供給過剰となっており、供
給不足の続いた2013年に比べてバランスしている。
LME在庫についても、足元ではやや減少しているも
のの、2014年上半期で減少してきた在庫が後半になっ
て増加に転じており、昨年同月と同じ水準まで戻して
いる。
鉱業動向
ベースメタル国際需給動向
鉛
— —
(出典:LME、ILZSGデータを基に作成)
図3-4. 鉛需給バランス(2009年1月~2014年10月)
3. 今後の需給見通し
ILZSGが2014年10月の国際非鉄研究会秋季大会で発
表した2014年及び2015年亜鉛需給予測を表3-1に示す。
同会合の予測では、2014 年は、豪州及び中国での増
産により鉱石生産量は566万tに増え、製錬での地金生
産量も1,129万tまで増えるとしている。米国で、Doe
Run社の製錬所閉鎖による影響で減産すると予想され
る一方、イタリアやロシア、ベルギー、韓国で増産と
なる見通し。鉛地金消費量は、主に中国や米国で自動
車販売台数増加が見込まれることが影響し、1,132.8万
tと予想される。ILZSGの秋季大会の詳細については、
カレント・トピックス
『ILZSG鉛亜鉛需給予測、鉛亜
鉛供給不足継続も2015年不足幅縮小-2014年秋季国際
鉛亜鉛研究会(ILZSG)参加報告(1)-』を参照されたい。
一方、足元では中国経済成長スピードの減速が市場
予想を上回る速さで進んでいることから、鉛需要の減
退が懸念されている。鉛鉱山生産量、地金生産量、地
金消費量はそれぞれ増加傾向にあるものの、今後地金
消費量が減少し、価格がさらに低迷、鉱山生産や地金
生産に影響が及ぶ可能性がある。
表3-1. 鉛需給の実績と予測
2013 年実績
鉱山生産量
2014 年予測
(2014 年春季)
(単位:千t)
2014 年予測
(2014 年秋季)
2015 年予測
(2014 年秋季)
5,432
5,660
5,664
2,571
地金生産量(a)
11,121
11,677
11,290
11,540
地金消費量(b)
11,167
11,726
11,328
11,563
需給バランス(a-b)
▲ 46
▲ 49
▲ 38
▲ 23
(出典:ILZSGデータを基に作成)
2015.1 金属資源レポート
39
(518)
4. 亜鉛の価格と需給動向
1. LME価格と在庫
鉱業動向
ベースメタル国際需給動向
亜鉛
—
図4-1に2014年10~11月のLME亜鉛現物価格と同在
庫の推移を示す。
当 該 期 間 の LME 亜 鉛 価 格 は、2,200US$/t ~
2,350US$/tのレンジの中で揉み合いながら推移した。
10月上旬から半ばにかけては、2,250US$/t前後から
2,330US$/tまで上昇したものの、10月16日には世界経
済に対する景気減退懸念が広まり大きく下落し、21日
には2,200US$を割り込んだ。その後、10月末にかけて
は再び上昇基調に入り2,335US$/tの値を付けたもの
の、11月 初 旬 に は 中 国 の 経 済 指 標 の 悪 化 を 受 け て
2,200US$/tのレンジまで下落。11月9日からはペルー
のAntamina銅・亜鉛鉱山で3週間に亘るストライキ
が実施され、不安定な相場が続いた。11月中旬は、
2,250US$前後で揉み合い、11月21日には中国の利上
げ決定を受けて上昇、一時2,300US$台まで回復した。
11月末には、原油安やドル高の影響で2,230US$/tを
下回る安値圏まで下落し、11月は2,227US$/tで取引
を終えた。
<月間平均値(US$/t)>
2012 年
2013 年
2014 年
1月
1,981
2,033
2,036
2月
2,058
2,129
2,035
3月
2,035
1,936
2,017
4月
1,997
1,853
2,031
5月
1,930
1,829
2,059
6月
1,856
1,839
2,127
7月
1,851
1,836
2,311
8月
1,814
1,896
2,273
9月
2,002
1,848
2,294
10 月
1,912
1,883
2,273
11 月
1,904
1,869
2,264
12 月
2,038
1,975
―
1 ~ 12 月
1,946
1,909
―
—
●当該期間最高値:2,335US $/t
(10月31日)
●当該期間最安値:2,188US $/t
(10月21日)
LME在庫については、当該期間は下落局面が続き、
10月から11月末までの間に8.4万tが減少した。11月末
には、在庫量はやや増加し、最終的には67.3万tで越
月した。
●10月初LME在庫:
750,725t
(うち、キャンセルワラント比率22.8%)
●11月末LME在庫:
681,700t
(うち、キャンセルワラント比率15.6%)
2. 需給
国際鉛亜鉛研究会
(ILZSG)による2011年10月~2014
年10月までの世界亜鉛需給推移を図4-2に、中国亜鉛
需給推移を図4-3に示す。
世界亜鉛鉱山生産量は、2014年
(1〜10月)は、前年
同期を3.0%ほど上回っており、特に中国やペルー、豪
州、カナダで増産している。一方、インド、カザフス
タン、米国では減産が続いている。地金生産量は2014
年は上昇傾向にあり、10月は117万tが生産された。
中国については、鉱山生産量が増産傾向にあるもの
の、地金生産量及び消費についてはやや減少した。
2014年10月には、地金生産量と消費量がほぼバランス
した状態となっている。
40
2015.1 金属資源レポート
(519)
図4-1. 亜鉛:LME価格と在庫の推移(2014年10~11月)
(出典:LMEデータを基に作成)
鉱業動向
図4-2. 世界亜鉛需給推移(2011年10月~2014年10月)
ベースメタル国際需給動向
(出典:ILZSGデータを基に作成)
亜
—鉛 —
(出典:ILZSGデータを基に作成)
図4-3. 中国亜鉛需給推移(2011年10月~2014年10月)
<供給・鉱山生産>
2014年10~11月の亜鉛の鉱山生産をめぐる主な動向
は以下のとおりである。
・豪州、連邦政府・資源エネルギー経済局
(BREE)は
2018/19年度の資源・エネルギー産品の輸出額等予
測修正を発表した。2018/19年度の亜鉛精鉱及び亜
鉛地金の輸出額は2013/14年度比59%増の37.6億A$、
亜鉛精鉱の輸出量は2013/14年度比25%増の294万t、
亜鉛地金の輸出量は2013/14年度比9.3%減の40万tと
予測されている。
・ペルー・Antamina銅・亜鉛鉱山は、同鉱山の拡張計
画の一部である、廃さい堆積場の建設方法の変更に
関する報告書を提出した。廃さい堆積場の建設費用
はおよそ2億3,000万US$となる見通しで、同鉱山にお
ける粗鉱処理量は25%増加する計画である。
・加・Cypress社は、同社が100%保有する米・NV州
(ネ
バダ州)のGunman亜鉛・銀プロジェクトにおける、
2014年のボーリング調査の分析結果を発表し、
亜鉛・
銀の高品位鉱脈を捕捉したことを明らかにした。
2015.1 金属資源レポート
41
(520)
鉱業動向
Gunmanプロジェクトの第2フェーズとなる2014年
のプログラムで行われたボーリングでは、亜鉛平均
品位13.35%、銀平均品位83.41g/tの分析結果が得ら
れた。
・Milpo社(本社:ペルー)は、中央アンデスにおける
鉱山操業のコスト削減と効率化を目的に、2015年に
El Porvenir亜鉛鉱山とAtacocha亜鉛鉱山を統合す
ることを発表した。両鉱山は地下トンネルでつなげ
られ、El Porvenir亜鉛鉱山は操業の深度を1,600m
まで下げる一方で、Atacocha亜鉛鉱山においても
深度を下げることが計画されている。
ベースメタル国際需給動向
<需給バランス>
2014年10月までの世界の亜鉛需給バランスとLME
現物価格及びLME在庫の推移を図4-4に示す。9月は
1.5万tの供給不足、10月は3.9万tの供給過剰と8か月ぶ
りのプラスに転じた。2014年1月からの累計で28.1万t
の供給不足となり、ややバランスに近づいた。9〜10
月のLME在庫は若干回復している。亜鉛鉱石は、豪・
Century鉱山の閉山やインドのRampura Agucha鉱山
の減産を要因に、しばらくは需給が逼迫した状態が続
くと思われる。これまで増産が続き、世界最大の亜鉛
鉱山となったRampura Agucha鉱山は、露天掘りから
坑内掘りへ採掘方法を変更するため減産する見込みで
ある。
亜鉛
—
—
(出典:LME、ILZSGデータを基に作成)
図4-4. 亜鉛需給バランス(2009年1月~2014年10月)
3. 今後の需給見通し
ILZSGが2014年10月の国際非鉄研究会秋季大会で発
表した2014年及び2015年亜鉛需給予測を表4-1に示す。
2014 年の鉱山生産量は、春季予測を下回るが、中国
が前年比1.0%増、全体では順調に生産規模拡大が見
込まれており、具体的には春季大会でも報告されてい
る 通 り、Mt Isa 鉱 山 及 び McArthur River 鉱 山、
Broken Hill鉱山の増産が牽引して1,330万tまで増える
と予想された。地金生産については、米国で、2013年
〜2014年にかけて、10万t以上も減産する見通しとな
っており、ペルーでも僅かに減産する。一方、イタリ
アやロシア、ベルギー、韓国など、欧州各国を筆頭に
複数の製錬所が地金生産を拡大させる予定で、全体で
は対前年比2.9%増の1,324.5万tと予想された。
ILZSGの秋季大会の詳細については、カレント・ト
ピックス
『ILZSG鉛亜鉛需給予測、鉛亜鉛供給不足継
続も2015年不足幅縮小-2014年秋季国際鉛亜鉛研究会
(ILZSG)参加報告(1)-』を参照されたい。
表4-1. 亜鉛需給の実績と予測
2013 年実績
鉱山生産量
42
2014 年予測
(2014 年春季)
(単位:千t)
2014 年予測
(2014 年秋季)
2015 年予測
(2014 年秋季)
13,195
13,570
13,330
13,804
地金生産量(a)
12,873
13,460
13,245
13,681
地金消費量(b)
12,982
13,577
13,648
14,047
需給バランス(a-b)
▲ 109
▲ 117
▲ 403
▲ 366
2015.1 金属資源レポート
(521)
(出典:ILZSGデータを基に作成)
5. ニッケルの価格と需給動向
1. LME価格と在庫
<月間平均値(US$/t)>
2013 年
2014 年
1月
19,822
17,465
14,079
2月
20,465
17,734
14,195
3月
18,710
16,728
15,660
4月
17,897
15,635
17,375
5月
17,020
14,951
19,440
6月
16,539
14,271
18,574
7月
16,159
13,705
19,050
8月
15,658
14,282
18,571
9月
17,216
13,780
18,079
10 月
17,245
14,070
15,770
11 月
16,298
13,729
15,706
12 月
17,407
13,915
―
1 ~ 12 月
17,536
15,002
―
ベースメタル国際需給動向
2012 年
鉱業動向
図5-1に2014年10~11月のLMEニッケル現物価格と
同在庫の推移を示す。
10月は前日比-4%の15,855 US$/tでスタートした
後、初旬までその下落幅を戻す形で16,750 US$/tまで
上昇したが、月半ばには他のベースメタルと同様に欧
米中の経済指標悪化が嫌気され、一日で-5%の急落
を見た。更にその一週間後には3月以来の安値14,650
US$/tを記録したものの、数日で15,575 US$/tまで値
を戻し、月末の米国QE3終了に伴うドル高を背景に、
11月中旬まで15,000 US$ 台をもみ合い推移した。
下旬に入るとコロンビアCerro Matoso鉱山でスト
ライキの懸念が生じたことで続伸し、10月の急落前の
水準である16,500 US$ 台へ上昇した。月末にかけて
はスト懸念の後退から下落したものの、16,090 US$/t
で下げ止まり越月した。
LMEニッケル在庫は、2012年7月以来増加傾向が続
き史上最高値を更新している。2014年11月末時点で40
万t
(約82日分、前年同月末比61%増)
であり、その半
量はマレーシアのジョホール、32%はロッテルダムに
ある。中国・青島港における銅二重担保問題を契機に
同国保税倉庫からの引き出し分が近隣のジョホール
LME倉庫に運び込まれているとされている。
●2014年10月初LME在庫:
359,166t
(キャンセルワラント比率22.5%)
●2014年11月末LME在庫:
404,766t
(キャンセルワラント比率25.2%)
2. 需給
国際ニッケル研究会
(INSG)に よ る2011年10月 ~
2014年10月までの世界ニッケル需給推移を図5-2に、
同期の中国ニッケル需給推移を図5-3に示す。
世界の鉱山生産量は、2012年後半から月20~24万t
前後で推移していたが、2014年1月以降はインドネシ
アにおける鉱石禁輸の影響で一大きく落ち込み、10月
ニ
—ッケル —
●当該期間最高値:16,750US$/t
(2014年10月7日)
●当該期間最低値:14,650US$/t
(2014年10月27日)
図5-1. ニッケル:LME価格と在庫の推移
(2014年10~11月)
(出典:LMEデータを基に作成)
には一次ニッケル生産量を下回った。一次ニッケル生
産量は、2013年以降15~17万t台を大きな変化なく推
移している。一次ニッケル消費量は、2011年と比較す
ると増加していることが見てとれるが、2013年以降は
ほぼ横ばいで推移している。
中国においては、この3年では鉱山生産量に急激な
変化は見られない。一次ニッケル生産量は、消費量と
ほぼ連動して推移しており、2012年後半から急激に拡
大した後、2013年に入ると増加スピードは減速し、6
万t前後を推移している。
2015.1 金属資源レポート
43
(522)
鉱業動向
ベースメタル国際需給動向
ニッケル —
—
(出典:INSGデータを基に作成)
図5-2. 世界ニッケル需給推移(2011年10月~2014年10月)
(出典:INSGデータを基に作成)
図5-3. 中国ニッケル需給推移(2011年10月~2014年10月)
44
2015.1 金属資源レポート
(523)
表5-1. 主要生産国別鉱山生産量(1〜10月累計)
(単位:千t)
2013年
2014年
1〜10月計 1〜10月計
増減比
アフリカ
97.5
103.1
5.7%
マダガスカル
23.2
33.0
42.3%
南アフリカ
41.8
46.8
12.1%
418.5
407.8
− 2.6%
90.0
85.0
− 5.6%
アメリカ
ブラジル
192.8
3.2%
70.0
70.0
0.0%
キューバ
55.0
42.0 − 23.6%
アジア
995.1
593.5 − 40.4%
中国
89.3
83.0
− 7.1%
インドネシア
625.6
164.3 − 73.7%
フィリピン
277.2
325.2
17.3%
欧州
285.6
1.4%
38.7
41.6
7.5%
ロシア
220.0
220.0
0.0%
− 3.5%
オセアニア
343.5
331.4
豪州
201.0
171.0 − 14.9%
ニューカレドニア
世界計
133.6
2136.3
6.9%
142.9
1721.3 − 19.4%
(出典:INSGデータを基に作成)
鉱山生産を巡る主な動向は以下のとおり。
・加Sherritt International社は、Ambatovyニッケル鉱山
の確認及び推定埋蔵量
(NI43-101準拠)を2011年時点
の169.9百万tから20.5百万t
(12.1%)増加の190.4
百万tとなった旨発表した。
また、11月半ばには同鉱山の稼働率が76%に達し
たことを発表した。ニッケル生産能力は6万t/年で、
2015年半ばまでに稼働率を90%までに引き上げる計
画とのこと。
・豪Axiom Miningは、10月1日、ソロモン諸島イザベ
ル州ニッケル鉱区の探査活動を一時停止した。9月
24日、同鉱区を巡る裁判で住友金属鉱山の訴えが棄
却された後、30日に同社がAxiom社による探査活動
の仮差し止めを請求し、
裁判所がこれに応じたため。
その後、上訴裁判所は当該請求を8日に却下した。
なお、10月24日、住友金属鉱山は当該鉱区と探査権
をAxiom社に与える判決を不服として上訴裁判所に
上訴した。審理は2015年に行われる見通し。
・豪Poseidon Nickel社 は、10月2日、BHP Billitonと ニ
ッケル鉱石供給に係る条件付きオフテイク契約を締
結した旨発表した。Poseidon社のMt. Windarra鉱山
の鉱石をBHPのNickel West事業Leinster選鉱場へ供
給するもので、期間は2年で2年の更新が可能、処理
量は35~50万t/年で両社の合意により70万tに引き
上 げ る こ と が 可 能 と な っ て い る。Poseidon社 は
Nickel Westで 処 理 さ れ る 以 外 のWindarraの 鉱 石 を
Norilsk Nickelか ら 購 入 す るBlack Swan選 鉱 場 で 運
搬・処理するオプションは保持したままとなる。初
出荷は2015年2月までに行われる予定。
・PolyMet Miningは、10月8日、NorthMet銅・ ニ ッ ケ
ルプロジェクトに係るMI州天然資源局
(Minnesota
Department of Natural Resources)による環境影響調査
(EIA)が2015年春までに完成する予定と発表した。
同社によると、年間銅72百万lb及びニッケル15.4
百万lbの生産を見込んでいる。
・豪州のWA州
(西オーストラリア州)のジュニア企業
Talisman Mining 社 は、10 月 20 日、Xstrata Nickel
Australia 社から休止中のWA州Sinclairニッケル鉱山
を購入することについて合意したと発表した。同鉱
山は露天掘り及び坑内採掘により約3.8万t/年のニッ
ケルを生産していたが、ニッケル価格の低迷により
2013年8月から操業を休止していた。
2015.1 金属資源レポート
45
(524)
ニ
—ッケル —
281.6
EU27
ベースメタル国際需給動向
186.8
コロンビア
カナダ
鉱業動向
<供給・鉱山生産>
表5-1に主要生産国別鉱山生産量を示す。これら12
か国で世界供給の約9割を占めている。2014年1~10月
累計鉱山生産量は、前年同期比19.4%減の172.1万tで
あった。インドネシア、豪州、キューバ等での減少が、
フィリピン、マダガスカル、南アフリカ、ニューカレ
ドニア等での生産量の増大を、大きく上回った。特に
インドネシアは、2014年1月より施行された新鉱業法
に基づく未加工鉱石輸出禁止により、2013年は世界鉱
石生産の32%を占めたが、2014年1~10月累計ではそ
のシェアを9.5%へ落とした。豪州の減産は、Glencore
のSinclair鉱山
(2013年8月休止、2014年10月にTalisman
Mining へ 売 却 )及 び Cosmos 鉱 山、BHP Billiton の
Perseverance鉱山の生産停止によるもの。マダガスカ
ルの増産はAmbatovy鉱山、ニューカレドニアの増産
はVNC鉱山およびKoniambo鉱山といった新規プロジ
ェ ク ト の 漸 次 増 産によるもので、カナダの増 産 は
Sudbury及びThompson鉱山の増産によるもの。
なお、ベネズエラでは唯一のニッケル資産であった
Loma de Niquelが生産を再開した模様。INSGの統計に
よると、同国2014年1~10月累計のニッケル生産量は
2,700t。本資産はAnglo Americanが91.4%の権益を保
有していたものであるが、2012年11月にベネズエラ政
府が同社とのコンセッション契約の期限延長を拒否し
たため、生産が停止されていた。現在は政府100%出
資のPetroleos de Venezuela
(PDVSA)が操業していると
推測されるが、実態は不明。
鉱業動向
・東 カ ザ フ ス タ ン 州 で、 カ ザ フ ス タ ン 最 大 の
Gornostaevskoeコバルト・ニッケル鉱床の操業開始
が予定されている。鉱床はベスカラガイ地区ドロン
農村地域にあり、鉱石が発見されたのは20年前であ
る。埋蔵量は2008年4月の試算により拡大し、カテ
ゴリB及びC1が1,310万t(ニッケル11.8万tを含む)
、
カテゴリC2が1,320万t
(ニッケル11.7万tを含む)とな
った。
ベースメタル国際需給動向
・Norilsk Nickelは、Tati Nickel Mining Company
(ボツ
ワナ)とNorilsk Nickel Africa
(南ア)をBCL社
(ボツワ
ナ)に売却することを検討している。売却額は3~
3.5億US$となる見込みで、同社の海外資産売却額と
しては過去最高となる。これが実現すれば、同社は
海外資産の整理を完了することになる。
同社は、2007年、約70億US$を投じてOM Group
のニッケル事業とLionOre社を買収し、ボツワナ、
南ア、豪州の資産を取得した。2008年危機以降、同
社海外事業所の大半が生産・採掘コスト高のため操
業を停止していた。
ニッケル —
—
・Norilsk Nickelは、11月20日、クラスノヤルスク地方
の3つの銅・ニッケル硫化鉱鉱床
(Lebyazhinskaya、
Mogenskaya、Razvedochnaya)の地質調査・探査・評
価ライセンスを取得した。ライセンス期間は7年で、
2016年2月までに探査を開始し、2021年11月までに
評価を完了しなければならない。
・BHP Billitonは、11月12日、売却を含めた事業の見
直しを進めていたWA州Nickel Westに関し、売却で
はなく事業継続によって事業価値の最大化を目指す
という結論を発表した。同社は2014年5月14日に売
却を最優先策とした事業の見直しを発表していた
が、合意できる売却価格に至らなかったとして、引
き続き自社での事業継続を決めた。
また、同社は翌日にLeinster鉱山Venusプロジェク
トの開発中止を発表した。
・Glencore は、11 月 17 日、 ニ ュ ー カ レ ド ニ ア の
Koniambo鉱山の生産を開始し、開山式にはHollande
フランス大統領が参加したと発表した。同鉱山は
SMSP(Societe Minere du Sud Pacifique)とGlencoreの
JV事業で、2007年に建設が開始され、生産能力は6
万t/年、総額70億US$が投じられており、その大部
分をGlencoreが負担している。
・インドネシア政府とPT Weda Bay Nickel
(WBN)は、
10月17日、北マルク州ハルマヘラのニッケル鉱山に
46
2015.1 金属資源レポート
(525)
関する鉱業事業契約
(CoW)の 修 正 に 関 す る 覚 書
(MoU)を締結した。MoUによると、WBNはその株
式の40%を売却することに同意している。本MoU
はChairul Tanjung経済調整担当大臣(エネルギー鉱物
資源大臣代理を兼ねる)によってサインされた。ま
た、同日にはPT Vale Indonesiaとも修正CoWを締結
した。
・加Lundin Mining Corp.
(Lundin Mining社)は、11月24
日、MI州Eagleニッケル・銅鉱山が商業生産に達し
たと発表した。同プロジェクトは2013年7月にRio
Tintoから買収したもので、コミッショニングは予
定より早い2014年9月にスタートした。それから約2
か月での商業生産到達により、当初ターゲットの
2015年Q1が大幅に早まった。
・フィリピン下院天然資源委員会は、11月26日、下院
Francisco Matugas議員によって提出された鉱石輸出
禁止法案が原則承認された。Matugas議員の案は、
先に提出されているErlpe John Amante下院議員の案
と統合され、技術ワーキンググループを通して統合
案として改正されるとのこと。しかしながら現時点
では、輸出禁止の可否については、法的な決定がな
されていない模様。
・インドネシア新鉱業法を巡る動き
10月20日にジョコ・ウィドド新政権が発足し、26
日に閣僚の顔ぶれが発表された。エネルギー・鉱物
資源大臣にSudirman Saiyd氏、経済担当調整大臣に
Dofyan Djalil氏が就任した。Saiyd大臣は、就任演説
において現行の鉱業政策を維持する方針を示した。
同氏は国営兵器製造企業であるPT Pindadの元取締
役社長で、国営石油企業PT Pertaminaに勤務してい
た。ジョコ・ウィドド大統領は同氏を指名した理由
として
「エネルギー鉱物資源大臣には、強力な指導
力、技能、管理能力、そしてクリーン且つ高い献身
性を必要とする」と述べた。同氏は反汚職活動団体
を設立しており、同省で相次いだ汚職のイメージを
払しょくすることを優先したと見られる。
参考として図5-4及び図5-5に中国及び日本のニッケ
ル鉱石輸入元推移を示す。中国の鉱石輸入量は、2014
年1~4月にかけて減少していたが、5月からフィリピ
ンからの調達が増加し、月400~500万t(グロス量)
の
輸入量を確保している。足元では、フィリピンの鉱石
生産が減少しているため、同国からの輸入が8月をピ
ークに減少傾向にある。1~10月の累計輸入量は、前
年同期比25%減の4,239万tであった。
日本の鉱石輸入量は、3~4月に増加したものの、5
月以降は30万t台で推移しており、フィリピンとニュ
ーカレドニアからの調達で前年に近い水準で輸入して
いる。1~10月の輸入量は、前年同期比5.5%減の395
万tであった。
鉱業動向
ベースメタル国際需給動向
フィリピン
インドネシア
ニ
—ッケル —
(出典:Global Trade Atlasデータを基に作成)
図5-4. 中国のニッケル鉱石輸入元推移(2013年1月~2014年10月)
グロス千t
~インドネシア禁輸
600
500
400
Nカレドニア
300
フィリピン
200
インドネシア
100
0
(出典:財務省貿易統計データを基に作成)
図5-5. 日本のニッケル鉱石輸入元推移(2013年1月~2014年10月)
2015.1 金属資源レポート
47
(526)
鉱業動向
ベースメタル国際需給動向
<供給・一次ニッケル生産>
表5-2に主要生産国別一次ニッケル生産量を示す。
これら12か国で世界供給の約9割を占めている。2014
年1~10月累計一次ニッケル生産量は、前年同期比
0.5%増の160.6万tであった。カナダ
(但し9~10月は
前年同期比6.6%増)
、コロンビア、欧州及び豪州等で
減産があったものの、中国
(但し足元9~10月は前年同
期比2.2%減)、ブラジル、マダガスカル、ニューカレ
ドニア等での増産がこれを上回った。
カナダの減産は、
ValeのOntario Divisionにおける厳冬による停電、4~
5月にかけては人身事故及び定期修理による停止が主
要因。ロシアの減産はNorilsk NickelのNadezhda製錬
所の定修、フィンランドの減産は同社Harjavarta精錬
所での一時的な原料不足によるもの。ブラジルの増産
はAnglo AmericanのBarro Altoにおける炉修後の生
産回復によるもの。なお、同社によると、第2ライン
の炉建設は現在進行中で、10月時点では2015年第2四
半期に完了する予定である。
一次ニッケル生産を巡る主な動向は以下のとおり。
ニッケル —
—
・Valeは11月19日、カナダLong Harbour湿式プラン
トの開所式を開催した。同プラントはNain地域近
隣のVoisey’s Bayニッケル・銅・コバルト鉱山の
精鉱を原料とし、二酸化炭素を排出せずニッケル硫
化鉱を処理できる湿式技術が初めて適用される。フ
ル操業では年間5万tのニッケル生産が可能で、同社
の他のプロジェクトの鉱石も受け入れる。初のニッ
ケル生産テストは2015年7月に行われ、インドネシ
アSorowakoのニッケルマットが使用される。
・フ ィンランドTalvivaara Mining社の子会社である
Talvivaara Sotkamo社は、フィンランド破産法の
適用を申請した。2013年11月に会社更生法の適用を
申請し、再建計画を進めていたが、つなぎ融資が不
調に終わったことによるもの。
<需要・一次ニッケル消費>
表5-3に主要消費国別一次ニッケル消費量を示す。
これら15か国/地域で世界消費の約9割を占めている。
2014年1~10月累計一次ニッケル消費量は、前年同期
比6.5%増の157.2万tであった。アフリカ
(南アフリカ)
とドイツ以外の主要国では全て前年同期比増加してい
る。
表5-2. 主要生産国別一次ニッケル生産量(1〜10月累計)
(単位:千t)
2013年
2014年
1〜10月計 1〜10月計
62.2
29.2%
20.7
31.0
50.2%
25.5
231.7
28.2
210.2
ー 9.3%
46.7
62.4
33.6%
アフリカ
48.2
マダガスカル
南アフリカ
アメリカ
ブラジル
カナダ
コロンビア
増減比
10.6%
114.8
97.7 ー 14.9%
41.1
34.4 ー 16.3%
3.5%
アジア
750.9
777.2
中国
561.8
585.5
4.2%
欧州
409.7
393.0
96.3
90.8
オセアニア
36.9
34.5
75.5
198.0
158.0
34.7
32.3
75.1
188.1
163.2
ー 4.1%
ー 5.7%
ー 6.0%
ー 6.5%
ー 0.6%
ー 5.0%
3.3%
豪州
117.4
112.1
ー 4.5%
40.6
51.1
25.8%
1598.5
1605.8
0.5%
EU27
- フィンランド
- 英国
ノルウェー
ロシア
ニューカレドニア
世界計
(出典:INSGデータを基に作成)
表5-3. 主要消費国別一次ニッケル消費量(1〜10月累計)
(単位:千t)
2013年
2014年
1〜10月計 1〜10月計
アフリカ
アメリカ
19.9
145.4
増減比
17.6 ー 11.6%
151.8
4.4%
米国
119.0
126.6
6.4%
アジア
1018.4
1098.2
7.8%
中国
740.0
793.5
7.2%
45.0
47.6
5.8%
122.3
65.1
39.7
17.0
302.1
10.7%
欧州
110.5
62.6
31.6
16.9
289.4
EU27
266.5
280.1
5.1%
22.2
23.9
7.7%
24.0
22.6
63.9
46.2
27.9
20.6
17.3
2.3
1475.4
27.1
23.3
60.2
48.8
32.3
21.7
18.0
2.3
1572.0
13.1%
3.1%
インド
日本
韓国
台湾
その他アジア
- ベルギー
- フィンランド
- フランス
- ドイツ
- イタリア
- スペイン
- スウェーデン
- 英国
オセアニア
世界計
4.0%
25.6%
0.6%
4.4%
ー 5.8%
5.6%
15.8%
5.3%
4.2%
0.0%
6.5%
(出典:INSGデータを基に作成)
48
2015.1 金属資源レポート
(527)
年1~10月累計では3.4万tと、前回1~8月累計1.4万tか
ら過剰幅がやや増加したものの、前年同期の過剰幅
14.8万tと比較すればバランスに近づきつつあると言
える。他方、LME在庫は6月以降、青島保税倉庫から
の流入もあり足元では在庫の増加が著しい。
鉱業動向
<需給バランス>
2014年10月までの世界のニッケルの需給バランス、
LME現物価格及びLME在庫の推移を図5-6に示す。需
給バランスは2011年7月以来供給過剰状態が継続して
いたが、2014年4月に2年9か月ぶりに供給不足に転じ
た。7月以降は再び供給過剰状態となっている。2014
ベースメタル国際需給動向
ニ
—ッケル —
(出典:INSGデータを基に作成)
図5-6. ニッケル需給バランス(2009年1月~ 2014年10月)
3. 今後の需給見通し
INSGが2014年10月の国際非鉄研究会秋季会合で発
表した2014年及び2015年需給予測を表5-4に示す。
2014年も供給過剰が予測されるものの、過剰幅は
2013年秋季時点の予測11.4万tから2014年春季には4.7
万t、さらに今回の秋季では1.1万tに修正された。
<鉱石生産>
2014年はインドネシアの生産減少を主な要因として
前年比21.7%減の205.9万t、2015年はフィリピンとニ
ューカレドニアの増産がインドネシアの減産を補うこ
とで前年比3.5%増の213.1万tとしている。
<一次ニッケル生産>
2014年は前年比0.7%減の192.9万t、2015年は同1%
増の194.8万t と予測している。2015年は、世界生産の
3割を占める中国において、NPI生産が2014年以降減
少するとし、2015年についても前年比14.4%減の56.5
万tと推定した。一方、ニューカレドニア、インドネ
シア、日本等においては増産が見込まれ、中国減産分
を相殺すると予測している。
<一次ニッケル消費>
2014年は前年比7.8%増の192.9万t、2015年は前年比
2.9%増の197.4万tと予測した。2014年については、上
期に米国、欧州及び日本で経済状況の改善が見られ、
ニッケル需要は持ち直すと見込んだが、2015年につい
ては、世界消費の5割を占める中国の需要が4%程度に
減速すると予想し、これに引きずられて世界全体の伸
びも前年比2.9%としている。
本会合では、ニッケルの最大需要国である中国の動
向、各国の輸出入統計における水分量の取扱いの違い、
またニッケル含有製品の定義の不在等から、
「正確な」
2015.1 金属資源レポート
49
(528)
鉱業動向
統計値を出すことの困難さがMacquarie社によって指
摘された。
INSGの秋季会合の詳細について、需給予測につい
てはカレント・トピックス
『ニッケル需給予測、2015
年に2.6万tの供給不足に転じる-2014年秋季国際ニッケ
ル研究会
(INSG)報 告 -』
(http://mric.jogmec.go.jp/
public/current/14_45.html)、またコンサルの需給予
測等の個別講演については同
『インドネシア鉱石禁輸
の影響と行方、コンサル各社の予測を比較-2014年秋
季国際ニッケル研究会(INSG)-』
(http://mric.jogmec.
go.jp/public/current/14_47.html)を参照されたい。
(2015.1.6)
表5-4. ニッケル需給の実績と予測
2013 年実績
ベースメタル国際需給動向
鉱山生産量
2014 年予測
(2014 年春季)
(単位:千t)
2014 年予測
(2014 年秋季)
2015 年予測
(2014 年秋季)
2,631.1
2,015.6
2,058.9
2,130.5
一次ニッケル生産量(a)
1,942.6
1,936.1
1,928.8
1,947.6
一次ニッケル消費量(b)
1,779.7
1,888.8
1,917.8
1,973.8
需給バランス(a-b)
+ 162.9
+47.3
+ 11.0
▲ 26.2
(出典:INSGデータを基に作成)
ニッケル —
—
50
2015.1 金属資源レポート
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