マクロ経済動向分析5月 経済指標は依然低調、 利下げ効果限界で「量的緩和」待望論も 中国マクロ経済動向分析5月 1 1. 5月のポイント 2015年4月の中国経済は、PMIが前月から横ば い、固定資産投資の鈍化、輸出入の総額の2ヵ 月連続下落など、低成長であった。 政府は「中国製造2025規画綱要」の発表や、関 税の引き下げの決定、インフラ投資による景気 の下支えを狙うなど策を講じ、追加利下げも行う が、市場からは量的緩和を望む声が大きい。 一方、中国にAIIB内での拒否権が確定したこと や、ネパール大地震への莫大な支援など、世界 的な影響力も着々と強めつつある。 中国マクロ経済動向分析5月 2 2.今月の目次 生産 p.4 投資 p.6 株 p.13 5月中国 マクロ経済 外交 p.12 貿易 p.10 中国マクロ経済動向分析5月 物価・消費 p.7 金融 p.9 3 3.生産 工業生産の伸び低水準、 自動車市場は成長鈍化で競争一段と厳しく 図表1:工業付加価値生産伸び率(単位:%) 9.5 9.0 8.5 8.0 7.5 7.0 6.5 6.0 5.5 5.0 8.7 8.8 9.2 3月の5.6%から0.3 ポイント増加した 9.0 8.0 7.7 6.9 7.2 7.9 5.6 5.9 (出所)国家統計局より作成 8%超であった14年通年の水準から大きく減速した。 特に乗用車の生産台数が前年同月比11.2%減と、 リーマンショック直後の2008年12月以来の2桁の減少幅となった。 中国マクロ経済動向分析5月 4 3.生産 工業生産の伸び低水準、 自動車市場は成長鈍化で競争一段と厳しく 図表2:製造業購買担当者景気指数(PMI) 52.5 51.5 50.5 49.5 48.5 47.5 50.4 50.8 51.0 51.7 51.1 51.1 50.8 前月から横ばい 50.3 50.1 49.8 49.9 50.1 50.1 2ヵ月連続で50を上回り、住宅市場 に回復の兆しが出ていることを反映 (出所)国家統計局より作成 4月のPMIは50.1と、前月から横ばいであった。景況の拡大と悪化 の分かれ目である50はかろうじて上回ったが、国内外の需要が 弱く、製造業の低迷が続いていることが浮き彫りとなった。 中国マクロ経済動向分析5月 5 4.固定資産投資 固定資産投資などの鈍化が進むなか、 インフラ投資で景気の下支えを狙う 図表3:固定資産投資伸び率(単位:%) 17.5 16.5 15.5 14.5 13.5 12.5 11.5 17.2 17.3 17.0 16.5 16.1 15.9 15.8 15.7 13.5 1-4月の固定資産投資は前年同月 比12.0%増と、1-3月からさらに鈍化 13.9 12.0 (出所)国家統計局より作成 不動産投資も前年同期比6.0%増と、伸び率は1-3月の8.5%増か ら鈍化した。一方中国では地下鉄の開業・延伸が相次いでおり、 大気汚染対策などの他インフラ投資による景気の下支えを狙う。 中国マクロ経済動向分析5月 6 5.物価・消費 CPIの伸びは依然鈍く、追加緩和措置の必要性高まる 図表4:社会消費品小売総額(単位:%) 13 12.5 12 11.5 11 10.5 10 9.5 12.5 11.9 12.4 12.2 11.9 4月の社会消費品小売総額 は、前年同月比10.0%増 11.6 11.5 先月よりも0.2ポイント低下の原因 として、不動産市況の低迷、建築 資材の販売不振などが挙げられる 11.7 11.9 10.2 10.0 (出所)国家統計局より作成 社会消費品小売総額は低調気味ではあるが、依然2桁の伸びを維 持していることから、消費は底堅いという見方も存在する。 なかでもインターネット通販は4割の高成長を続けている。 中国マクロ経済動向分析5月 7 5.物価・消費 CPIの伸びは依然鈍く、追加緩和措置の必要性高まる 図表5:消費者物価指数(CPI)(単位:%) 3.5 3.0 2.5 2.0 2.4 4月のCPIは前年同月比1.5%上昇 で、3月より0.1ポイント上回った 2.3 1.8 2.5 2.3 2.0 1.6 1.5 1.0 0.5 1.6 1.4 物価の伸びは鈍く、依然として デフレ圧力が強まりつつある 1.5 1.4 1.5 1.4 0.8 0.0 (出所)国家統計局より作成 食品価格の2.7%の伸びに対し、非食品は0.9%であり、汚職撲滅 キャンペーンによって19ヵ月連続で酒類の価格が下落、人民銀 行は内需押し上げに向けて追加緩和措置の必要性を示した。 中国マクロ経済動向分析5月 8 6.金融・財政 追加利下げで今年2回目、「量的緩和」待望論も 図表6:通貨供給量(M2)の伸び率(単位:%) 14.5 13.5 12.5 11.5 10.5 9.5 2015年4月のマネーサプ ライ(M2)伸び率は前年同 月比10.1%増であった 14.7 13.5 13.2 13.4 12.9 12.8 12.3 12.6 12.5 12.2 10.8 11.6 10.1 (出所)国家統計局より作成 5月11日に利下げを行ったが、その直後に市場では「金利や預金 準備率を一段と引き下げる可能性が増した」との指摘も多い。 中国マクロ経済動向分析5月 9 7.貿易 輸出入ともに2ヵ月連続で下落、 政府は一部輸入商品の関税引き下げを決定 図表8: 輸入の伸び推移(単位:%) 図表7: 輸出の伸び推移(単位:%) 10.0 60.0 50.0 5.0 40.0 -1.6 30.0 -1.6 0.9 -6.6 7.2 9.7 11.6 7.0 9.4 -2.4 -2.4 -5.0 15.3 14.5 10.0 0.0 4.6 0.8 0.0 20.0 7.0 5.5 48.3 4.7 -10.0 -12.7 -11.3 -3.3 -6.4 -15.0 -20.0 -6.7 -10.0 -15.0 -20.0 -16.2 -19.9 -25.0 (出所)海関総署より作成 -20.5 (出所)海関総署より作成 政府は今年の輸出入を合わせた貿易の伸びの目標を 「6%前後」と設定していたが、1-4月の貿易総額は 前年同期に比べ7.6%減っており、目標達成は厳しいといえる。 中国マクロ経済動向分析5月 10 7.貿易 輸出入ともに2ヵ月連続で下落、 政府は一部輸入商品の関税引き下げを決定 530 図表9:ドル円対人民元 相場推移(2014/12/1-2015/5/29) 617 616 525 615 520 614 515 613 510 612 611 505 610 500 609 495 2014/12/27 2015/1/27 2015/2/27 2015/3/27 (出所)中国外貨管理局より作成 2015/4/27 608 2015/5/27 元/10000円(左軸) 5月末、ついに1元 20円を上回る 人民元相場について ・IMF →「過小評価ではない」 ・米財務省 →「過小評価されている」 元/100ドル(右軸) 日本の対中輸入は、2014年12月の確定値では6.9%であったの に対し、2015年3月の確定値では-19.4%と一気に落ち込んだ。 中国マクロ経済動向分析5月 11 8.外交 AIIB、中国に実質的拒否権が確定、 BRICS銀行の副総裁指名やネパール支援など世界への影響強める AIIB 中国が資本金1000億ドルの29%を出資→拒否権を確立 BRICS銀行 世界銀行副総裁の祝憲をBRICS銀行副総裁に指名 ネパール大地震への支援 インドと対抗する形で支援を強める アジアの大国として存在感を示すと同時に、 世界的な影響力の強化を図る狙いがある。 中国マクロ経済動向分析5月 12 9.株 4月の中国株は、規制緩和期待による 投資家増加に伴い大幅上昇 図表:10 上海総合指数(終値)(2015/4/27-2015/5/27) (出所)SearchinaファイナンスHPより作成 5月上旬 5月中旬 5月下旬 印紙税引き上げの観 測やIPOに伴う需給懸 念から5月5,6,7の三日 間で大幅に下落 利下げを受け急伸し回 復したが13日に発表の 統計が振るわず需給 悪化の懸念から下落 政府の追加の金融緩 和への期待や企業支 援が買い材料となり一 気に上昇 中国マクロ経済動向分析5月 13 10.株 5月の中国株は政策期待による急伸と 引き締めや需給懸念による反落を繰り返す 図表11: ハンセン指数(終値)(2015/4/27-2015/5/27) (出所)SearchinaファイナンスHPより作成 5月上旬 5月中旬 4月下旬に小幅に続伸 したが、5月に入ると本 土市場と同様8週ぶり に反落 利下げが好材料となり 小幅に反発したが、13 日発表の各統計が悪 材料となり続落 中国マクロ経済動向分析5月 5月下旬 第三週より小幅続伸と なったが、最終週は3 週間ぶりに反落 14 5月のまとめ 生産 • 4月の工業付加価値生産は3月から0.3ポイント増加の 5.9%ではあるも、工業生産の伸びは依然低水準。PMIは 50.1と前月から横ばい。 固定資産投資 • 4月の固定資産投資は前年同期比12.0%増と前月からさ らに鈍化。インフラ投資によって景気の下支えを狙う。 消費 • 4月のCPIは1.5%と前月から1%上昇。しかし目標の3%に程 遠くデフレの圧力は強まりつつある。 財政 • 前月に引き続き0.25%利下げを行うも、市場からはさらなる 緩和措置のQEに期待がかかる。 貿易 • 輸出入ともに2ヵ月連続で下落。また国内の購買意欲を高 めるため一部商品の輸入関税引き下げも。 株価 • 5月の本土市場は政策期待による急伸と引き締めや需要 懸念による反落を繰り返した。香港市場も同様にその影響 を受けた。 中国マクロ経済動向分析5月 15
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