学 位 論 文 の 要 旨 り が 名 整 理番 号 な ふ氏 ※ お か ざき 岡崎 りょ うこ 玲子 Assessment of neurophysioloい Cal changes with electroconvulsive therapy in lnental disorders using nonhnear EEG approach 学位 論 文題 目 (精 神疾患における電気けいれん療法 の神経生理学的変化―非線形脳 波解析 による検討― ) 研究 の 目的 】 【 1930年 代 よ り、電気けいれん療法 (Electrocorlvulsive Therapy:ECT)は 治療抵抗 性 の統合失調症や うつ病、カタ トニア、パ ー キンノン病 の治療法 として広 く用 い られて お り、そ の有効性は高 く、薬物療法にも勝 ることが示 されてい る。その作用機序 として、 神経ネ ッ トワー クを担 うモ ノア ミン系 の改善な どが指摘 されてい るが、未だ不明な点が 多 く、ECTの 効果 を反映す る実用的な生物学的指標 は確 立 されていない。一方、精神疾 神経ネ ッ トワーク障害仮説 "が 注 目され 患に共有 され る神経基盤 の有力な候補 として “ てお り、 うつ病や 自閉症 スペ ク トラム障害 (Autism Spectrum Disorders:ASD)に おい ても様 々な脳機能研究によつてそ の存在 が明 らか となってい る。 近年急速 に進歩 した複雑性理論 に基づ く非線形解析 の脳波活動へ の応用は、複雑な神 経ネ ン トワ ク 活動 の特徴抽出を可能 にし、精神疾患 における神 経基盤 の解明に大きく 貢献 している。 なかでも近年提唱 されたマル チスケ▼ル エ ン トロピー (Multiscale Entropy:MSE)解 析は、既存 の非線形解析法 の問題点を克服 した新 しい非線形解析法 であ り、加 えて多時間軸 で解析 を行 うことか ら、 より幅広 い観 点か らの神経ネ ッ トワー ク活動 の理解 を可能にす る。 これまでに我 々は MSE解 析 の精神疾患へ の適用 として加 齢や アル ツハイマエ病、統合失調症 の病態 の理解 における有用性 を明 らかに し、そ の方 法論的妥当性 を確 立 してきた。 本研究 では、 うつ病患者お よび ASD患 者 を対象に施行 された ECTに よる脳波変化 を MSE解 析 を用いて評価 し、臨床症状変化 との関連性 を検討す ることで、ECTの 神経生 理学的メカニズムの解明 を目的 とした。 方法】 【 うつ 病 :ECT治 療歴 の な い薬 物治療抵 抗性 うつ 病 患者 3例 を対象 に 、 ECTを 週 2回 の 頻度 で 施行 した (計 平均 8回 )。 脳 波 は ECT前 、ECT期 間 中 (ECT3回 目施行 後 48時 間)、 さ らに ECT終 了 2日 後 に計 測 した。脳 波 の複雑 性 を MSE解 析 に よ り算 出 し、臨 床症 状 変化 (Hamilton Depression Rating Scale:HAM‐ D)と の 関係 を検討 した。期 間 中に薬剤 の 変 更 は行 われ てい な い 。 ASD:強 迫症 状 に伴 いカ タ トニ ア を呈 した ECT治 療歴 の な い ASD患 者 1例 を紺象 に ECTを 週 2回 の頻度 (計 7回 )で 施 行 した 。脳 波 は ECT前 、ECT期 間 中 (ECT施 行 48時 間後 ECT終 了後 、 さ らに ロ ラゼ パ ム投 与 中 の 計 24回 計測 した。脳 波 の複 雑性 )、 は MSE解 析 を 、 パ ワー 値 は 高速 フー リエ 変換 を用 い てそれ ぞれ算 出 した。 臨床症 状変 化 に つ い て はカ タ トニ ア の評価 尺度 で あ る Bush‐ Francis Catatonia Rating Scale (BFCRS)用 い て評価 した。 さ らに ECTの 治療効果 メカ ニズ ムの要 素 とされ る神 経栄 養 因子 (Brain‐ derived Neurotrophic Factor i BDNF)の 血 中濃度変化 も測 定 し、ECT に伴 う脳 波変化 と臨床 症 状 お よび BDNFと の 関係 性 につ いて 検討 した。 脳波解析 :ア ーチフ ァク トを含 まない連続す る 20秒 (200 Hz× 20秒 =400 data points) の安静閉眼時脳波を 2区 間抽出 した。次 いで、MSE解 析 では加 算平均法 によって脳波デ 各加算平均回数 (ス ケール フ ァクター)イ こおける脳波 の複雑性 を Sample ■ 夕を再構成 し、 entropy(SampEn)を 用 いて定量化 した。なお、低 いスケマル フ ァクター は高周波数帯 域 の、高 いスケール フ ァクター は低周波数帯域 の複雑性 をそれぞれ反映す る。 結果】 【 うつ病 では、ECTに よつて低 いスケールフ ァクター (高 周波数帯域)に おける複雑性 (SampEn)の 低下が認 め られた。 この複雑性 の低下は うつ症状尺度 (HAM‐ D)に おけ る改 善 と関連 した。 ASDで は、ECTの 施行 に伴 って、前頭 中心部 では低 いスケール フ ァクター (高 周波 数帯域 )で の複雑性 (SampEn)が 低下 し、後頭部 では高いスケール ファクター (低 周 波数帯域 )で の複雑性 (SampEn)が 上昇 した。 これ らの ECTに 伴 う脳波変化は、臨床 症状尺度お よび BDNF値 の変化 と関連 した。 さらに、 これ らの脳波変化は、ECT治 療 後 には治療前 の レベル に戻 る傾 向にあつた。 考察】 【 ア 気分障害や発達障害 の発症機序、 さらには ECTの 治療効果 メカニズムおいて、 γ‐ の ミノ酪酸 (gamma‐ aminobutyric acid:GABA)が 重要な役害1を 果た し、また脳波 γ 波活動 (高 周波数帯域 )は GABA神 経活動 を反映す ることが知 られてい る。今回、 うつ 病お よび ASDに 共通 して認 められた前頭 中心部 での高周波数帯域 にお ける脳波 の複雑 性 の低下 は、GABA神 経活動 の改善 と関連 した機能変化 であ り、ECTの 治療効果を反映 している可能性がある。一方、ASDの 神経基盤 として、長距離神経ネ ッ トワークの障害 が知 られ 、 この障害 は一般的 には低周波数帯域における脳波活動に より反映 され ること が示 されてい る。従 って、ASDで のみ認 められた後頭部 での低周波数帯域 における脳波 の複雑性 の低下は、長距離神経ネ ッ トワーク障害に関連 した ASD特 有 の病態メカニズム とそ の改善 を反 映 してい る可能性 があ る。 結論】 【 MSE解 析 を用いた月肖波 の複雑性解析 は、ECTの 神経生理学的メカニズムを探 る上で 有用 な解析法 であ り、 さらには ECTの 治療効果判定 の指標 とな りうることが示唆 され た。 さらなる神経基盤 の解明および臨床応用に関 しては、多症例 を対象 とした本研究の 結果 の今後 の検証 が必要である。 備考 1 2 ※印 の欄 は、記入 しない こ と。 学位論 文 の要 旨 は 、和 文 に よ り研 究 の 目的、方法、結果 、考察 、結論等 の順 に記 載 し、 2,ooo字 程度 で タイ プ等 で印字す るこ と。 3 図表 は、挿入 しない こ と。
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