1 株主優待制度がもたらす financial visibility と Breadth of ownership

株主優待制度がもたらす financial visibility と Breadth of ownership の影響
宮川壽夫(大阪市立大学)
野瀬義明(桃山学院大学)
伊藤彰敏(一橋大学)
1. はじめに
株主優待制度を導入する企業が年々増加している。野村インベスターリレーションズ株
式会社(以下、野村 IR)の調査によれば、1992 年の時点で株主優待制度を実施していた企
業は 251 社(全上場企業に占める割合は 9.5%)であったが、直近 2014 年 7 月末時点では
1,137 社と過去最高を記録し、導入企業の割合は実に 29.9%、全上場企業のほぼ 3 社に 1 社
が何らかの株主優待を実施していることになる。
株主優待制度とは、企業が、一定数以上の株式を権利確定日に保有している株主に対して、
配当以外の何らかの特別なサービスを行う制度をいう。特別なサービスとは、自社製品や自
社サービスの利用、物品、割引券、商品券、自社施設見学、社会貢献など種類は多彩である
が、これらを無償で提供することが一般的である。
株主優待制度の実施自体には法的な拘束はなく、制度の導入や内容については企業の裁
量に任せられている。株主が保有している株数によって優待内容が異なったり、また、必ず
しも優待の内容が保有株式数に比例、累進するわけではなく、少額保有の株主にとって有利
な場合が多い。このことから個人株主に対して自社株式の購入を魅力的なものにするとい
う企業の意図があると解釈されている。一方、個人株主を想定していると考えられるため、
優待内容によっては大量の株式を保有する傾向にある機関投資家あるいは外国人投資家に
とってメリットは大きくないといえる。そのような投資家からは株主優待制度に対する批
判的な意見も聞かれる。
株主優待制度はすべての株主に歓迎されるわけではなさそうである。また企業にとって
も優待内容を選択し、開示し、各株主に送付する手間を考えれば、必ずしも合理的な株主サ
ービスとは言い難い。株式の購入魅力を高めるのであれば配当で支払う方が合理的であろ
う。なぜなら経済学的観点からも「モノ」を渡すより「現金」を渡すことの方が受贈者(株
主)にとっての効用は最大化する可能性が圧倒的に高いからである。株主優待制度が欧米企
業にほとんど浸透していないことも首肯できる。にもかかわらず最近の日本企業による株
主優待制度導入の状況は次章の図表 1 のように、もはやひとつのブームとも言える。これ
はまさに「株主優待制度のパズル」である。
本稿では、一見合理的とは思えない株主優待制度をなぜ企業は積極的に行うのか、という
問いを満たす仮説を構築するため様々な観点から考察を加え、その仮説の一部を実証的に
検証する。今後、株主優待制度という企業行動を実証的に研究する上での新たな視点を提供
することを目指している。特に本稿の特徴は、株主優待は利益配分を目的とした疑似的配当
ではなく、日本でいうところの歳暮中元にあたるようなギフトに過ぎないというところか
ら出発し、
「モノ」を無償で受け取ることに対する効用と「現金」を無償で受け取ることに
1
対する効用の違いに着目するところにある。
2. 株主優待制度の現状
日本における株主優待制度の実施状況を概観しておこう。図表1は 1992 年度以降、株主
優待制度の導入傾向を示したものである1。株主優待実施企業数が年々に増加していること
がわかる。特に 2007 年度までは顕著な増加傾向を見せ、2008 年度から 2010 年度まで株主
優待実施企業は絶対数で減少しているが、これは上場企業数自体が減少したことによる影
響が大きい。2008 年、2009 年はリーマンショックの影響や経営統合による上場廃止企業が
増加したとともに業績悪化などを理由に制度の見直しを行う企業も一部現れた。しかし、
2011 年度以降、株主優待制度の導入はブームになりつつあるとすら言える。
その一方で、株主優待制度を廃止した企業も少ないわけではない。図表 2 は 2003 年度以
降の株主優待新設企業と廃止企業の数を実数値で表したものである。ただし、図表 2 には
新規上場企業や上場廃止企業も含まれているため留意が必要となる。観察期間には経営統
合等による上場廃止企業が増加した一方で、新規上場企業数が減少した影響も大きい。そこ
で、図表 3 では上場廃止や倒産等の特殊事情を除いて純粋に株主優待制度を廃止した企業
の廃止理由別に集計を行ったものである2。2008 年度と 2009 年度には多くの企業で業績悪
化を理由に株主優待制度が廃止されたという事実は興味深い。株主優待制度も短期的な業
績悪化には影響を受けてしまうのかもしれない。また、株主優待が公平な株主還元として相
応しくないと判断して廃止した企業も 2008 年度以降に増えており、さらに株主優待よりも
現金配当を充実するという理由で廃止した企業も 2008 年以降に見られる傾向である。
3. 株主優待制度に関する先行研究
先述のように日本企業では株主優待制度が広く普及しているにもかかわらず、学術的な
検証を試みた研究は極めて少ない。そのなかでも、鈴木/砂川(2008)は 1998 年から 2005
年に株主優待を導入した 172 社を対象に、株主優待の導入が株式の流動性や株価に与える
短期的影響を検証した数少ない研究である。
彼らのアイデアは株主優待を利益還元とみなし、増配による配当シグナル仮説を株主優
待に適用するというものである。検証結果によれば、株主優待制度を導入した企業の個人株
主は増加し、株式の流動性指標は改善していることが確認された。さらに、イベントスタデ
ィを行うことによって株主優待導入のアナウンスが株価上昇に有意に結びついているとし
ている。
しかしながら、鈴木/砂川(2008)は株主優待が株式の流動性をもたらしたという点を
検証したものの、その結果が株価の上昇に結びついたということまでは厳密な検証ができ
1
本稿で使用している株主優待制度の実施件数等の実態データは野村インベスターリレーションズ株式会
社(以下野村 IR)よりご提供いただいたものである。それらに筆者が加筆加工している。
2 これらは各企業によって公表されたリリース文を参考に分類を行っている。
2
ていない。イベントスタディによる株価上昇の分析もさまざまな工夫が施されているもの
の、株主優待のアナウンス効果のみを純粋に抽出して他の影響を排除することには限界が
ある。彼らも株主優待制度は導入時には一定の効果があるが、コーポレートガバナンスへの
影響3という観点等を考慮すれば「長期的には何らかの不具合があるのかもしれない」と指
摘している。さらに、彼らは株主優待の導入には配当と同じようなシグナリングの効果があ
ることを前提としているが、ではなぜ企業は配当ではなく株主優待を実施するのか、なぜ市
場はそのことを評価するのかについては明らかにされていない。
鈴木/砂川(2008)は株主優待を疑似的配当とみなしており、また、昨今では株主優待利
回りなど優待制度を金額に換算して配当支払金額に加えた指標を算出する例も見られてい
る。もし、株主優待が利益還元の一つの手法であるならば、配当の支払いという会社法の枠
内で実施すればいいものを敢えて株主優待制度に代替するという合理性を説明することは
難しい。
ひとつには株主優待品の方が現金を支払うよりも企業にとって負担が小さいということ
が考えられる。今ひとつには保有株式数によって優待内容を変更するなど配当と違って株
主属性による還元度を自由に設計することができるという点であろう。しかし、前者におい
ては企業の負担は小さいとしても優待品を受け取った株主の効用が現金と等しいとは限ら
ないという点を見落としている。また、後者においては株主平等の原則という壁が立ちはだ
かる。そもそも株主優待は費用であって配当とは財源が異なる。また、鈴木/砂川(2008)
も指摘するように、仮に株主の小口化が実現したとしても、このことから生じるコーポレー
ト・ガバナンスの問題は深刻となるはずである。
4. 株主優待制度に対するわれわれのアプローチ
われわれの関心は、第一に、さほど合理的とは思えない株主優待制度をなぜ多くの日本企
業は競うようにして導入するのか、そして第二に、株主優待制度を導入することによって企
業の株価にはどのような影響を及ぼすことが考えられるのか、という点にある。これらの点
を検討するにあたって、株主優待は利益配分を目的とした擬似的配当ではなく、歳暮中元に
あたるギフトに過ぎないという前提から出発している。
経済学の理論に従えば再投資が可能である分、モノを受け取るより現金を受け取る方の
価値が高い。しかし、現実にギフトという習慣はどこの国でも存在する。相手に金銭ではな
くモノによるギフトを贈呈する動機は、それぞれの人とシチュエーションによって多様で
あるが、贈与側、受贈側の双方にとって、一般的にモノで渡す方がお金で渡すよりも金銭的
価値が高いと感じるケースがあるように思われる。
本章では、株主優待制度を理解するための3つのアプローチを紹介する。第一に、企業が
3
株主優待の導入によって大株主が分散化し、大株主によるコーポレートガバナンスの機能劣化という可
能性が指摘されているが、彼らは短期的な株価分析によってその影響を調べることは困難であると述べて
いる。
3
株主優待品を株主に贈ることによって自社の存在感を示そうとする動機の裏づけとなる
financial visibility 仮説、第二にこのような株主優待制度が株価に与える影響を検討するた
めの breadth of ownership 仮説、第三にお金ではなくモノで贈り物をすることの合理性を
検討するギフトの経済学である。
4-1. financial visibility 仮説
株主優待制度がコーポレート・ガバナンスの機能にもたらす影響は小さくない。株主優待
を行い、株主を小口化することによって経営者が株主からの監視を意図的に弱め、自由に振
る舞うことが可能になる。このような点を株主優待制度の問題として批判する論者や投資
家もいる。しかし、筆者には企業がわざわざそこまでの目的をもって株主優待を導入してい
るとは直感的に思えない。株主の監視を逃れる方法は MBO などもっと確実な方法が存在
するからである。むしろ企業は株主への自社の投資意欲を促進したり、株主へのサービスを
充実することによってコミュニケーションを図り、市場における自社の存在感を高めると
いった前向きな姿勢と理解した方が自然ではないだろうか。
たとえば、Mehran/Peristiani(2010)は 1990 年から 2007 年の間に MBO を行った米国企業を
対象に分析した結果、上場後にセルサイドアナリストのカバレッジが少なくなり、機関投資
家において financial visibility と investor interest が著しく低下した企業は上場している
ことのメリットがなくなり、非公開化することを報告している。彼らはアナリストによる不
十分なカバレッジは投資家を不安にさせ、流動性が低下することによってミスプライシン
グが起こり、企業価値に影響を与えると強調する。個別企業の流動性の低下が非公開を促進
し、活発な取引量が維持されることが企業を市場にとどまらせる効果を生むと指摘してい
る。このような考え方を financial visibility 仮説という。
これまで述べてきたように株主優待制度は個人投資家をターゲットにしたものと考えら
れる。時価総額が低いためアナリストにとってカバレッジのインセンティブがなく、機関投
資家の投資対象とはなりにくい銘柄すなわち機関投資家の financial visibility が低い銘柄
には、機関投資家ではなく個人投資家という投資家グループにおいて存在感を示す手段と
なる。financial visibility 仮説は企業が株主優待を行う背景を説明するひとつの理論となり
得るだろう。
4-2. breadth of ownership 仮説
仮に、企業が株主優待制度を活用して個人投資家というグループにおいて financial
visibility を高めることに成功しているとして、株主優待のメリットのみを目的に当該企業
の株主が構成されたとしたら株価評価に対して何らかの影響を与えることが考えられない
だろうか。本来、企業のファンダメンタルズが評価されて株価が形成されるべきであり、株
主優待を目的とした投資家が現れることは価格形成のノイズとなるのではないかというネ
ガティブな考え方もできる。一方、優待目的の投資家も含めて様々な価値観を持った幅広い
4
投資家が価格を形成することは株式市場が本来有している情報集約機能であるとの考え方
もできるかもしれない。
これに対して株主構成の広がり(breadth of ownership)が価格形成をゆがめ、ファン
ダメンタルズよりも高く評価してしまうという現象を実証的に示したのが、Chen et al.
(2002)である。この考え方は Miller(1977)に遡る。Miller(1977)は、楽観的な(強気の)
投資家と悲観的な(弱気の)投資家が綱引きをすると楽観的な投資家が勝利し、均衡価格
が高くなることを示した。特に両者の意見相違の分岐点が大きくなればなるほど、すなわ
ち differences of opinion の幅が大きくなればなるほど有意に均衡価格が上昇し、結果として
期待収益率は低下する。この現象には、楽観的投資家の行動と悲観的投資家の行動が非対
称的であることに背景がある。すなわち、楽観的投資家は価格が上昇すると思えば単に株
式を買い付けるだけだが、悲観的投資家は価格が下落すると思えば借株を行って空売りす
る必要がある。株を借りるコストが生じるなど悲観的投資家の行動には常に制約があると
考えられる(short-sales constraints)。その結果、価格は悲観的な評価ではなく楽観的な評
価を反映することを主張しているのが Miller(1977)である。
Chen et al.(2002)はミューチュアルファンドのデータを用いて Miller(1977)のモデルを
株主構成に応用し、株主構成の分散が大きいと株価が割高になることを実証している。彼
は株主構成の広がり(breadth of ownership)は PER や PBR などのバリュエーション指
標と相関が高いことを示した。
株主優待のメリットを享受することのみを目的に投資を行う株主は少なくないと思われ
る。もし、このような株主が企業の株主構成を占めることになると、breadth of
ownership や differences of opinion と同じような状態が作られるのではないかというのがわ
れわれの二つ目のアプローチである。この状態になると、株価は一時的に割高になるが、
それはファンダメンタルズを反映していないため、一定の時間をかけて収斂するものと考
えられる。つまり、株主優待制度を導入することによって株主層が拡大し、株価は一時的
に上昇するが、やがてはファンダメンタルズを反映して下落することになる。
4-3. 株主優待ギフトの経済学
モノを無償で渡すこと、つまりギフトの習慣が世の中全体の価値を破壊していると主張
する研究が Waldfogel(1993)と Waldfogel(2002)である。Waldfogel(1993)は米国ではクリス
マスシーズンに莫大な死重損失が発生し、世の中から価値が失われているとギフトの習慣
を批判する。Waldfogel(1993)の検証によれば、1992 年の米国のクリスマスシーズンの支出
は 380 億ドルに達するが、そのうち 40 億ドルから 130 億ドルが死重損失として価値を破
壊しているとしている4。以上のように考えると株主優待制度が年々増加する日本において
は莫大な死重損失が生じていることになる。
4
この検証はクリスマスにプレゼントを受け取った大学生を対象に 2 度にわたるアンケート調査を実施
し、モデルを推計した結果から得られたものである。
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しかしながら、死重損失が発生しているとしても人にはギフトを現金ではなくモノで渡
す何らかの動機が存在するのではないだろうか。例えば夫婦の記念日にギフトとして現金
を渡すことはほとんど常識的にあり得ないし、恋人の誕生日に現金の贈物をしたならばお
互いの関係は冷えきってしまうだろう。Waldfogel が主張する死重損失は人が完全合理的に
行動できることを前提とした基本的競争モデルに基づいた概念である。人が完全合理的に
行動しない世界において、モノによるギフトを贈るという現象を説明する術がないわけで
はない。積極的な解釈と消極的な解釈が可能である。
積極的な解釈として、Mankiw(2012)ではモノによるギフトにはシグナリングの効果があ
ると説明している。恋人の誕生日にモノを贈るという行為は相手の好みを理解していると
いう私的情報を利用したシグナリングとなって相手への思いを伝える効果となる。ギフト
を選ぶという行為には時間的コストが発生し、そのコストは相手をどれだけ愛しているか
という私的情報に依存することになり、シグナルとしての特徴を具備していると考えられ
る。この視点からは、企業が株主優待に自社製品を贈るのは、その製品がいかに優れたもの
であるかを株主にシグナルをする効果があることになる。
一方、消極的な解釈として、先の Waldfogel(2002)では現金を贈ることに対する心理的な
抵抗感があるとしている。彼はこれを贈物における不名誉(stigma)と表現している。
Mankiw(2013)とは逆説的にモノを贈るといいうことは相手の好みがわからないという不
名誉につながるし、また現金は贈物として社会的に洗練されていない対象であると理解で
きる。株主優待制度は歳暮中元のようなギフトと考えられると述べたが、歳暮中元に現金を
贈る習慣は日本では皆無であろう。仮に現金が贈られてきたらそこにはなにか特別な意味
があるのではないかと、どちらかといえば陰湿な勘ぐりをせざるを得ない。
Waldfogel(2002)は現金の贈物には心理的なマイナス評価が生じて金額以下の価値しか相
手に与えないというハンディがあると説いている。ただし、モノによるギフトか現金による
ギフトかは贈り手と受け手の関係や宗教、地域によって異なることが考えられる。そこで彼
は大がかりな実験を行い、現金を贈ることによる心理的抵抗と不名誉(stigma)がどれくら
いの価値を毀損するかを検証している。その結果、現金による贈物の stigma が毀損するマ
イナス要因は不変部分が金額にかかわらず 4 ドル、可変部分が常に総額の約 50%であるこ
とをつきとめた。
これは現金による現金ギフトの総額が多ければ多いほど受贈者にとっての価値は大きく
な る こ と を 意 味 し て い る 。 現 金 に よ る 贈 物 の stigma が 存 在 す る と し た 場 合 、
Waldfogel(2002)もギフトの予算が増えるほどギフトの価値が目減りする割合が減るとして
いる。つまりギフトの総額が小さい時はモノによるギフトが効率的で、ギフトの総額が大き
くなるにつれて現金によるギフトが効率的といえる。株主優待を考えた場合、投資金額が機
関投資家に比較して少額な個人株主の満足度を高めるためには現金配当よりも株主優待の
方が合理的と考えられるのである。このことは企業が株主優待を実施する動機の一つを説
明するかもしれない。
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5. 仮説の構築と検証方法
本稿では、
「株主優待は配当のように現金で受け取るよりも株主は金額以上の何らかの価
値を見出している」という仮説から一つの検証を試みる。
この仮説を検証するため、われわれは株主優待制度を実施している企業とそうでない企
業の権利落ち後の株価動向を観察することとした。株主優待にしても現金配当にしても、理
論的には権利付き最終日から権利落ち日にかけては、社外流出相当分の株価下落が想定さ
れる。もし市場が株主優待に現金以上の価値があると解釈しているのであれば、株価は現金
配当の権利落ちの影響に比べて、株主優待の権利落ちの影響の方が小さいと考えられる。そ
のために、配当金額を株価で除した配当利回りと株主優待相当額を株価で除した優待利回
りを算出し、それぞれが権利落ち日の株価リターンに与える影響を観測する。さらに、株主
優待実施企業の株価にはそうでない企業の株価に比較して現金配当による配当落ちの影響
が十分に反映されないということを想定して検証を行う。
これは野瀬(2014)の検証に倣ったものである。野瀬(2014)は、株主優待実施企業では、権
利確定日に向けて株式パフォーマンスが向上するとの仮説を検証している。この検証にお
いて、同時に彼は権利落ち直後の株価データを分析し、株主優待実施企業に配当落ちの現象
が観測されないとの結果を得ている。そこで、われわれは野瀬モデルの検証手法に立脚し、
データを拡張することによって検証を行う。われわれは、株主優待制度を実施している企業
の株価リターンが配当落ちの影響を十分に反映しないということを示した上で、株主優待
には現金で受け取るより、モノで受け取る価値が受贈者すなわち株主の中に存在するとの
仮説を主張する。
6. 仮説の検証とその結果
6-1. データ
本稿では株主優待の権利獲得というイベントを分析対象としている。分析期間は 2011 年
4 月末から 2014 年 3 月末までである。野村 IR の資料から対象企業を抽出したところ 2014
年 3 月末時点で 1,113 社となった。各企業のそれぞれの第二四半期末、第四四半期末にお
ける権利付き最終日(権利取り)時点の配当利回りを計算し、同時に優待利回りを試算する。
具体的な計算式は以下のとおりである。
配当利回り = 一株配当額 ÷ 権利付き最終日の終値 × 100
優待利回り = 一株優待額 ÷ 権利付き最終日の終値 × 100
各期の一株配当額は Quick のアストラマネージャーから収集する。一株優待額は、野村
IR の資料や日経会社情報等を参考に試算している。資料中に金額の明示があるものはその
額を用い、金額の記載がないもの(例えばお米2kg など)は市価を調査し優待額とした。
持ち株数に応じて優待品目を変えている企業では、最小持ち株数で得られる優待品を分析
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対象とする。持ち株の期間に応じて優待内容を変えている企業では最短期間で得られる優
待品が分析される。複数の優待品目を選べる企業の場合、金額が最も高くなる優待品を用い
ている。配当・優待利回りの計算は年 2 回の決算期で 3 年間にわたり行い、1 社あたり最大
6 回のデータを得た。
図表 4 は各サンプルの時期別分布状況を示す。3 月 9 月に優待・配当を行う企業が多い一
方、すべての月にサンプルが分布していることもみてとれる。また、株主優待導入企業であ
っても、配当は半期おきで優待は年一度、のように配当のみ行う決算期が少なからず認めら
れる。各サンプルの基本統計量は図表 5 に示す。優待実施企業と非実施企業との間で極端
に株式評価や収益性、個人持ち株比率で差があるというわけではなさそうである。
6-2. 検証方法
それぞれのサンプルについて、優待・配当権利落ち日における株式短期パフォーマンスを
計測した。具体的には、サンプル企業の日次リターン(RR: raw return)から同日の配当調
整済 TOPIX の日次リターンを引いた差を AR(abnormal return)と定義して収集した。
得られた AR はペアとなる配当・優待利回りと比較する。ファイナンスの理論では社外流
出相当分の株価下落が想定されるが、実際のデータについて検証を行った。具体的には、権
利落ち日の AR を被説明変数、社外流出である配当利回り・優待利回りを説明変数とした回
帰分析である。配当利回りに関して、Hayashi/Jagannathan(1990)はじめ複数の先行研究で
権利落ち日の AR との高い相関が指摘されている。まず本稿のサンプルで AR と配当利回り
との相関を確認した。加えて株主優待が擬似配当であるとすると、優待による価値流出分
(優待利回り)の株価下落(AR)が見られるはずである。そこで、全サンプルを株主優待
実施企業と配当のみ実施企業に二分し、被説明変数 AR が2つの説明変数(配当利回りと優
待利回り)でどのような相関を有するか確認した。
次に、サンプルによって優待利回りと AR との相関に差が見られる場合、その要因につい
て初期的な検証を行う。本稿では4つの分析を行った。
第一に優待の内容に着目する。株主優待品は多岐に渡るが、中を見るとクオカード、図書
カード、VISA ギフトカードなどほぼ現金と同等といえるものと、換金や現金との代替が難
しいものに大別される。そこで両者を区分して前述の回帰分析を行った。第二に株主優待実
施企業においても、
「配当のみ」行う決算期と「配当と優待」を行う決算期がみられる。具
体的には配当は中間・本決算双方で行う一方、優待は本決算期のみという企業が全体の四分
の一程度を占める。そこでサンプルを株主優待実施企業に絞り、配当のみ行った期と配当と
優待を行った期とで AR と配当利回り・優待利回りとの相関を検証した。第三に優待利回り
の多寡が権利落ち日の株価(AR)に影響を与えている可能性を想定し、サンプルを相対的
に優待利回りが高いグループと低いグループに二分し上述の検証を行った。
第四の分析は、配当利回りが AR に十分反映されていると考えられる場合、AR に占める
優待利回り相当分は以下の式で算出される。
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優待利回り相当分 = -AR - 配当利回り
この優待利回り相当分と、優待内容からわれわれが試算した優待利回りとの差を求め、さ
らに優待利回りで除したものを乖離率とした。この乖離率が様々な条件で異なるか否かを
検証した。
乖離率 = (優待利回り相当分 - (試算)優待利回り)÷ (試算)優待利回り
具体的には、優待利回りの高低、日経業種分類、PER、PBR、株式売買回転率、個人株主
比率を取り上げ、それぞれの相関を調べた。
6-3. 検証結果
1)権利落ち日の AR
図表 6 は優待実施企業と優待非実施企業における、権利落ち日の対配当込 TOPIX 超過リ
ターン(AR)と同時期の配当利回り・優待利回りを示す。優待非実施企業の配当利回りは
平均値 1.05%、中央値 0.97%であった。Ross/Westerfield/Jaffe(2010)等の考えによると、
配当獲得により配当利回りから所得税等分を控除した51%弱の権利落ちが見込まれる。実
測した AR は平均値が-0.96%、中央値が-1.12%であった。概ね、配当利回りと AR は整合
しているように見え。株主優待非実施企業においては、配当落ちの影響が合理的に株価へ反
映されているといえよう。
株主優待実施企業の配当利回りの平均値は 1.02%、優待利回りの平均値は 3.56%であっ
た。株主優待が擬似配当であると考えると、両者を合わせた 4.57%の権利落ちが見込まれ
る。しかし、実際の AR の下落幅は 2.09%であった。2%以上の乖離が生じている。中央値
を用いて同様に比較したところ、配当利回り+優待利回りから 2.09%の下落が想定される
ところ、実際の AR は-1.81%であり、平均値ほどではないものの乖離していた。これらは、
株主優待を実施する企業では権利落ちの影響が十分に株価に反映されていないことを示唆
する。
図表 7 は AR を被説明変数、配当・優待利回りを説明変数とした回帰分析の結果を示す。
モデル 2 は株主優待非実施企業について検証したものであるが、配当利回りが1%水準で
有意な相関を示した。推定値は-1.067 でありほぼ完全な負の相関があると考えられる。図
表 6 の結果と合わせ、日本企業では配当落ちの影響は効率的に株価に織り込まれると解釈
できる。モデル 1-1~1-3 は株主優待を行うサンプルでの結果である。モデル 1-1 を見ると
は配当利回りと AR が1%水準で有意な相関を示した。しかしながら推定値は-0.630 であ
る。配当落ちの影響が 60%強しか株価に反映されないことが分かる。優待利回りは AR と
有意な正の相関を示すものの推定値が 0.007 と微小であった。優待による価値の流出が株
5
本稿の分析期間での税率は、投資家の属性や投資期間に応じて 0%~20.42%の幅を持つ
9
価に与える影響は非常に小さいと解釈される。モデル 1-2、1-3 は配当利回り、優待利回り
それぞれ独立で行った単回帰分析の結果である。モデル 1-2 に示すとおり配当利回りは AR
と有意な相関を示すが、推定値は 0.821 であり配当のみ行う企業と比べると低い。優待利回
りが AR に与える影響は一貫して小さい(モデル 1-3)。
株主優待によるキャッシュアウトが合理的・効率的に株価へ反映されない可能性を指摘
したが、これは株主優待の金額換算に恣意性があるためかもしれない。例えば「3,000 円相
当自社製品」を優待する場合、企業側のキャッシュアウトは 3,000 円ではなかろう。一方で
クオカード、図書券、VISA ギフト券などの金券は、ほぼ現金と等価といえ換金性も高い。
500 円の図書券を配る場合、企業のキャッシュアウトも同額の 500 円程度となるであろう。
金券は擬似的配当要素の強い品目と考えられる。そこで、優待品目を金券と金券以外に区分
した分析を行った6。図表 8 はその結果である。モデル 1 に示すとおり、金券を優待する企
業では配当利回り、優待利回りともに AR と有意な相関を示す。しかし配当利回りの推定値
が-1.080 とほぼ完全な負相関を示す一方、優待利回りは-0.216 にとどまった。金券以外の
場合は、全サンプルでの分析と同様に優待利回りは AR にほとんど影響を与えていない。よ
り現金に近い金券であっても権利落ちの影響が効率的に反映されていないことがわかる。
本検証結果は、われわれが想定していた「モノで渡すことの価値の高さ」とは矛盾している。
今後の解釈と検証手法を検討したい。
株主優待実施企業であっても、半期毎必ず優待を実施しているわけではない。本決算期に
1 度のケースが多い。一方で配当は半期毎の企業が増えている。同じ株主優待実施企業であ
っても、権利落ち日に「配当落ち」のみ想定される期と「配当落ち+優待落ち」が想定され
る期が存在する。配当落ちのみの期と配当+優待落ちの期でサンプルを 2 分して同様の分
析を行った。図表 9 が結果である。モデル 2 に示すとおり、配当利回りが AR と有意な相
関を示すものの推定値は-0.793 であり、配当のみ行う企業の-1.067 と比べて明らかに相違
する。株主優待を行うと、広く株主還元に対する市場の評価が非効率となる可能性が示され
たといえるのではないだろうか。
2)AR を左右する要因
前節にて、株主優待実施企業では権利落ちの影響が株価へ必ずしも効率的に反映されて
いない可能性を示した。では何が効率的な権利落ちに影響を与えるのか、初期的な分析を行
った。具体的には、権利落ち日に配当利回り分は効率的に株価に反映されると考え、AR か
ら配当利回り分を引いた差を AR における優待利回り相当分とし、別で計算された優待利
回りとの乖離を乖離率とし、それぞれ比較した。
図表 10 は、全サンプルを優待利回り上位 50%下位 50%に 2 分し、それぞれの乖離率の
算出したものである。平均値、中央値ともに優待利回り上位 50%の群がより高い(優待落
6
金券と判定したのは、JCBギフトカード、UCギフトカード、VJAギフトカード、クオカード、ジ
ェフグルメカード、図書カード、全国共通ギフト券である。
10
ちが大きくない)ことが分かる。両者の平均値の差を t 検定で、両者の中央値の差を
Wilcoxon/Kruskal-Wallis の順位和検定で検定したところ、1%水準で有意に異なっていた。
優待利回りが高い企業では優待落ちの影響がより小さい(株価が高止まりする)と解釈可能
である。
7. おわりに
本稿は、一見合理的とは思えない株主優待制度をなぜ企業は積極的に行うのか、というパ
ズルに対する仮説を構築するため、いくつかの観点から理論的な考察を行った。特にわれわ
れが重視したことは、株主優待は利益配分を目的とした疑似的配当ではなく、日本でいうと
ころの歳暮中元にあたるようなギフトに過ぎないという視点である。その結果、
「モノ」を
ギフトにすることと「現金」をギフトにすることの効用を経済学的視点から検討した。その
上で優待品を受け取る側の株主の満足度には何らかの価値があって、それが株価に反映す
るとの可能性を実証的に示唆した。
しかしながら、われわれは本稿の検証には多くの課題があり、本研究はまだ緒に就いたば
かりであると認識している。本研究で掲げた仮説の検証に権利落ち後の株価動向をデータ
として用いたが、他の方法論も開発すべきと考えている。もちろん今回の検証結果すらもわ
れわれの仮説を十分に支持するものとは言いがたい。データ、分析期間、モデル式等精緻化
は喫緊の課題である。
昨今、株主優待制度は発行体側にとっても投資家側にとっても実務においては注目度が
著しい。しかし、不可解なことにそれはほぼ日本のみで行われている慣習である。導入目的
や優待アイテムのバリエーションが多く、分類や整理も容易ではない。われわれの知る限り、
これまで株主優待制度の実態に関する計量的な分析すらまだ十分には行われていない。そ
のため学術的な研究としての余地は依然大きいと思われる。本稿は、今後、株主優待制度の
導入という企業行動を実証的に解き明かす上での契機に過ぎない。
謝辞
本稿の執筆においては、学術研究のために野村インベスターリレーションズ株式会社より
貴重なデータのご協力をいただいた。ここに記して感謝の意を表したい。
11
【図表集(図表 1~図表 10)】
図表 1 株主優待制度の導入状況
(社)
1200
50.0%
45.0%
1000
40.0%
35.0%
800
30.0%
600
25.0%
20.0%
400
15.0%
10.0%
200
5.0%
0
0.0%
実施企業
実施企業率
(注)実施企業率は、野村IRの調査による株主優待実施企業数を、四季報(
東洋経済)
から抽出した各年3月末における上場全企業数で除したものである。
図表 2 株主優待制度の新設企業と廃止企業の推移
(社)
120
106
95
100
95
90
86
88
80
68
60
59
48
45
40
42
46
34
20
25
40
39
25
33
25
15
0
2003
2004
2005
2006
2007
新設企業
2008
2009
2010
2011
2012
廃止企業
(注)野村IRのデータを筆者が加工。新設企業は新規に上場した企業も含んでおり、ま
た、廃止企業は上場廃止となったため株主優待制度を廃止した企業も含まれている。
12
図表 3 株主優待制度廃止企業の廃止理由
(社)
45
1
2
40
35
2
30
26
25
19
20
15
2
10
5
0
5
2
2
2004
1
2005
5
5
3
3
2006
2007
公平な利益還元
13
2008
業績悪化
14
2009
2
3
6
7
5
2010
2011
現金配当に変更
4
9
7
2012
2013
利用頻度の低下
(注)野村IRのデータを筆者が加工。廃止理由は各企業のリリース文を参照しており、
「
業績悪化」と「
公平な利益還元」
が重複しているものは「業績悪化」
に加えた。
13
図表 4
株主優待
実施
株主優待
非実施
期日
株主優待を実
施
2011年 4月
2011年5月
2011年6月
2011年7月
2011年8月
2011年 9月
2011年10月
2011年11月
2011年12月
2012年 1月
2012年2月
2012年3月
2012年4月
2012年5月
2012年 6月
2012年7月
2012年8月
2012年9月
2012年 10月
2012年11月
2012年12月
2013年1月
2013年2月
2013年 3月
2013年4月
2013年5月
2013年6月
2013年 7月
2013年8月
2013年9月
2013年10月
2013年11月
2013年 12月
2014年1月
2014年2月
2014年3月
20
24
94
17
24
64
17
80
305
21
27
95
22
118
582
19
25
66
17
85
318
22
30
105
24
124
605
19
25
71
18
91
330
25
129
635
この期は優待
実施なし
7
14
19
9
13
43
16
64
359
8
14
20
8
26
95
10
12
44
13
65
368
9
14
20
3
29
97
10
17
44
11
69
385
4
31
102
14
配当のみ
実施
51
91
288
53
92
270
55
108
1,891
51
88
299
58
116
1,910
52
90
286
58
109
1,883
50
84
301
53
112
1,896
51
89
297
53
107
1,889
51
109
1,870
図表 5
前月末PER
前月末PBR
前月末出来高回転率(250日)
直前期ROE
直前期個人持ち株比率
権利落ち前日時価総額
倍
倍
%
%
%
百万円
株主優待実施
平均値
中央値
27.2
15.9
1.4
0.9
66.5
22.7
5.1
5.3
44.5
42.1
99,298
14,396
n
5,352
6,037
6,034
6,063
6,061
6,063
n
10,960
13,126
13,328
13,448
13,414
13,448
株主優待非実施
平均値
中央値
26.0
14.2
1.8
0.8
125.2
35.3
1.4
4.8
45.4
41.1
108,423
9,804
図表 6
n
権利落ち日AR
配当利回り a
優待利回りb
a+b
6,068
6,063
2,955
-
最小値
-20.92
0.00
0.06
-
優待実施企業
平均値
中央値
-2.09
-1.81
1.02
0.97
3.56
1.11
4.57
2.09
最大値
38.81
7.41
709.22
-
n
13,990
13,447
-
優待非実施企業
最小値
平均値
中央値
-27.14
-0.96
-1.12
0.00
1.05
0.97
-
最大値
110.05
14.21
-
図表 7
被説明変数:株主優待をする企業の権利落ち日のAR
モデル1-1
説明変数
t値
推定値 標準誤差
-2.362
0.100 -23.590 ***
切片
-0.630
0.072
-8.710 ***
配当利回り
0.007
0.003
2.580 ***
優待利回り
n
2,955
0.027
自由度調整R2乗
モデル1-2
t値
推定値 標準誤差
-1.258
0.063 -19.950 ***
-0.821
0.047 -17.490 ***
6,063
0.048
被説明変数:株主優待をしない企業の権利落ち日のAR
モデル2
説明変数
t値
推定値 標準誤差
0.176
0.044
4.030 ***
切片
-1.067
0.029 -36.360 ***
配当利回り
優待利回り
n
自由度調整R2乗
13,447
0.089
15
モデル1-3
t値
推定値 標準誤差
-3.050
0.062 -48.850 ***
0.008
2,955
0.003
0.003
2.910 ***
図表 8
被説明変数:株主優待をする企業の権利落ち日のAR
モデル1 金券を優待
説明変数
t値
推定値 標準誤差
-1.386
0.299
-4.640 ***
切片
-1.080
0.191
-5.660 ***
配当利回り
-0.216
0.090
-2.390 **
優待利回り
n
492
0.0652
自由度調整R2乗
モデル2 金券以外を優待
t値
推定値 標準誤差
-2.466
0.107
-23.020 ***
-0.568
0.078
-7.260 ***
0.007
0.003
2.740 ***
2462
0.0237
図表 9
被説明変数:株主優待をする企業の権利落ち日のAR
モデル1 その期に配当+優待を実施
説明変数
t値
推定値 標準誤差
-2.362
0.100
-23.590 ***
切片
-0.630
0.072
-8.710 ***
配当利回り
0.007
0.003
2.580 ***
優待利回り
n
2,955
0.027
自由度調整R2乗
モデル1は表7のモデル1-1の再掲
モデル2 その期は配当のみ実施
t値
推定値 標準誤差
-0.058
0.087
-0.670
-0.793
0.069
-11.510 ***
1939
0.0635
図表 10
乖離率
優待利回りが上 優待利回りが下 差の検
位50%
位50%
定結果
平均
中央値
-14.18
-165.23 ***
18.58
-103.14 ***
乖離率がマイナスほど、優待額から試算された率以上にARの落ちが大きいと解釈
16
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17