本日の出演者 『ごあいさつ』 桂 きん枝 本日は御来場頂き誠に有り難うございます。 今年もあっという間に三月の半ばとなりました。 これからしばらくは少し特別な時期。三月末までは別れがあり区切りが ある。そして四月からは一転、物事が新しく始まり出会いがあります。 私は二十四年前、大学入学と同時に親元を離れて一人暮らしを始 めましたし、十八年前の三月に芸界に入り噺家としての人生がスター ト。沢山の出会いに恵まれました。 新たな環境で生活が始まるのは楽しみであり、同時に不安でもある。 また春を感じながらも少し肌寒いこの時期の空気が、その不安を募ら せる気がします。 思い出すのが大学生活五年目。余分な春を迎えた時は 「何でこの大学の桜を今年も見ているのだろう。」 と、不甲斐ない自分の頭の上で咲く満開の桜がよそよそしく感じられ たのが忘れられません。 噺家になってからは人事異動や転勤もなく、春特有の楽しみや不 安とは縁がなくなり穏やかなものです。ただ三月と言えばさらら寄席の 記念会。この会を今年も迎えられる事に感謝する十二回目の春で す。 桂 歌之助 桂 歌之助 桂 ひろば 桂 二乗 『噺家の休日』 「お休みの日は何をされているのですか?」 私にとってこの質問が誠に辛い。と言うのが、普通人に比べて噺家は圧倒 的に休みが多く、仕事の日も実働時間は極わずかだからです。(もちろん 売れっ子さんは別ですが・・・。) ですから休みだからと言って「さあ、何かやろう!」と、前向きになる事があまり ありません。 ところで「芸は人なり」という言葉がありますが、噺家は落語を喋りながら も、実は噺家自身をお客さんに楽しんでもらう面があります。だから落語の 稽古は勿論、自身を豊かにする作業も大切です。広く興味を持ち、色々な ものを見たり聞いたり、体験したり。 有り余る休日はそういう事に費やされています。
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