補講 B: 非線形方程式(EOM) この補講では、IP01 か IP02 の直動台車上に取り付けた倒立単振子(SIP)モジュールの一般 力学方程式を導出します。そのシステムの力学モデルを得るためにラグランジュの方法を用 います。この方法では、システムへの単一入力は Fc であると考えます。 ラグランジュの方法を遂行するためには、システムのラグランジアンを求める必要があります。 これはシステムの全位置エネルギーと運動エネルギーを計算することで行われます。 5 ページ、図 5 に示した基準フレームの定義に従って、振子重心の絶対デカルト座標は次式で 表せます。 まず、システムの全位置エネルギーVT を計算しましょう。システムの位置エネルギーは現在、 あるいはこれまでのある種の仕事によってシステムやシステム要素がなされてきたエネルギ ーの総量です。それは通常基準位置からの垂直変位(重力による位置エネルギー)かバネに よる変位(弾性による位置エネルギー)で生じます。 ここでは、システムに弾性による位置エネルギーはありません。そのシステムの位置エネル ギーは重力だけによるものです。台車の直動運動は水平であるので、けっして垂直変位はあ りません。それ故、全位置エネルギーは振子の重力位置エネルギーだけで次のように表せま す。 全位置エネルギーは一般化座標だけで表わせることが式[B.2]から分かります。 次に全運動エネルギーTT を求めましょう。運動エネルギーはシステムの運動によるエネル ギーの総量です。ここでは、全運動エネルギーは台車(台車の移動方向はロータ回転方向に 対し直交するので)とそれに乗っている倒立振子(SIP の移動はその回転に対し直交するので) の両者で生じる移動と回転運動エネルギーの総和になります。 まず、電動台車の移動運動エネルギーTT は次のように表せます。 次に、台車の DC モーターによる回転エネルギーTcr は次式で表せます。 制御実験装置のピーアィディー http://www.pid-control.com/ - 29 - それ故、式[B.3]、[B.4]の結果として、台車の全運動エネルギーTc は次のようになります。 ヒント#1 で、倒立単振子の質量はその重心(COG)に集中していると仮定する、と言いました。 従って、振子の移動運動エネルギーTpt は、次式で表されるようにその重心の線速度の関数と して表せます。 ここに、振子の重心線速度のx座標は次式で求まります。 また、振子重心線速度のy座標は、 で表せます。 さらに、振子回転運動エネルギーTpr は、 のようになります。 従って、システムの全運動エネルギーは式[B.5]、[B.6]、[B.7]、[B.8]と[B.9]で表した4つの個 別運動エネルギーの総和となります。展開して数項を取り、整理すると、システムの運動エネ ルギーTT は、 となります。 制御実験装置のピーアィディー http://www.pid-control.com/ - 30 - 式[B.10]から、全運動エネルギーは一般化座標とそれらの 1 次導関数の両者で表せること が分かります。 次に、我々のシステムのラグランジュ方程式を考えてみましょう。定義により、前に定義した 二つの一般化座標を xc、αとしたラグランジュの 2 方程式は次のような標準的な形になりま す。 そして 式[B.11]と[B.12]の L はラグランジアンといい、 に等しいと定義されます。 式[B.11]の Qxc は一般化座標 xc に作用する一般化力です。同様に、式[B.12]の Qαは一般化 座標αに作用する一般化力です。我々のシステムの一般化力は次のように定義することが できます。 式[B.14] 直動台車に作用する(非線形の)クーロン摩擦は無視してあることに注意してください。さらに、 振子作用が直動台車に及ぼす力も今展開しているモデルでは無視してあります。 式[B.11]を計算すると、第一のラグランジュの方程式はもっとはっきりした次のような式にな ります。 同様に、式{B.12}も計算すると、第二のラグランジュの方程式は次のようなもっと明確な式にな ります。 制御実験装置のピーアィディー http://www.pid-control.com/ - 31 - 最後に、式[B.15]、[B.16]の1セットのラグランジュ方程式を2ラグランジアン座標の 2 次導関 数について解くと、つぎの二つの非線形方程式となります。 そして 式[B.17]と[B.18]はシステムの運動方程式(EOM)を表しています。 制御実験装置のピーアィディー http://www.pid-control.com/ - 32 -
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