伊・イモラの協同組合コミュニティ・社会的経済 津田直則 桃山学院大学(名誉教授) 協同組合コミュニティの名称は、レイドローが『西暦 2000 年における協同組合』 (1980)にお いて、協同組合の世界が重視すべき 4 つの優先分野を取り上げ、その中で、協同組合地域社会の 建設として含めた分野である。今日、世界にはこの協同組合コミュニティと呼ばれる地域社会が あちこちに生まれている。モンドラゴンはあまりにも有名であるが、その他に、イタリア・ボロ ーニャ県のイモラ、韓国・ウオンジュ(原州)、オーストラリア・マレーニなどがある。また、州 レベルでは、イタリア・エミリアロマーニャ州やカナダ・ケベック州がある。今回の報告では、 イタリア・エミリアロマーニャ州ボローニャ県にあるイモラ市という人口 7 万人(広域 12 万人) の町を、協同組合コミュニティと社会的経済という視点から紹介する。報告者はこの町の協同組 合を 2010 年から調査してきた。 イモラの特徴は、まず広域人口 12 万人の地域社会に 115 もの協同組合があり、その中心が労 働者協同組合による製造業の協同組合にある点である。ボローニャも協同組合で有名であるが製 造業はない。イモラの多くの住民は何らかの形で協同組合に関わっており、特に製造業は協同組 合雇用の半分を担っている。その他、住宅、農業、消費、文化、サービス、金融等の協同組合が あり、全国の協同組合連合会であるレガやコンフコーポレイティブのイモラ支部があるが、この 両者はイモラでは 2011 年に事実上統合し、連合会事務所も共有している。 協同組合以外では共済や財団もある。また連合会はまだ存在しないが、アソシエーションは 150 ~200 に達している。つまりイモラは協同組合コミュニティであるとともに社会的経済の町とし ても特異な存在であるといえる。聞き取りで驚いたのは、住民はイモラが協同組合コミュニティ を形成している町であるというだけでなく、社会的経済の町でもあると理解しているという点で ある。協同組合の祭典が毎年開かれ協同組合教育も中学生からある。 イモラでこのように協同組合や非営利組織が発展しているのは、連帯の思想(solidarity)や互 恵(mutuality)の思想が歴史的に受け継がれてきていることである。縦の連帯と横の連帯とい う言葉がある。横の連帯は、協同組合や非営利組織の横の連帯のことであり、縦の連帯とは、世 代を超えて協同組合の資産を引き継いでいくという考え方である。協同組合が地域社会に寄付を するのは当然であるという考え方もこの連帯思想からでてくる。連帯はイモラの DNA であると いう言葉はあちこちで使われている。
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