39号 - 大阪教育大学附属高等学校池田校舎

マルカル通信
No.39
国際枠入学生紹介号
Paper for Multi Cultural Understanding
2015.6.25
大阪教育大学附属高等学校
池田校舎
国際理解教育委員会 発行
梅雨空とはいえ、すがすがしい季節になりました。中間考査を終え、どのクラスも附高祭に向け一丸
となって取り組みを始めているようです。新しい服が体に馴染むように、4月から始まった新しい学
年・新しいクラスが、すっかり自分の一部になったように感じますね!
今年度、国際枠入試で2人の生徒が本校に入学しました。海外でのさまざまな経験や生活を文章にま
とめてもらいましたので、紹介します。
私を変えた上海
2組
高橋 一瑠
私は中学 3 年間を中国の上海で過ごした。私
口にも合う。店によって違うので色々な店を探
と無縁だった上海が私の人生に大きく影響を与
検した。料理の席には普通中国茶をつけるのだ
えることになった 3 年間だ。
が、健康に良いと勧められ私は毎日家でも飲ん
3 年前の私にとって中国は悪いイメージしか
なかった。またニューヨークを希望していたか
でいた。
また上海には小さな店が沢山ある。 CD や
ら少しがっかりもしていた。そんな複雑な気持
DVD、日本のキャラクターのグ
ちから始まった上海生活だが、私に新しい発見
ッズやアクセサリーなど様々
をたくさん与えてくれることになる。
で、服のオーダーメイドも盛
まず、上海は大都会だということだ。日本に
んだ。ショッピング好きな私
はまだ上陸していない店も沢山あるし、閉店時
は友達や家族と本場のタピオ
間が遅いため夜も明るい。また国際都市で外国
カミルクティー片手に色々散
人が多いため中国語が話せなくてもあまり苦労
策した。特に地元の中国人のように値引きをし
はしない。町では英語だけでなく日本語も沢山
、上手くいった時は大阪人の私にとって何より
見かけることがあった。
嬉しかった。
次に、マナーが悪くて有名な中国人だが実は
このように、私にとって上海生活は日々が発
思いやりがあって優しいということだ。お年寄
見の嵐だった。価値観もかなり変わった。今改
りや子持ちの方に席を譲る速さは世界トップレ
めて 3 年前の私はつまらない人間だったな、と
ベルだといえるぐらいに。また彼らは社交的で
思う。イメージや偏見だけに捕われて勝手に悪
親しみやすい。あまり中国語を話せなかった私
いと決め付けて距離をとるほどもったいないこ
だが、たまたま出会った中国人とよく話をした
とはない。しかし、日本には 3 年前の私のよう
ものだった。
な考え方の人がいるかもしれない。
最後に、楽しもうと思う気持ちがあればとこ
とん楽しめるということだ。
中国といえば中華料理だがその中でも私のお
気に入り小籠包だ。肉まん型のシュウマイのよ
うなものにスープが入っている点心で日本人の
私は上海生活での経験を生かして、これから
も世界に出て様々な文化に触れ沢山の発見をし
ていくつもりだ。そしてその発見を一人でも多
くの人に伝えていきたいと思う。
英国で学んだこと
2組
宇田 創
僕は中学入学から卒業までのの3年間、イギリス
ったその状態のままかぶりつきます。最初その光景
のロンドンで過ごしました。僕にとって海外に住む
を見た時は「なんてワイルドな人なんだ!!」と思
ことは初めてであり、とても貴重な体験でした。こ
いましたが、それが普通と知った時、これまでの僕
こではイギリスで過ごす中で気づいたことについて
の”りんごはむいて食べるものだ”という常識は覆
書こうと思います。
されてしまいました。また、紅茶のティーパックが
現地に住んで気づいたことは、想像以上に外国の
人が多いということです。旧植民地であるインド系
落ちていたのも紅茶の国であるイギリスならではだ
と思います。
やアフリカ系の人が多く、またイギリスは移民や難
意外と多くの日本食が普通に売られているという
民の受け入れも積極的に行ってきたので、外国人の
ことも発見でした。スーパーに行くとほとんどのと
比率はロンドンの全人口の約半数にもなります。僕
ころで寿司が売られているし、コーヒーやサンドイ
の住んでいたフラット(アパート)でもインド人、
ッチ等を売っている Pret a Manger というお店で
フィリピン人、イラン人、アルジェリア人と、知っ
はみそ汁が miso soup として売られていたりしま
ているだけでも、棟の 8 世帯中 5 世帯は外国人でし
した。昔から住んでいる人によると、このような光
た。あまりにも多いため、僕が街にいるときに自分
景は、つい5~6年前から見られるようになったら
が異国民だということを感じることはほとんどあり
しくそれまでは外で日本食を食べることはほとんど
ませんでした。
できなかったそうです。日本食は、いまブームであ
また、ロンドンに住む人は気遣いができる人が多
り、僕が住んでいた3年間でもそれは強く感じまし
いと感じました。例えば電車やバスに乗っていると
た。特にラーメン店の増加が著しく、一風堂のロン
きにお年寄りの人が立っていると、ほとんど必ずと
ドン店もあるほどです。
言っていいほど、若い人は席を譲ります。また、ド
僕はイギリスに行くまでは、ずっと日本の同じ市
アを通るときに、次の人が来るまでドアを支えて待
で暮らしてきました。ほとんどそこのことしか知ら
っていたり、知らない人でもたまたま目が合ったり
ず、他の場所について知ろうともしなかったため、
すると、笑顔を向けてくれたりします。相手のこと
ものの見方や価値観はとても狭く、完全に”井の中
を思って行動できる人が多く、それをごく当たり前
の蛙”でした。しかし、中学3年間をロンドンで過
のようにできるところが素晴らしいと感じました。
ごし、ほとんど初めて他文化に触れ、新しい世界を
他に、イギリスの人々は古いものを大切にしてい
知ることができました。僕はロンドンに引っ越した
ると思いました。それは建物や街並みであったり、
当初、英語が全く話せなかったために現地校やイン
物であったりします。御存じのとおりイギリスには
ターナショナルスクールではなく日本人学校に入学
古い建物が多く残っています。多くの建物が築数百
することにしました。言葉が通じないことを恐れて
年で、僕の住んでいたところも築約 100 年でした。
いたのです。しかし、今ではインターナショナルス
イギリスの人は昔からあるレンガを好み、火事で焼
クールに通っておけば…と少し後悔しています。も
け残ったレンガでさえも、再建するときに使うこと
し、そこに行っていれば英語が流暢に話せるように
があるそうです。街並みに関しては、日本のように
なれただろうし、またイギリスや外国についてもっ
目立つよう派手な広告を出すことは禁止されていま
と知ることができたと思います。これまでと違う経
す。電柱や電線もめったになく、昔ながらの風景が
験をすることは誰でも怖くて不安になるものです。
今でも残っています。
しかしそれを乗り越えると必ず何か大きなものを得
ロンドンでは、毎日が発見の日々でした。僕が一
られるということを学びました。このロンドンでの
番面白いと思った発見は、バスや電車に、バナナの
中学3年間の経験をこれからの人生で最大限に活か
皮やりんごの芯、紅茶のティーパック(稀)などが落
していきたい。
ちていたことです。国が違えばポイ捨てされるもの
も違うことに気づきました。イギリスの人(おそら
く多くの欧米人も)はりんごをむかずに、お店で買
一部レイアウトや文字を修正させてもらいました。
文責/国際教育委員会
植村和美