特集2(車両用電波透過型遮熱ガラスの開発)(PDF

特集
2
製品を通じた地球温暖化防止への貢献
車両用電波透過型遮熱ガラスの開発
社会課題の認識
環境の変化や自動車の進化に伴う
多様なニーズへの対応
ガラスは透明で耐久性があり、安価且つ高級感がある
という特徴から、
自動車にとって必要不可欠な材料です。
透明な窓ガラス、中でも特に高透過・大面積で傾斜して取
り付けられているフロントガラスからの流入の割合が最も
大きいため、
フロントガラスに遮熱性能を付与することが
もっとも効果的です。
従来の遮熱性フロントガラスとしては、熱線吸収剤を用
一方で自動車における温暖化対策としてCO2排出量
(燃
いて熱線を吸収するものや、金属膜によって熱線を反射
費)
に対する厳しい目標が定められており、自動車から排
するものがあります。
しかし、前者は吸収された熱が車室
出されるCO2を削減することが、低炭素社会を目指す上
内に再放射される、後者は通信に必要な各種電波を透過
で重要です。
しないという問題がありました。
そして、
環境対策としてエコカー
(HVやEV)
の普及が期
そこでセントラル硝子は日射エネルギーのうち近赤外
待されるなか、航続距離を伸ばしたいという要望もありま
線のみを選択的に反射する技術により、
“熱線反射”
と
“電
す。もし、車室内への熱
(日射エネルギー)
の流入を防ぐこ
波透過”
を両立した新タイプの遮熱ガラスの開発を目指し
とができれば、快適性を向上させてエアコンの使用を抑
ています。
えることができ、結果として航続距離の拡大に寄与するこ
とが可能となります。
さらに移動体である自動車に用いられる窓ガラスは、
乗
員の身を守るために無くてはならない安全性を有してい
地球温暖化対策に貢献できる遮熱ガラスへの期待は
非常に大きいといえます。商品化にはまだ課題が残され
ていますが、早期に実現できるように市場のニーズを的
確に掴みながら開発を進めていきます。
ます。そのため自動車用窓ガラスは安全ガラスとも呼ば
れ、運転視界を確保し風雨や飛来物から乗員を守る、
また
Voice
は事故発生時に乗員を守るためのものとして法規でその
高品質・高機能な自動車用窓ガラスの
基本性能が規定されています。安全ガラスとしての基本
性能を満たすことに加え、環境の変化や自動車の進化に
開発を目指しています
自動車用窓ガラスに要求される何よりも重要なことは乗員の安全を守
ることです。機械的耐久性や、
太陽光や温度、
風雨に長年曝されても劣化
伴うニーズの多様化に応じるために、
自動車用窓ガラスは
しない耐環境性、明瞭な視認性を確保するための光学特性は最低限の
さまざまな機能を備え持つ高機能材料としての重要な役
ものとして求められます。
割も求められています。
一方で、
環境の変化や自動車の進化に伴うニーズの多様化に応じるた
めに、
自動車用窓ガラスはさまざまな機能を備え持つ高機能化が進めら
れています。高機能化にはガラスと新たな材料との複合化が大いに有効
セントラル硝子の取り組み
車室内への日射エネルギーの流入を防ぐ、
フロントガラスへの遮熱性能の付与
自動車の車室内へ流入する日射エネルギーとしては、
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社会・環境報告書2015
であり、
遮熱ガラスにおいても熱線反射材料との複合化が図られていま
す。自動車用窓ガラスとしての十分な品質を
確保しつつ、新たな熱線反射材料との複合
化を図ることが大きな課題であり、
当社は材
料の特性を理解することによってその解
決に努めています。
硝子研究所
主任研究員
泉谷 健介