厚木の小野小町伝説 島口 健次 厚木の小野には小町伝説がある。小野小町は絶世の美人であった と言われ、その出生地は秋田、千葉、京都、滋賀、など全国で約二 十ヶ所ある。厚木の小野小町伝説の根拠は、文明十八年(一四八六) 道與(京都聖護院門跡)の紀行文「廻国雑記」にある。道與は京都 から北陸、関東、東北を旅したが、大山、伊勢原から日向薬師を経 て小野(小野神社付近)に来たところ、里人が「ここ小野は小野小 町の出生地です」と聞かされたものである。元禄十三年(一七〇〇) の小野村絵図を見ると、「小野山」「小野の宮」が描かれており、小 野神社が三百年以上の歴史を持つことが確認される。小野神社の縁 起によると、 「源頼朝の側室の一人、丹後の局は頼朝の寵愛をうけて いたが、懐胎の身となった。これを知った政子は嫉妬のあまり、畠 山史重忠に局の首をはねよと命じたが、重忠は身代わりを立てて、 乳兄弟がいる小野の里へと局の身を隠してしまった。やがてこれを 知った政子の激しいうらみによって、丹後の局は白髪の姿になって しまい、驚いた局は一心不乱に十七日間小野小町を念じたところた ちまち元の黒髪に戻り、小野神社を建立した。江戸時代は三十歳以 下の男女で白髪になった人はこの小野神社に参詣したと言われる」 と記している。小野神社周辺には小野七不思議(小町池、小野井戸、 業平竹、片葉松、化粧塚、小町海苔、小町竹橋)がある。小町神社 の氏子で構成の「小野小町研究会」では、四年前から四月上旬、小 野神社駐車場にて大会を開催している。小野神社は、桜の名所地で もあり、短歌会などを行い、平安時代六歌仙の一人として活躍した 小野小町を偲んでいる。厚木歴史研究会ではこの小野小町伝説を講 演会で行い、厚木の郷土史としてアピールしている。 (了)
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