日エンドメトリオーシス会誌 ; : − 113 〔一般演題/薬物療法 〕 スプレキュアMPとジェノゲストを組み合わせた子宮内膜症に対する術後の治療戦略 ―予期せぬ不正出血の軽減を目指して― )御茶ノ水・浜田病院 )帝京大学医学部産婦人科 合阪 幸三 ),土屋富士子 ),末田 ) 雅美 ),板橋 ) 能瀬さやか ,小畑清一郎 ,平池 はじめに ィナ ゲ ス ト 春子 香奈 ) ) mg/day)を 投 与 し た( 例,A 子宮内膜症の治療に対して,Gn―RH agonist 群) .リュープリン . mg の先行投与を行っ およびジェノゲストは広く用いられている.前 た 例(B 群)をコントロールとして,Gn―RH 者は強力な estrogen 抑制効果をもつが副作用 agonist 回投与後の血中 estradiol 値,Gn―RH が強く,後者は estrogen 抑制効果が不安定な agonist 投与中の副作用の程度(hot flush の程 . ため破綻出血をきたすのが欠点である〔 ― 〕 度を :なし, 著者らは以前より,ジェノゲスト投与時の副 度の 段階に分けてアンケート調査を行った) , :軽度, :中等度, :重 作用を軽減するため,Gn―RH agonist を先行 およびジェノゲスト投与開始から破綻出血出現 投与して子宮内膜を菲薄化させる方法の有用性 までの期間を比較検討した.推計学的検討は, について報告してきた.その際に使用した Gn― Mann-Whitney の U 検定により行った. RH agonist 製剤は強力な estrogen 抑制作用を 有するものであったが, 回の使用とはいえ, 研究成績 Gn―RH agonist 製剤 回投与終 了 時 の 血 中 副作用がみられる症例が少なからず存在した〔 estradiol 値は,A,B 群でそれぞれ, .± ., ― 〕 .そこで今回は,子宮に器質的な疾患をも .± .pg/ml で,後者で有意に低下してい たない子宮内膜症症例の術後のジェノゲスト投 た(p< . ,図 ) .Hot flush の程度は,Gn― 与に際し,先行の Gn―RH agonist 製剤として RH agonist 製 剤 回 投 与 後 で, .± . vs. スプレキュア MP を用いることにより,本治 療法にどのような影響がでるかを検討した. 研究対象および方法 研究に先立ち院内の倫理委員会にプロトコー pg/ml 25 p<0.05 20 ルをすべて公開し,許可を得た.対象例には十 分なインフォームドコンセントを行い,同意を 15 得た.子宮腺筋症,子宮筋腫など子宮に器質的 疾患をもたない子宮内膜症の患者で,腹腔鏡手 10 術後にジェノゲストの投与が必要と考えられた 5 症例を対象とした. 0 まずジェノゲスト投与時の予期せぬ不正出血 を抑制するため,スプレキュア MP .mg の先 行投与を 回行い,その後にジェノゲスト(デ A 図 B Gn―RH agonist 回投与後 の 血 中 estradiol 値 の比較 114 合阪ほか days 4 100 p<0.05 n.s. 3 80 60 2 40 1 20 0 A 図 0 B A Gn―RH agonist 回投与後の hot flush の比較 .± .と,前者で有意に軽度であった(図 図 B ジェノゲスト投与開始より子宮出血出現までの 期間の比較 , p< . ) .ジェノゲスト投与開始時より子宮 した際には,副作用を訴える症例が少なからず 出血出現までの期間は,両者に有意の差は認め 存在したことから,子宮に器質的な疾患のない られなかった( .± . vs. 症例,すなわち不正子宮出血をきたしにくい症 図 .± .日, 例に対しては,先行する Gn―RH agonist 製剤 ,n.s.) . 考 は estradiol 抑制効果の緩やかな製剤でも,そ 察 子宮内膜症の治療薬として新しく開発された の後の予期せぬ破綻出血を起こすまでの期間に ジェノゲストは,優れた効果をもつ反面,血中 それほどの差はないのではと考え,今回の研究 エストラジオール値の抑制効果が Gn―RH ago- を行った. nist に比べて緩徐であることから,連続投与時 その結果,今回対象とした症例においては, には予期せぬ不正出血を伴うことが欠点として スプレキュア MP 先行投与群の方がリュープ .それを防ぐために以前 報告されている〔 ― 〕 リン先行投与群に比べて,エストロゲン低下に わ れ わ れ は,Gn―RH agonist 製 剤 を 回投与 基づく副作用は有意に抑制されていたが,不正 し,血中エストラジオール値を十分に抑制して 子宮出血の発現までの期間については両者に有 子宮内膜を菲薄化することにより破綻出血開始 意の差がないことが明らかとなった.血中 es- までの期間を延長できること,さらに破綻出血 tradiol 値の抑制も前者の方が緩やかであった 開始時には再び Gn―RH agonist を ことから,子宮に器質的な疾患をもたない子宮 回投与し, その後にジェノゲストを投与するという新しい 内膜症症例に対して Gn―RH agonist 製剤を先 方法が子宮内膜症の治療に有効であることを報 行投与する際は,スプレキュア MP の方が使 告した〔 〕 .さらに先行投与する Gn―RH ago- 用しやすい製剤であることが明らかとなった. nist 製剤の違い,および対象症例の体型を retrospective に分類し,その効果に差があるかどう かを検討したところ,BMI 以上の症例では, 結 論 ジェノゲスト投与時の副作用である予期せぬ 破綻出血を防ぐ方法として Gn―RH agonist の 血中エストラ ジ オ ー ル 値 の 抑 制 効 果 の 強 い 先行投与を行う際は,子宮に器質的な疾患がな Gn―RH agonist 製剤の方が有用であることを い限り副作用の出現程度から考えれば,強力な 報告した〔 〕 . 血中 estradiol 低下作用をもたないスプレキュ しかしながら, 回の先行投与とはいえ,必 要以上に estradiol 抑制効果の強い薬剤を投与 ア MP でも十分であると考えられた. スプレキュア MP とジェノゲストを組み合わせた子宮内膜症に対する術後の治療戦略―予期せぬ不正出血の軽減を目指して― 115 本論文の要旨は,第 回日本エンドメトリオー シス学会学術講演会(平成 年 月 日,東京) において発表した. 文 献 〔 〕持田製薬株式会社ディナゲスト錠 mg インタービ ューフォーム 年 月 〔 〕Bulun SE. Endometriosis. N Engl J Med ; : − 〔 〕甲賀かをりほか.ジェノゲスト.産と婦 ; : − 〔 〕合阪幸三ほか.子宮内膜症に対するジェノゲスト の新しい投与法の開発―予期せぬ破綻出血の減少 を目指 し て―.日 エ ン ド メ ト リ オ ー シ ス 会 誌 ; : − 〔 〕合阪幸三ほか.Gn―RH agonist 先行投与によるジ ェノゲスト投与時の破綻出血抑制効果―剤型の違 いによる Gn―RH agonist 製剤の効果の比較―.日 エンドメトリオーシス会誌 ; : −
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