Title 尿及び血清中 Estrogen の微量蛍光定量法 Author(s) 細井, 稔 Citation 金沢大学結核研究所年報 = Annual report of the Research Institute of Tuberculosis, Kanazawa University, 16(1): 145-162 Issue Date 1958-06-20 Type Departmental Bulletin Paper Text version publisher URL http://hdl.handle.net/2297/41226 Right *KURAに登録されているコンテンツの著作権は,執筆者,出版社(学協会)などが有します。 *KURAに登録されているコンテンツの利用については,著作権法に規定されている私的使用や引用などの範囲内で行ってください。 *著作権法に規定されている私的使用や引用などの範囲を超える利用を行う場合には,著作権者の許諾を得てください。ただし,著作権者 から著作権等管理事業者(学術著作権協会,日本著作出版権管理システムなど)に権利委託されているコンテンツの利用手続については ,各著作権等管理事業者に確認してください。 http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/ 145 尿及び血清中 EstrOgen の 微 量 螢 光 定 量 法 帝国臓器製薬株式会社研究部 (部長:薬学博士新延備.吉) 金沢大学結核研究所薬理製剤部 (主任:伊藤亮教授) 細 井 稔 (受付:昭和33年1月6日) 緒 女性ホルモンEstrogen(Estrone,Estrad- 言 (Estrone,Androsterone等)のm-Dinitro- iol,Estriol)の定量法は生物試験法と化学試 benzeneによる特異呈色反応を発見し,之を 験法に大別される. その定量に応用した.しかし之等比色定量法は 生物試験法はAllen&Doisy(2)(1933)が雌 何れも鋭敏度が比較的低く,相当多量の検体を マウス,ラット等の朧上皮細胞の角化現象(1)を 必要とするため,その応用は妊娠時や病的状態 利用してEstrogenの定量を行ったのに始ま 等,尿中Estrogen排泄量の著しく増加した場 り,その後Lauson(3)*Astwood(4)によって 合のみに限られ,正常人の尿,血液,その他諸 幼者去勢ラットの子宮重量測定法,更にLyons 臓器の様なEstrogen含量の僅微な検体の場 &Templeton(5),-Berger(6),小林・中山(7) 合には到底実施出来ない. 等によって膣内注入法による微量定量法等が報 Bierry(13)はさきにWieland,Marrianに 告されるに至った.しかし生物試験法では実験 よって認められたEstrogenの硫酸による螢光 条件による測定誤差が大であり,又3種Estr- 反応を妊婦尿抽出物に応用して,これがEstr- ogenを識別測定出来ぬ等の欠点がある.そこ ogenの検出に極めて鋭敏であることを示した. で之に代わるものとして化学的測定法が多数の 研究者によって考究されてきた.Wieland(8) (1980)は人尿より抽出した粗Estrogenが 濃硫酸を加えると(Lieberman-Burchard反応) 以来測定操作,測定機械の進歩に伴い螢光測 定によるEstrogenの微量定量法に関して多く の研究が近年相次いで発表されるに至った. ('4-24)然しながら何れの方法も螢光測定機が異 緑色螢光を帯びたオレンジ色を呈することを知 っており従って又螢光を励起する一次フィルタ り,Marrian(9)はEstriol結晶が同様の反応 ー,発生した螢光を選択する二次フィルターの を呈することを見た.その後1931年Kober('0) 相異ることは勿論,酸として硫酸の外に燐酸を はEstrogenを一旦硫酸で加熱し呈色したも 用いるものもあり,又酸の濃度,容量,加熱時 のを更に水で稀釈して再び加熱するとオレンジ 間,稀釈法等も各研究者によって一定していな から赤に変色することを発見し,この反応によ い. るEstrogenの比色定量法を創案した.その 著者は従来のEstrogenの螢光定量法を種 後Cohen&Marrian('')の研究によって各 々吟味し,Beckman分光々度計附属の螢光度 Estrogenの分別定量が可能となった.又Zi- 測定装置を使川し尿並びに血液中のEstrogen の微量定量法を考究し,相当満足すべき結果を mmermann(12)(1935)IXKeto-型性ホルモン 146 細 井 p ← ▲ 一 一 一 一 一 − − − 得ると共に,螢光測定に際し特に注意すべき種々の知見を得たのでその成績を報告する. 実験材料 1機具: 酸が着色せぬまで良く洗い,次にN-NaOH,水 BeckmanDU分光光度計及び附属螢光度測定装置, で洗い無水塩化カルシウムで脱水,蒸溜する.別 理研並びにマツダの諸種波長フィルター. に一部は金属ナトリウムを加え一夜放置するか或 東洋濾紙フラクシヨンコレクター. は用時更に再溜しアルミナのクロマトグラフィー 2標準Estrogen: 用とする. Estrone……融点254 256。C,[q"+159。(ジ 石油ペンゼン,クロロホルム:ベンゼンと同様にし て硫酸洗漉精製したもの. オキサン) EstradiOl……融点176。C,[ql顎十80。(ジオキサ ン ) アセトン,メタノーリ,エタノール:市販1級品を 再溜, 硫酸塩酸,芳性ソーダ:いづれも,JIS特級. Estriol………融点273。C,[al菩十58。(ジオキサ ン ) 過酸化水素:局方品. mF-Dinitrobenzene:試薬特級.エタノールより再 結晶精製する. 3試薬: エーテル:市販品を1%硫酸鉄で良く水洗,脱水, Hydroquinone:試薬特級. Na-p-Phenolsulfonate:試薬特級. 蒸溜する. ペンゼン;市販1級品を濃硫酸と分液ロート中硫 アルミナ:メルク製メッシュ200.‐ 実験の郡 I.螢光発生並びに測定に関する基礎実験. 1.硫酸処置Estrogenの吸収−,螢光スペ クトル検査. llllll | ’ ’ ’ について検索を行った.即ち,標準純Estrogen (Estrone,Estradiol,Estriol)各10r宛を とって,70%硫酸4mlを加え,80。C,30分間 周知の如く螢光測定法は被検体に或る波長の 光(一次光線)を照射すると被検体はこれを吸 収して同時に二次的に一次光波と異った波長の 光即ち螢光を放射することに基いて,この螢光 加熱し,これについてBeckmanDU分光光 の強度を測定することによって被検体の定量を い吸収の山を示すことが実証された.尚この吸 行うものである.さて,螢光測定法を実施する 収の山は,各Estrogenを濃硫酸4mlと室温 に当って,その高度の鋭敏度を保持するために 24時間放置した場合にも全く同一波長であっ は発生した螢光を最純の状態で採光すること, た.この成績から硫酸処置Estrogenは波長 従って光源や被検体よりの不必要な光波をlll来 455m〃の光を強く吸収することが明らかとな るだけ完全に除去することが肝要である.この ったのであるが,この事実は又硫酸処置Estr- 為には,被検体の螢光発生を励起す.るのに鍛適 ogenが455m鯉波長で励起することによって の波長のみを透過する光源(一次)フィルタ 強い螢光を生ずることを示すものである.よっ ー,並びに被検休より放射される螢光波長のみ て著者は第一表に示した各種フィルター中より を透過するPhotocell(二次)フィルターの 光源フィルターとして,班研ゼラチンフィルタ 選択カミ問題となる.著者は先ず硫酸で処置した ー455(最大透過波長455m",透過率33.2%) Estrogenの螢光を励起するに最適な光源波長 を使用することとした.次いで,硫酸処置 度計で波長240-500m'1にわたって吸収スペ クトルの測定を行った.その結果第一図に示し た様に何れのEstrogenでも455m似に新らし 1虹 尿及び血清中Estrogtnの微量螢光定量法 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 − 一 一 一 一 一 一 ÷ 一 Estrogenを455m〃光波で照射して生じる緑 一 − − − − ■ 一 一 一 − 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 − 一 一 一 一 一 一 一 一 一 − 一 一 J − 3螢光の検量線(CalibrationCurve) 色螢光を可視光線のスペクトルと比較照合して Estrogen量と硫酸処置によって生じた螢光 その波長を精査した結果,何れのEstrogen の強度との間には直線性の比例関係が成立する でも略々525m〃に相当していることが知られ ことが認められているのであるが,著者は上記 た.そこで第一表の諸種二次フイルターについ の実験条件で0・01)'∼20r量の標準EEtrogen て,一次フィルターとの組み合せを種々検討し について螢光度を精細に計測して第3図に示す た結果,二次のPhotocellフイルターとして 検量線を得た.即ちEstrone,Estradiolでは マツダVGIBフィルター(最大透過波長525 m",透過率23%)を採用することに決定し た . 2.硫酸濃度と螢光度との関係. 0.1−1γでは検量線は直線性を,又0.01-0.1r の狭い範囲では直線性を示したが,増量して〃 2-20γの範囲では直線性とはならなかった. Estriolは前二者に比しその螢光は遥かに弱 硫酸濃度,反応温度並びに時間等に就いては, く,0.17以下では殆んど螢光を認めなかった が,0.1−17並びに2-207の範囲では検量線 研究者によって色々の条件が採用されている. は直線性を示した. EStrogenを硫酸によって発螢光させる際の 著者は発螢光物質が100。Cでは長時間の加熱に 甚だ不安定であることを考慮して反応 温度を Ⅲ尿及び血清中Estrogenの抽出並びに分 劃法. 80.とした.次いで硫酸濃度と螢光度との関係 1.Estrogenの抽出 について検討した.第2図は各標準Estrogen a)尿中Estrogenの抽出 lOγを諸種濃度(容量%)硫酸と80。C,30分加 尿中のEstrogenの抽出はStevenscn& 熱しFluorometerで螢光度を測定して得た成 Marrian(25)記載の方法に準じて箙2表の如く 績を掲示したものである.即ち"Estrone, に行った.即ち25時間尿より50mlを採り,先 Estradiolでは70%硫酸で螢光度は最高となっ ずconc.HCl7.5mlを加え!100。C,30分加熱し たが,Estriolでは80%硫酸で最高値を示し て結合型Estrogenを完全に加水分解した後, た. エーテル40mlで2回,更に20mlで2回抽出 又この場合,加熱時間については20分乃至1 し,このエーテル層を5%NaHCO320mlで 時間の間では螢光度に何ら消長が認められなか 3回洗瀧すれば着色物は大部分除かれる.次い ったので本研究では加熱時間を30分とした.又 でエーテルをN-・NaOHで3回(80mlで1回, 従来しばしば高濃度硫酸と加熱後,稀釈する方 20mlで2回)抽出すればEstrogenは定量的 法が行われているが,著者はこの点についても にNaOH層に移行する.NaOH層をconc. 検討を加えた.例えば各Estrogenを65%及 HClでCongored酸性とした後,エーテル U<70%H2SO44mlと80。C,30分加熱した場合 で3回(50ml,40ml,30ml)抽出を行う.こ と,70%H2SO41mlを加え80。C,30分加熱し こに得たエーテル層を水洗後,蒸溜すれば粗 た後,更に65%H2SO43mlを加え稀釈した Estrogenが得られる. 場合とについて夫々螢光度を比較した結果,70 b)血清Estrogenの抽出. %H2SO44mlで反応させた時に最高の螢光 血清Estrogenの抽出は弟3表の如く行っ 度を示した.尚稀釈実験では稀釈後の攪伴振溌 た.先ず血清20mlをアセトン・エーテル同量 によって生じた気泡が畿光測定の誤差源となる 混液50mlと共に小型ミキサー中で良く攪拝し 等の不快な障害を伴うため,木研究では最初か 濾過すること3回.濾液のアセトン・エーテル ら所定量のH2SO4を加え加熱した壁けで稀 混液を蒸溜し残置を石油エーテル30mlにとか 釈を行わないこととした. し80%エタノール50mlで1回,30mlで2回 148 細 井 抽出する.エタノール層を石油エーテル80ml 5%メタノール・ベンゼンで同様溶出し8本 で洗膝して脂肪分を除去した後,減圧濃縮し, (Estradia1分劃),最後に30%メタノールベン 濃縮液をエーテル50mlで1回,30mlで抽出 ゼンで8本の溶出液をとる(Estrio1分劃). する.このエーテルを5%NaHCO3で洗糠 斯くして抽出粗Estrogenは総数23本の試験 し,以下尿の場合と同様に処理すれば血中遊離 管に分劃溶出される.そこで各試験管を湯浴中 の粗Estrogenが得られる.一方エーテル抽 で加熱して溶出液を蒸発し,更にデシケーター 出を行った残りのエタノール濃縮層中には結合 中で減圧乾燥する.残置に70%H2SO44ml 型EStrogenが含まれているのでHClで加水 分解し以下尿の場合と同様に抽出操作を行う. を加え80。C,30分加熱する.冷後Fluorometer で螢光度を測定し,同時に発螢光した一定量の 2.EstrogenのColumnChromatography 標準Estrogenの螢光度と比較して後述の補正 分劃 式によって検体中のEstrogenの量を算出す 生体より上記の如く抽出したEstrogenには る.尚螢光測定の対照として使用する標準 尚相当不純物が混在しており,このままで螢光 Estrogenの量は出来るだけ検体中のEstrogen を測定する時は不純物による螢光の干渉で過大 含量に近似していることが測定値の正確を期す 測定をきたすことが多い.尚又この抽出Estr る上に必要であって,著者は尿,血清中Estro- ogenはEstrone,Estradiol,Estriolの3者 genの定量実験では,0.1-1γ量の標準 の混合物であって定量操作を行うには是非とも Estrogenを用いた.而して螢光測定に際して これら3ホルモンの分別が必要である. 抽出粗Estrogenの精製と各Estrogenの 分劃を行うために最も簡便正確な方法として, ColumnChromatograPhyが行はれている. は,標準Estrogenの螢光値が100になる様に Fluorometerの感度を調整した. 第5図はBraunsberg分劃法(Celite使用, 吸着柱6mm×12cm,1分劃の溶出量4ml, 本法にはStimmel(26)の酸化アルミナ,Nye等 第1次溶出液ベンゼン・石油エーテル,第2次 (27)のゴム柱,Braunsberg(19)のCelite,Stern 溶出液クロロフォルム・ブタノール),Stimmel (28)のSilica法,その他の他種々の方法(29‘30,31) 分劃法(アルミナ使用;吸着柱18mm×20cm; がある.著者はStimmelの方法を検討して之 1分劃の溶出液10ml;第1次溶出液2%メタ を更にmicro化してEstrogenの精製,分劃 ノール・ベンゼン,第2次溶出液5%メタノー に応用し,従来行われているよりも僅少の溶媒 ル・ベンゼン,第3次溶出液30%メタノール・ で良好な成績を得ることに成功した. ベンゼン)と著者の分劃法の3Chromatogra- 即ち,内径5mmのクロマト管にアルミナ my法によって,各標準EstrogenlO7宛の混 (Merck:Brockman標定II,mesh200)2.1gm 合試料について行った分劃比較試験の成績を示 を,約10cmの高さに栓め,第4図に示した したものである. ColumnChromatography装置に着装する. 先ず窒素瓦斯加圧(水銀柱10cm)下で無螢 この図から明かな様に著者の方法では,各 Estrogenの分離回収は極めて良好であって, 光ベンゼン5mlでアルミナ洗い,次いで成る Estrone98%,Estradio197%,Estrio185%の 可く少量のベンゼンに溶かした抽出粗Estrog- 回収率を示した.Stimmel法では各Estrogen enを定量的にアルミナに吸着させる.引き続 の回収率は著者らの方法に比し梢劣りEstrone き各Estrogenの分離展開に移り,最初1%メ C5%,Estradio197%,Estrio180%であった. タノール・ベンゼン液で溶出を行い流出溶媒を 尚Stimmel法では1回の溶出液10mlである フラクシヨンコレクターによって順次1ml宛 が著者の方法ではその1/10量の1mlを採って 12本の溶出液をとる(Estrone分剖)。次ぎに いるため,その操作が前者に比し極めて簡易で 尿及び血清中Estrogtnの微量螢光定量法 149 ー 一 一 一 一 年 ある.之に対しBraunsberg法では回率は Estrogenの螢光は20分乃至50分間で零となっ Estrone70%,Estradiol82.5%,Estriol45% たが,不純螢光も30%の減弱を示した.第3例 で最も不良であった. III.不純物による螢光測定誤差についての 検討 螢光法によるEstrogen定量法はその精度極 の3%H2020.1mlを加え室温に放置した実 験では各Estrogen螢光は1時間後に殆んど消 失したが不純螢光は極めて安定で,1時間の観 察では螢光度に何ら変化が認められなかった. めて高く,0.17或はそれ以下の微量のEstrogen よって著者は実測に際しては検体と標準Estr- をも尚よく定量することが出来るのであるが, ogenについて型の如く螢光度を測定し,次い その反面ごく僅微な不純物の混在によって螢光 で各反応液に3%H2020.1mlを加えて室温 測定に支障を来たしたり,或は大きな測定誤差 に1時間放置した後再び残存螢光度を読み,下 を生ずる場合が多い.従って螢光測定実験を行 記補正式によって検体のEstrogen量を算出す うには,特に精製された無螢光試薬(試薬の項 ることとした. 参照)を使用することは言う迄もないが,それ でも尚且被検材料中の不純物による螢光干渉を 伴うものであって,著者はこれらの点について 詳細に吟味検討を行った. 1.不純物による発螢光に対する補正. 生体抽出Estrogenの螢光測定で最も問題と なるのは不純螢光(Estrogen以外の物質によ る螢光)を如何に処理するかである.上記の様 に尿,血清を抽出し,更にColumnChromatographyで精製しても完全に不純物による発 E=S×,誌三皇,×-2" E=24時間尿中のEstrogen量(7) S=標準Estrogen量(7) A=被検休の螢光度 B=H202処置後の検体の螢光度 B'=H202処置後の標準Estrogenの螢 光度 第7図は妊娠7ケ月の妊婦の尿100mlより 抽出したEstrogenのColumnChromatogr- 螢光を防止出来ぬ事が多い.この対策として, a血yによって得た28本の分割について夫々螢 H202,NaNO2又はセリウム塊を使用して 光度測定を行い,更にH202処置によって補 Estrogen螢光を一U消去し残存螢光を不純物 正したものと未補正のものとを対比掲示したも によるものとしてその値を観測値から差し引く のであるが,この成績から尿の発螢光性不純物 方法が試みられているが,未だその実施等につ の量が同一資料であっても分割毎に可成り変動 いて詳細な検討を行った報告がない. することがわかる. 著者は各標準EstrogenO.5)'及び不純螢光 2.不純物による着色に対する補正. 資料として小児尿50mlより抽出しColumn 抽出Estrogenを硫酸で発螢光した時,不純 Chromatography精製をイ了わない粗Estrogen 物による着色を伴うことがある.この様な場合 の4者について夫々の螢光に対するH202の影 には一方では励起波長が着色物に吸収されて弱 響を精査して第6図に示す成績を得た.即ち先 まり,他方螢光自体が色素に妨げられて減弱し ず各検体に型の如く硫酸反応を行って発螢光せ この為螢光度の読みは多少とも低下をきたす. しめたものに30%H2021滴を加え80C・に加熱 著者はこの様な不純物による着色のある場合に した場合には,各Estrogenの螢光は5分間 は,次の様にして読みの補正を行った.即ち検 で急激に減弱し,10分後には全く消失しFluo- 体及び標準Estrogenの螢光を測定した後, ronleterの読みは零となった.しかしこの場合 Beckman分光光度計で検体並びに標準Estr- には不純螢光も約1/3に減弱した.次ぎに20% ogenの波長455m/′,並びに525m狸に対す H2020.2mlを加え室温に放置した例では る透過率を測定する. ’ 細 150 一 一 一 申 一 一 一 一 井 − ー 今,検体の455m〃に対する透過率をTj. 標準Estrogenの455m〃に対する透過 . − − 寺 − − 一 ' 一 あって補正式の妥当性を裏付けるものと言えよ う . Ⅵ、実験例. 率をrs. 検体の525m〃に対する透過率を虎. 標準Estrogenの525m〃に対する透過 1妊婦尿中Estrogen定量に関する螢光法と 比色法の比較実験. Estrogen排泄の増加している妊婦尿(7" 率をオ‘. とすれば,Ti/Tsは不純物の着色による励起 月及び9ケ月)について,螢光法と比色法によ 光線455m〃の減少率を示し,又虎/メsは着色 るEstrogenの比較定量試験を行った. による螢光525m.“の減少率に相当する.よっ 比色法としてはZimmermann法(32)( て著者は次の補正式を用いて検体の螢光実測値 Estrone定量),Bachman法(33)(Estradiol定 Fiに対する補正を行った. 量)及びHydroquinoneKober法(34)(3 Estrogen定量)を行った.各定量法に対する F=Fj×_ 工L×上一 Tj'、#i 1回の資料として妊婦1日尿の40mlを用い尿 著者はこの補正式の妥当性を検する目的を以 を型の如く抽出,ColumnChromatography を行って得た各分割についてこれら4種の定量 って,次の様な実験を行った. 即ち,一定量の定色不純物(この実験では着 色螢光不純物として,妊婦(9ケ月)の24時間 尿をエーテルで抽出し,エーテル層をⅣNaOH で抽出して:Estrogen・-Fractionを除去した 法を施行し一日尿のEstrogen排泄量を測定し た.(第5表) 表から明らかな様に比色法中最も精度の低い Zimmermann反応によるEstroneの測定値 後,全尿の1/100相当量の抽出エーテルを蒸発 を除いては,螢光法と比色法とではそのEstro- し,残澄をメタノール10mlに溶かしその0.1ml gen測定値の間に極めて良好な一致が認めら を使用した.)に各標準Estrogenl7宛を混 れた. じた検体を作り,これについて螢光,並びに透 2.螢光法による尿,血清中EstrogCnの定量 過率測定を行って第4表に示す値を得た.之よ り各検体中の標準Estrogenの螢光値を算出し 実験. 著者らの螢光法によって小児,正常男子,婦 その値に上式による補正を行って,夫々Estrone 人,並びに妊婦の尿,及び血中Estrogenを定 17.8,Estradiol20.6,Estriol7.3の螢光 量して第6表に示す成績を得た. 値を得たが,之はEstrogen単独の場合の螢 光値各17.2,21.6,9.7,に略々近似した値で 考 尚表には参考として,Jailer(I4)並びにVeldhuis(20)によって報告された測定値を併記した. 案 Estrogenの微量定量法としてのマウス院内 も正確で鋭敏な化学的定量法がEstrogen研究 注入法による生.物試験法は非常に鋭敏である 上重要な意義を持つにいたったのであって,そ が,その鋭敏度が著者によって区々であり, のなかでも螢光法が鋭敏度に於いて最も優れて Berger(6)法では皮下注射感度の10倍,Lyons いる. &Templeton法(5)では200倍,小林,中山法 併し螢光法が実際に応用されてから日浅く, では350、500倍という様に実験方法によって大 殊に生体抽出物に就いて本法を利用したのは比 きい差がある.これは生物試験による定量法が 較的最近である為,反応条件や,分割法,不純 純粋にEstrogenだけの反応によるものではな 物に対する処置等については各研究者によって いことに基灰│している.この為生物試験法より 区々雑多であって,今日尚定法の確立される迄 尿及び血清中Estrogtnの微量螢光定量法 151 ’ 一 ー − − − − 一 一 - 一 一 ・ ユ ー ー 中 1 - − − に至っていない. −207の範囲で大体直線的関係の成立が認めら 螢光発生条件については,酸として燐酸を使 用した報告(15)もあるが燐酸による螢光発生は れた. 不純螢光に対する補正法としては,Bates& 硫酸に比して弱い. Cohen(16),Veldhius(20),Heusghren(63),浅野 硫酸濃度については60--90%が用いられてい るが,著者の場合では増田等(21)と岡じく70% (22)等によって過酸化水素によるEstrogen螢 が最適であった. 使用法について十分な検討を行った報告がな 又Bates&Cohen(16),増田(21),中尾等(23) は初めに少量の硫酸で発螢光させた後,稀釈す る方式をとっているが稀釈振溌によって生ずる 気泡が長く消失せずこれが螢光値の過大測定や 変動の原因となるので本研究ではJailer('4), 浅野(22)の様に稀釈しない方法を採用した. 標準Estrogenの検量線(Calibrationcu- い. rveに就いては,Jailer('4),Bates&CMlen ('6),Engeletal.(35)等によって何れのEstrogenでも一様に直線的関係の成立することが実 証報告されているが,著者の実験でもEstrone, Estradiolでは,0.1-1γの範囲内ではその検 光の消去法が試みられているが,過酸化水素の 著者の尿抽出物についての実験では,3% H2020・1mlで80oC,1時間の処置が最も好適 であるという成績が得られたのであるが,不純 螢光のH202に対する安定性は抽出原料によ って必ずしも同じとは限らないのであって,こ の点については尚検討の余地が残されている. 着色物のある場合の螢光値の減弱に対して著 者の提案した補正式について一応その妥当性を 裏付ける成績が得られたのであるが更に種々な 材料についての詳細な吟味が必要であって,こ れに関しては別の機会に紺告することとする. 量線は略々直線性を示し,又Estriolでは0.2 総 Estrone,Estradiol,Estriolの硫酸加熱に よって生ずる螢光測定に基づく微量定量法を, Beckman分光光度計及び附属螢光測定装置を 括 て良好な成績を得た. 4.不純物による非特異的螢光に対しては, Estrogen螢光を過酸化水素で消去する補正 使用して尿及び血清中Estrogen定量に応用す 法について検討を加えて,過酸化水素の使用 るため,諸種の反応条件について検討を加え 条件を定めた. た.主なる成績は次の如くである. 1.螢光発生には検体又はEstrogenを70%硫 "4mlと80。C,30分加熱を行った. 2.螢光励起波長455m〃に対する一次フィル ターとして理研ゼラチンフィルター455を, 5.着色した検体の螢光測定時における誤差源 について検討を加え,螢光の読みに対する補 正式を誘導した. 6.著者の螢光法を応用して,小児,正常男 子,婦人及び妊姉等の尿並び血清について, 又螢光波長(525m")に対する二次フィルタ そのEstrone,Estradiol,Estriol含量の測 一として,マツダVGIBを選択使用した. 定を行った. 3.尿及び血清よりのEstrogen抽出法を吟味 燗筆するに当り本論文は当研究室の神戸川明君に多 し,又抽出紺Estrogenの分割精製の方式と 大の技術的援助を受けたことを銘記して感謝の意を表 してStimmClのアルミナを川いるColumn します. Chromatogralilyを史に能率的に少量化し 一 I 152 細 井 − ー 文 献 1)Stockard,C.R、,Papanicolaou,G、N、: 1.S.:J・Endocrmo1.,11,177,189,1954. Am.J.Anat.,22,225,1917.2)Allen,E., 20)Veldhius,A、H、:J.Biol.Chem.,202, Doisy,E,A.:J・Am・med.Assoc.,81,819, 107,1953.21)増田涯三・西谷奎吾: 1923.3)Lauson,H.D.:Endocrinol., 最新医学,9,840,1954.22)浅野繁: 24,35,1939.4)Astwood,E、B.:Anat. 内分泌,2,455,1955.23)中尾健・相沢 Record.,70,5,1938.5)Lyons,W.Re., 義雄:Endocrinol.Jap.,2,13,1955;3,92, Templeton,H.J.:Proc・Soc・Exp.BiOl・Med., 1956.24)細井稔・神戸川明: 33,587,1936.6)Berger,M、:Klin。 Wschr.,14,1601,1935.7)小林隆・中山徹也: ′内分泌東部部会第4回総会,1956. 日産婦第9回総会,1957. 日産婦誌,4(8),656,1952.8)Wieland,H、, 25)Stevenson,M.F、,&Marrian,G.F.: Straub,W,:Z・Physiol・Chem.,186,79,1930. BiOchem.J.,41,507,1947.26)Stimmel, 9)Marrian,J・F.:Biochem.J.,24,1021, B、F、:J・Biol・Chem.,162,99,1946.27) 1930.10)Kober,S、:Biochem.Z.,239, Nyc,J・F.,etal.:Proc・Soc・Exp.Biol・Med., 209,1931.11)Cohen,S,L、,Marrian, 77,466,1951.28)Stern,M、1.,Swyer, J・F.,:Biochem.J.,28,1603,1934.12) 1.M.:Nature,169,796,1952. Zimmerman,W、:Z.Physiol・Chem.,233,257, 29)Biteman,J、,Sykes,J・F.:Science,117, 1935.13)Bierry,H、:Compt.Rend.Soc. 356,1953.30)Bosch,L、:Biophys. Biol.,124,320,1937.14)Jailer,J、W,: Biochem.Acta.,11,301,1953.31)Keller, J.Clin・Endocrmol.,8,564,1948.15) M、:Gynaecologia,136,358,1953.32) Finkelstein,M、:Proc・Soc・Exp・Biol・Med., Zimmermann,W.:Biochem.J・,32,1312, 69,181,1948.16)Bates,R、.W.,Cohen, 1938.33)Bachman,C、:J.Biol.Chem., H.:Endocrinol.,47,166,182,1950.17) 138,689,1941.34)Brown,J.B、:J. Slaunwhite,VV、R.JR.,Engel,L、L、, Endocrinol.,8,196,1952.35)Engel,L、L、, Scott,J・F・andHam,C.L.:J・BiOl. S1aunwhite,W、R・JR.,Carter,P.,and Chem..,201,615,1953.18)Aitkins,E. Nathauson,I.T.:J.Biol・Chem.,185,255, H、,Preedy,J.R、K、:J.Endocrmol.,9,251, 1950.36)Heusghem,C、:Namre,173, 1954.19)Braunsberg,S、B.,Margaret, 1043,1954. 153 尿及び血清中Estrogtnの微量螢光定量法 Tablel FilterList Wavelengths withover 3%maximum trfmsmission ] e s i g n a t i c (m") 330−385 1皿ⅡⅡ R41−R80 44C 445 445 448 4頁属 455 460 45 415-520 496 一 ■■■■■■■■ 510 −一一 500 525 560 −− 540 − − 62 7.2 ’ 27 9 7 55 536 24 2 9 4 5 O V ’ 380-417 0 55 7 35 3 5 5 f i l t e r 11 38 89 2 8 4 44 Photoc e l l 400 27 3 23 1 ’ BBDO2 1 2 G Y G VV V V I 47C 3 B V 十十十十十十 CAAAA田畑4弧 ⅧⅧⅧⅧⅧWWWⅦ Matsn曲 AD 448 蝿鯏峨峨似佃 一一一一一− 5鰹 5似 2蛇 7蛇 8“ 0 W “0 ● 405 4 202 5 ●3 ● 凸 232●9 0 40
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