パーだよ,パー。 - 大阪教育大学附属平野中学校

ぼら、パーだよ、パー。パーして
大阪教育大学附属平野中学絞-年
まらないからか他の子が退屈そうな目でこちらを見ていた。その視線が痛
そう言うように領くと、今まで硬かった手がふわっと緩め、バンジーチャ
その一声が僕らを救った。「分かった-」
森山
かった。早くしなければ。時間だけがぐんぐん過ぎていく。実は、あとも
イムが宙を舞った。「カンILその昔は不思議と余韻も持っていた。胸の奥
「ほら、パーだよ、パー。パーして。」
う一つ遊びを考えていたのだ。それも出来ないのぞは?気が付けば汗が噴
に入り込み、心を震わせるような音だった。その昔をスタートとして、そ
その子は何度話しかけても聞いてくれない。ふと辺りを見ると、曲が始
き出ていた。
立てて臨むことにした。計画を立てるにあたり、まず考えたのはどのよう
支援学校を訪れた時だった。僕らは訪問の数週間前からしっかりと計画を
僕が初めて陸がいのある人と接したのは小学校の総合的学習の中で特別
笑えた。そう考えた瞬間、見えない厚い壁が崩れたように感じた。壁越し
た。僕も笑った。班員も笑った。その時同じ事でそこに居合わせた全員と
のか笑っている。数分前までつまらなさそうにしていたみんなも笑ってい
曲が終わりふと見たあの子の顔はまさに太陽だった。よほど楽しかった
の後はスムーズに曲が進んでいった。
に接するかということだった。「自分だったらどうされたいか。」しかし、
よりも直接見た方がみんなの笑顔がまぶしかった。
「どうする?僕。」
一見ハンディのない僕らにとってそれは実に考えづらいものだった。見え
の機会には持ってこいの代物と考えたのだ。これなら楽しんでもらえるだ
出る音を使って音階を作る楽器で、簡単な曲ならなんても演奏できる。こ
て一緒に遊ぶ予定にしていた。これは、金属製の筒を地面に落とした時に
は陸がいがあってもできる簡単な楽器である「バンジーチャイム」を使っ
結局これという接し方の案が出ぬままに当日を迎える事となった。僕ら
てなくてもよがったのぞはないかとも思った。友たちの家に遊びに行く時
見えない壁なんてできないんだ。もしかしたらそんなに深く計画なんて立
いがあろうとなかううと、仲間だと思えばよいんだ。そうすれば最初から
が付いた。それはつまり友達として接すればよいということだった。陸が
た。なにしろ楽しかった。その時陸がいのある人とのあるべき接し方に気
一方の遊びも断念せざるを得なかった。けれども良かった。それて充分だっ
結局、バンジーチャイムを使った遊びは一曲しかできなかったし、もう
ろうと少し自信を持っていたその矢先、問題が発生した。一人の子にバン
も何を持っていくかは考えても、どんな風に接するかなんて思いもしない
ない厚い壁を感じた瞬間だった。
ジーチャイムを握らせるとそのまま放してくれなくなってしまったのだ。
ように。
とまどっていたのはお互いさまで、あの子も本当はどうすれば良いのか
しかも握ったチャイムは曲の一昔目、その子はトップバッターだったのだ。
この事は予想の範囲を超えていた。まずい。とっさに班員全員が焦りを感
迷っていたのかもしれない。結局は計画通りではなかったけれどみんなで
その場を作り上げる形になって、思いもよらない達成感を得ることができ、
じた。
「どうする?僕」
心を通わせる事が出来たと思う。
あの時みんなで演奏した「きらきら星」が今も心の中で鳴り続けている。
見かねた特別支援の先生が駆け寄ろうとしたその時-・意外にも動いたの
はチャイムを放さない子の隣にいた子だった。
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