回転流入・流出するダストによる ワームホールシャドウ

 回転流入・流出するダストによる ワームホールシャドウ
山口大 大神 隆幸 共同研究者 山口大 坂井 伸之
BH地平面勉強会@山口
もくじ
1.  導入(ブラックホールシャドウ) 2.  エリスワームホール 3.  基礎方程式 4.  軸対称解モデル 5.  ワームホールシャドウ 6.  まとめ
導入
ブラックホールシャドウ
•  BHの地平面が見える分解能
での観測 •  ブラックホールシャドウ Fukue+ (1988)
Aurore Simonnet, Sonoma State Univ.
  シャドウとは   ガスからの放射をブラックホールが邪魔をすることによって
できる影   正確には : 光の不安定円軌道の存在   光線の有効ポテンシャル Veff
ブラックホール
0
1
2
3
4
r/r
5
6
7
8
g
r = 1.5rg
  ピークの位置はどの光線に対しても一定   ブラックホールの大きさ ( = 質量 ) によって決まる   放射が観測者に届くまで Veff
r = 1.5rg
Schwarzschild Blackhole
4
0
1
3
4
r/r
2
y / rg
2
5
6
7
8
g
光線の有効ポテンシャル
観測者へ
0
-2
同じ軌道上から出た光は 観測者に届くまで同じ軌道を通る -4
-4
-2
0
x / rg
星間物質 (光源)
2
4
Ohgami+ 2015に加筆
光源の存在する部分を通る軌道が 長いほど明るく見える →不安定円軌道が最も明るい   シャドウができる原因   不安定円軌道を通る光線が最も明るい   その内側を通る光線は地平面が邪魔をして暗くなる   その差によりシャドウが生まれる   ブラックホール以外でも不安定円軌道を持つこと
により、シャドウ現象を引き起こす。 → ブラックホール擬似天体 エリスワームホール
•  エリスワームホール時空 ds2 =
(cdt)2 + dr2 + (r2 + a2 )(d✓2 + sin2 ✓ d'2 )
–  a : 喉半径 •  ワームホールとは –  時空の離れた二点を直接繋ぐトンネル状の構造 –  短時間長距離移動、タイムトラベル •  エリスワームホールは通過可能な ワームホールの一種
z
Ohgami+ 2015
二次元のエリスワームホールの 三次元空間への埋め込み図
•  エリスワームホールは不安定 –  Shinkai and Hayward, Phys. Rev. D 66, (2002)
–  Gonzalez et al., Classical Quantum Gravity 26, (2009) •  エキゾチックな物質によってワームホールを支える ­  Das and Kar, Classical Quantum Gravity 22, (2005)
•  修正重力理論では安定なワームホール解が存在する
可能性がある。
•  その他のワームホール解でも本研究での手法を用い
ることで、同様な議論が可能である。
•  光線の有効ポテンシャル 1.4
ピーク
1.2
(a2 / L2) Veff
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
-6
-4
-2
0
r/a
2
4
6
Ohgami+ 2015に加筆
–  喉の部分に不安定円軌道
•  エリスワームホール周辺の光線軌道 4
Ellis Wormhole
(A) 2
y/a
(B) 不安定円軌道
0
(C)
-2
-4
  不安定円軌道の外側 → (A) -4
-2
0
x/a
2
4
  不安定円軌道の内側 → (C)
Ohgami+ 2015
•  シャドウができる可能性がある
基礎方程式
•  シャドウ現象は重力源の周囲にある星間物質の状態
によって変化する(密度分布 n , 流速の分布 uµ , etc…) •  モデル設定 –  定常状態 –  星間物質の構成粒子同士に相互作用がない(ダスト近似) •  用いる基礎方程式(相対論的) –  連続の方程式 3
X
(nuµ );µ = 0
µ=0
–  オイラー方程式
3
X
µ=0
nmuµ;⌫ u⌫ = 0
m : 構成粒子の質量 ; : 共変微分
球対称モデル
ダストの状態が距離 r のみの関数と
して表されるモデル T.Ohgami & N. Sakai, “wormhole shadows”
Physical Review D 91, 124020 (2015)
基礎方程式の解(球対称)
•  微分方程式 1 dn
1 dur
2r
+ r
+ 2
=0
2
n dr
u dr
r +a
r
du
ur
=0
dr
•  解析解
ur = constant
Ṁ : 質量降着率
Ṁ = 4⇡mnur (r2 + a2 ) = constant
•  Case 1 r
u =0
⇢ = mn = ( r の任意関数)
•  Case 2
1
0.8
ρ / ρa
ur = const.(6= 0)
1
⇢/ 2
r + a2
0.6
0.4
0.2
0
-6
-4
-2
0
r/a
2
ダストの密度分布
4
6
Ohgami+ 2015
•  モデル –  Case 1 ρ
u=0
観測者
-10a
0
r
10a
300a
ρ
u 6= 0
–  Case 2 観測者
r
0
300a
•  結果   Case 2 –  Case 1 2
3
2.5
1.5
Iν(α) / Iν(0)
Iν(α) / Iν(0)
2
1
1.5
1
0.5
0.5
0
0
0.5
1
1.5
α / αmax
2
2.5
3
0
0
0.5
1
1.5
α / αmax
2
2.5
3
Ohgami+ 2015
•  結果   Case 2 2
2
1.5
1.5
1
1
0.5
0.5
0
0
αz
αz
–  Case 1 -0.5
-0.5
-1
-1
-1.5
-1.5
-2
-2
-2 -1.5 -1 -0.5
0
αy
0.5
1
1.5
2
-2 -1.5 -1 -0.5
0
αy
0.5
1
1.5
2
考察
•  ブラックホールとの比較 –  共通して強度にピークが
60
ある Ellis Wormhole (Case2)
Schwarzschild Blackhole
50
3
6
2
5
1
4
0
3
-1
2
-2
1
-3
0
Intensity
–  ブラックホール : 内 < 外 αy / αmax
–  ワームホール : 内 > 外 -3
-2
-1
0
1
αx / αmax
2
ブラックホールシャドウ
3
40
30
20
10
0
0
0.5
1
1.5
α / αshadow
2
2.5
3
Ohgami+ 2015
軸対称モデル
ダストが回転しながら通過するモデル (エリスワームホール時空自体は球対称)
•  自然現象はより複雑 •  降着円盤 etc. –  回転しているものが多い –  軸対称の運動を考える
国立天文台
基礎方程式の解(軸対称)
•  微分方程式 du'
2ru + (r + a )
=0
dr
1 dn
1 dur
2r
+ r
+ 2
=0
n dr
u dr
r + a2
r
r du
u
r sin2 ✓ (u' )2 = 0
dr
•  解析解 u' = u'
0
2
a
r 2 + a2
ur = ±
'
2
2
ダストの角運動量が落ち込む向
きへの運動量へ変換される
s
✓
2 1
(au'
0)
sin2 ✓
r 2 + a2
◆
+ (ur0 )2
ur0 a2
⇢ = ⇢0 r 2
u r + a2
Ṁ = 4⇡mnur (r2 + a2 ) = constant
0 の添字がついた量は θ = π / 2, r = 0 での量 a2
ur 6= 0
2
u
|動径方向の流速|
0.8
0.6
= /2
/4
/6
/8
0
1.8
1.6
r
回転方向の流速
u
1
0.4
0.2
0
-3
-2
-1
0
1
2
3
1.4
1.2
1
-3
-2
-1
0
rr = /2
/4
/6
/8
0
0.8
0.6
2
3
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
2
1
0.4
0
-1
0.2
0
-2
-3
-3
-2
-1
0
rr 3
rr
zz ダストの密度分布
1
1
1
2
3
-3
-2
-1
0
x
1
2
3
x
p
p
2
2
x = r + a sin ✓, z = r2 + a2 cos ✓
ワームホール周辺のダストの動き(シミュレーション)
27 ワームホール周辺のダストの動き(シミュレーション)
28 考察
•  球対称解について u ⌘ |ur | = 0
⇢ = nm = (r の任意関数)
r
u'
=
0,
u
0 =0
0
–  軸対称解 ur = ±
s
✓
2 1
(au'
0)
sin2 ✓
a2
r 2 + a2
◆
+ (ur0 )2
–  ダストがあらゆる点で角運動量を持たないとは考え
難い –  上記の解は無視できる
ワームホールシャドウ
•  強度分布を得る –  光源の見かけの位置を決め、その光線の強度を計算 –  輸送方程式 •  吸収項は無視 I=
⌫
3
Z
H(⌫)
µ
⇢u
dx
µ
⌫2
y
r*
light
observer
xo
wormhole
dust
Ohgami+ 2015
x
•  モデル 回転軸
i
観測者
r
300a
•  結果 2
1.5
1
1
0.5
0.5
0
0
-0.5
-0.5
-1
-1
-1.5
-1.5
-2
-2
-2 -1.5 -1 -0.5
0
αy
0.5
1
1.5
2
2
-2 -1.5 -1 -0.5
0.5
0.5
αz
1
1
1.5
2
i=1
0
-0.5
-0.5
-1
-1
-1.5
-1.5
-2
0.5
1.5
1
0
0
αy
2
i = 30
1.5
αz
i = 60
1.5
αz
αz
2
i = 90
-2
-2 -1.5 -1 -0.5
0
αy
0.5
1
1.5
2
-2 -1.5 -1 -0.5
0
αy
0.5
1
1.5
2
•  結果 : 見込み角 i を変化させる •  結果 : 回転の速さを変化させる 2
1.5
1.2
1
uφφ0 = 0.2
uφ0 = 0.5
u 0 = 0.9
1
0
-0.5
0.8
-1
Intensity
αz
0.5
-1.5
-2
-2 -1.5 -1 -0.5
0
αy
i = 90
0.5
1
1.5
0.6
2
0.4
0.2
0
-2
-1.5
-1
-0.5
0
αy
0.5
1
1.5
2
まとめ
•  相対論的連続の方程式やオイラー方程式を用
いてエリスワームホール周辺のダスト流の状態
を球対称・軸対称で求めた。 •  球対称モデル –  ワームホールでもシャドウができる。 –  ブラックホールと比較し、明るいリングに対して内側
と外側の強度比が異なる。 •  軸対称 –  ビーミング効果により、近づいてくる方が明るくなる。 –  軸に垂直なリング状の構造が観測される。 •  ワームホール探査に利用できる。 •  相対論的連続の方程式やオイラー方程式を用いてエリ
スワームホール周辺のダスト流の状態を r, θ の関数
(軸対称)として求めた。 –  ダストが角運動量を持って運動する限り、ワームホールへ落
ち込むか吹き出す方向へも運動する。 •  回転するダストによるワームホールシャドウ –  ビーミング効果により、近づいてくる方が明るくなる。 –  軸に垂直な淡いリング状の構造が観測される。 •  ワームホール探査に利用できる。 •  相対論的ビーミング効果 –  ドップラー効果 –  時間の収縮 ⌫obs = ⌫emi
1
tobs = temi
–  立体角が絞られる効果 L / ⌫t
1
⌦
1
ビーミング因子
2
⌦/
⇠
=
4
1
(1
cos ✓)
1
おまけ
100
beaming factor
β = 0.1
β = 0.9
β = 0.99
β = 0.999
10
1
0.1
0
30
60
angle [degree]
90
1
beaming factor
β = -0.1
β = -0.9
β = -0.99
β = -0.999
0.1
0.01
0
30
60
angle [degree]
90