クロノスリ

クロノスリ
魚を主食とする猛禽であります。大きさはかなりのもので、トビよりす
こし大きく見えました。オジロワシよりはちょいと小さいかな、という感
じであります。ホンデュラスのヨホア湖で出会いました。英名をCommon
Black-Hawkと書きます。Commonでありますから、珍しくないのであり
ます。Blackといいましても真っ黒ではありません。黒味の強いこげ茶色
であります。馬毛でいう黒鹿毛色であります。
ヨホア湖は海岸から100kmぐらいの内陸の大きな湖なのです。湖岸の
浅瀬は広い範囲に水草が生い茂っておりまして、いろいろな種類があるこ
とが分かりますが、その中でも草丈が3mはあろうかと思われるイネ科で
はない植物がありました。四方に枝を広げ他の植物より少し丈が高いので
す。潅木状なのであります。それらに止まりまして所在なさそうに羽を休
めているように見えるのですが、フィッと飛び立ちまして水面をかすめま
すと足に魚を捕まえているのであります。ダイビングではありません。い
とも簡単に捉えられる魚も魚ですが、この鳥の異能さにも驚きであります。
居眠りでもしていてうっかり水面に浮かんできた魚と思わざるをえませ
んが、あるいは病気か何かで死にかけて浮上してきたのかも知れませんが、
いずれにしてもかなり離れた距離から捕獲可能と判断する能力は不思議
としかいいようがありません。北海道のトビやノスリがやる飛びながらの
空中査察ではなく、停止監視型なのであります。
この鳥の密度はかなり高く、あちらこちらに止まっている黒い姿が見え
るのであります。ウ、サギ、カイツブリそれぞれの漁法がちがう鳥達も沢
山おりますので、この湖の豊かさ加減が半端なものではないことがよく分
かるのであります。日本ではこんな湖は知りません。海鷲と呼ばれる活動
場所が海岸で、魚を主食としている猛禽が日本にもおります。ミサゴやオ
オワシ、オジロワシ地方によってはトビもそうですが、このクロノスリは
湖鷲ともいうべき鳥でありました。
ブラックホークという名の競争馬がおりました。G1 の安田記念を制し
た名馬でしたが、この鳥のイメージと合致しないのであります。スピード
感のない飛び方なのです。馬主はこの鳥を知らずに、黒鹿毛の馬の毛色と
鷹でもホークではなくファルコンのスピードをイメージして命名したと
思われますので、この鳥の責任ではありません。