e-Learning本格利用への課題 千葉大学 法経学部 経済学科 青山 耕治 千葉大学大学院社会科学研究科・経済学専攻(修士課程)では、高度専門職業人を養成するために今年度 (2001年度)より積極的に社会人の受け入れを行い、私の関係するコースには、十数名の社会人が入学した。 社会人学生に対しては平日昼間の講義による教育は困難であるため、土曜日にも講義を行っている。しか し、講義の時間、教官と学生のコミュニケーションの機会が不足してしまう等の問題がある。 今年度、科研の特定領域研究の公募研究に採択された関係もあり、マルチメディア教材とWebに代表さ れるインターネットのサービスを社会人教育に活用する方法や実現可能な利用形態についての研究に取り 組んできた。その中で、遠隔授業の実験としては、主にRealSystemを使ったストリーミング配信を行った。 その結果、安定的に数百kbpsのネットワーク帯域が確保できれば、 「使い物になる」という感触を持った。 というのも、私の予想以上に画像、音声が鮮明だったからである。(これは、私自身が作成に深く関与して いるため、そう感じるだけなのかもしれない。) しかし、今後、大学のネットワーク環境の貧弱さゆえに通信帯域を十分確保できなない可能性があり、 また、動画であることに意味がある教材を作ることは、現状では極めて困難であるため、授業資料は別に 作り(PDFファイルにして配布し)、授業者の音声だけをストリーミング配信する形態が最も現実的であ ろうと判断した。音声だけならば、受信者の通信環境がISDN相当でも十分実用的である。 我々が開発可能な教材の品質は、テレビやラジオなどで行われている通信制講座の品質には当然及ばな い。しかし、社会人の学生は、学習に対する意欲、情報を得たいという欲求が高いため、それらを考慮す ると、我々が作成可能な程度の教材でも教育の一つとして活用することが可能であると思われる。ただ し、普通に授業が行われていて、それを補助する、補完するものとして使用した場合の話である。 問題は、今後引き続き運用していけるのかという点である。今年度は、科研という動機付けがあり、ま た、その研究費によって教材作成のための補助要員を雇うことが出来たため、ストリーミング配信実験な どの様々な取り組みを行うことができた。しかし、もし、そういった動機付け、援助がないとすると、 正直申し上げて、運用は極めて困難であると言わざるを得ない。例えば、補習授業を行う場合、ストリー ミング配信による授業をするか、学生を集めて対面式の授業を行うかのどちらかを選択する場合、間違い なく後者を選択する。授業に参加できない社会人のために、録音くらいはしておくかもしれないが。 46
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