情報リテラシ教育の今後

情報リテラシ教育の今後
千葉大学 法経学部
経済学科
青山 耕治
千葉大学には、
「情報処理」
という情報リテラシ教育のための全学共通科目があり、ほとんどの学部で必修科
目になっている。私の所属する法経学部では、必修科目にはなっていないが、だいだい9割以上の学生が履修
登録を行っている。この「情報処理」では、端末の使い方から始まって、電子メールやWWWの利用方法などを
学ぶことになる。
この授業で利用するシステムは、サーバがSun Enterprise 10000、クライアントがSun Ray 1、OSはもちろんSolaris
である。私の周囲では、このシステムに対してあまりよい意見を聞かない。例えば、
「今時UNIXなんかやっても
意味がない。そもそも社会に出て役に立たない。
」
といった意見がある。
しかし、このシステムは、学生が大学で電子メールやWWWを利用したり、プログラミングなどの専門科目を履
修する際に使用したりするためのものであり、その役目は十分果たしているし、非常によくできたシステムだと個
人的には思っている。どんなシステムでもよいと言うつもりはないが、システムの種類とは別のところに、もっと問
題にすべきことがあるのではないだろうか。
現在のシステムに対してよい意見を持たない人は、おそらく、Windows系のOSでWordやExcelをやれば満足する
のかもしれない。しかし、それ以前に、それらは、大学で教えるべき内容なのか、なぜ教える必要があるのか、
本当に社会で役に立つのか等の議論や考察を行うべきではないだろうか。その上で、何をどのように教えるの
かを考える必要がある。情報リテラシ教育に限った話ではないが、そもそも、大学で学ぶ事柄が必ずしも社会で
役に立つ必要があるのかどうかも疑問ではあるが。
今までは、大学が持つコンピュータ設備やネットワーク資源を背景に、勢いにまかせて情報リテラシ教育を行っ
てきたところがあるのではないかと思う。しかし、今やPCの普及によりコンピュータは珍しいものではなくなり、
ADSLなどを利用すれば個人であっても快適なインターネット接続環境を得られるようになった。さらに、2003年
度からは、高等学校において「情報」の授業が始まると聞いている。したがって、大学における情報リテラシ教
育をどうするかを今こそ真剣に議論する必要があると思う。
そこで、私は、思いきって大学においては情報リテラシ教育を白紙に戻す、場合によっては、一旦やめてしまう
ことを提案したい。頭を冷やし、時間をかけて十分な議論を重ねて、それを踏まえてシステムや具体的な教育
内容を構築するのが望ましいと考える。コンピュータを並べて、とりあえず触らせて満足する、させる時代は終
ったと思う今日この頃である。
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