制度・運用WG成果報告「コンピュータソフトウェアの知財保護」

2014年度 制度・運用WG
成果報告
『コンピュータソフトウェアの知財保護』
2015年2月5日
中国IPG 制度・運用WG
氏名 草野 明彦(コニカミノルタ(中国))
WGメンバー
参加者(敬称略)
夏宇
草野明彦
中村崇諒
羅蘭
石丸幹朗
前川淳
任峰
孟翠敏
斉藤秀俊
迫田祐一
西真一
永塚広明
賈玉
会社名
上海金天知的財産代理事務所
コニカミノルタ(中国)投資有限公司
コニカミノルタ(中国)投資有限公司
コニカミノルタ(中国)投資有限公司
ソニー(中国)有限公司
電装(中国)投資有限公司
パナソニックチャイナ有限公司
パナソニックチャイナ有限公司
日立(中国)有限公司
富士通(中国)有限公司
株式会社安川電機
理光(中国)投資有限公司
理光(中国)投資有限公司
2
現状認識と課題及び調査目的
1.現状認識
コンピュータソフトウエア関連発明について、どのような審査実務がなされ、ま
た実務上、どのように保護されているのか不明である。
2.課題
コンピュータソフトウエア関連発明に関する実務上の知識に乏しい。
→実務上、クレーム/明細書のドラフティングや補正,翻訳等の権利化時におい
てどのような留意点があるのか?
→権利活用時にどのような課題があるのか?
→実用新案として登録されているものの有効性や脅威は?
3.調査目的
コンピュータソフトウェア関連の知財保護における実務上の課題を整理して、
対策方法を具体化する。
3
調査研究方法
各社のニーズ確認
コンピュータソフトウエア関連発明に関する各社の興味
・クレームドラフト
技術・機能を用いて実現・提供するサービ
スそのものを押さえるクレームドラフト
・明細書の記載
技術3要素(技術課題、技術手段、技術的
効果)の書き方の工夫
ソフトウエア関連発明について認められや
すいクレームドラフトの仕方
ソフトウエア関連発明について、要求され
る(基準となる)記載要件は何か?
翻訳時の工夫
翻訳時の工夫
各社ニーズを考慮しつつ、
専門家レクチャーを実施
 CCPIT
 集佳
 イーストIPレクチャーの横展開
物クレームとしての権利化の可能性
・制度・運用
実用新案でソフトウエア関連出願があった
場合の運用
・実用新案
ソフトウエア関連実用新案出願について登
録となってしまった場合の対応
SIPOの運用状況が知りたい
⇒無効化策
計算ステップを含むクレームに関する審査
の運用状況が知りたい
⇒権利解釈上の留意点
基礎的な知識の習得
・ソフトウエア関連発明について、侵害されたときの証拠収集方法
・著作権の利用
 審査指南に加えて審査操作規定の事例研究
 保護客体違反,不特許事由となる/ならないの事例の整理と理解
 クレームドラフト,明細書作成,補正実務へのヒント
 審査官がソフトウェア関連発明において反応する『敏感語彙』の整理
4
調査研究方法
スケジュール
WG開催日
1
2014/5/9
2
2014/6/6
3
2014/6/26
4
2014/7/11
5
2014/8/22
6
2014/9/19
7
2014/10/16
8
2014/11/7
9
2014/12/5
10
2015/1/16
実施事項
活動方針決定
参加メンバー各社のニーズの把握と課題の抽出
特許事務所によるレクチャー
レクチャー『中国におけるコンピュータソフトウェアの知財保護現状』
CCPIT特許商標事務所 呂林紅弁理士、楊国権弁理士
レクチャー『ソフトウェアに基づく創出に対する特許保護』
北京集佳事務所 李春暉弁理士
レクチャーまとめ
実務担当者研修分科会でのイーストIPレクチャーの横展開
事例検討における役割分担
審査指南,審査操作規定の事例研究担当決め
中間まとめ
進捗報告及び下期活動計画報告
審査指南、審査操作規定事例検討
審査操作規定6 十分な公開に係る審査:夏
審査操作規定7 補正文書の審査:前川
審査操作規定5 「方法と製品が相互に対応」する状況の審査:草野
審査操作規定1 プログラミング自体に係る請求項の審査 及び 審査指南事例5,6:永塚
審査操作規定2 限定される内容の一部がプログラム自体に関連する場合:孟
審査操作規定3 アルゴリズムの発明に係る専利出願の審査:中村
審査指南事例7,8,9:石丸
審査操作規定4 ビジネスモデル関連の発明に係る専利出願:斉藤
審査指南事例2,3,4:迫田
まとめ
活動のまとめと今後への意見交換
5
研究に基づく成果
制度上の規定
関連条文
※法25条1項(2)号
以下に掲げる各号には特許権を付与しない。
(1)科学上の発見
(2)知的活動の規則及び方法
・・・
※法2条2項
発明とは、製品、方法又はその改善に対して行われる新たな技術方案を指
す。 ・・・
審査指南
※第九章 コンピュータプログラムに係る発明専利出願の審査に関する若干の規定
「ソフトウェア関連発明」とは
①技術問題を解決するために、
②全部又は部分的に計算機プログラムの処理ステップに基づいて、
③計算機によって計算機プログラムが実行され、
④計算機外部又は内部の対象物を制御又は処理する技術手段である。
※なお、計算機プログラムに関する「技術手段」であるためには、「ハードウェアの
変更は必須ではない」。
6
研究に基づく成果
制度上の規定
審査指南【法25条1項(2)号】部分
請求項の内容(全体として)が 、非技術的要素のみを含む場合は、特許保
護対象外である。
・非技術的要素のみを含む場合
・・・ 知的活動ルールおよび方法
(単なる規則と方法、プログラム自体、記録媒体に記録されているプログラム等)
・知的活動ルールおよび方法は特許保護対象外である
請求項の内容(全体として)が 、非技術的要素と技術的要素との両方を含
む場合は、法25条に基づいて特許保護対象から排除すべきではない。
・非技術的要素と技術的要素の両方を含む場合
・・・ 知的活動ルールおよび方法だけではなく、技術的な特徴を含む場合
(ゲーム規則を含むとともに技術的特徴を含むゲーム装置)
・全体としては知的活動ルールおよび方法ではなく、法25条では排除されない。
7
研究に基づく成果
制度上の規定
審査指南【法2条2項】部分
ソフトウェア関連発明特許出願に関して、技術方案を構成した場合だけが
特許保護対象となる。技術方案は、以下技術三要件を備える。
≪技術三要件≫を備える場合とは
1.技術的課題を解決することがコンピュータプログラムを実行する目的であって、
2.コンピュータでコンピュータプログラムを実行して、コンピュータ外部又は内部の
対象を制御、又は処理する際に、自然法則に準拠した技術的手段が反映されて
おり、
3.それによって自然法則に合致した技術的効果を獲得する場合
8
研究に基づく成果
制度上の規定
「法25条1項(2)号」と「法2条2項」の適用フロー (審査指南含む)
クレーム
全体構成
技術的要素が
あるか
NO
法25条1項(2)号記載
の不特許事由にあたる
YES
技術三要件を
有するか
NO
特許法保護
対象外である
YES
特許法保護対象
となり得る
9
研究に基づく成果
コンピュータソフトウエア関連特許における実務上、クレーム/明細書のドラフ
ティングや補正,翻訳等の権利化時においてどのような留意点、権利活用時の
課題
プログラム、記録媒体そのものは保護対象外
→ソフトウエアの保護が難しい・・・更に記載要件も厳しい・・・
→どうすればいい???
※コンピュータプログラムフローに対応するような装置クレームであれば権利化可能性あり!
審査指南の第二部分の第九章5.2節第2段落:
すべてはコンピュータプログラムフローを根拠として、該コンピュータプログラムフローのステップの
それぞれに完全に対応して一致するように、または、該コンピュータプログラムフローを反映する方
法クレームに完全に対応するように、装置クレームを作成する場合、即ち、このような装置クレーム
における各組成部分が、コンピュータプログラムフローのステップまたは該方法クレームにおけるス
テップのそれぞれに完全に対応して一致する場合、このような装置クレームにおける各組成部分は、
該プログラムフローの各ステップまたは該方法の各ステップを実現するために作成必要な機能モ
ジュールとして理解すべき、このような一組の機能モジュールで限定された装置クレームは、主に
ハードウェアによって該解決案を実現する実体装置として理解すべきではなく、主に明細書に記載
のコンピュータプログラムフローにより該解決案を実現する機能モジュールアーキテクチャとして理
解すべきである。
10
研究に基づく成果
審査指南及び審査操作規定
における事例を共有
(解説がされている事例を検討)
審査指南
第九章 コンピュータプログラムに係る発明専利出願の審査に関する若干の規定
事例分析(解説)がされている事例
1
序文
2
コンピュータプログラムに係わる発明専利出願の審査基準
3
コンピュータプログラムに係わる発明専利出願の審査例
事例1
コンピュータプログラムを利用した円周率の求め方
事例2
動摩擦係数μ の自動計算方法
事例3
全世界言語文字に適用する転換方法
事例4
ゴムプレス成型プロセスの制御方法
事例5
モバイルコンピューティング装置の記憶容量の拡大方法
事例6
画像ノイズの除去方法
事例7
コンピュータプログラムを利用した液体年度の測定方法
事例8
コンピュータゲームの方法
事例9
学習内容を自ら決定する方式で外国語を学ぶシステム
4
漢字のコーディング方法及びコンピュータの漢字入力方法
5
コンピュータプログラムに係わる発明専利出願の説明書及び権利要求書の書き方
5.1
5.1 説明書の書き方
5.2
5.2 権利要求書の書き方
事例1,2 CRTスクリーンにおけるキャラクターに対するカーソル制御
(方法と装置の完全一致に関するクレームの記載例)
事例3
シーケンス制御および及びサーボ制御に適用するコンピュータシステム
(クレーム記載例)
・審査操作規定検討のメリット
・事例数が審査指南に比べ多い
・分類ごとに事例紹介されている
・認められる例と認められない例が
解説されている
審査操作規定
第九章 コンピュータプログラム の発明に係る専利出願の審査
事例分析( 解説) がされて いる事例
1
プログラミング自体に係る請求項の審査
1 .1
主題の名称がプログラム で ある場合
1 .2
限定される内容がプログラム 自体に関連する場合
1 .2 .1
限定される内容がプログラム 自体にのみ関連する場合
事例1
プログラム クレーム
事例2
メディアクレーム
事例3
メディア+ 一部部品の組み合わせクレーム
1 .2 .2
限定される内容の一部がプログラム 自体に関連する場合
事例1
サーバークレーム で プログラム によって 限定されるメディアを要件に含む
事例2
サーバークレーム で コマ ンド によって 限定される処理装置を含む
事例3
ユーザーインターフェイス の構築方法
2
アルゴリズム の発明に係る専利出願の審査
2 .1
技術方案を構成する場合
事例1
大中型形鋼のサイジング・ 切断の最適化方法
事例2
船舶の塗装面積の獲得方法
事例3
WCDMAシス テム の混合業務の制御・ 受け入れ方法
2 .2
技術方案を構成しな い場合
事例1
コンピュータプログラム を利用した円周率の求め方
3
漢字のコーディング方法の発明に係る専利出願の審査
3 .1
明細書
3 .2
特許請求の範囲
3 .3
創造性の審査
事例?
普及型のコード が重複しな い「 六筆二維」 のコンピュータ漢字入力方法
4
ビジネス モデルの発明に係る専利出願の審査
4 .1
単純な ビジネス モデルの発明に係る専利出願
事例1
株式の配当金の振込方法
4 .2
ビジネス モデル関連の発明に係る専利出願
4 .2 .1
審査方式
4 .2 .2
審査方式例
事例1
顧客の一つまたは複数の特定アトラクションへの流れをリアルタイム で 調整するシス テム
事例2
事例3
画像ビジネス シス テム
GSMデジタル携帯電話シス テム に用いる方法
その他の方面の審査
「 方法と製品が相互に対応」 する状況の審査
完全に対応一致する状況の例
テキス トマ ージ方法とテキス トマ ージシス テム
テキス トマ ッチングの確定・ 処理方法とテキス トマ ッチングの確定・ 処理シス テム
完全には対応一致しな い状況の例
ネットワーク印刷実現方法とデジタル印刷シス テム
ウェブページの事前確定によるパス の再生方法とその再生シス テム
十分な 公開に係る審査
改良がコンピュータプログラム のみの発明
十分な 公開の要件
CRTス クリーンにおけるキャラクターに対するカーソル制御
十分に公開されて いな い状況
マ ークアッププログラミング言語の抜粋に関する考慮
「 コンパイル生成表」 機能の疑似コード
改良がコンピュータプログラム だけにとどまらな い発明
補正文書の審査
機能モジュール又は機能モジュール構造を追加した製品の請求項
3 3 条に適合する補正例
機能モジュールの合併又は分解
3 3 条に適合する補正例
3 3 条に適合しな い補正例
4 .2 .3
5
5 .1
事例1
事例2
5 .2
事例1
事例2
6
6 .1
6 .1 .1
事例1
6 .1 .2
6 .1 .3
事例1
6 .2
7
7 .1
事例1
7 .2
事例1
事例2
11
第5節.「方法と製品が相互に対応」する状況の審査
5.1 完全に対応一致する状況の例
請求項1:
一种确定文本匹配的处理方法,包括以下步骤;
請求項2:
一种确定文本匹配的处理系统,包括;
特定字符计数装置,用于对输入文本的所有的字符进行检
对输入文本的所有字符进行检测,并对具有检测目标语言的
测,并对具有检测目标语言的特定字符代码的特定字符进行
特定字符代码的特定字符进行计数;
计数;
出现率计算装置,用于根据由所述特定字符计数装置检
根据检测的特定字符数和所述输入文本的所有字符数,计算
测的特定字符数和所述输入文本的所有字符数,计算特定字
特定字符出现率;
符出现率;
标准出现率存储装置,用于事先存储目标语言的特定字符
存储目标语言的特定字符的标准出现率;
的标准出现率;
比较装置,用于将所述出现率计算装置得出的输入文本的
将输入文本的特定字符出现率与标准出现率进行比较;
特定字符出现率与标准出现率进行比较;
确定所述文本是否相应于具有与所述目标语言相配的特征的 判断装置,确定所述输入文本是否相应于具有与所述目标
文本。
语言相配的特征的文本。
◆事例分析
製品請求項は文字表現において、方法請求項と多少違いがあるものの、この種の表現形式は文字表現の必要性によるも
のに過ぎず、その実質的な技術内容には影響せず、この2つの請求項は作成形式上、完全に対応一致するものと理解しな
ければならない。
12
第5節.「方法と製品が相互に対応」する状況の審査
5.2 完全には対応一致しない状況の例
請求項1:
請求項2:
一種のネットワーク印刷を実現するために用いる方法であって、
一種のデジタル印刷システムであって、
ステップA、
Aを実現するために用いる装置、
ステップB、
Bを実現するために用いる装置、
ステップC
Cを実現するために用いる装置
を含むシステム。
を含むシステム。
◆事例分析
1.方法請求項1の主題の名称及び明細書中に記載されているソリューションはいずれも「一種のネットワーク印刷を実現
するために用いる方法」であり、それと製品請求項2の主題の名称である「一種のデジタル印刷システム」には完全な対応一
致の関係は存在せず、請求項2の「一種のデジタル印刷システム」が「一種のネットワーク印刷を実現するために用いる方法」
の請求項1又は明細書中のプログラムのフローの説明と対応していると理解することはできない。
2.請求項2は明細書によって支持されておらず、専利法第26条第4項に適合しないことを理由とする審査意見を示さなければな
らず、それとともに、補正の方向性を明示することができる。例えば、出願人が該請求項の主題の名称を、方法請求項の主
題の名称又は明細書中のコンピュータのプログラムフローに対する説明に対応するよう補正した場合、明細書によって
支持されていないという欠陥を克服することができるという点を指摘する等が挙げられる。
※審査指南の「コンピュータプログラムフローにより該解決案を実現する機能モ
ジュールアーキテクチャとして理解すべき」に該当しない
→機能モジュールでしか認められない→権利化時には使いにくい
13
研究に基づく成果
審査官がソフトウェア関連発明において反応する『敏感語彙』の整理
・ 審査官は、通常、文字情報によって出願文書及び審査指南の文を
理解するため、語彙に非常に敏感である。(敏感語彙)
↓
敏感語彙をできるだけ使わないことが必要
敏感語彙
例えば、「賭博」「営業」「オークション」「入札」「予約」など
※敏感語彙については今後も収集が必要
14
実務への提言
1.審査指南はもとより、審査操作規定の事例を参考にす
ることで審査実務をより把握でき、権利として認められる
ためのクレーム作成に役立つ。
→審査指南、審査操作規定と審査の実態の対比については今後さ
らに検討が必要。
2.審査官は「敏感語彙」を気にする傾向があるといわれて
おり、「敏感語彙」の使用には気を配る必要がある。
→具体的な敏感語彙については今後の蓄積も必要。
3.コンピュータソフトウエアに関連しそうな実用新案への対応につい
ては未検討であり、今後の検討課題の一つ
15
ご清聴ありがとうございました。
中国IPG
事務局 日本貿易振興機構(JETRO)
北京・上海・広州事務所
参考1
関連条文
17
参考1
関連条文
第二条 本法でいう発明創造とは発明、実用新案、意匠を指す。
発明とは、製品、方法又はその改善に対して行われる新たな技術方案を指す。
実用新案とは、製品の形状、構造又はその結合に対して行われ、実用に適した新たな技
術方案を指す。
意匠とは、製品の形状、図案又はその結合及び色彩と形状、図案の結合に対して行わ
れ、優れた外観を備え、かつ工業への応用に適した新たな設計を指す。
第二十五条 以下に掲げる各号には特許権を付与しない。
(一)科学上の発見
(二)知的活動の規則及び方法
(三)疾病の診断及び治療方法
(四)動物と植物の品種
(五)原子核変換方法を用いて取得した物質
(六)平面印刷物の図案、色彩又は両者の組み合わせによって作成され、主に表示を機
能とする設計
前款第(四)号で掲げた製品の生産方法に対しては、本法の規定に基づき特許権を付与
することができる。
18
参考2
関連判例
19
参考2
関連判例
上海市高级人民法院
2014年2月24日
民事判決書(2013)滬高民三(知)終字第96号
専利司法解釈第4条
特許権者:ノキア コーポレイション
被疑侵害者:上海華勤通訊技術有限公司
対象クレームが機能的な技術特徴を含むか否かを争った事例
専利復審委員会
2012年7月4日
無効宣告請求審査決定第19076号
専利法第2条第3項
特許番号:201020154328.6
実用新案名称:インタラクティブな電子看板
方法自体の改良にあたり、実用新案の保護客体として認められなかった事例
20
参考2
関連判例
(2008)沪一中民五(知)初字第182号-(2009)沪高民三(知)终字第122号
ポイント
ソフトウェアに基づく方法は、製品までに及ばすことができない。
ソフトウェアを設計、編集、所有、発行する行為は、方法特許に対する侵害を構成しない。
ソフトウェアを提供する行為とユーザーの使用行為は、共同侵害を構成する。
(2012)浙杭知初字第419号
ポイント
製品の使用しか、方法クレームに対する侵害を構成しないと判断した判例。
(2012)浙杭知初字第425号
ポイント
製品が方法クレームを侵害していると直接に認定した判例。
その他
(2011)沪一中民五(知)初字第47号 -(2013)沪高民三(知)终字第96号
(2011)沪一中民五(知)初字第50号
(2011)穗中法民三初字第138号
(2012)浙杭知初字第420号
21
参考3
審査指南・審査操作規定事例紹介
22
参考3
審査指南及び審査操作規定
における事例
(解説がされている事例)
審査指南
第九章 コンピュータプログラムに係る発明専利出願の審査に関する若干の規定
事例分析(解説)がされている事例
1
序文
2
コンピュータプログラムに係わる発明専利出願の審査基準
3
コンピュータプログラムに係わる発明専利出願の審査例
事例1
コンピュータプログラムを利用した円周率の求め方
事例2
動摩擦係数μ の自動計算方法
事例3
全世界言語文字に適用する転換方法
事例4
ゴムプレス成型プロセスの制御方法
事例5
モバイルコンピューティング装置の記憶容量の拡大方法
事例6
画像ノイズの除去方法
事例7
コンピュータプログラムを利用した液体年度の測定方法
事例8
コンピュータゲームの方法
事例9
学習内容を自ら決定する方式で外国語を学ぶシステム
4
漢字のコーディング方法及びコンピュータの漢字入力方法
5
コンピュータプログラムに係わる発明専利出願の説明書及び権利要求書の書き方
5.1
5.1 説明書の書き方
5.2
5.2 権利要求書の書き方
事例1,2 CRTスクリーンにおけるキャラクターに対するカーソル制御
(方法と装置の完全一致に関するクレームの記載例)
事例3
シーケンス制御および及びサーボ制御に適用するコンピュータシステム
(クレーム記載例)
・黄色のハッチング案件が当テーマ
で検討した事例
審査操作規定
第九章 コンピュータプログラム の発明に係る専利出願の審査
事例分析( 解説) がされて いる事例
1
プログラミング自体に係る請求項の審査
1 .1
主題の名称がプログラム で ある場合
1 .2
限定される内容がプログラム 自体に関連する場合
1 .2 .1
限定される内容がプログラム 自体にのみ関連する場合
事例1
プログラム クレーム
事例2
メディアクレーム
事例3
メディア+ 一部部品の組み合わせクレーム
1 .2 .2
限定される内容の一部がプログラム 自体に関連する場合
事例1
サーバークレーム で プログラム によって 限定されるメディアを要件に含む
事例2
サーバークレーム で コマ ンド によって 限定される処理装置を含む
事例3
ユーザーインターフェイス の構築方法
2
アルゴリズム の発明に係る専利出願の審査
2 .1
技術方案を構成する場合
事例1
大中型形鋼のサイジング・ 切断の最適化方法
事例2
船舶の塗装面積の獲得方法
事例3
WCDMAシス テム の混合業務の制御・ 受け入れ方法
2 .2
技術方案を構成しな い場合
事例1
コンピュータプログラム を利用した円周率の求め方
3
漢字のコーディング方法の発明に係る専利出願の審査
3 .1
明細書
3 .2
特許請求の範囲
3 .3
創造性の審査
事例?
普及型のコード が重複しな い「 六筆二維」 のコンピュータ漢字入力方法
4
ビジネス モデルの発明に係る専利出願の審査
4 .1
単純な ビジネス モデルの発明に係る専利出願
事例1
株式の配当金の振込方法
4 .2
ビジネス モデル関連の発明に係る専利出願
4 .2 .1
審査方式
4 .2 .2
審査方式例
事例1
顧客の一つまたは複数の特定アトラクションへの流れをリアルタイム で 調整するシス テム
事例2
事例3
画像ビジネス シス テム
GSMデジタル携帯電話シス テム に用いる方法
その他の方面の審査
「 方法と製品が相互に対応」 する状況の審査
完全に対応一致する状況の例
テキス トマ ージ方法とテキス トマ ージシス テム
テキス トマ ッチングの確定・ 処理方法とテキス トマ ッチングの確定・ 処理シス テム
完全には対応一致しな い状況の例
ネットワーク印刷実現方法とデジタル印刷シス テム
ウェブページの事前確定によるパス の再生方法とその再生シス テム
十分な 公開に係る審査
改良がコンピュータプログラム のみの発明
十分な 公開の要件
CRTス クリーンにおけるキャラクターに対するカーソル制御
十分に公開されて いな い状況
マ ークアッププログラミング言語の抜粋に関する考慮
「 コンパイル生成表」 機能の疑似コード
改良がコンピュータプログラム だけにとどまらな い発明
補正文書の審査
機能モジュール又は機能モジュール構造を追加した製品の請求項
3 3 条に適合する補正例
機能モジュールの合併又は分解
3 3 条に適合する補正例
3 3 条に適合しな い補正例
4 .2 .3
5
5 .1
事例1
事例2
5 .2
事例1
事例2
6
6 .1
6 .1 .1
事例1
6 .1 .2
6 .1 .3
事例1
6 .2
7
7 .1
事例1
7 .2
事例1
事例2
23
審査指南(第九章)事例
事例2 動摩擦係数μ の自動計算方法
計算式をプログラムで実行するだけでは特許にならない。
◆【出願内容の概要】
従来、測定対象の組状物を固定した速度で牽引する装置を利用し、摩擦片の位
置の変化量であるS1とS2を別々に測定した上で、以下の計算式
μ =(log S2 - log S1) / e
により、測定対象の紐状物の動摩擦係数μ を算定するものである。
◆【権利請求範囲】
摩擦片の位置の変化量S1 とS2の比を計算するステップと、
変化量の比S2 /S1の対数のlog S2 /S1を計算するステップと、
対数logS2 /S1とeの比を求めるステップと、
を含むことを特徴とするコンピュータプログラムを利用した
動摩擦係数μ の自動計算を実現する方法。
⇒ 上記計算式を、アルゴリズム形式で記載したに過ぎない。
◆【分析】
当該解決方案は全体として、一種の数学上の計算法に該当している。
ゆえに、専利法25条1項(2)号で定める知的活動の規則及び方法に該当しており、
専利で保護する客体にはならない。
24
審査指南(第九章)事例
事例3 全世界言語文字に適用する転換方法
言語文字の主観的な変換規則は、特許にならない。異なる言語文字の固有で客観的な
規則を利用した機械翻訳方法の改良でなければならない。
◆【出願内容の概要】
全世界で任意の多種言語向けの翻訳の方法を提供する。
この発明専利出願では、エスペラント補助言語の表記方式と相同な「全世界言語文字
入力法」を利用して、異なる言語の文法や文の構造の統一化を実現している。
言語の転換時に、エスペラント補助言語を機械翻訳の仲介言語としている。
◆【権利請求範囲】
全世界の言語文字を、まずは単語の後に子音アルファベットによる語彙表記、それから
子音アルファベットによる構文表記の方式で統一して、各入力言語に対応した入力言語
の補助言語を形成させるステップと、 ...
.....語彙表記の方式では、-mが名詞、-xが形容詞、-yが複数、-sが数詞、-fが副
詞になり、
前記構文表記の方式では、-zが主語、-wが述語、-dが連体修飾語、-nが目的
語、-bが变述語を含む補語、-kが連用修飾語になる、
ことを特徴とするコンピュータを利用した全世界言語文字の汎用的な転換方法。
⇒ 語彙表記と構文表記の規則を主観的に定めているに過ぎない。
◆【分析】
当該解決方案は、機械翻訳方法の改良ではない。機械翻訳について、異なる言語文
字自体に固有の客観的な言語の規律とコンピュータ技術を結合した改良を示していない。
本質としては、専利法25条1項(2)号で定める知的活動の規則及び方法に該当しており、
専利で保護する客体にはならない。
25
審査指南(第九章)事例
事例4 ゴムのプレス成型プロセスの制御方法
プログラムの実行によりプロセス制御を改善できれば、技術法案といえる。
◆【出願内容の概要】
コンピュータプログラムを利用したゴムのプレス成形プロセスの制御方法に係わる発明専
利出願である。当該コンピュータプログラムでは、当該成形プロセスにおけるゴム加硫時間
を精確かつリアルタイムに制御することができるため、ゴム製品の品質を大いに高めてい
る。
◆【権利請求範囲】
温度センサーを介してゴム加硫温度のサンプリングを行うステップと、
前記加硫温度に呼応して、ゴム製品の加硫過程における適正加硫時間を算出するステッ
プと、
前記適正加硫時間が所定の適正加硫時間に達しているかを判断するステップと、
前記適正加硫時間が所定の適正加硫時間に達したら、直ちに加硫終了信号を発信するス
テップと、を含むことを特徴とする
コンピュータプログラムを利用したゴムのプレス成形プロセスの制御方法。
⇒ 自然法則に準拠した技術的手段が記載されている。
◆【分析】
・技術的問題:ゴムの加硫超過及び加硫不足の防止。
・技術的手段:コンピュータプログラムを実行することにより、
ゴムのプレス成形プロセスの処理を制御する。
・技術的効果:ゴム加硫時間の精確かつリアルタイムな制御が可能で、
ゴム製品の品質を大いに高められる。
ゆえに、当該専利の出願は、コンピュータプログラムを実行することによって、工業プロセ
スの制御を実現する解決方案であり、専利法2条2項に規定した技術方案に該当し、専利
保護の客体に該当する。
26
審査指南(第九章)事例
事例5
モバイルコンピューティング装置において、仮想装置ドキュメントシステムモジュールを構築し、モ
バイル装置のオペレーティングシステムにセットするステップと、
仮想装置ドキュメントシステムモジュールを通じて、モバイルコンピューティング装置でのアプリ
ケーションために仮想記憶スペースを提供するとともに、この仮想記憶スペースへの読取り・書
込み要請をネットワークを介してリモートサーバーへと発信するステップと、
リモートサーバーにおいて、モバイルコンピューティング装置から送信される読取り・書込み要請
をサーバー上のローカル記憶装置への読取り・書込み要請に転化して、読取り・書込み結果を
ネットワークを介してモバイルコンピューティング装置まで返送するステップと、
を含むことを特徴とする仮想装置ドキュメントシステムを利用したモバイルコンピューティング装置
の記憶容量拡大方法。
分析
技術的課題:有効な記憶容量を如何に増加させる
技術的手段:プログラムを実行することにより、モバイルコンピューティング装置の内部の運転性能
の改良を実現しており、仮想装置ドキュメントシステムモジュールを利用したローカルコンピュータに
おける仮想記憶スペースの構築により、ローカル記憶装置に対するアクセスを、サーバー上の記憶
装置に対するアクセスへと転換する(自然法則に準拠)
技術的効果:モバイルコンピューティング装置におけるデータ記憶がそれ自体の記憶容量に制限さ
れない
結論
実行することにより、コンピュータシステム内部の性能改良を実現した➟専利保護の客体に該当
27
審査指南(第九章)事例
事例6
コンピュータに入力する処理待ち対象画像の各画素データを取得するステップと、
当該画像の全画素のグレースケール値を用いて、当該画像のグレースケールの平均
値及びそのグレースケールの分散値を算出するステップと、
当該画像の全画素のグレースケール値を読み取り、各画素のグレースケール値が平
均値の分散の上下3倍以内にあたるかを個々に判断し、そうである場合には、当該画
素のグレースケール値を補正しないが、そうでなければ、当該画素がノイズとなり、当
該画素のグレースケール値を補正することにより、ノイズを除去するステップと、
を含むことを特徴とする画像ノイズの除去方法。
分析
技術的課題:画像ノイズを除去すると同時に、除去処理で起きる画像ぶれを低減させる
技術的手段:プログラムを実行することにより、画素データのグレースケールの平均値及びグレー
スケールの分散値に応じて、グレースケール値が平均値の上下3倍分散値以外にあたるピクセル
を画像ノイズと見なして除去しながら、グレースケール値が平均値の上下3倍分散値以内にあたる
ピクセルを画像信号と見なし、そのグレースケール値を補正しない。(自然法則に準拠)
技術的効果:従来技術のようなすべてのピクセルを平均値で代えるという欠陥を回避でき、画像ノ
イズを効果的に除去すると同時に、画像ノイズの除去処理で起きる画像ぶれを低減させ得る。
結論
実行することにより、外部の技術的データを処理する技術案である➟専利保護の客体に該当
28
審査指南(第九章)事例
事例7:コンピュータプログラム
を利用した液体粘度の測定方法
本件は、コンピュータプログラムの発明というより、
コンピュータプログラムを利用した発明であり、他
の部分に技術的特徴があるため、本発明が保護
対象になるという結論は、特に違和感はなく、自然
なことと思われる。
【概要】
液体の粘度は、液体の製造や応用の過程でよく利用される重要な技術指標である。通常の液体粘度の測定方法は、回転式測定
装置を利用した手動操作で行われる。まずは、モータで回転子を動かし、液体の中で回転させる。回転子の回転角度は、針が目盛
盤でひねる角度で反映される。それから、目盛盤からひねる角度を読み取って、液体の粘度値の測定値を得る。当該測定法にある
問題点は、測定過程を手動操作で実施するもので、測定速度が遅く、精度が低く、製造現場でのリアルタイム検査・測定に適しない
ということである。
この専利専利出願で提示されたコンピュータプログラム制御を利用した粘度測定方法は、コンピュータプログラムを実行すること
により、液体の粘度測定のデータ収集やデータ処理、データ表示の過程を自動制御して、製造現場でのリアルタイム検査・測定を
実現している。
【請求項】
パラメータ信号処理プログラムで、液体の種類に応じて適宜なセンサーカメラの回転速度を確定するステップと、
センサーカメラを液体の中で前記回転速度で回転・切込み動作をさせ、センサーカメラで検知した液体の粘着抵抗値を電流信号
に変換するために、センサーカメラ制御プログラムを介してセンサーカメラを起動するステップと、
センサーカメラ信号処理プログラムを介して、前記電流信号に基づいて液体の粘度値を算出し、かつ算出した粘度値を液晶ディス
プレーに送信して表示するか、或いは通信インターフェースを通して生産制御センターに送信するステップと、
を含むことを特徴とするコンピュータープログラムを利用した液体粘度の測定方法。
【分析及び結論】
当該解決方案は液体粘度の測定方法である。解決しようとするのは、液体の粘度測定の速度と精度を高めるという技術的課題で
ある。当該方法では、コンピュータプログラムを実行することにより、液体の粘度測定過程の制御を実現し、センサーカメラの回転速
度の選定や、動作状態の起動などセンサーカメラの作動過程、そして収集した技術的データの処理過程及び測定した結果の表示
過程についての自動制御を反映し、自然法則に準拠した技術的手段を利用することにより、現場における液体の粘度のリアルタイ
ム検査・測定を実現し、液体の粘度測定の速度と精度を高めるという技術的効果を獲得している。
ゆえに、当該発明専利出願は、コンピュータプログラムを実行することにより、測定又はテストプロセスの制御を実現する解決方案
であり、専利法2条2項に規定した技術方案に該当しており、専利保護の客体に該当する。
29
審査指南(第九章)事例
事例8:コンピュータゲームの方法
本件は、いわゆるクイズRPGに関する発明で
あり、本発明のような構成が保護対象になら
ないという結論は、日本と相違なく、特に疑問
点はないように思われる。
【概要】
従来のコンピュータゲームのタイプについて言うと、一つは質問応答の方式により楽しみながら学習するという目的を達成するためのもので、
もう一つは、ゲーム内のキャラクターの成長に伴ってキャラクターとゲーム環境の変化を実現する成長型ゲームである。
この発明専利出願では、前記二つのゲームタイプの長所を結集し、ゲーム内の質問応答の方式を通じて、キャラクターとゲーム環境の変化を
実現しようとしている。
当該ゲーム方法において、ゲームの進み具合に合わせて、前記進み具合と対応する質問を提示し、そしてユーザが質問の解答を入力する際
に、前記解答が正確か否かを判断する上で、ユーザに操縦される同コンピュータゲームにおけるキャラクターのレベルや装備、又は環境を変え
る必要があるかを決定するようなゲームインタフェースをユーザに提供する。
【請求項】
利用者がコンピュータゲーム装置を介して当該コンピュータゲームのゲーム環境に入ると、記憶してある問題資料や当該問題資料に対応する
解答資料、及びゲームの進み具合資料から、当該ゲームの進み具合に対応する問題資料を取り出し、問題資料を利用者に示す質問ステップ
と、
提供した問題資料に基づいて、利用者が入力した解答が、記憶してある当該問題に対応する解答資料と一致しているか否かを判断し、そうで
ある場合、次のステップへと進み、そうでない場合には、質問ステップに戻る成績判断ステップと、
成績判断ステップでの判断結果及び記憶してある回答成績記録資料に基づき、当該コンピュータゲームにおいて利用者に操縦されるキャラク
ターのレベルや装備、又は環境を決定し、正解した回数が一定の基準に達すれば、そのレベルや装備、或いは環境は相応してグレードアップし
たり、増加するが、一定の回数基準に達していなければ、そのレベルや装備、或いは環境が変わらないゲーム状態の改変ステップと、
を含むことを特徴とする成長型及び質問応答式の両方を兼ねるゲーム方式をユーザに提供するコンピュータゲーム方式。
【分析及び結論】
当該解決方案は、質問応答ゲームのプロセス制御プログラムを実行する公知のコンピュータを利用して、質問応答式ゲーム及び成長型ゲー
ムを結合したコンピュータゲームの方法を形成するものである。当該方法では、質問応答及びゲームキャラクターの状態を改変するという方式
によって、質問応答の過程においてキャラクター及び環境を相応して変化させる。この解決方案では、ゲーム装置を介してコンピュータゲーム
環境に入り、コンピュータプログラムを実行することにより、ゲーム過程を制御しているが、当該ゲーム装置は公知のものであり、ゲームの過程
制御でも、データの伝送や内部のリソースの管理などゲーム装置の内部性能の改良につながることなく、ゲーム装置の構造や機能にも技術的
な改変を一切与えていない。また、当該方案で解決しようとする問題は、如何に人の主観的意志に基づいて2種類のゲームの特徴の双方に配
慮すべきかということであり、技術的課題を構成しない。実施手段も、人為的に制定される活動規則により質問応答式ゲームを成長型ゲームと
結合させるというものであって、技術的な手段ではない。獲得している質問応答式ゲームと成長型ゲームの結合の過程についての管理と制御
という効果もやはり、ゲームの過程若しくはゲームの規則についての管理と制御に過ぎず、技術的な効果ではない。ゆえに、当該専利の出願
は、専利法2条2項に規定した技術方案に該当せず、専利保護の客体には該当しない。
30
審査指南(第九章)事例
事例9:学習内容を自ら決定する
方式で外国語を学ぶシステム
本件は、言語学習ソフトの単語並び替え問題に関する構成をカ
バーしようとするもの。ビジネスモデル発明に近い。クレーム中の
「分割モジュール」が技術的特徴を有するような構成にすれば保護
対象になる可能性もあると考える(つまり学習機の機能に変化を与
えるようにクレームする)。
現状のクレームにおいて本発明のような構成が保護対象にならな
いという結論は、日本と相違なく、特に疑問点はないように思われる。
【概要】
従来のコンピュータ支援学習システムにおける学習内容が、システムで予め決まっていたため、ユーザは自分の外国語レベルに
応じて学習内容を自ら決定することなく、これら予め決まった内容を学ばなければならない。
この発明専利出願では、ユーザが自分のニーズに合わせた学習資料を選定して、資料をシステムに入力すると、システムプログ
ラムが資料の中の文を、いくつかのユニットに区切る。
そしてユーザが区切られたユニットを組み合わせ直してシステムに入力すると、システムプログラムはユーザが組み合わせ直した
文を当初の文と比較し、予め決まった採点基準に従って得点をつけてから、点数を学習者に出力する。
【請求項】
選定した学習資料を入力するための学習機と、
ユーザが伝送する言語ドキュメントを受信するためのドキュメント受信モジュールと、
前記言語ドキュメントを最低一つの独立文に区切るためのドキュメント区切モジュールと、
前記独立文を複数の区切ユニットに区切るための文の分割モジュールと、
前記区切ユニットをユーザに出力し、ユーザが自ら組み合わせ直した文を受け、前記独立文とユーザが自ら組み合わせ直して入
力した文と比較して、予め決まった採点基準に従って得点をつけてから、点数を前記学習者に出力する文を作るタイプ言語学習モ
ジュールと、
を含むことを特徴とする学習内容を自ら決定する方式で外国語を学ぶシステム。
【分析及び結論】
当該解決方案は、一組のコンピュータプログラム機能モジュールを利用して学習システムを構成するものである。これらの機能モ
ジュールで、ユーザが決定して伝送する言語ドキュメントを受けて、その中の文をユーザが組み合わせ直した文と比較し、比較の結
果をユーザに出力する。当該システムにおいて、学習機でコンピュータプログラムを実行することにより、学習の過程の制御を実現
しているが、当該学習機が公知の電子装置であり、外国語文章の区切りや組み合わせ直し、比較、採点は、学習機の内部の性能
を改良するものでなく、学習機の構造や機能にも技術的な変化を一切与えていない。また、当該システムで解決する課題は、如何
にユーザの主観的願望に合わせて学習内容を決定するかということであり、技術的課題を構成しない。実施手段は、学習の規則を
人為的に制定し、規則の要求に従って行われることであって、自然法則に規制されるようなものではない。それゆえに、技術的手段
を利用していない。当該方法では、ユーザが自分のニーズに合わせて学習内容を自ら決定するようになり、学習効率の向上につな
げるが、獲得したのは自然法則に合致した技術的効果ではない。従って、当該発明専利出願は、専利法2条2項に規定した技術方
案に該当せず、専利保護の客体には該当しない。
31
審査操作規定(第九章)第1節(プログラミング自体にかか
る請求項の審査)事例
請求項中で限定された内容の一部分のみがコンピュータプロ
グラム自体にかかわる場合
•特許法第26条第4項(特許請求の範囲記載の明瞭性)(事例1
と事例2)
•特許法第2条第2項(保護客体)(事例3)
32
審査操作規定(第九章)1.2.1(限定される内容がプログラム
自体にのみ関連する場合)事例
【事例1】
"一種のコンピュータの読み取り可能な記憶媒体であって、
それは電子データの交換に用いるコンピュータプログラムを記録する。
そのうち、前記コンピュータプログラムはコンピュータに以下のステップを執
行させる。
確定ステップ、……
選択ステップ、……
執行ステップ、……"
【事例2】
一種のコンピュータの読み取り可能なメディアであって、
前記コンピュータの読み取り可能なメディアには処理装置が執行するコン
ピュータ実行可能コマンドが含まれ、
前記コンピュータ実行可能コマンドを……に用いる
ことを特徴とするメディア。
【分析】
主題の名称を除き、限定される内容がコンピュータプログラム自体に係わる
ため、専利法25条1項(2)により客体違反となる。
第二十五条 以下に掲げる各号には特許権を付与しない。
(二)知的活動の規則及び方法
33
審査操作規定(第九章)1.2.1(限定される内容がプログラム
自体にのみ関連する場合)事例
【事例3】
一種のコンピュータ実行可能ユニットを備えたコンピュータの読み取り可能なメ
ディアであって、以下が含まれる。
第一部品。第一のXMLモデルに関連する第一のタイプのエレメント及び第二の
XMLモデルに関連する第二のタイプのエレメントを含むエクステンシブル・マーク
アップ・ランゲージ(XML)ドキュメントパートの構築に用い、かつ前記第一部品は
第一のタイプのエレメント中の前記第一XMLモデルに背くエレメントを表示するた
めに配置される。
第二部品。記憶ノードに用いる。前記各ノードは前記第一部品中の相応のエレメ
ントと関連する。
第三部品。エレメントの確認に用いる。前記第三部品は呼応・確認された違反情
報を通じて、エラーを前記第一部品にリターンするために配置される。
【分析】
請求項中の構成要素「部品」は、ハード構成ではなくプログラムモジュール自体
である(物理構造に見せかけている)。
請求項は、実質上、プログラムによってのみ限定されるコンピュータ読取可能な
メディアに相当し、利法25条1項(2)により客体違反となる。
34
審査操作規定(第九章)1.2.2(限定される内容の一部が
プログラム自体に関連する場合)事例
事例(1)
請求項:
中間サーバーであって、
コンピュータプログラムが記憶されている記憶媒体を備え、前記コンピュータプ
ログラムは、
……ための読み取りステップと、
……ための分析ステップと、
……ための表示ステップとを含む、中間サーバー。
事例分析
該請求項は中間サーバーに関しており、同中間サーバーにはコンピュータプロ
グラムによって限定される記憶媒体が含まれている。
コンピュータプログラムによって限定される内容に関しては、構造的特徴ではな
く、方法的特徴でもないため、同中間サーバーの構造が不明瞭であり、特許法
第26条第4項の規定に適合しない。
35
審査操作規定(第九章)1.2.2(限定される内容の一部が
プログラム自体に関連する場合)事例
事例(2)
請求項:
サーバーであって、
処理装置と、
操作上で前記処理装置と連結する記憶装置とを備え、
前記処理装置は前記記憶装置におけるコマンドを実行し、
前記コマンドは、 ……を含む、サーバー。
事例分析
該請求項はサーバーに関しており、同サーバーにはコマンドによって限定され
る処理装置が含まれている。
コマンドによって限定される内容は構造的特徴ではなく、方法的特徴でもない
ため、該請求項の保護範囲は不明瞭であり、保護を求めるものが、どのような構
造を有するサーバーなのかをはっきり説明していないため、特許法第26条第4項
36
の規定に適合しない。
審査操作規定(第九章)1.2.2(限定される内容の一部が
プログラム自体に関連する場合)事例
事例(3)
請求項:
ユーザーインターフェースの構築方法であって、
該ユーザーインターフェースは映像放映設備における再生又は記録の状態を表示し、
該映像放映設備はディスプレイと記憶装置を含み、
該方法は、映像放映設備の記憶装置に記憶されたプログラムの実行によって、映像放
映設備に、
ユーザーが選択したアナログ腕時計形式又は環状形式のユーザーインターフェースの
プランを受け入れるステップと、
ディスプレイのスクリーンにアナログ腕時計形式又は環状形式のユーザーインター
フェースを表示するステップと、
ディスプレイのスクリーンに「現時点放映中の映像の放映時間を表示するか否か」の選
択肢を表示するステップと、
ユーザーが「Yes」を選択したとき、前記ユーザーインターフェースに現時点放映中の映
像の放映時間を表示するステップと、
ディスプレイのスクリーンに「放映記録状態を表示するか否か」の選択肢を表示するス
テップと、
ユーザーが「Yes」を選択したとき、前記ユーザーインターフェースに記録状態を表示す
るステップと、を完了させることを含む、
37
ユーザーインターフェースの構築方法。
審査操作規定(第九章)1.2.2(限定される内容の一部が
プログラム自体に関連する場合)事例
事例分析
該方法は、コンピュータプログラムの実行によって、映像放映過程を表示する
ユーザーインターフェースを提供するものであるが、映像放映設備は公知のもの
であり、該方法を実行する場合、映像放映設備に内部性能の改良をもたらすこと
はなく、映像放映設備の構成又は機能に如何なる技術上の変化ももたらしてい
ない。
該方法の解決する問題は、如何にしてユーザーの主観的な意思に基づいて
ユーザーインターフェースの表示内容を確定するかというものに過ぎず、技術的
問題ではない。
該方法の採用する手段は、ユーザーのニーズに基づき、ユーザーが必要とす
る内容を表示する人為的に定められたユーザーインターフェースを構築するとい
うものであり、技術的手段ではない。
得られる効果は、ユーザーが映像放映過程又は記録状態を容易に把握できる
ようにするというものであり、技術的効果ではない。
よって、該請求項が保護を求める方法は特許法第2条第2項に規定する技術方
案には該当せず、特許の保護客体に属さない。
38
審査操作規定(第九章) 第2節(アルゴリズムの発明に係
る専利出願の審査)事例
単純なアルゴリズムに係る発明は専利法第25条第1項第(2)号に定
める知的活動の規則及び方法に属す。その審査については、審査指
南第二部第九章第2節及び第3節の例1と例2を参照のこと。
以下の2つの条件を満たすアルゴリズムに係る発明は、専利法第2条
第2項に定める技術方案に属する。
(1)該アルゴリズムが某技術分野に応用されるとともに、該アルゴリ
ズムに基づくソリューションが形成されている場合。
(2)該アルゴリズムのソリューションに基づいて技術的手段を採用す
るとともに、該技術分野の技術問題を解決し、相応の技術的効果が
得られる場合。
(原文)涉及单纯算法的发明属于专利法第25 条第1 款第(2)项规定的智力活动的
规则和方法,对其审查参见审查指南第二部分第九章第2 节以及第3 节的例1 和例
2。
满足以下两个条件的涉及算法的发明,属于专利法第2 条第2 款规定的技术方案:
(1)该算法应用到某一技术领域,并形成基于该算法的解决方案;
(2)基于该算法的解决方案采用了技术手段,并解决了该技术领域的
技术问题,获得了相应的技术效果。
39
審査操作規定(第九章)2.1(技術方案を構成する場合)事例
【事例1】
【請求項】
一種の大中型形鋼のサイジング・切断の最適化方法であって、圧延材の長さと温度を
測定した後、コンピュータが圧延材の切断について、切断計算の最適化を図り、最適な
切断寸法案を選別した後、コンピュータが自動制御システムを通じて、移動式の熱線糸
鋸とサイジングボードの最適な切断案に基づく切断を指示することを特徴とする最適化
方法。最適化された切断の計算公式は、
……(具体的な数学的計算公式及びパラメータの説明)
【事例分析】
該請求項のソリューションは形鋼切断分野において、形鋼のサイジング、切断の最適化
を如何に図るかという技術的問題を解決するため、切断アルゴリズムの最適化に基づ
き、自動制御システムを通じて、移動式の熱線糸鋸とサイジングボードの最適な切断案
に基づく切断を指示するという技術的手段を採用するとともに、これによって、圧延材切
断後の余剰部分を減らすことで、切断する原材料を効果的に節約するという技術的効
果を得ることができるというものである。このため、専利法第2条第2項の規定に適合す
る。
40
審査操作規定(第九章)2.1(技術方案を構成する場合)事例
【事例2】
【請求項】
一種の船舶の塗装面積の獲得方法であって、以下のステップを含むことを特徴とする。
A.TRIBON(船舶設計ソフトウエア――訳注)によって関連する3Dモデルを調整し、その中から船室
を探し出して確定し、その船室を囲う平面板に基づいて計算範囲を定める。
B.計算範囲確定後、船室を囲う平板の面積を計算する。
i.船室の外形は直方体とすることができ、直方体の表面はそれぞれXY平面、YZ平面、XZ平面と平
行である場合、船室を囲む平板の面積については、それぞれの表面の長方形の面積を直接取る
ことができる。
ii.確定した船室が船尾エリアに位置し、その外形は直方体ではなく、俯瞰図で見た場合、梯形に似
た形状である場合、梯形の面積に基づき、船室の上下表面の面積を近似計算することができ、
……(具体的な数学的計算公式及びパラメータの説明)。
C.船室の内部構造の面積を計算するとき、船室の内部構造部品の処理方法は部品の空間的位置
を判断することであり、関連する船室に属する部品を選別し、部品が船室エリア内に位置するか否
かを判断する。
i.……条件を満たす場合:……形材の面積を計算する。
ii.……上述の条件を満たさない場合、……
【事例分析】
該請求項のソリューションは、造船分野において、船舶の塗装面積を如何に正確に獲得するかと
いう技術的問題を解決するものであり、船舶の塗装面積の計算方法に基づき、かつ3Dモデルを利
用して実現する技術的手段を採用するとともに、それによって、造船分野の設計スピードを高める
41
という技術的効果を得ることができることから、専利法第2条第2項の規定に適合する。
審査操作規定(第九章)2.1(技術方案を構成する場合)事例
【事例3】
【請求項】
一種のWCDMAシステムの混合業務の制御・受け入れ方法であって、以下のステップを含むこと
を特徴とする。
ステップ1:呼び出し業務のQoSの中から業務のセルレート R、必要な信号対雑音比(SN比)
Eb/N0値を抽出する。
ステップ2:以下の公式に基づき、i個目の単一業務のアクセス時に対応するパワー負荷の上昇
曲線を計算する。
ステップ3:以下のN次の多項式により、各単一業務の曲線にそれぞれ近づける。
ステップ4:ベースステーションから上がってくる測定データグループの中からエリアの総パワーの
測定値を取得する。
ステップ5:エリアの総パワーの値をベースとして、対応する業務のセルレートRの曲線を一つの
単位の負荷の増分曲線に切り継ぎしてベースパワー上につなげる、すなわちベースパワーの値に
あるユーザー(セルレートはR)のパワーの増分を加えて、予測されるエリアのパワー負荷値η を得
る。
ステップ6:予測されるパワー負荷値η がη ≤−84DBmを満たす時、呼び出しを受け、無線ネット
ワーク制御装置(RNC)に受信信号を返す。
42
ステップ7:コードリソース割当サブプロセスを起動する。
審査操作規定(第九章)2.1(技術方案を構成する場合)事例
【事例3】
【事例分析】
該請求項は「呼び出し業務のQoSの中から業務のセルレート、必要な信号対雑音比
(SN比)を抽出する」、「ベースステーションから上がってくる測定データグループの中か
らエリアの総パワーの測定値を取得する」、「呼び出しを受け、無線ネットワーク制御装
置に受信信号を返す」及び「コードリソース割当サブプロセスを起動する」という技術的
特徴を備えているため、全体として見た場合、一種の知的活動の規則及び方法ではな
く、専利法第25条第1項第(2)号の排除範囲に属さない。
該請求項のソリューション全体が解決しようとする問題はWCDMAシステム中の業務の
受け入れを如何に制御するかというものであり、該問題は技術的問題に属する。採用
する手段は、ベースステーション等のエレメントを通じて、計算パラメータ値を計算して受
信信号を返すというもので、技術的手段である。得られる効果はシステム中の業務の受
け入れを制御し、ネットワークの運行を実現するというもので、技術的効果である。よっ
て、該請求項の方案は専利法第2条第2項に定める技術方案に属する。
43
審査操作規定(第九章)2.1(技術方案を構成しない場合)事例
【事例】
【請求項】
一種の円周率を求める設備であって、該設備には以下が含まれる。
入力装置、円周率を求めるプログラムの入力に用いる。
記憶装置、上述の入力装置によって入力した円周率を求めるプログラムの記憶に用いる。
処理装置、上述の円周率を求めるプログラムの執行に用いる。
表示装置、上述の処理装置の執行結果の表示に用いる。
うち、上述の処理装置は上述の円周率を求めるプログラムの制御下で以下のステップを執行する。
一つの正方形内の「点」の数を計算する。
該正方形の内接円内の「点」の数を計算する。
以下の公式に基づき、円周率を求める。
【事例分析】
該請求項は一種の円周率を求める設備の保護を請求しており、それには入力装置、記憶装置等
の技術的特徴が含まれるため、該請求項全体としては一種の知的活動の規則及び方法ではない。
しかしながら、そのハードウエア構造について言うと、該設備は依然として一台の公知のコンピュー
タに過ぎない。該請求項の方案が解決しようとする問題は公知のコンピュータを利用して如何に円
周率を求めるかであり、採用する手段はコンピュータが執行する一種の円周率を求めるアルゴリズ
ム・プログラムを編成するというもので、得られる効果は一つの数値の計算結果の獲得に過ぎない。
該請求項の方案が解決する問題、採用する手段及び得られる効果はいずれも非技術的なもので
あることから、専利法第2条第2項の規定に適合しない。
44
審査操作規定(第九章)第4節(ビジネスモデルの発明に係
る専利出願の審査) 事例
1.定義
ビジネス方法に関する発明専利出願:
コンピュータおよびインターネット技術を利用してビジ
ネス方法の実施を主題とする発明専利出願
⇒3種の審査方式あり
45
審査操作規定(第九章)第4節(ビジネスモデルの発明に係
る専利出願の審査) 事例
2.審査方式(1)
(1)第一の審査方式:保護対象に関するもの
(1)明細書に記載の背景技術および/または技術常識に
基づき、保護要求の発明が解決する問題が技術課題で
はない場合、
⇒特許法第2条第2項によりそれが発明を構成しないた
め、特許保護の客体に該当しないと指摘する
46
審査操作規定(第九章)4.2.2(審査方式例) 事例
【事例1】
【請求項】
顧客が列を作るという従来公知の待ち方で特定したアトラクションに参加可能な第1列と、
・・・・制御器と、
・・・・情報記憶装置と、を含み
・・・・第1特定器と、
・・・・第2特定器と、
を含む顧客の流れを1個又は複数の特定したアトラクションにリアルタイムに調整するシ
ステム。
【補足】
明細書中には、従来技術として、コンピュータを利用して顧客が列を作ってアトラクショ
ンに待つことを低減するアトラクションの参加を管理するための方法およびシステムが
開示されている。
【事例分析】
該出願に記載の上記背景技術から分かるように、コンピュータ技術を利用して遊園地
の顧客の流れを制御する方案が既に存在している。該出願が解決する技術課題は、ア
トラクションに待つ時間を節約するために、動態的に顧客の流量を調整する課題であり、
これは非技術課題であるため、該請求項が解決する技術課題は、特許法第2条第2項
に規定の発明を構成しない。
47
審査操作規定(第九章)4.2.2(審査方式例) 事例
(2)第2の審査方式:保護対象に関するもの
背景技術に対して保護要求の発明が解決する技術課題が説明さ
れているが、
実質的に解決する技術課題が、検索により、該技術課題が客観
的に既に解決しされていることが認められ、
実質的に解決する技術課題が、非技術課題であることを当初の段
階で判断できる場合、
⇒引用した検索結果に基づき、解決する課題が非技術課題であ
るため、特許法第2条第2項に規定の発明に属しておらず、特許保
護の客体に該当していない
48
審査操作規定(第九章)4.2.2(審査方式例) 事例
【事例2】
【請求項】
画像のデジタル画像情報を受信するのに用いられ、前記デジタル画像の固有操作条
件がプリント条件を含む受信コンピュータと、
前記デジタル画像情報を記録するための保存装置と、
インターネットラインを介して伝送された前記デジタル画像情報を、プリントアウトされ
た写真の形式で前記受信コンピュータにおいて現像するために、前記保存装置に記録
された前記デジタル画像情報を、インターネットを介して前記受信コンピュータに伝送す
るのに用いられ、プリントアウトする写真の形式が前記プリント条件により補正された伝
送装置と、
・・・・費用記帳コンピュータと、を含む画像ビジネスシステム。
【事例分析】
審査においては、検索の結果、コンピュータおよびネットを利用してデジタル視聴製品
を販売するシステム、即ち、コンピュータおよびネットを利用して写真を伝送し、クライア
ントに写真を表示する課題を解決している先行文献を抽出。
相違点は、該出願が成熟した技術を写真の現像および焼付けに用いることである。こ
れは、ただ販売の物品が異なるだけである。従って、該出願が解決するのは、異なる物
品の販売に対する非技術課題であり、その解決する発明は、特許法第2条第2項に規定
の発明ではない。
49
審査操作規定(第九章)4.2.2(審査方式例) 事例
(3)第3の審査方式:新規性/進歩性に関するもの
発明の新規性および/または進歩性に対して影響を及ぼされる従来
技術を検索する場合、直接、検索された従来技術に基づき、その新
規性および/または進歩性を評価することができる。
①請求項の発明が従来発明によって開示されている場合
⇒請求項は新規性を有していない。
②請求項の発明が従来発明によって開示されていない場合
S1.最も接近した従来技術、且つ請求項の発明と最も接近した
従来技術との区別特徴を特定
S2.突出した実質的な特徴(自明性)を有するか、および顕著な
進歩を有するかを判断
⇒全体的な分析により、該区別特徴が従来技術に技術貢献をしな
い結論が下されれば、当該請求項は進歩性を有していないと判断50
審査操作規定(第九章)4.2.2(審査方式例) 事例
【事例3】
【請求項】
ユーザマークモジュール(SIM)によりユーザユニットを制御するGSM型デジタル携帯シ
ステムに用いられる方法であって、
ユーザマークモジュールを2個のマークを分配し、その情報をシステムのローカルデー
タベースに記憶し、上記2個のマークは、それぞれサービスおよびプライベート電話の費
用の分配、異なるユーザーの間の費用の分配に用いられ、ユーザユニットを用いる場
合、ユーザーは、ユーザユニットから前記マークを選択的にアクティベートする。
【事例分析】
公知例との相違点は以下の2点
① ユーザマークモジュールに2個のマークを分配する。
② 上記2個のマークをそれぞれサービスおよびプライベート電話の費用の分配、異な
るユーザー間の費用の分配に用いる。
⇒ 請求項の発明は、便利に費用分配を行うという効果を有するが、異なる費用分配関
係のために、異なる代表マークを指定することによって実現されるのであり、従来技術
に技術貢献をすることはない。 従って、請求項の全体の発明は従来技術に対して特許
法第22条第3項に規定の進歩性を有していない。
51
審査操作規定(第九章)4.2.2(審査方式例) 事例
3.その他の方面の審査
発明の実質がビジネス規則であるという問題を回避する
ために、請求項、特に独立請求項に該システムに含ま
れる各コンピュータハードウェア設備(装置)のみを列挙し、
これらのコンピュータハードウェア設備(装置)がビジネス
作業の完成に起こした作用(機能)を実現する限定特徴
を削除する場合がある。
⇒ 請求項が明細書のサポートを得られなくなる。
52
審査操作規定(第九章)第5節(「方法と製品が相互に対
応」する状況の審査) 事例
コンピュータプログラムによって実現する発明
→通常は方法請求項で保護を図るが、機能モジュール構造の製品請求項も度々
存在する。
→機能モジュール構造の製品請求項の形式でコンピュータのプログラムフロー
の保護を図ることもある。
↓
審査指南第二部第九章5.2
→製品請求項が明細書中のコンピュータのプログラムフロー、又は該コンピュータ
のプログラムフローを反映した方法請求項の各ステップと完全に対応一致する方
式に基づいて作成されている場合のみ、この種の製品請求項を実体装置ではなく、
機能モジュール構造形式の製品として理解する旨、規定されている。
↓
製品クレームと、明細書中のプログラムフローまたは方法請求項の各ステップと
完全に対応一致するか否かがポイント!
53
審査操作規定(第九章)第5節(「方法と製品が相互に対
応」する状況の審査) 事例
コンピュータプログラムに係る発明の製品請求項の審査の手順
コンピュータプログラムに係る発明の製品請求項が
a.該製品請求項が機能モジュール構造形式の製品請求項か
b.通常の意義の製品請求項か(保護客体とならない)
a. 該製品請求項が機能モジュール構造形式の製品請求項の場合
請求項を総体とみなし、その構成部分と明細書中のコンピュータの
プログラムフロー又は方法請求項の各ステップとの間が完全に対応
一致しているか否かを判断
完全に対応一致する作成方式とは・・・
製品請求項と方法請求項の主題の名称(又は明細書中のコンピュータ
のプログラムフローに対する説明)が対応しており、製品請求項中の
各構成部分と方法請求項(又は明細書に記載されているコンピュータ
のプログラムフロー)の各ステップ及びその執行順序が対応している
製品請求項がコンピュータのプログラムフローの各ステップと完全
に対応一致する方式によらずに、又は該コンピュータのプログラム
フローを反映した方法請求項と完全に対応一致する方式によらずに
作成されている場合
製品請求項が専利法第 26 条第 4 項の規定に適合するか否かを審査
54
審査操作規定(第九章)5.1(完全に対応一致する状況)事例
請求項1:
請求項2:
一種のテキストマージ方法であって、
一種のテキストマージシステムであって、
複数の行を含む1つ目のテキストを提供し、各行には呼応する 複数の行を含む1つ目のテキストを提供し、各行には呼応する
文字列識別データの一列について少なくとも1つのデータ域が 文字列識別データの一列について少なくとも1つのデータ域が
含まれ、
含まれる第一装置と、
呼応する該列の該文字列識別データが2つ目のテキストの中 呼応する該列の該文字列識別データが2つ目のテキストの中
にあるか否かを判断し、
にあるか否かを判断する第二装置と、
該文字列識別データが該2つ目のテキストの中にある場合に 該文字列識別データが該2つ目のテキストの中にある場合に
は、該2つ目のテキストの1行目の中の呼応する文字列識別 は、該2つ目のテキストの1行目の中の呼応する文字列識別
データの該列のデータを該1つ目のテキストの該1行目の中の データの該列のデータを該1つ目のテキストの該1行目の該列
該列の中に書き込み、
の中に書き込む第三装置と、
該文字列識別データが該2つ目のテキストの中にない場合に 該文字列識別データが該2つ目のテキストの中にない場合に
は、該1つ目のテキストの2行目の中の該列のデータを該1つ は、該1つ目のテキストの2行目の中の該列のデータを該1つ
目のテキストの該1行目の中の該列の中にコピーするステッ 目のテキストの該1行目の中の該列の中にコピーする第四装
プを含む。
置を含む
◆事例分析
製品請求項の主題の名称(テキストマージシステム)は方法請求項の主題の名称(テキストマージ方法)に対応しており、その各
構成ユニットの限定内容も方法請求項の各ステップに対応している。
よって、該製品請求項の作成形式は方法請求項と完全に対応一致しているものと認められる
主
題
の
名
称
と
各
構
成
ユ
ニ
ッ
ト
の
限
定
内
容
が
完
全
に
対
応
し
て
い
る
55
審査操作規定(第九章)5.1(完全に対応一致する状況)事例
請求項1:
一种确定文本匹配的处理方法,包括以下步骤;
請求項2:
一种确定文本匹配的处理系统,包括;
特定字符计数装置,用于对输入文本的所有的字符进行检
对输入文本的所有字符进行检测,并对具有检测目标语言的
测,并对具有检测目标语言的特定字符代码的特定字符进行
特定字符代码的特定字符进行计数;
计数;
出现率计算装置,用于根据由所述特定字符计数装置检
根据检测的特定字符数和所述输入文本的所有字符数,计算
测的特定字符数和所述输入文本的所有字符数,计算特定字
特定字符出现率;
符出现率;
标准出现率存储装置,用于事先存储目标语言的特定字符
存储目标语言的特定字符的标准出现率;
的标准出现率;
比较装置,用于将所述出现率计算装置得出的输入文本的
将输入文本的特定字符出现率与标准出现率进行比较;
特定字符出现率与标准出现率进行比较;
确定所述文本是否相应于具有与所述目标语言相配的特征的 判断装置,确定所述输入文本是否相应于具有与所述目标
文本。
语言相配的特征的文本。
◆事例分析
製品請求項は文字表現において、方法請求項と多少違いがあるものの、この種の表現形式は文字表現の必要性によるも
のに過ぎず、その実質的な技術内容には影響せず、この2つの請求項は作成形式上、完全に対応一致するものと理解しな
ければならない。
多
少
違
い
が
あ
る
が
、
実
質
的
な
影
響
が
な
く
完
全
に
対
応
と
み
な
さ
れ
る
56
審査操作規定(第九章)5.2(完全に対応一致しない状況)事例
請求項1:
請求項2:
一種のネットワーク印刷を実現するために用いる方法であって、
一種のデジタル印刷システムであって、
ステップA、
Aを実現するために用いる装置、
ステップB、
Bを実現するために用いる装置、
ステップC
Cを実現するために用いる装置
を含むシステム。
を含むシステム。
◆事例分析
1.方法請求項1の主題の名称及び明細書中に記載されているソリューションはいずれも「一種のネットワーク印刷を実現
するために用いる方法」であり、それと製品請求項2の主題の名称である「一種のデジタル印刷システム」には完全な対応一
致の関係は存在せず、請求項2の「一種のデジタル印刷システム」が「一種のネットワーク印刷を実現するために用いる方法」
の請求項1又は明細書中のプログラムのフローの説明と対応していると理解することはできない。
2.請求項2は明細書によって支持されておらず、専利法第26条第4項に適合しないことを理由とする審査意見を示さなければな
らず、それとともに、補正の方向性を明示することができる。例えば、出願人が該請求項の主題の名称を、方法請求項の主
題の名称又は明細書中のコンピュータのプログラムフローに対する説明に対応するよう補正した場合、明細書によって
支持されていないという欠陥を克服することができるという点を指摘する等が挙げられる。
主
題
の
名
称
が
不
一
致
。
補
正
に
よ
る
対
応
は
可
能
。
57
審査操作規定(第九章)5.2(完全に対応一致しない状況)事例
請求項1:
一種の一組のウェブページの事前確
定によるパスの再生方法であって、
請求項2:
請求項3:
請求項4:
一種の一組のウェブページの事前確定によるパスの再生システムであって、
……のために用いるデータベース、
……のために用いる再生装置、
処理装置は
リクエスト履歴の中から、呼応する
保存されたURLのリクエストを選択
し、そのうちの前記リクエスト履歴
はデータベース上に記憶され、
リクエスト履歴の中から、呼応する保
リクエスト履歴の中から、呼応する保存されたURLのリクエストを選択し、そ 存されたURLのリクエストを選択し、
のうちの前記リクエスト履歴はデータベース上に記憶され、
そのうちの前記リクエスト履歴は前記
データベース上に記憶される装置と、
保存されたリクエストがスタート
URLのリクエストである場合、ス
タートURLをターゲットURLとして
選択し、
保存されたリクエストがスタートURL
保存されたリクエストがスタートURLのリクエストである場合、スタートURL のリクエストである場合、スタート
をターゲットURLとして選択し、
URLをターゲットURLとして選択する
ために用いる装置と、
前記ターゲットURLに再生リクエス
トを発することを含む。
前記ターゲットURLに再生リクエスト
前記ターゲットURLに再生リクエスト
前記ターゲットURLに再生リクエスト
を発するステップを執行するために
を発するステップを執行する。
を発するための装置を含む。
用いる処理装置を含む。
請求項2は一種の再生システムの保護を
請求しており、再生システムが執行する方
法・ステップによって限定されており、この
限定は実現することができるすべての方
式を概括している
◆事例分析
→クレームは実現することができるすべて
請求項2~4はいずれも26条4項違反 の方式を概括しているが、明細書中で
の指摘を受ける可能性がある
は、コンピュータのプログラムフローを使
(請求項2,3はサポート要件違反、請求 用して前記方法を実現する特定の方式を
項4は不明瞭)
公開しているだけであり、当業者は明細
書の内容に基づき、明細書中で言及さ
れていないその他の同列の代替方式を
採用して同じ方法を実現できることを理
解することはできない
→明細書にサポートされていない
請求項3は一種の再生システムの保護を
請求しており、そのうち、該請求項中の処
理装置は方法・ステップによって限定され
ている。よって、該請求項は機能モジュー
ル構造形式の製品請求項であると理解す
べきではなく、処理装置の方法に対する
限定は前記方法を実現することができる
すべての方式を概括していると理解すべ
きである。
→請求項2と同じ理由により、請求項3も
同様に明細書にサポートされていない
請求項1の方法の各ステップと完全に対
応一致する機能モジュール方式に基づい
て記述されているが、請求項は全体とし
て、実体部品と機能モジュールの構造
部品を結び付ける方式で記述されている
ため、該請求項は方法請求項1と完全に
対応一致する機能モジュールの構造形
式の製品請求項であると認めることは
できない
→実体部品と機能モジュールの構造部品
が含まれるが、機能モジュール構造が
保護するものはコンピュータプログラム
によって実現される本発明の制御方法
であり、該制御方法のハードウエアの実
体装置を実現するものではない。よって、
請求項4ではそれが保護するものが製品
なのか或いは方法なのかが明瞭に示され
ておらず不明瞭
主
題
の
名
称
が
不
一
致
。
補
正
に
よ
る
対
応
は
可
能
。
58
審査操作規定(第九章)第6節(十分な公開にかかる審査)事例
1.十分な公開に関する法的根拠
専利法第26条第3項では「明細書では、発明又は実用新案に対
し、その所属技術分野の技術者が実現できることを基準とした明
確かつ完全な説明を行わなければならない」と規定している。
明確かつ完全な説明=十分な公開
基準:当業者が実現可能
審査指南第2部分第2章2.1.3節では「審査官がもし、発明又は
実用新案では十分な公開の要件を満たしていないことを疑う合理
的な理由があれば、出願人に釈明するよう要求しなければならな
い。 」と明確している。
十分な公開であるか否かは審査の項目
十分→パス
審査
十分である場合→パス
結果
十分ではないと思われる場合→釈明
非十分→拒絶
59
審査操作規定(第九章)第6節(十分な公開にかかる審査)事例
審査指南第2部分第9章5.1節では「コンピュータプログラムに
係わる発明専利出願の明細書は、全体的に当該発明の技術方案を
記載しなければならないことに加えて、当該コンピュータプログ
ラムの設計思想、その技術的特徴及びその技術的効果を達成する
ための実施形態を明瞭、完全に記述しなければならない。」と規
定している。
設計思想
技術的特徴
技術的効果
実施形態
明瞭、完全に記述
60
審査操作規定(第九章)第6節(十分な公開にかかる審査)事例
2.コンピュータプログラムに係る発明が十分に公開されているか否かの審査
に関する原則
その他の技術分野の発明が十分に公開されているか否かの審査と同じ
(1) 明細書においては単に、任務及び/又は発想を記しているか、若しくはある願望及び/又は結果
を示しており、属する技術分野の技術者が実施できる技術的手段を一切記していない場合。
(2) 明細書には技術的手段を記しているが、属する技術分野の技術者にとっては、その手段が曖昧
であって、明細書の記載内容に基づきも具体的に実施することができない場合。
(3)明細書には技術的手段を記しているが、属する技術分野の技術者は当該手段を利用しても、発
明又は実用新案で解決しようとする技術的問題を解決できない場合。
(4) 出願の主題は複数の技術的手段からなる技術方案であり、その中の1つの技術的手段について、
属する技術分野の技術者は明細書の記載内容に基づいて実現できない場合。
(5)明細書に具体的な技術方案を記しており、実験上の証拠の記載がないに拘わらず、当該方案は
実験の結果により裏付けられてはじめて成立する場合。例えば、既知の化合物の新規用途の発明に
ついて、該用途と効果を裏付ける実験上の証拠を明細書に記する必要がある。そうでなければ、実
現できるとの要件を満たすことができない。
61
審査操作規定(第九章)6.1.1(十分な公開の要件)事例
3.改良がコンピュータプログラムのみの発明に関する審査
十分な公開の要件
審査規定では「当業者が明細書に記載されているプログラムフロー及びその
説明に基づき、前記技術的効果を達成し得るコンピュータプログラムを編成
し得るか否かを審査しなければならない。」としている。
当該コンピュータプログラムの設計思想、その技術的特徴及びその技術的効
果を達成するための実施形態を明瞭、完全に記述しているか否かを審査する
際、当該実施形態については、当該発明の技術的効果を実現するコンピュー
タプログラム自体(即ち、ソースプログラム又はターゲットプログラム)の
記載は求められない。
実施形態
プログラムフローを基礎とし、該プログラムフローの時間を
順序として、各ステップについて記述すること。
62
審査操作規定(第九章)6.1.1(十分な公開の要件)事例
フロー図に基づく説明は必要ある
フロー図あり?
あり
なし
当業者が明細書の文字部分の記述に基づき、発明の技術的効果を達成し
得るコンピュータプログラムを編成することができるか否か?
できない
公開不十分
できる
公開十分
フロー図が欠けている
ことのみを理由として、
明細書の公開が不十分
であるという審査結論
を下してはいけない。
63
審査操作規定(第九章)6.1.1(十分な公開の要件)事例
「CRTスクリーン上のキャラクターに対するカーソル制御」
情報を入力
カーソルレベルと垂直移動の開始位置をH/Vの開始位置の記憶装置に記憶させる
カーソルレベルと垂直移動の終点位置をH/Vの終点位置の記憶装置に記憶させる
カーソルの現在のレベルと垂直方向アドレスをカーソルの位置の記憶装置に記憶させる
フロー図
カーソルの現在のレベル
と垂直位置を、その水平及び垂直方向
の終点の位置の座標と比べる
小さい
カーソルの位置の記憶装
置中に記憶された水平及
び垂直位置について、1
つのキャラクターの位置
に基づき、1つ増やす
大きい
カーソルの位置の記憶装
置中に記憶された水平及
び垂直位置について、1つ
のキャラクターの位置に
基づき、1つ減らす
等しい
H/Vの起点の記憶装置中に
記憶された水平及び垂直
方向の開始位置のアドレ
スを、カーソルの位置の
記憶装置にセットする
前記カーソルの位置の記憶装置中の記憶状態に基づき、ディスプレイに現在の位置を表示する
64
審査操作規定(第九章)6.1.2(十分に公開されていない)事例
十分に公開されていない状況
理由:当業者が技術的効果を実現するコンピュータプログラムを編成できない
(1)明細書の添付図面でコンピュータプログラムに関連する主な技術的特徴の
主要フロー図を示しておらず、明細書においても相応の記述がなされていない
ため、当業者が実施できない状態を招いている場合。
(2)明細書の添付図面で主要フロー図を示しているものの、明細書で該フロー
図に対する具体的な記述を行っていないか、又は記述があいまいであり、当業
者が具体的に実施できない状態を招いている場合。
(3)明細書の添付図面で示した主要フロー図が明細書の文字による記述部分と
相互に矛盾しており、当業者がフロー図に従って具体的に実施すべきか、或い
は文字による記述に従って具体的に実施すべきか判断できないという状態を招
いている場合。
65
審査操作規定(第九章)6.1.3(マークアッププログラミング
言語の抜粋に関する考慮)事例
マークアッププログラミング言語の抜粋
各ステップに対する記述
自然言語
中国語
英語
フランス語
BASIC言語
人工言語
プログラミング言語
C言語
マークアッププログラミング言語の使用について
一部の要となる部分のソースプログラムを簡潔に抜粋して参考に供すること
公開が十分であるか否かを判断するために用いる審査の根拠とすること
請求項が明細書によって支持されているか否かを判断するための審査の根拠とすること
OK
NG
その他の実質的な条件を判断するための審査の根拠とすること
66
審査操作規定(第九章)6.1.3(マークアッププログラミング
言語の抜粋に関する考慮)事例
明細書文字部分の記載内容
準じる
マークアッププログラミング言語
事例
≠
ソースプログラムの内容
明細書文字部分の記載内容
「コンパイル生成表」機能の擬似コード
CreateCompileLists( ){
for each A in ChangeList {
if (A.PropertyName= =Interface){
InterfaceCompileList.Add (A);
AddClients (A);}
else if (A.PropertyName= =Implementation){
if (IsInLine= =True){
InterfaceCompileList.Add (A);
AddClients (A);}
else if (IsInLine= =False){
ImplementationCompileList.Add (A);}}}}
67
審査操作規定(第九章)6.1.3(マークアッププログラミング
言語の抜粋に関する考慮)事例
4.改良がコンピュータプログラムだけにとどまらない発明に
関する審査
コンピュータプログラム
+ コンピュータ装置のハードウエア構造等
上述の原則で審査
一般原則で審査
(審査指南第2部第9章5.1の規定)
公開十分?
総体判断
コンピュータプログラムの執行に当たって、その他の特定の技術的手段に依存
68
審査操作規定(第九章)6.2(改良がコンピュータプログラム
だけにとどまらない発明)事例
請求項
明細書
一種の3D画像形成方法であって、スキャニング装置によって原1D画像データをスキ
ャンするとともに、それをデータ記憶装置内に記憶し、1Dから3Dへの画像変換装置
を介して、前記1D画像データを左眼画像と右眼画像を含む3D画像データに変換し、
変換後の3D画像データを3D画像データ記憶装置内に記憶させ、中央コントロールユ
ニットによって3D画像データを読み取るとともに、3D画像投影装置に転送して3D画
像を表示するというステップを含む3D画像形成方法。
一種の1D画像データに基づいて3D画像を形成する方法であって、スキャニング装置
によって原1D画像データをスキャンするとともに、それをデータ記憶装置内に記憶し、
1Dから3Dへの画像変換装置を介して、前記1D画像データを左眼画像と右眼画像を含
む3D画像データに変換する。この変換過程はコンピュータプログラムを通じて、特定
のアルゴリズムを執行して実現するものである。その後、変換後の3D画像データを
3D画像データ記憶装置内に記憶させ、最後に中央コントロールユニットによって3D
画像データを読み取るとともに、3D画像投影装置に転送して3D画像を表示する。該
3D画像投影装置には、3D画像プロジェクター、前記3D画像を受け取るスクリーン、
それぞれ異なる偏光方向の左右偏光レンズを備えた偏光メガネが含まれる。うち、前
記プロジェクターには、光源、前記左眼画像と右眼画像の偏光方向が互いに異なるよ
うにするための調整装置、前記左眼画像と右眼画像を前記スクリーン上で引き伸ばす
ための投影レンズが含まれる。これによって、単独のプロジェクターで3D画像を提供
することができる。
69
審査操作規定(第九章)6.2(改良がコンピュータプログラム
だけにとどまらない発明)事例
事例分析
そのうちの1D画像データの3D画像データへの変換はコンピュータのプロ
グラムフローを通じて、特定のアルゴリズムを執行して実現するもの
+
専用の3D画像投影装置をも提供するもの
プログラムフローの執行は改良したハードウエア構造に依存
改良がコンピュータプログラムだけにとどまらない発明
プログラムフロー
ハードウエア構造
( 3D画像投影装置の内部構造)
公開十分?
公開十分?
70
まとめ
改良がコンピュータプログラムのみの発明
フロー図ありの場合
フロー図+文字記述
フロー図なしの場合
文字記述
当業者が明細書の文字部分の記述に基づき、発明の技術的効果を達成し
得るコンピュータプログラムを編成することができるか否か?
マークアッププログラミング言語
参考可(判断対象とならず)
改良がコンピュータプログラムだけにとどまらない発明
コンピュータプログラム
+
コンピュータ装置のハードウエア構造等
総体判断
プログラムフロー
ハードウエア構造
公開十分?
71
審査操作規定(第九章)第7節(補正文書の審査)
7.1(機能モジュール又は機能モジュール構造を追加した製品
の請求項)事例
◆【原出願書類の記載】
一種のコンピュータプログラムによって実現するネットワークコンテンツの引用自動確定方法
◆【原請求項1】・・・方法請求項
◆【補正】・・・構造請求項5の追加
一種のネットワークコンテンツの引用自動確定方
法であって、
①コンテンツ読み取りユニット:指定の確定待ち
のコンテンツが引用されたネットワークコンテン
ツであるか否かを読み取る
②コンテンツ収集ユニット:Webクローラ技術を
利用し、ネットワーク中の全部又は一部のコンテ
ンツを収集する
③引用分析ユニット:収集したネットワークコンテ
ンツと指定のネットワークコンテンツを対比分析
し、引用関係が存在するか否かを判断する
というステップを含む
一種のネットワークコンテンツの引用自動確定シス
テムであって、
①コンテンツ読み取りユニット:指定の確定待ち
のコンテンツが引用されたネットワークコンテン
ツであるか否かを読み取る
②コンテンツ収集ユニット:Webクローラ技術を
利用し、ネットワーク中の全部又は一部のコンテ
ンツを収集する
③引用分析ユニット:収集したネットワークコンテ
ンツと指定のネットワークコンテンツを対比分析
し、引用関係が存在するか否かを判断する
ことを含む装置
一
致
◆【事例分析】
・追加された装置請求項5は方法請求項1と完全に対応一致する。
・当業者は方法請求項1のステップから、直接的に、少しの疑問もなく前記ステップを実現する上で必ず
構築しなければならない各機能モジュールを確定することができる。
・専利法第33条の規定に適合する。
72
審査操作規定(第九章)第7節(補正文書の審査)
7.2(機能モジュールの合併又は分解)事例
◆【原出願書類の記載】
一種の画像コーディング方法と対応する機能モジュールからなる装置
◆『予測ユニット』の原記載・・・単一機能
◆【補正】・・・ 『予測ユニット』を2つに分解
現在のフレームと前のフレームとの間の運動ベク
トルをチェックするとともに、
現在のフレームと前のフレームとの間の運動ベクト
ルのチェックに用いる運動ベクトルのチェックユニッ
ト、
前記運動ベクトルを利用して該前のフレームに対
して動き補償を行うことで予測された現在のフレー
ムを得るために用いる動き補償ユニット
前記運動ベクトルを利用し
て前のフレームに対して動き補償を行うことで、予
測された現在のフレームを得るために用いる現在
のフレームの予測ユニット
◆【事例分析】
・原出願書類中に記載された一つの機能モジュールを、その機能に基づいて複数のサブ機能モジュール
分解した補正。
・分解した後の複数のサブ機能モジュールの機能の和には、補正前と比べて変化が生じていない。
(補正前後の関連する機能モジュールの機能には変化が生じていない。)
・各機能の執行順序にも変化は生じていない。
・専利法第33条の規定に適合する。
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審査操作規定(第九章)第7節(補正文書の審査)
7.2(機能モジュールの合併又は分解)事例
◆『処理モジュール』の原記載・・・単一
◆【補正】・・・ 『処理モジュール』を分解
パッケージを開いた後のIPメッセージを併せて、
通信路の復号モジュールについて、パッケージを
開いた後のIPメッセージを併せて復号を図り、
音声処理モジュールについて、複数の音声がつな
がったサービスメッセージを形成する
複数の音声がつ
ながったサービスメッセージの処理モジュールを形
成する
◆【事例分析】
・補正後の通信路の復号モジュールと音声処理モジュールの機能の和には、補正前の処理モジュール
の機能と比べて変化が生じている。すなわち、「通信路の復号」という機能が追加されている。
・当業者が原出願書類に記載されている情報の中から、もとの処理モジュールは前記「通信路の復号」と
いう機能を備えていることを直接的に、少しの疑問もなく確定できない場合、この種の補正は認められな
い。
・専利法第33条の規定に適合しない。
※機能に変化が生じている場合の他、機能の順序に変化が生じている場合も、同様に第33条(補正の
制限)の規定に適合するかの判断が必要。
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