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活躍する同窓生
Vol.1
1
まもなく世界自然遺産に登録されようとしている
知床を自然に対するスタンスの学びの場に
財団法人 知床財団
事務局次長 主任研究員 岡田秀明
さん
獣医学科 1992(平成4)年卒業
初秋の知床に、知床財団の岡田秀明さんをお訪ねしました。
知床半島は、北海道の東北端に位置する半島で、その中央部以先の約3.8万haが知床
国立公園に、また、知床国立公園の特別地域を含む約4.4万haが国指定知床鳥獣保護区
に指定されています。
知床財団は、知床国立公園を中心とした地域の自然環境に関する調査研究、自然保護思
想の普及啓蒙等の事業を行い、広く国民の自然保護思想の高揚と自然利用の適正化に寄
与することを目的として1988年斜里町によって設立され、現在、職員数は26名。その中で、
岡田さんは事務局次長として、保護管理部門を担当し、年間500件におよぶクマ対応出動
をとりまとめる等、知床のクマ問題を一手に引き受ける第一人者として活躍しています。
Q.酪農学園大入学のきっかけは?
A.子供のころからキャンプが好き
で、中学のころから始めた写真の被
写体に野鳥を撮るようになり、将来
は生き物に関わる仕事をしたいと
思い獣医師を志したことと、北海道
へのあこがれですね。
Q.学生時代は?
A.4年生になる前に大学を1年間
休学してアラスカに野生動物の写真
を撮りに行き、スケールの大きな自
然に魅せられました。今思うと、学
生時代は、なんだかゆったりした時
間を過ごしていたような気がします。
Q.この仕事をするきっかけは?
A.知床に強い思い入れがあったわ
けではなく、偶然、臨時職員として
この仕事に携わることになり、現場
でアクションを起こすスタッフのあ
まりの少なさに驚き、この仕事を続
けていくことになりました。体制が
十分だったら続けていなかったか
もしれません。
Q.世界自然遺産に登録されたら?
A.まず、地域の経済効果は上がる
でしょう。取材の申し込みも世界中
から来るようになりましたしね。た
だ、多くのビジターを受け入れる体
制がまだ整っていないのが現状で、
オーバーユース(過剰利用)により、
ビジターによる踏圧、クマのいる中
での人の安全確保など、現場と自然
環境の両方がパンクしてしまわない
よう体制の整備が必要です。
逆に、これを機に、今までできな
かったことを改善していくきっかけ
になればありがたいことです。
Q.目指していることは?
A.知床は、海岸から高山まで狭い
地域にクマ、オオワシ、そしてサケ
など、食う・食われるのドラマが目
の前で、わかりやすい形で、繰り広
げられている貴重な場所です。生命
の循環を目の当たりに勉強できるこ
のダイナミックな状態を末長く壊さ
ないで残したい。
また、日本では、野生動物との関
わりを学ぶ機会が少ないので、例え
ば、クマ牧場のクマには餌を買って
与えるのに、野生のクマには、なぜ
餌を与えてはいけないのかなど、動
物園の動物と野生動物との違いが
認識できていません。そのようなこ
とを教育し、普及する活動と、動物
と人とのあつれきを抑える働きが
求められています。
知床で、たくさんの人が自然に対
するスタンスを学び、ここで学んだ
ことを、人々がそれぞれの地域に持
ち帰って広げる。知床がそんな学び
の場になればいいですね。
* * * *
酪農学園大学は、2005年4月から
環境システム学部に、自然や生命の
仕組みを科学的に捉え、問題解決へ
の明確な指針を発信することを目指
して生命環境学科を新設、また、人
間活動と環境との多彩な関わりを総
合的な視点で探求することを目指し
て地域環境学科を新編成します。
本学を巣立っていく学生が、将来
この分野でも大切な役割を担ってい
くことがますます期待されます。
新しいヒグマ捕獲オリの説明をする岡田さん
プロフィール
1965年9月19日生 39歳
群馬県出身 妻と2人の子供の4人家族
趣味は、写真撮影
フレペの滝・遊歩道で出会ったエゾシカの群れ。すぐそばに野生の世界があった。