読書会に来ませんか?

読書会に来ませんか?
眞鍋由比
2014年…40年ぶりに『ベルサイユのばら』の続巻が出版され(うちも所蔵して
いますよ)、名優ロビン・ウィリアムズと女流推理作家P・D・ジェイムズが亡
くなった年でした。が、松蔭中高図書館にとってなによりも史上初めての読書会
が行われた年!
読書会の良いところはいろいろな意見が聞けるところ。自分では気づかなかっ
た点に気づかされるところです。12月6日に奈良での読書会コーディネーター養成
講習会に行ってきました。講師は山元隆春先生(広島大学大学院教育学研究科教
授)。最初広島大学から奈良に来られたということで奈良というと『あをによし
鹿男』ですねえ。大阪は『プリンセス・トヨトミ』、京都は『鴨川ホルモー』、
滋賀は『偉大なるしゅららぼん』…あれ、神戸は?と言われ、万城目さんに、神
戸を舞台にぜひひとつ小説を書いてほしいと思いました。うん、でも土臭い感じ
というか地に足がついた雰囲気が万城目さんの持ち味だから神戸は無理かな。明
石とか姫路のほうがいいかもしれない。
とにかく、理論の説明のあと、詩・絵本・短編小説で実際に読書会を参加者同
士で体験し本当に面白かった。詩は、谷川俊太郎の「手紙」のグループだったの
ですが、第二連のところ、ハンドバックをまわすあなた、チャップリンの真似を
するぼく、二人でピザを食べるんですがこの三つは三つとも「回る」イメージが
ある、といった人がいて、へぇとうなった。チャップリンの「回る」イメージっ
てステッキなのか、モダンタイムズなのか、聞きそびれたんだけど。「手紙」が
男女の詩だとオーソドックスな意見だったけど、今の読者なら男同士、女同士も
ありうる組み合わせではないかとうちのグループは結論しました。時代や世代に
よって読み方が変わっていく。
次は絵本。先生が選ばれた絵本がまたどれも素晴らしいもので、確かに面白い。
私は『名前のない人』オールズバーグのグループに入ったのですが、大筋のこと
はみんなの意見に同意するものの、細かいところで気づかなかったところ、たと
えば名前のない人の靴ひもはいつも結ばれていない。結んだことがないのだ。人
間でないから?などと絵本の端までしっかりみている人の話、読み飛ばしがちな
私にはありがたかった。表紙の彼はちょっと堺雅人ににているかしら、とも思い
ましたが。
さて、短編小説は「灯台」。イタリアの少年が避暑で訪れたウェールズの灯台
守に出会う。すごく歓待してもらったのに、次の年にに難民として再びその地に
行ったとき、灯台守には自分のことがわからなかったという話。思春期の成長と
挫折、あるいは若者と老人の成長と衰退のクロスラインなど概ねの読みどころは
一致するのですが、ここでも、もしかしたら老人は最初から少年を個別に認識な
どしていなかったのではないか?彼に出身地を一度質問しただけで後はずっと自
分の仕事の話ばかり。人の話をきかない人っているから。という意見がでました。
そう、老いたから少年の顔がわからなかった、とか、一年目と違う苦労が少年の
面差しを変えたからといういささか「常識的・教育的?」な解釈よりも、自由な
意見が面白かった。読書会は読書教育の一環だけど「正解はない」という態度で
臨むのが正解。そして決して相手の言ったことを否定しないのが肝。
理論だけを聞いて帰ったらたぶん私はずっと舟を漕いでいたことでしょう。実
際に読書会に参加することで「気づき」をシェアする楽しさを実感できました。
うちの読書会では2時間としていますが、先生のおっしゃるようにもっと短いほう
が集中していいかもしれない。日程や課題図書選定とともに検討課題の一つとし
ましょう。
会ではブックトークの例として出された一連の本の紹介も本当に興味深く、家
に帰ったら読まなくてはとメモしたものが多々ありました。またうちの蔵書に加
えていきますからお楽しみに。そして3月には第3回読書会。ご期待ください。
さてブックトークの例にでてきた『三びきのこぶた』のバリエーション。一匹目、二匹目が
食べられてしまうけど、それを食べた狼を食べる三匹目の話は残酷?いや、狼側からの供述も。
『三びきのコブタのほんとうの話』(ジョン・シェスカ文)では被害者としての狼の姿が見ら
れます。同じ話なのにね。ブタと狼の立場を単に入れ替えたものもあります。ブタ、怖かった。