南西諸島南東海域における琉球海流系の観測 1 はじめに 2 使用データ 3

南西諸島南東海域における琉球海流系の観測
○三浦貴博 1 ・朱小華 1 ・韓仁盛 2 ・小浜和公 1 ・市川洋 1 ・市川香 1 ・根田昌典 1
・竹内謙介 1 ・吉川泰司 3 ・石坂丞二 4 ・金子郁雄 5
(地球観測フロンティア 1 ・韓国水産科学院 2 ・JAMSTEC3・長崎大水産学部 4 ・長崎海洋気象台 5 )
キーワード: 南西諸島南東海域・琉球海流系・中規模渦・流量流速
1
はじめに
している。この北上流の存在は沖縄本島南東観測線 (OS
線) や奄美−沖縄東方観測線 (E 線) でも示唆されている。
日本南岸海域を流れる黒潮は、太平洋における最大の
各観測線における地衡流流量は 2000 db 基準で、AE 線
西岸境界流であり、その流量の大きさから北太平洋にお
の AE08 以北では 18.5 ∼ 26.5 Sv、OS 線では 1.0 ∼ 9.5 Sv
ける熱輸送に関して大きな役割を果たしているとともに、
でいずれも北向きであった。また E 線では、1000 db 基
気候変動に関しても大きな影響を与えていると考えられ
準で 9.5 ∼ 12.0 Sv で北西向きあった。
ている。本州南岸や東シナ海において多くの黒潮観測が
な お 、「 み ら い 」航 海 で は 船 底 ADCP に よって
AE10∼AE14 で西南西へ向かう 100 cm/s 以上の強い流
れが観測された。このことは、AE 線ではおおむね北向
きの流れであるが、渦の影響で一部に南向きの流れがあ
らわれる時期があることを示している。
なされている。しかし、黒潮流量の半分程度を担ってい
ると考えられている南西諸島南東海域の北上流(琉球海
流系)に関しては、中規模渦と琉球海流系の相互作用他、
不明な部分が多い。このため、地球観測フロンティア研
究システム・気候変動観測研究領域・日本沿海予測実験グ
29˚N
30
1000
00
40
28˚N
5000
60
0
0
10
00
00
20
00
30
00
40
0
27˚N
0
50
50
0
PIES(圧力計付倒立式音響潮位系)、係留型 ADCP、係留
流速計を用いた係留観測を行うとともに、CTD/LADCP、
船底 ADCP 等の海洋観測を行っている。今回は、2002 年
春から秋に行われた 3 回の南西諸島南東海域の海洋観測
結果について報告する。
00
ループでは 2001 年 11 月より南西諸島南東海域において
0
6000
00
40
3000
26˚N
2000
1000
解析には 2002 年 5 ∼ 6 月に行われた海洋科学技術セ
0
使用データ
20
0
2
25˚N
127˚E
128˚E
129˚E
130˚E
131˚E
132˚E
ンター観測船みらい、2002 年 9 月に行われた長崎大学
練習船鶴洋丸および 2002 年 10 月に行われた長崎海洋気
図 1: 観測点分布
象台長風丸による CTD/LADCP、XBT、XCTD 及び船底
ADCP 観測データを用いた。図 1 にこれら 3 航海におい
て行った観測点を示す。• は 3 航海で行った CTD/LADCP
AE01
0
AE03
AE09
AE11
AE13
AE15
22
20
18
16
15
500
た XBT 観測点、F は 3 航海で行った CTD/LADCP 観測
14
12
10
Depth (m)
ある。
(なお、これらの PIES は 2002 年 12 月に回収され
AE07
24
または XCTD/XBT 観測点、 はみらい航海のみで行っ
点で、さらにみらい航海において PIES を設置した点で
AE05
8
6
5
1000
4
ている。)また、同時に船底 ADCP 観測も行った。
1500
3
解析結果
0
20
40
60
80
100
120
(nautical miles)
図 2 に 6 月の「みらい」航海で得た奄美大島南東観測
線 (AE 線) の水温断面を示す。この図は AE03 から AE07
の 1000 m 以深の層に北上流が存在していることを示唆
図 2: 6 月「みらい」航海における AE 線での水温断面図