書評 「パートナーと100%気持ちが通じ合う10の法則」 原題は直訳すれば、「彼の必要、彼女の必要」。副題が、「夫婦関係を不倫から守る秘訣」で ある。かゆい所に手が届くように、夫婦の互いへの期待の違いを説明している。著者はクリス チャン・カウンセラーとして文字どおり何千組ものカップルの相談に乗ってきた。その二十年以 上の経験に基づいて、不倫という激震に見舞われた夫婦の特徴は、互いの必要を満たしあってい ないことであるという結論が導き出された。 妻が夫に期待する五つの要求とは、以下の五つである。 1 愛情・・・・心のつながりを感じられるメッセージがほしい 2 会話・・・・愛されていることを実感できるコミュニケーション 3 誠実さと率直さ・・・・この安心感があってこそ愛が深まる 4 経済的安定・・・・私と子どもを十分に養ってほしい 5 親子の交流時間・・・・彼には尊敬される父親になってほしい 逆に、夫が妻に期待する五つの要求とは、以下の通り。 1 性的充足・・・・愛するからこそ、心も体も満たされたい 2 遊び仲間・・・・楽しいことは二人でエンジョイしたい 3 魅力的である・・・・一緒に歩いて楽しい女性でいてほしい 4 内助の功・・・・やっぱり「亭主関白」気分を味わいたい 5 賞賛の声・・・・愛する人に敬われたい 男女が結婚生活に抱く期待が100%違うということではなく、男女では優先順位が異なるとい う意味である。「このリストは、私には当てはまらない」という人がいるかもしれない。あくま で一般的な傾向だから。夫だって妻との会話を望むし、妻だって夫が身綺麗にしていてほしいと いう気持ちはある。 相手の必要をよく知りそれを満たすように努力しているなら、相手も自分の必要を満たしてあ げようという気持ちになる。兵法でも、「己を知り、敵を知らば、百戦危うからず」という。 リストを眺めると、女性にとって、愛情の必要が一番に来るが、男性はまず性的充足が先にな ることに気づく。ハーリの第一法則は、「女性は愛情のないセックスが空しい。男性はセックス のない愛が寂しい」である。 原著では十四章の本が、邦訳では十二章に縮められた。世俗の出版社なので、キリスト教的内 容は残念ながらおおかたカットされている。表題の付け方も大胆で、各章のタイトルも原文にと らわれない翻訳になっている。しかしそれだけに、こなれた読める訳文となった。 訳者は、都内でメディカルクリニックを開業している女医で、全体的に女性向けの装丁。 評者も、本書の内容を気持ちのすれちがいに悩むカップルに紹介して、大変喜ばれた経験があ る。未信者のカップルにも自信を持って勧められる。
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