南木曽 田立不動岩開拓 安八スカイウォールクラブ 田立不動岩は、長野県木曽郡南木曽町田立地 区に位置する。東海地方のハイカーには「田立 の滝」の呼び名で親しまれている人気コースに あり、日本の滝 100 選にも選ばれた「天河の滝」 とともにシンボル的な存在となっている。その ひときわ目をひく岩峰は、国道 19 号線「道の駅 しずも」からも遠望することができる。 きっかけは、瑞浪の“原住民”こと、市川幸 男氏の 1 枚の写真からだった。かつては地元山 岳会が人工登攀のゲレンデとしていたようだが、 いわば時代から置き去りにされた“忘れられた 岩壁“であった。氏はここにオリジナルのフリ ールートを拓くのが長年の夢だったようで、幾人かのクライマーに誘惑をこころみたがすべて失敗に終わって いた。 やがて年月はたち、不動岩のこともすっかりあきらめていたときに、市川氏とわたしは出会った。 2001 年の秋、ひょんないきさつから、わたしはある企業が岐阜県に新設するクライミング施設「安八(あん ぱち)スカイウォール」の管理をまかされることになった。 そのことを知ったときの市川氏の脳裏に、不動岩の夢が再びよみがえったであろうことは、今になれば容易 に想像できる。 氏が安八スカイウォールに通うようになったある日、頃合を見計らったかのように不動岩の話をきりだして きた。1 枚の写真を示しながら、いかにすばらしい岩場であるかを熱く語る氏の想いは充分に理解することは できたが、わたしをコロリとその気にさせたのは壁の中央に走る一筋のクラックだった。後に、記念すべき開 拓 1 号となった「これより木曽路(市川氏の命名)」である。バチバチのハンドサイズと思っていたクラックは、 浅くフレアーしたグルーブだったというオチがつく。ともあれ、多彩で質のよい岩場であることは間違いなか った。それからというものは、年に 2~3 回のペースではあったが、安八スカイウォールの若い仲間たちとの 「開拓実習」と銘うった学習会の場となった。途中、治山工事のための 3 年間の入山禁止はあったものの、2011 年秋にいちおうのエリア完成をみた。 楽しかった開拓の日々をふりかえるとき、エリア完成の達成感よりも「無菌室で育てた若鳥を本来の住処(自 然)に帰すことができた」そんな感慨と喜びが湧いてくる。 2012 年春 記:永井久雄 [南木曽 田立不動岩] 【所在地】長野県木曽郡南木曽町田立 【開拓期間】2003 年~2011 年 【岩質】花崗岩 【スケール】幅約 100m×高さ約 80m 【傾斜】約 80 度 【ルート数】11 本 【ルート概要】クラック、フレーク、カチ、スローパーありの多彩な フェースクライミングが楽しめる。(2~3 ピッチのマルチルート) 【シーズン】3 シーズン 【アクセス】粒栗平までマイカーか JR 田立駅から徒歩。 (R19 の「し ずも道の駅」をすぎ、木曽川を渡ってすぐの信号を左折して、「田立 の滝」の道標にしたがう) 【アプローチ】駐車場から避難小屋まで約 1 時間半。小屋から岩場基 部まで 15 分(不動滝の吊橋を渡らず、背後の小尾根をめざす) ※重要 駐車場の登山道入り口に、「清掃協力費」200 円の徴収ポス トがあります。地元の方が毎朝早くからトイレ等の清掃に来てくれて います。気持ちよく登山するためにもご協力をお願いいたします。宿 泊は、オートキャンプ場(有料)か、避難小屋が利用できます。 【不動岩ルート図】
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