豪州経済は依然として軟調-豪州準備銀行と豪ドル

2015 年 9 月 2 日
豪州経済は依然として軟調-豪州準備銀行と豪ドルによる一段の下支え
が必要
要点
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豪州の経済成長率は前年同期比で+2%と軟調です。経済
のリバランスが進んでいますが、トレンドを下回る成長が続く
と予想されます。
トレンドを下回る成長が続くと、豪州準備銀行(RBA)の追加
利下げが促される可能性が高く、豪ドルは 0.60 米ドル付近
に向かっています。
最近の企業決算は経済状況を反映しており、資源セクター
の業績は低調ですが、産業セクターはまずまずの増益とな
っています。この状況は今後も続くと見込まれます。
ただし、これによって豪州の厳しい現状が変わることはないでしょう。
資源投資は国内総生産(GDP)の約 2%から 6%に増加した後、大
規模プロジェクトの完了に伴って現在は急速に減少しています。こ
れにより、年成長率が約 1%ポイント押し下げられています。それを
相殺するには、他の経済分野が拡大する必要があります。すでに、
住宅と個人消費が息を吹き返し、観光業と高等教育に改善が見ら
れますが、非資源投資は予想を下回る状況が続いています。
豪州統計局(ABS)による直近の企業による設備投資の計画値は、
今後一段の低迷を示唆しています。2015-2016 年の投資の推定値
を前年(2014-2015 年)の値と比較すると、今年度の企業投資は
23%減少すると推測されます。
設備投資実績および推定値
はじめに
年率変化(%)
資源ブームが終息する中、豪州経済は依然として厳しい局面にあり
ます。資源以外のセクターは回復していますが、資源セクターの落
ち込みによる逆風を埋め合わせるには程遠いものです。本稿では
成長見通し、金利、企業業績、そしてその投資家にとっての意味に
ついて考察します。
実績
経済成長は依然として低迷
第 2 四半期の経済成長率は、前期比+0.2%、前年同期比+2%と、
冴えない結果となりました。
(%)
豪州の実質GDP成長率
推定値からの変化
6月末までの会計年度
(年)
出所:ABS、AMP キャピタル
資源投資の低迷は驚くことではありませんが、懸念されるのは非資
源投資の見通しが依然として弱く、今年度 7.5%の減少が見込まれ
ることです。更に言えば、トレンドを下回る経済成長の背景には、い
くつもの他の要因が絡み合っています。その要因として例えば、予
想以上に急激なコモディティ価格の下落が引き続き国民所得の伸び
に押し下げていること(昨年通年の前年比名目 GDP 成長率はわず
か 1.6%)、一段の緊縮財政がひびいていること、家計が債務を増
やすことに消極的であること、豪ドル下落が遅れていること(1 年余
り前はまだ 0.95 米ドル近辺でした)、信頼感が低いことなどが挙げ
られます。
年率変化
四半期変化
(年)
出所:豪州統計局(ABS)、AMP キャピタル
個人消費は不振、住宅投資は減少、企業投資の基調は軟調、純輸
出と在庫が経済成長をそれぞれ 0.6%ポイントと 0.2%ポイント押し
下げたという状況下で、(一時的と見られる)公共支出の大幅な増加
と西オーストラリア州の投資の回復がなければ、第 2 四半期の成長
率はマイナスになっていたでしょう。
経済成長見通し
第 2 四半期の純輸出と在庫による成長率の押し下げは、第 1 四半
期のプラス寄与の反動であることから、今四半期はそれがまた繰り
返されることはないと見られ、経済成長率は過去 2 四半期の平均で
ある前期比+0.5%程度に若干回復するとみられます。
とはいえ、あまりに後ろ向きになる必要がない理由もあります。
• 借入金利は記録的な低水準にあります。豪州国民の銀行への債
務は、銀行の豪州国民への債務を 1.2 兆豪ドル上回っているため、
正味で低金利の恩恵を受けているのは家計部門です。
• 豪ドルの下落は製造、観光、高等教育、サービス、農業、資源セク
ターにとって大きなプラス材料です。
• ガソリン価格は本来見込まれる水準ほどには下がっていませんが、
昨年の高値からは下がっており、家計の貯蓄につながっています。
• 家計貯蓄率は 8.8%と依然として比較的高く、貯蓄率を下げて支
出に向かう余地があります。
• 豪州は資源ブームに対し、以前よりうまく対処しています。過去の
資源ブームは、インフレや貿易赤字、あるいはその両方につなが
った上に、全経済セクターが一斉に好況に沸き、そのため一斉に
不況を迎えました。今回は経済の不均衡が大きく積み上がること
はなく、資源ブームによって圧迫されたセクターが回復しつつあり
ます。
• 上記を反映して、州別の実質最終需要はニューサウスウェールズ
州が前年比 3.3%増、ビクトリア州が同 3%増となったのに対し、
西オーストラリア州は同 1.8%減となりました。
• 大半の豪州国民は輸出価格によって所得が変動するわけではな
いので、「国民所得不況(national income recession)」に陥ると
の心配は行き過ぎです。
こうしたことから、景気後退に陥るリスクは依然として比較的低く、豪
州について過度に悲観する理由はないでしょう。むしろ、マイナス要
因とプラス要因が相殺されることで、2%前後とトレンドを下回る水準
ながら成長が続く可能性が高いと思われます。
RBA の追加利下げと 0.60 米ドルに向かう豪ドル
とはいえ、資源セクターの落ち込みが少なくともあと 2 年続き、今後
数年間、成長率は潜在力を下回るという見通しは、喜ばしいもので
はありません。豪州経済の潜在成長率は、生産性と人口の伸びの
鈍化のために 2.75%程度に減速している可能性がありますが、実
際の成長率はこれを大きく下回る 2%程度で推移しています。これ
は、経済の余剰生産能力の拡大が続き、失業率が上昇傾向となり、
インフレに下方圧力がかかることを意味します。その上、経済を下支
えしてきた住宅建設がピークを迎えているか、ピークに近いようです。
こうした状況の経済には一段の支援が必要と考えられます。
第一に、長期にわたる潜在力以下の成長、失業率の上昇傾向、弱
いインフレといった要因が重なると、RBA は最終的に追加利下げに
動かざるを得ないでしょう。豪州健全性規制庁(APRA)の施策が奏
功してシドニーとメルボルンの住宅価格の伸びが減速すれば、RBA
はこの動きを取りやすくなると見込まれます。RBA の 11 月の会合
で次回の利下げが議論されるものと注目されますが、そこで実施さ
れなければ来年初頭になると予想されます。成長力を高める経済政
策に、より重点が置かれるのが理想ではありますが、政治情勢から
してすぐの実施は難しいでしょう。
豪州株式市場のEPS伸び率
会計年度変化率(%)
コンセンサス予想
市場
産業セクター
(金融除く)
(年)
出所:UBS、AMP キャピタル
2015-2016 年の増益率のコンセンサス予想は約 4%と依然として
軟調です。金融を除く産業セクターの 8.5%の増益が、資源セクター
で予想される 6%の減益を十二分に補うとみられています。低金利
と豪ドル安が産業セクターの業績を下支えすると見込まれます。
高配当は低調な設備投資の原因か?
一般的な見方は、株主が高配当を要求するから企業は投資せず配
当に回す、というものです。これは一部当たっているかもしれません
が、大きく影響しているわけではないでしょう。一般的な認識に反し
て、配当性向(収益に対する配当金の割合)は過去の水準から大き
く外れてはいません。産業セクターの約 70%という配当性向は、
GFC(世界的金融危機)前と同程度です。配当性向が GFC 前の約
30~40%から約 70%に上昇したのは主に資源株ですが、資源会
社については過剰な投資が続いた後だけに、投資を増やすべきと
の主張は困難です。
豪州株の配当性向
配当性向(%)
GFCによる遅配の影響で発生した
歪み
第二に、豪ドルは 0.60 米ドル付近に向かっているようです。主な要
因は、コモディティ価格が長期的な弱気相場に入っていることですが、
米国との金利差がさらに縮小する可能性も、豪ドル安の背景となっ
ています。これにより豪ドル相場は典型的なオーバーシュートになる
でしょうが、観光業や製造業といった鉱業以外の業種の需要を高め、
ひいては資源以外の投資を押し上げるためには必要なことです。
企業業績は期待外れだったが資源セクター以外は良好
最近終了した決算発表シーズンは経済の状態をよく反映するもので
した。2014-2015 年の業績は全般に低調で、1-6 月期決算 はやや
期待外れとなりました。43%の企業が予想を上回り、59%が前年同
期比増益となったことは良いのですが、その比率は過去数回の決
算発表シーズンを大幅に下回るものでした。
全体では前年同期比 2%程度の減益となり、会社側の今年度の業
績見通しは慎重でした。しかし、注目すべき点がいくつかあります。
• 減益は、資源セクターが 35%の大幅減益となったことによるもの
です。
• 他のセクターは、特に一般産業、建築資材、小売、医療関連株を
原動力に、約 7.5%の増益となりました。
• 金融を除く産業セクターは 11.5%の増益、これで 4 年連続の増益
となりました。次のグラフをご参照ください。
• 売上高の伸びは依然として低調ながら、豪ドル安に支えられ、住
宅建設関連会社とニューサウスウェールズ州が好調でした。
• 2014-2015 年の配当の伸びは 4%と依然として堅調で、57%の
企業が増配を行いました。
(年)
出所:ブルームバーグ、グローバル・フィナンシャル・データ、RBA、AMP キャピタル
非資源会社の投資不足の本当の理由は、GFC 後の慎重姿勢、資
源ブームの間を通して高止まりした豪ドル、高金利、高人件費(今か
らわずか 4 年前のことです)を経験した後の慎重姿勢、そして低イン
フレの世界では高過ぎるハードルレートにあると考えられます。
投資家への影響
第一に、銀行定期預金金利は低い水準にとどまるか、さらに低下す
ると見込まれます。好配当を求める行動は今後も続くでしょう。
第二に、豪ドルは引き続き下落すると見込まれます。従って、豪州
国内の投資家にとっては、引き続きヘッジ付よりもヘッジなしのグロ
ーバル株式が有利と思われます。
第三に、豪州の経済成長は、米国と欧州の見通しと比較して劣後す
る可能性があります。従って、豪州株の今年の終値は現在の水準よ
り上昇すると予想されるものの、伝統的なグローバル株式の配分を
多めに維持することも一考でしょう。
シェーン・オリバー博士
インベストメント・ストラテジーヘッド&チーフ・エコノミスト
AMP キャピタル
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