ケッアール

ケッアール
ホンデュラスで世界一美しい鳥だといわれているケッアールなのです
が、まぼろしの鳥ともいわれ、実物に出会うことは至難なのであります。
JICA事務所に勤務する中村氏は休日には頻繁にTigra(テグラ)の雲霧林を
散策し、散策路をすべて踏査済み、かつ、飽きることがないので幾度もの
按配でありましたが、それでもこの鳥にお目にかかってはいないと申して
おられます。鳴き声はしばしば聞こえるということで、われわれのリクエ
ストに対して声色で真似てくださいました。日本のテレビ映像で紹介され
たのを見たことがあります。人工飼育を拒否するので、動物園や鳥園でも
見ることが出来ないと解説していたと記憶しています。「世界一美しい」
については個人の好みもありますので、異論もあろうかと存じますが、ま
あそこのところはホンデュラスの誇りを尊重しておきましょう。
テグラの雲霧林をちょいと覗いてきました。最短の3㎞コースを歩いた
だけです。驚きましたねー。何に驚いたかと申しますと、それが伐後50
年生の自然林だと後で説明されたのでした。われわれが手入れしている澄
川の森と同じ程度の時間でしかないのに、まるで太古の原始林の様相なの
であります。樹高は30∼40m、胸高直径はわれわれの使う林尺を越える
ものがざらざらでありました。幹や枝は苔に覆いつくされ、蔓にからまれ、
さらにありとあらゆる着生や寄生植物につかまられております。植物達が
立体空間を余す所無く活用している有様は壮観でありました。ケッアール
かも、と思われる鳥の声はしばしば聞こえるのですが、姿を探すのは無駄
骨とすぐに分かりますので、あきらめていました。こんな森で「高野さん、
鳥がいるよ」と酒井さんが叫びました。一瞬胸がときめきましてケッアー
ルか?と樹間に視線を走らせましたが、
「ほれ、そこ、そこ」と指差す先に
はコジュウケイ?、ウズラ?のような鳥が数羽密やかに至近距離の地上を歩
き去りました。名前は分かりません。咄嗟で、かつ、薄暗いので撮影もで
きませんでした。この日は平地でも霧雨模様でした。雲霧林では名前にた
がわず霧雨に降られて、霧に煙る樹影が幻想的でありました。
この森は地元のボランティアによりよく管理されていました。歩道の整
備。道標のつけ方、道路の排水の仕方。雨水による水路浸
防止の方法。
補植用苗の馴らし方。等々、「おぬし出来るな」と思わせられました。
入林に際して料金をとられます。外国人は高い方の特別料金で 10 ドル
/人なのですが、手入れのゆきとどいた管理状況を見ますと、納得してし
まいました。