ランチョンセミナー1 お の たかひこ 小野 孝彦 国際医療福祉大学熱海病院腎臓内科 <学歴および職歴> 1976 年 京都大学大学院薬学研究科修士課程修了、薬学修士 1982 年 滋賀医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得 1991 年 京都大学医学博士を取得、論文題目『ヒト糸球体疾患に関する研究』 1992 年 京都大学医学部第三内科(現 循環器内科)助手 1996 年 3 月~9 月 2002 年 11 月 2003 年 2 月 オーストラリア Royal Melbourne Hospital 腎臓内科 客員研究員 京都大学医学部附属病院院内講師 同 腎臓内科病棟医長 2003 年 11 月~2009 年 3 月 静岡県立大学教授(薬学部分子病態学教室担当)兼 大学院教授 2004 年 1 月 静岡県立総合病院腎臓内科医長(兼任) 2009 年 4 月 市立島田市民病院 腎臓内科・漢方内科部長 2012 年 4 月 国際医療福祉大学熱海病院 腎臓内科教授 9月 同 血液浄化センター長(兼任) <客員教授等> 静岡県立大学薬学部客員教授 名古屋市立大学薬学部客員教授 福井大学医学部非常勤講師 <学会活動等> 日本内科学会 認定内科医、総合内科専門医、指導医 日本腎臓学会 専門医、指導医、評議員、Editorial Board/査読委員 日本高血圧学会 専門医、指導医 日本透析医学会 専門医、指導医 日本東洋医学会 専門医、指導医、代議員、編集委員会幹事、利益相反(COI)委員長、静岡県部会長 日本医師会 認定産業医 インフェクションコントロールドクター 1 月 23 日(金) 12:15~12:45 共催:旭化成ファーマ株式会社 座長:佐々木哲雄 血管炎における腎病理と症候:早期発見と治療のために お の 小野 たかひこ 孝彦 国際医療福祉大学熱海病院腎臓内科 血管炎は Chapel Hill コンセンサス会議の改訂 (2012) で名称が追加され、大、中、小血管 炎の病変の分布が分類されている。大血管炎の代表は大動脈の高安動脈炎があり、中血管炎と しては中、小動脈の壊死性動脈炎を呈する結節性多発動脈炎がある。腎臓に病変をきたすのは 主として小血管炎であり、しばしば皮膚にも見られる。ANCA 関連血管炎は小動脈、細動脈、 毛細血管、細静脈などの小血管に主に病変をきたし、病理学的には顕微鏡的多発血管炎 (Microscopic Polyangitis: MPA)、多発血管炎性肉芽腫症 (Granulomatosis with Polyangitis: GPA) ( 旧 Wegener 肉 芽 腫 症 ) 、 さ ら に 好 酸 球 性 多 発 血 管 炎 性 肉 芽 腫 症 (Eosinophilic Granulomatosis with Polyangitis) (旧 Churg-Strauss 症候群) の病像を呈する。また抗 GBM 抗体関連疾患 (Goodpasture 症候群) や、クリオグロブリン血管炎、IgA 血管炎 (HenochSchönlein 紫斑病) も小血管に病変をもたらす。診断に際して Watts ら (2007) の全身性血管 炎の段階的分類基準は、もれなく分類できる点に有用性があるが、アルゴリズムの上流に位置 する疾患に偏る可能性がある。 ANCA 関連血管炎は治療しなければ急速進行性糸球体腎炎から腎不全をきたすことが多い が、くすぶり型の病型をしばしば呈し、腎外症状として皮膚においては皮下結節、紫斑、網状 皮斑を、末梢神経には多発性単神経炎を、呼吸器系では肺胞出血、間質性肺炎を、耳鼻科領域 では中耳炎、鼻出血を、整形外科領域では筋肉痛、関節痛などをきたすことがある。このよう に病像が多彩で診断しにくく、半年から1年以上を経て腎機能障害によって病気の診断に至る こともしばしばである。診断・治療が遅れると腎機能の回復も限定的となるので、この病気を 疑って精査に結びつけることが重要である。 ANCA 関連血管炎の早期診断のために全身症状として、1)発熱、2)易疲労感、倦怠感、 食欲減退、3)6 か月以内に 6kg 以上の体重減少とともに、とくに腎、末梢神経、皮膚におけ る臓器症状を認めたら、ANCA 関連血管炎を疑い、検尿や血清クレアチニンの測定をおこない、 ANCA の抗体検査、さらに生検によって診断を確定することが重要である。 治療としてはステロイドの経口あるいはパルス療法であるが、70 歳以上では、ステロイドパ ルス療法を避けるなど、1 ランク治療を弱めた治療法を考慮することが、ガイドラインで勧め られている。我が国では維持療法においてアザチオプリンやミゾリビンの使用頻度が増加傾向 にある。ミゾリビンは朝1回投与が勧められるが、腎機能低下時は血中濃度モニタリングが望 ましい。
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