野上 竜太さん(自転車トラック競技)練習風景レポート 2015/1/24(土)

野上 竜太さん(自転車トラック競技)練習風景レポート 2015/1/24(土)
2015年1月24日、新幹線の三島駅から通称「いずっぱこ」に乗り換える。「いずっぱこ」とは「伊豆箱根鉄道」
駿豆線(すんずせん)沿線住民が親しみを込めて使う「伊豆箱根鉄道」の愛称である。最近、宮藤官九郎さ
ん脚本のテレビドラマで大きく紹介されたなぁ~、「ハートのつり革」はあるかなぁ~などと思いながら、風景を楽しん
でいると、終点の修善寺駅に到着。
今日は野上竜太さんが参加しているJCF(日本自転車競技連盟)ナショナル合宿のトレーニングを見学する
ために日本サイクルスポーツセンターへ向かう。今回の見学は強化指定の競輪選手や大学生が多くいる中、野上
さんが連盟に許可をとっていただいて、実現することになった。
修善寺駅から車で約20分、日本サイクルスポーツセンターに到着した。日本サイクルスポーツセンターはサイクル
スポーツの普及を図る目的で建てられた施設で、場内にはロード競技用5kmサーキット・トラックレース用400m
ピスト(走路)・MTB(マウンテンバイク)コースなどがあり、自転車の技術を活用した遊園地のようなアトラク
ションも多数【下の写真左】ある。
またサイクルスポーツセンターの中には伊豆ベロドローム
(Velodrome)がある。
伊豆ベロドローム【上の写真右・左の写真】は現在の世
界標準である屋内型板張り250mトラックで、2011年
10月に完成した。
日本における自転車競技場は、その大半が競輪場で、
周長は400mを中心に、333.3m、500mの3種類、表
面はアスファルト製の走路が多く、屋内型板張り250mは
この伊豆ベロドロームが日本初である。
1996年以降、オリンピック及び世界選手権が行われる
競技場が、屋内型板張り250mトラックが主流となってい
たため、日本国内でも本番と同じ環境での練習・訓練が
できるよう建設された。
野上さんが1kmタイムトライアル男子ジュニアでの日本
新記録(1分3秒799)を樹立したのは、2014年8月
29日、この伊豆ベロドロームだ。
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いよいよトレーニングの見学。自転車をもち
いたトレーニングではなく、今回はウエイト
トレーニング。
自転車競技は、短距離・長距離種目のい
ずれにおいても、静止した状態からのスタート
および加速、ゴールスプリントなどの場面にお
いて、爆発的な力発揮が要求される。このよ
うな爆発的な力発揮の能力を向上させるた
めに、ウエイトトレーニングが行われている。
ウエイトリフティングの専門コーチからの注意
点の共有から始まり、各強化選手それぞれ
がウォーミングアップを15時から実施。
まずはパワークリーンを2人1組で取り組ん
でいく。
パワークリーンは
・オーバーグリップでバーベルを握り、
・かかとで地面をしっかりととらえる。
・背中のアーチをつくり、胸を張る。
・バーが膝のあたりまできたら反動をつかって、
一気に持ち上げる。
・腰を突き出して、全身の筋肉を絞る。
・反動で跳ね上げてきたバーベルを、肘を
突き出し手首を曲げて保持する。
【写真】は野上さんのパワークリーン
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次はベンチプレス
・ベンチに寝転び、肩甲骨を寄せて胸を張る。
・かかとで地面をしっかりととらえる。
・バーを握る位置は肩幅より、こぶし1つ分
外側にする。
・腕はまっすぐではなく、円を描くようにバーを
握る。
・重さに逆らいながら1秒~2秒かけて、
ゆっくりと下ろす。
・胸の乳首付近の位置を基準に下ろす。
・胸の筋肉を意識して一気に持ち上げる。
・背筋をピンと伸ばし、胸は常に張り続けて
おく。
・バーベルが傾かないようにバランスよく持ち
上げる。
【写真】は野上さんのベンチプレス
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最後はスクワット。最も筋肉等を傷めやすい動きのため、専門コーチから注意事項が丁寧にレクチャーされる。
野上さんは鏡をみながら、筋肉や体の動きを確かめつつ、バーベルの重量をあげていっていた。
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【左の写真】は他の選手のベンチプレスをサポートする野上さん。
このウエイトトレーニングの様子をこの笑顔が表していた。
Topクラスの選手の集合体なので、メリハリがとてもきいている。
パフォーマンスの際は1人1人が緊張感をもって取り組み、アッ
プや休憩の際には笑顔でチームメイトとのコミュニケーションを盛
んに行っている。
今回はそれぞれの選手の「パワークリーン」「ベンチプレス」「ス
クワット」の最大挙上重量の記録会も兼ねていたが、それを
ゲームのように楽しみながら、集中する時は集中、記録にこだ
わりを少しみせる選手もいた。
【下の写真】は野上さんがウエイトトレーニング専門コーチから
アドバイスを受けている様子。
専門コーチは、計画的にやれば1ヶ月で、それぞれの種目で
少なくとも2.5kgの挙上重量アップが可能で、1年で30kg以
上アップさせることができると断言された。 すっ、すごい!
余談となるが、自宅にもどり、「自転車競技とウエイト
トレーニング」についてネット検索すると、野上さんが学ぶ
鹿屋体育大学の黒川氏・石井氏・木村氏・山本氏の
「自転車競技選手におけるパワークリーンおよびスクワッ
トの最大挙上重量短距離走行能力との関係」という
共同研究論文を見つけた。
大学生の自転車競技選手(男女17 名)を対象
に調査された論文で、その研究結果・考察を抜粋・引
用させていただくと
『1.短距離走行能力と最大挙上重量との関係
本研究では、短距離・長距離に関わらず、多くの
自転車競技選手が短距離走行能力を改善するた
めに取り入れているパワークリーンおよびスクワット
が、実際の短距離走行能力と、どのような関係にあ
るかを実証することを目的とした。
そのために、シーズンベストタイムから算出した各
選手の200mTTの平均速度と、パワークリーンおよ
びスクワットの最大挙上重量との関係を検討したとこ
ろ、両者の間には高い相関関係が認められた。
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2.パワークリーンおよびスクワットの最大挙上重量が短距離走行能力に高い関連が認められた理由
パワークリーンおよびスクワットの最大挙上重量と自転車競技の200mTT に関連性が認められた理由として、
下肢で発揮される関節トルクおよび動員される筋群が共通していることが考えられる。
パワークリーン、スクワット、自転車ペダリング動作は、共通して股関節および膝関節の伸展トルクが大きいとい
う共通点を持ち、このことから、パワークリーンおよびスクワットの最大挙上重量と自転車による短距離走行能力
と高い相関関係が認められたものと考えられる』
話をトレーニングにもどす。鮮やかな夕日が修善寺の森に沈む頃、ウエイトトレーニングが終了。選手のみなさん
はそれぞれにしっかりとクールダウンして、体全体をリラックスさせる。
解散時にコーチから「今日の夕食は18:30から!」と、告知されていたのが、日本のTop選手集団とはいえ、
とても合宿らしくて、嬉しくなった。
団体行動の合宿なのに、最後に野上さんにお願いし、<2015年の目標について>聴かせていただいた。
「2015年は去年よりも競技力をあげるということで、全日本選手権で1kmを1分1秒か、2秒台にのせて、
表彰台にも乗るというのが、今の目標です。そこにのっていないと今後、ナショナルチームで活動していく上で海外の
大会で使ってもらえない可能性があるので。今年は国際大会をメインに結果を狙っていって頑張ろうと思います。」
インタビュー後、野上さんはみなさんの待つ移動車へダッシュで向かった。
「野上さん、本日はありがとうございました。次の大会での活躍、世界への飛躍、応援&期待しています!」
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